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国際相続・相続税対策に
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    国際相続サポート

    • 2026.02.19
    • 川崎 朝輝

    3分でわかる!あなたは国外財産調書が必要か?【フローチャート付き】

    海外の銀行口座や株式、不動産をお持ちの方へ。 「国外財産調書」という言葉をどこかで耳にしたことはありませんか? 実は、ここ数年、国税庁は国外財産の把握にかなりの力を入れています。 その一環として設けられたのが「国外財産調書」です。 最近は、海外に財産を保有されている方も増えており、「自分も提出の対象になるのでは?」と悩まれる方も増えています。 国外財産調書は、毎年12月31日時点で国外にある財産の合計が5,000万円を超える場合に提出が義務づけられている届出書です。 とはいえ、 「提出が必要かどうかよく分からない」 「もし出さなかったらどうなるのか不安」 「書き方が難しそうで挫折しそう」 こうした疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか? この記事では、3分で提出要否を判定できるフローチャートを用意しました。 さらに、制度の詳細、提出しなかった場合のペナルティと提出するメリット、作成方法までを、税理士の視点で分かりやすく解説します。 「提出が必要かどうか」この記事を読めば整理できます。 ぜひ最後までご覧いただき、制度を正しく理解し、今ある不安を取り除いてください。 まずは、国外財産調書の提出が必要か否かについて確認をしていきましょう。 第1章 3分で分かる!国外財産調書の提出要否フローチャート 国外財産調書の提出が必要かどうかは、いくつかの条件を確認するだけで判断できます。 ここでは、3分で提出要否を判定できるフローチャートをご用意しました。 なお、判定を行う際の注意点(相続財産やローン付き不動産、共有財産の扱いなど)は、1-3で補足していますので、併せてご確認ください。 次に、制度の概要や提出する様式について確認をしましょう。   1-1 国外財産調書の制度概要 国外財産調書は、毎年12月31日時点で国外にある財産の合計が5,000万円を超える場合に、日本の居住者に提出が義務づけられている届出書です。 なお、提出期限は翌年の6月30日までです。 提出する際の様式は次の通りです。   1-2 国外財産調書を提出しないとペナルティ、提出すれば優遇も 国外財産調書は提出しないとペナルティが課されます。反対に、提出すれば税務上の優遇もあります。 1-2-1 提出がない場合のペナルティ 国外財産調書を提出しなかったり、記載すべき項目が欠けていたりした場合、その財産について所得税や相続税の申告漏れがあると、過少申告加算税や無申告加算税が通常より5%重くなります。 ・過少申告加算税=申告額が少なかった場合のペナルティ ・無申告加算税=申告すべき税金を申告しなかった場合のペナルティ さらに、偽りの記載や正当な理由のない未提出の場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることもあります。 そのため、国外財産調書を提出すべき方は、必ず提出しましょう。 1-2-2 提出した場合の優遇 提出期限内に国外財産調書を提出していれば、その財産に関して所得税や相続税の申告漏れがあった場合でも、過少申告加算税や無申告加算税が5%軽減されます。   1-3 提出要否を判断する際の3つの注意点 注意1 ローン付きの海外不動産 ローン付きの不動産を所有している場合、ローン残高を差引く前の不動産評価額で判定します。 たとえば7,000万円の海外不動産を所有し、ローン残高が3,000万円ある場合、実質は4,000万円ですが、国外財産調書の判定額はローン残高を差引く前の7,000万円となります。 したがって、この不動産だけを所有している場合でも 「7,000万円>5,000万円」となり、提出対象です。 注意2 共有財産の場合 国外財産を夫婦や親族と共有している場合は、その持分の割合に応じて計算します。 しかし、持分が定まっていない場合や持分が明らかになっていない場合は、各共有者の持分は相等しいものと推定して計算することになっています。 海外でよく見られるジョイントアカウント(共同口座)やジョイントテナンシー(共同名義不動産)も同様に取り扱うことになっています。 注意3 相続で取得した国外財産 国外財産を相続した場合、相続をした年の国外財産調書では考慮する必要がありません。 