
「パートナーとの間でジョイントアカウント(共同名義口座)を開設している」
「両親がジョイントアカウントを保有していたが日本の税金は大丈夫だろうか」
私は税理士として、日々、アメリカなど海外に居住経験のある方やその親族の方から、相談を受けます。
その中でも、海外財産と関連して日本の贈与税や相続税取り扱いについて、よくご相談を受けることがあります。
ジョイントアカウントを開設してると、贈与税となるケースと相続税を考慮しなければいけないケースなど、場面に応じて検討すべきことが増えていきます。
本コラムではジョイントアカウントについてその内容・日本の税金について解説します。
あなたのジョイントアカウントに関する疑問を解決しますのでぜひ最後まで読んでみてくださいね。
目次
第1章 ジョイントアカウントについて
ジョイントアカウントとは日本にはなじみのないものですが、そもそもどのようなものなのでしょうか。
ジョイントアカウントは「家族で一緒に使える便利な口座」ですが、税金の世界では「このお金は誰の財産か」が問われます。ここでは基本の定義と、典型例としての「夫婦共有」を通じて、押さえるべきポイントを整理します。
1-1 ジョイントアカウントとは
ジョイントアカウントとは、共同名義口座のことで複数名が同一の口座の名義人(口座権利者)として登録され、当該口座を共同で管理・利用する仕組みをいいます。
日本では見られませんが、海外の金融機関では一般的に利用されております。
典型例:「夫婦共有」のジョイントアカウント
たとえば、次のような使い方はよく見られます。
夫婦の生活費用口座として共同で使う
夫:ジョイントアカウントへ入金(原資)
妻:家賃・光熱費・食費などを口座から支払う(出金)
税金上は「名義が夫婦共同」でも、「入金原資(誰が元手)・使途(誰の何のために使われているか)」によって、相続税や贈与税の判断が変わることがあります。
つまりジョイントアカウントは、便利な口座ではあるものの「誰の帰属」であるかが見えづらくなりやすい点が特徴です。
1-2 ジョイントアカウントの3つのメリット
ジョイントアカウントを利用することで以下のメリットがあります。
(メリット1)利便性
夫婦で「生活費の支払い口座」を分けていると、支払いが散らばり、残高確認や精算が煩雑になりがちです。
ジョイントアカウントで一本化しておけば、生活費(家賃・食費・日用品など)を同じ口座から支払えるため家計の全体像が見えるため便利に運用することが出来ます。
(メリット2)権限の分散
夫婦一方の管理能力の喪失(認知症など)又は死亡に備えることが出来ます。
日本では、被相続人(亡くなった人)の死亡後、預金が凍結され出金することはできません。
一方ジョイントアカウントは死亡により所有権が他方の名義人(夫・妻など)に自動的に移転することから、自由にジョイントアカウントを利用し続けることが出来ます。
(メリット3)簡素化(死亡時の手続)
ジョイントアカウントでは、前述の通り名義人の一方が死亡した場合に、所有権が他方の名義人(夫・妻など)に自動的に移転します。
これにより、現地国でのプロベート手続きが回避され、他方の名義人へ預金残高を移転させることが出来ます。
なお、生存者受給権が付いていないジョイントアカウントでは上記効果は発生しません。
(プロベート回避は第4章で詳しく見ていきます)
誤解が多い点は、手続が簡単になることと日本の相続税・贈与税の論点があるということは別問題ということです。
税金上は「誰の財産が、誰に移ったのか」を実態で整理する必要があります。
(税金は第2章、第3章で詳しく見ていきます)
第2章 日本の贈与税の取り扱い
ジョイントアカウントを利用する上でどんな時に贈与税がかかるのか確認していきます。
2-1 口座開設時、入金時の贈与税の取り扱い
ジョイントアカウントでは、例えば夫婦の一方が自己資金で口座を開設し、その口座へ資金を入れたとしても、その時点で直ちに相手方へ贈与税がかかるわけではありません。
ジョイントアカウントは名義人であれば誰でも引き出せる一方、開設時、入金時点では相手方が将来いくらを自分のために引き出すかが未確定であるため、単に夫婦の一方の資金拠出で口座が開設されたことだけをもって、相手方に贈与税を課すことは原則ありません。
ただし、そもそも相手方に無償で自由に使わせるための口座開設と認定できるような場合は別です。
2-2 出金時の贈与税の取り扱い
例えばジョイントアカウントの資金拠出をしていない名義人が、口座から資金を引き出し、使用した場合には原則贈与税がかかります。
もっとも、ジョイントアカウントからの出金であれば何でも課税されるわけではありません。課税が問題になるのは、上記の通りそもそも資金拠出をしていない人が、その口座から自分の利益のために資金を引き出し使用したり、その人名義の不動産などの購入資金に充てたりした場合です。
このような場合には、資金拠出した人からその名義人に対して贈与税の課税がされます。
2-3 生活費は課税されない
夫婦や親子などの一定の扶養義務者からの生活費等として、ジョイントアカウントから出金しているような場合には贈与税はかかりません。
ただし、非課税になるのは、生活費や教育費として必要な都度、直接その支払いに充てるものに限られます。生活費名目で口座から引き出したお金を株式や不動産などの購入資金に回したりした場合には、贈与税がかかるため注意が必要です。
<具体例>
夫が自己資金9,000万円を原資として妻とのジョイントアカウントを開設。
その後1,200万円を追加で入金した。
👉口座開設・入金時は直ちに妻に贈与税がかかるわけではありません。
妻が生活費等として200万円を出金し、使用した。
👉贈与税はかかりません。
相続対策として1億円を出金し、夫婦共有(持分は各1/2)の海外でコンドミニアムを購入した。
👉妻の共有持分(1億円×1/2=5,000万円)については拠出者以外が自己の利益のために取得したものとして、贈与税が課税されます。
