国際相続:外国税額控除を適用し、日本での相続税負担をゼロにできた事例

被相続人:海外(韓国)在住の父

相続人:3名(配偶者・子2名。うちご相談者様のみ日本在住)

相続財産:すべて韓国所在(不動産・預金・株式等)約2億円

効果:外国税額控除の適用、日本での納付税額0

事例の概要

「韓国で相続税を納めたのに、日本でも相続税がかかるのですか?」というご相談です。

日本在住の相続人は、取得した財産が国外にある場合でも日本の相続税の課税対象となります。本件では、財産がすべて韓国所在で、韓国で相続税を納付済みという状況でした。

外国税額控除の適用を検討した結果、日本での納付税額は0円となる見込みとなりました。そのうえで、計算根拠を明確にした申告書を保守的に期限内に提出し、二重課税の調整を確実なものとした事例です。

ご相談時点の状況

背景)

韓国在住のお父様が亡くなり、相続人は配偶者と子2名の計3名。

このうちご相談者様のみが日本に住んでいる、というご家族です。

相続財産は不動産・預金・株式など、すべて韓国に所在しており、

韓国では既に相続税の申告・納付を済ませたうえでのご相談でした。

 状況と問題点)

・相続財産はすべて韓国所在で、日本国内の財産はない

・ご相談者様は日本在住のため、韓国内の財産のみでも取得分は日本の相続税の課税対象となる

・ご相談者様の取得財産(約6,500万円)が基礎控除(4,800万円)を超えており、日本での税額計算と申告義務の判定が必要

・韓国で相続税を納付済みのため、そのままでは日本との二重課税になってしまう懸念

・財産や納付税額はすべてウォン建てのため、日本の税額計算用に円換算(為替レートの選定)が必要

 解決までの道のり

当法人からの対応)

状況を踏まえて、3つのステップで対応しました。

 対応1)日本での課税範囲と申告義務の判定を整理する

まず、相続人ごとの納税義務を整理しました。日本在住のご相談者様は国外財産も課税対象となる一方、韓国在住の他の相続人の方々は、日本国内に財産がないため日本の課税対象外という整理になりました。

次に、申告義務の判定です。取得財産が基礎控除を超えていても、相続税の申告義務は、外国税額控除まで適用した後の税額があるかどうかで判定されます。

外国税額控除には申告要件がないため、控除適用後の納付税額が0円となる場合には、申告義務自体が生じないという整理になります。

もっとも、「本当に0円になるかどうか」は、為替換算や韓国税額の帰属の確認結果に左右されます。判定を誤れば結果的に無申告となるリスクもあるため、本件では、計算根拠を明示した申告書を保守的に期限内に提出する方針とし、申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)から逆算したスケジュールを組みました。

 対応2)外国税額控除を適用し、二重課税を排除する

本件のポイントは、韓国で納付済みの相続税について「外国税額控除」を適用できるかどうかでした。

試算の結果、ご相談者様の日本での相続税額は約180万円。

一方、韓国で納付した相続税のうちご相談者様に帰属する部分は円換算で約700万円と、日本の税額を大きく上回っていました。

外国税額控除には限度額(日本の相続税額のうち国外財産に対応する部分)がありますが、本件は取得財産のすべてが韓国所在のため、日本の税額の全額が控除限度額となり、日本での納付税額は0円となる見込みとなりました。

※外国税額控除は、国外にある財産について、その財産の所在する国で相続税に相当する税が課された場合に、二重課税を調整するため、一定の限度額まで日本の相続税額から控除できる制度です。

控除額は「外国で課された税額」と「日本の相続税額のうち国外財産に対応する部分」のいずれか低い方となるため、外国で納めた税金が必ず全額控除されるわけではない点に注意が必要です。

なお、適用にあたっては次の点を丁寧に確認しました。

 

・韓国の相続税のうち、ご相談者様ご本人に帰属する税額(他の相続人の分は控除対象にならないため)

・財産評価は相続開始日のTTB(電信買相場/Telegraphic Transfer Buying rate)、納付税額は納付日のTTS(電信売相場/Telegraphic Transfer Selling rate)と、場面ごとに適切な為替レートで円換算すること

TTBとは

仲値(TTM)から為替手数料を差し引いた、銀行が顧客から外貨を買い取る際のレートです。外貨を円に換える取引に適用され、税務上は原則として収益・資産の換算に用います。

TTSとは

仲値(TTM)に為替手数料を上乗せした、銀行が顧客へ外貨を売り渡す際のレートです。円を外貨に換える取引に適用され、税務上は原則として費用・負債の換算に用います。

 対応3)韓国側の資料を整備し、税務署に説明できる申告書に仕上げる

韓国には日本の戸籍謄本にあたる書類がないため、家族関係証明書・基本証明書などの代替書類で相続関係を証明する必要があります。

また、外国税額控除の計算には、韓国の相続税申告書や納税証明書といった現地資料が不可欠です。これらについて「原本+日本語訳+円換算表」の3点セットに整理し、外国税額控除の計算根拠がひと目で分かる添付資料として申告書に仕上げたうえで、期限内に提出しました。

 

得られた結果

・日本での課税範囲を整理し、外国税額控除適用後の税額に基づく申告義務の判定を明確化

・外国税額控除の適用により、日本での納付税額は0円に

・本人に帰属する税額の確認と適切な為替換算により、控除額を適正に計算

・韓国側資料と計算根拠を整えた申告書を保守的に期限内提出し、後日の税務署からの照会にも備えた状態に

 案件のポイント

この事例のポイントは、外国税額控除を「正しく」適用することでした。

外国税額控除は、外国で納めた税金が自動的に、あるいは全額控除される制度ではありません。控除の対象となるのは本人に帰属する税額のみであり、限度額の計算や場面ごとの為替換算など、確認すべき論点が多くあります。

また、外国税額控除には申告要件がないため、控除適用後の税額が0円となる場合には申告義務は生じません。

ただし、その「0円かどうか」の判定は、為替レートの選定や本人に帰属する税額の確認の精度に左右され、判定を誤れば結果的に無申告となるリスクがあります。

そこで本件では、計算根拠を明示した申告書を保守的に期限内に提出し、リスクを残さない形で手続きを終えました。

担当 久保 からお客様へ

「外国で相続税を払ったから、日本では何もしなくてよい」と思われている方は少なくありません。

しかし、日本にお住まいの方が相続人になった場合、海外の財産も日本の相続税の対象となります。一方で、外国税額控除を適切に適用すれば二重課税は調整され、本件のように納付税額が0円となることもあります。

大切なのは、その結論について根拠をもって確認し、必要に応じて申告という形で残しておくことです。

国際相続は、現地書類の収集や翻訳、為替換算など準備に時間がかかります。海外に財産がある相続に直面された際は、できるだけお早めにご相談ください。

国際相続に精通した税理士が、海外財産の評価から申告までワンストップで対応します。
他の税理士に断られた複雑案件であっても、私たちは解決します。まずはお気軽にご相談ください。

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