しかし、翌年の年末に引き続き保有している場合は考慮する必要があります。 次の章では国内財産か国外財産かを判定するPointを確認していきます。 第2章 国内財産か国外財産か?判定の2つのPoint 次の2つのポイントを押さえれば、ほとんどの方はお持ちの財産について判断できると思います。 なお、この判定は相続税法に基づいて行われます。細かく知りたい方は国税庁の資料(参考)をご確認ください。 Point1 預金・有価証券は「口座の所在地」で判定! 預金や有価証券は、管理している金融機関や証券会社の所在地で判断します。 外貨預金や外国株式であっても、日本国内の証券会社で管理されていれば 国内財産(対象外)。 一方、日本の株式であっても、海外の証券会社で管理していれば 国外財産(対象)となります。 Point2 不動産は「物件の所在地」で判定! 日本にある不動産は、国内財産(対象外)。 一方、海外にある不動産は、国外財産(対象)となります。 たとえ、日本の不動産会社から購入したとしても、所在が海外であれば国外財産に該当します。 プラスα 暗号資産は「所有者の住所地」で判定! 暗号資産は国外の取引所で取引をしていたとしても所有者の住所地で判断します。 国外財産調書は日本の居住者に提出義務があるもので、その日本の居住者にとって暗号資産は国内財産(対象外)となります。 最近は暗号資産で大きな利益を得ている方も多いですが、国外財産調書については心配する必要はありません。 出典:国税庁ホームページ 国外財産調書制度(FAQ)令和7年6月 次の章では、国外財産の評価方法と外貨から円への換算ルールについて確認します。 第3章 国外財産の評価と為替換算 国外財産調書では、毎年12月31日時点に保有している国外財産の価額を円換算して記載する必要があります。 対象財産の価額をどのように評価し、どの為替レートで換算するのかを正しく理解しておくことが大切です。 3-1 評価額の出し方 国外財産は、その年の12月31日における「時価」を計算する必要があります。 「時価」というのは、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額のことをいいます。 つまり、実際にその財産を売買するときの一般的な値段ということです。 しかし、「時価」を求めやすい財産と求めにくい財産があります。 「時価」を求めにくい財産は、合理的に見積もった価額などを用いて計算することになります。 【時価を求めやすい財産】 現金・預金 : その年12月31日の残高 上場株式等 : 金融商品取引所等の公表するその年の12月31日の最終価格         (ない場合は、その直近の日の最終価格) 未収入金・貸付金 : その年12月31日の元本の額 【時価を求めにくい財産】 土地、建物 ① 固定資産税の評価額を使う方法 その国で日本の固定資産税に相当する税金がある場合は、税金を計算するための不動産の評価額(課税標準額)を使います。 ② 購入価額を基準に見積もる方法 購入時の価格に、その国の不動産統計指数などを参考にして合理的な変動率を乗じて価額を見積もります。 ③ 実際の売却価額を使う方法 国外財産調書の提出までの間に売却した場合、その売却価額を評価額とします。 ④ 建物は償却して評価する方法 建物に限り、購入価額から経過年数に応じた償却費を控除して計算します。 金融市場で取引のない有価証券(非上場株式など) ① 直近に売買が成立していて、適正と認められるものがあればその価額 ② 実際の売却価額を使う方法   国外財産調書の提出までの間に売却した場合、その売却価額を評価額とします。 ③ 法人の純資産価額に持株割合を乗じて計算した金額 ④ いずれの計算も難しい場合は取得した価額 貴金属、書画骨とう及び美術工芸品 ① 直近に売買が成立していて、適正と認められるものがあればその価額 ② 実際の売却価額を使う方法   国外財産調書の提出までの間に売却した場合、その売却価額を評価額とします。 ③ いずれの計算も難しい場合は取得した価額 【評価する場合の注意】 ローンがある場合 海外不動産などにローンが付いている場合でも、ローン残高を差し引かずに不動産の評価額全体で判定します。 (例:7,000万円の不動産に3,000万円のローンがあっても、4,000万円ではなく7,000万円で計算します。) 共有財産の場合 夫婦や親族と共有している財産は、持分割合に応じて評価します。 持分が明らかでない場合は「等分して所有している」と推定されます。 海外によくあるジョイントアカウントやジョイントテナンシーも、同様に持分割合で計算します。   