第3章 日本の相続税の取り扱い
ジョイントアカウントを所有している人が亡くなった場合に相続税がかかるのか確認していきます。
なお、本章では、相続開始時に生じる日本の課税関係を、便宜上「相続税の取り扱い」として解説します。
3-1 相続があった場合の取り扱い
ジョイントアカウントへ資金を拠出していた口座名義人が亡くなった場合には相続税がかかります。
相続税の対象となる財産には、現金や預貯金だけでなく、金銭に見積もることができる経済的価値のあるものが広く含まれます。したがって、ジョイントアカウントの残高が海外にある場合でも、日本に居住している人については、国内財産だけでなく海外財産も相続税の課税の対象になります。
もっとも、海外にあるジョイントアカウントは、プロベートがある現地国の法律上「プロベート対象の遺産(日本でいう遺産分割の対象となる遺産)ではない」とされます。
ただし、上記海外での取り扱いにかかわらず、亡くなった人に帰属していたジョイントアカウントが生存名義人へ移ることについては、日本では原則、相続税(一定の場合には贈与税とする実務上の判断があります。)がかかることになります。
3-2 「亡くなった人の拠出部分」が課税対象
ジョイントアカウントを所有している人が亡くなった場合の相続税の課税対象は、「ジョイントアカウントの残高のうち、実質的に誰の財産(誰が拠出)だったのか」です。
実務では、口座開設時の原資、その後の追加入金、入出金の使途、誰が管理・運用していたかを確認することとなります。
そのため、申告時には、預金通帳、残高証明書、ステートメント、送金記録、口座開設書類などを基に、取引経緯を確認しておくことが重要です。
3-3 ジョイントアカウントの手続き
生存者受給権付のジョイントアカウントでは、死亡時の手続きは、日本の預金の相続手続きとは大きく異なります。
日本の預金では特に遺言がない場合には、相続人の分割協議により取得者を決める必要があります。
海外のジョイントアカウントの口座名義人のうち一方が亡くなった場合には、残高は生存名義人に帰属するとされており、この移転は、通常のプロベート手続の対象とはされません。したがって、少なくともその口座残高については、現地でプロベートを経ずに、生存名義人へ自動的に移る仕組みになっています。
<具体例>
夫が自己資金5,000万円で妻とのジョイントアカウントを開設し、妻は資金を拠出していなかった。
👉夫が亡くなった場合には、ジョイントアカウントの5,000万円は妻へ自動的に移り、プロベートを経ずに承継されます。
👉その5,000万円を他の遺産とともに相続により取得したものとして相続税が課税されます。
夫の資金で形成された口座であるため日本の課税の対象になります。
~例えば、資金の拠出が「夫及び妻で2,500万円ずつ」の場合には~
👉夫の拠出部分である2,500万円を他の遺産とともに相続により取得したものとして相続税が課税されます。
<専門家の視点👉税金と手続きの違い>
実務上、海外のジョイントアカウントについては日本の「遺言・遺産分割協議」の対象財産となりません。
一方で日本の税金上はここまで説明した通り課税の対象となる財産であるため以下の誤解が生じております。
(誤)遺言書(又は分割協議書)にジョイントアカウント(夫婦共同)は子供へ相続する旨の記載をした。
(正)ジョイントアカウントは上記の相続手続きによらず、生存名義人(夫または妻)が所有することになる。
よって子供が取得することはできません。
第4章 ジョイントアカウントによるプロベート回避
ジョイントアカウントは上述までの通り相続時にプロベートを経ずに、生存名義人へ自動的に移すことが出来る仕組みです。
プロベートの手続きは費用も時間もかかるため、実務上はその手続きを回避するためのプランニングが重要です。
4-1 海外財産にはプロベートが必要な国がある
海外にある財産については、その国によっては、プロベート(人が亡くなった際に、その遺産を法的に管理・清算し、最終的に相続人へ分配するまでの一連の裁判手続きの制度)が必要となります。
代表的な国にはアメリカやイギリス、オーストラリア、香港、シンガポール、カナダ、ニュージーランド、マレーシアなどの国で採用されております。
プロベートのデメリットは、まず時間がかかることです。その手続きは半年から3年かかることもあります。
また、費用が高額になることがあります。具体的には裁判所に支払う費用、弁護士費用などが発生します。
特に、プロベート対象財産が少額であっても、多額の費用や時間がかかり、コスト倒れになることもあります。
【プロベートの仕組みの詳細記事はこちら】
プロベートとは?仕組み・流れ・回避方法を税理士がわかりやすく解説
4-2 ジョイントアカウントによるプロベート回避
ジョイントアカウントは、生存名義人に自動的に移転します。
この移転は遺言による承継ではないため、その口座残高については、通常のプロベート財産として裁判所の分配手続を経るのではなく、契約上の仕組みによって生存者へ移るのが基本です。
プロベートの完了を待たずに又はプロベート手続きをせずに、生存名義人が管理・払戻しを受けられるため「プロベート回避手段」として有効です。
その口座残高を現地国のプロベートの対象外にできる点は大きなメリットといえます。
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第6章 まとめ
いかがだったでしょうか。
日本の制度にはない「ジョイントアカウント」について
第一章ではその仕組みをメリットふまえて解説しました。
第二章及び第三章では具体例とともに贈与税・相続税の税金を中心に解説しました。
第四章ではプロベート回避手段としてのジョイントアカウントのメリットを解説しました。
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