3-2 為替換算の基準 その年の12月31日における最終のTTBにより為替換算を行います。 財産債務調書には、邦貨(円)で提出の要否の判定、及び、記載をする必要があります。 国外財産ついてはその国の通貨で評価するため、最後に円に換算する必要があります。 その際に用いるのが、取引金融機関が公表するその年の12月31日における最終の対顧客直物電信買相場(TTB)又はこれに準ずる相場(同日にこれらの相場がない場合には、同日前のこれらの相場のうち、同日に最も近い日のこれらの相場)になります。 一通り、国外財産調書について確認をしてきました。 次の章では、よくあるQ&Aについて確認をしていきましょう。 第4章 よくある疑問Q&A Q1 期限後に提出した場合はどうなる? A1 期限後でも、自主的に提出したものであれば、期限内に提出したものとみなされて、『1-2-2 提出した場合の優遇』を受けられます。 ただし、所得税や相続税の調査があり、修正されることを予知した後に提出した場合は対象外となります。 Q2 提出したあとに誤りや記載漏れがみつかったらどうすればいいの? A2 誤りや記載漏れに気づいたら、直した内容ですべての国外財産を記載しなおして再提出します。 誤りや記載漏れの部分だけではなく、すべての国外財産を記載して提出する必要があります。 この場合もQ1と同じく、自主的に提出したものであれば期限内に提出されたものとみなされて、『1-2-2 提出した場合の優遇』を受けられます。 誤りや記載漏れに気づいたらそのままにせず、早めに再提出しましょう。 Q3 国外財産調書と財産債務調書はどう違うの?両方提出しないといけないの? A3 提出の要件に該当する人は両方とも提出が必要になります。 両方とも提出する場合には、国外財産調書に記載した国外財産については、財産債務調書には詳細に記載する必要はありません。 なお、財産債務調書とは一定の所得や財産がある方が提出する書類で国外財産調書と比較すると次の通りになります。 項目 国外財産調書 財産債務調書 提出 すべき人 居住者 (非永住者を除く)で、 国外財産の合計が 5,000万円超の人 次の➀と➁のいずれかに該当する人 ➀所得が2,000万円を超え かつ 総資産が3億円以上又は 有価証券等を1億円以上 ➁居住者で総資産が10億円以上 対象財産 国外にある財産のみ 国内、国外問わずすべての財産・債務 基準日 12月31日 提出期限 翌年6月30日 提出先 所轄税務署 ペナルティ 相続税・所得税とも 加算税を5%加重 (死亡した方の所得税を除く) 所得税のみ加算税を5%加重 (相続税は加重なし) 優遇 相続税・所得税とも加算税を5%軽減 刑罰 虚偽記載または 提出義務不履行の場合 1年以下の懲役または 50万円以下の罰金 明示なし 疑問になりやすい項目についてQ&A形式で解説していきました。 しかし、いろいろな財産があり自分で作成して提出するには不安な方もいらっしゃると思います。 次の章では、税理士に相談するメリットについて触れていきます。 第5章 税理士に相談するメリット 国税庁はCRSなどの制度により、他国の金融機関からの情報提供を受け、国外資産の把握を強化しています。 しかも、国外財産調書は実務上ミスが起こりやすい制度です。 税理士に相談することで次のようなメリットが得られます。 5-1 記載漏れや評価ミスを防げる 国外財産調書は、財産ごとに評価方法や換算レートを正しく適用する必要があります。 税理士に依頼することで、記載漏れや評価ミスを防ぎ、安心して提出できます。 5-2 新しい視点からの提案が受けられる 調書を作成する過程では、財産の全体像を把握します。 税理士が関与すれば、所得税や将来の相続税を見据えた財産管理・運用の提案を受けられることもあります。 5-3 税務に関する相談を継続的に受けることができる 税務に関する相談は内容が多岐にわたり、短期的な対応だけでなく長期的な視点で考えることが大切です。 例えば、所得税の対策は1年だけだとあまり効果が見えにくくても、毎年継続することで大きな効果をもたらすことがあります。 また、相続税の対策は、早い段階から長期的に取り組むことでより効果が高まります。 そのため、信頼のできる税理士に継続的に相談できる体制を整えておくことは、大事な資産を守るためにとても大切です。 第6章 ご相談は、信頼と実績の「税理士法人マインライフ」へ 財産が海外にあり、国外財産調書の提出が必要そう・・・。 海外に財産があるとどのような弊害があるのか心配、いい対策案はないか?等のお困りのことがございましたらまずは税理士法人マインライフまでご相談ください。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の税理士として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 経験豊富な税理士が直接対応 少数精鋭体制で、常に経験豊富な税理士が対応。担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、1人当たりの担当件数も多く、実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 弁護士・司法書士・現地専門家との連携体制が整っており、海外財産や海外在住者の手続きに対応可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる申告業務だけではなく、納税資金対策や二次相続設計など、将来を見据えたオーダーメイド提案が得意です。 「海外の財産をどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第7章 まとめ いかがだったでしょうか? 国外財産調書は、海外に資産をお持ちの方にとって無視できない重要な制度です。 国外財産が5,000万円を超える居住者にとっては提出が必須です。 また、未提出や虚偽記載には加算税の加重や刑罰のリスクがあり、正しく提出していれば加算税の軽減という優遇措置も受けられます。 さらに、判定方法や評価の仕組みは複雑で、ローン・共有・相続財産など誤解しやすい点も多いため注意が必要です。 制度を正しく理解し、早めに対応することが何よりも大切です。もし少しでも不安があれば、ぜひ税理士にご相談ください。
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    国際相続サポート

    • 2026.02.15
    • 伊藤 千尋

    相続人の誰かが海外在住なら知っておきたい!7つの相続手続き!

    「相続人の1人が海外にいるのだけど、手続きはどう進めればいいのか…」 「期限までに終わらせられるか心配」 このような不安を抱える方は少なくありません。 私は税理士としてこのようなご相談を数多く受けてきました。 そして、ほぼ全てのご相談者は手続きのやり方や手順、必要な書類、注意点などを把握されていませんでした。 手続き一つ間違えると、大幅に納税額が増えることも・・ 相続人のうち誰かが海外に住んでいる場合は、注意が必要です。 日本国内だけの相続に比べて ① 手続きに時間と手間が大幅にかかる ② 海外の税法が関わってくる といった特徴があります。 実のところ、専門家の助けなしにご自身で相続手続きをすることは不可能と言ってもいいでしょう。 本記事では、相続手続きの全体の流れを押さえたうえで、海外在住の相続人が関与する場合に必要な手続きや注意点を詳しく解説します。 記事を参考にして、漏れなく、スムーズな手続きにつなげてください。 第1章 相続人が海外に在住している場合の一般的な相続手続きの流れ 以下の各Stepごとに解説をしていきます。 Step2、4、5、6、7は相続人の中に海外在住者がいるため特殊な手続きを要するものとなり、特に注意が必要です。 Step1 相続発生時 ・死亡届の提出 被相続人の死亡が確認された場合、まず必要となるのは死亡届の提出です。 死亡診断書(または死体検案書)を添えて、市区町村の役所に提出します。 【提出先】 ①死亡地 ②届出人の所在地 ③本籍地 のいずれかの市区町村 【提出期限】 「死亡の事実を知った日から7日以内」 ※提出が遅れると戸籍に正しく記載されず、相続登記や金融機関の手続きで支障が出るおそれがありますので、注意してください。 ・葬儀の準備 相続とは別に、現実的には葬儀の手配も同時並行で進めます。 葬儀の形式、日時、宗教・宗派の選定、会場予約、参列者への連絡など、短期間に多くの意思決定が必要です。 【葬儀費用について】 相続財産から支出することができます。 後の相続財産評価や遺産分割にも関係してくるので費用の明細書・領収書を保管が重要になります。 Step2 相続人の確定 ・戸籍の収集 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍・改製原戸籍含む)を集めます。 相続手続きをする上で、法定相続人を確定するためです。 戸籍の収集には郵送請求や専門家の代理取得も可能です。 ただし、発行には1週間〜2週間かかることもありますので時間には注意が必要です。 ・海外在住者の場合は日本国籍であれば戸籍取得可能 海外に在住している相続人が日本国籍を有している場合は、他の日本在住の相続人と同様に日本の戸籍を取得可能です。 そこに特別な手続きは必要ありません。 具体的には委任を受けた相続人代表や税理士、司法書士の専門家が郵送または役所の窓口で海外在住者の戸籍を取得することになります。 ・日本国籍がない場合は外国の公的書類を用いて証明する必要あり 海外で出生した方やすでに日本国籍を喪失している方のように日本国籍を有していない場合は、在住先の海外で取得できる公的な書類で相続人であることを証明していきます。 具体的には下記のような書類を用意します。 書類名 説明 外国の出生証明書(Birth Certificate) 被相続人と申立人が親子であることを示す基本資料です。公的機関発行の原本+日本語訳が必要になります。 外国の婚姻証明書 配偶者であることを示す場合に必要になります。(結婚証明書や登録記録) 外国の家族関係証明書または親族関係登録簿 国によっては「家族簿」などの制度があります。 宣誓供述書(Affidavit) 弁護士または公証人による宣誓文書です。家族関係の事実を記載します。 国籍喪失証明書(あれば) 帰化・国籍放棄などによる日本国籍喪失を証明します。 日本国籍がない場合には在住地で複数の書類を取得し間接的に相続人であることを証明する必要があります。 つまり、この手続きには時間がかかると言えます。 早め早めに手続きに取り掛かることが重要になってきます。 Step3 相続財産の調査 ・被相続人が保有していた財産や負担すべき債務の洗い出し 不動産、預貯金、有価証券、保険金、貸付金、ゴルフ会員権など、被相続人が所有していたすべての財産を網羅的に調査し、洗い出します。 負債(住宅ローン、借入金、未払税金など)も同様に確認が必要です。 【主な調査対象】 ・通帳 ・証券 ・契約書の確認 ・金融機関への残高証明請求 ・名寄帳 ※国外に財産がある場合 外国口座、不動産、海外法人株式などがある場合は、その国の制度や評価方法に基づいて名義変更手続き・評価する必要があります。 日本の税務当局に対しても適切な資料(翻訳含む)を添えて報告しなければならないため、現地の弁護士・税理士との連携も求められます。 国外財産がある場合のプロベート手続きについては以下のリンクで詳細に解説しております。 https://www.mine-life.jp/what-is-probate-working-flow-how-to-avoid-2 Step4 被相続人の債務が財産より多いことが懸念される場合/相続放棄・限定承認の検討 ・相続放棄(財産、債務ともに全く相続しない) 相続人は、被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ相続放棄を申し出ることができます。 これは相続財産がマイナスの場合(借金過多など)に有効です。 海外在住者は、署名証明書と在留証明書を取得し、郵送で申述することが可能です。 ・限定承認(財産の範囲で債務を相続する) 限定承認とは「プラスの財産の範囲で借金を引き継ぐ」という制度です。 これは、すべての相続人が一括して行う必要があります。 書類不備や一部の相続人の反対により実施困難となるケースもあります。 この手続きも相続人の死亡を知った日から3か月以内に原則行う必要があるのでご注意ください。 Step5 遺産分割協議 ・分割協議は全員一致が原則 遺産分割協議を行います。 遺産分割協議は、法定相続分を超えて自由に配分内容を決められるものです。そして、遺産分割協議には相続人全員の同意が前提となります。 一人でも署名しない、意思表示をしない場合には協議は無効となります。 ・海外在住者の署名と証明 海外在住の相続人は、遺産分割協議書に署名したうえで「署名(サイン)証明書」と「在留証明書」を現地の在外公館で取得し、日本に郵送する必要があります。 現地での本人確認、翻訳、公証などにも時間がかかるため、早めの準備が必要です。   「署名(サイン)証明」とは 署名証明とは、日本の印鑑証明書の代替として利用される書類で、本人が在外公館(日本大使館や総領事館)の面前で署名したことを証明するものです。遺産分割協議書や委任状などに添付します。 ● 取得方法(一般的な流れ) 手順 内容 ①予約 大使館・領事館のホームページ等から予約します。 (国によっては予約不要な場合もあります) ②持参書類 パスポート、必要書類の原本(協議書・委任状など)、現住所が分かるもの ③現地署名 大使館等で職員の面前で書類に署名を行います。 ④手数料の支払い 手数料は国や照明内容によって異なります。 ⑤証明書受領 その場で交付を受けられる場合と後日受領する場合があります。 なお、外国籍の相続人の場合には日本の大使館や領事館での手続きでなく、現地の公証人の面前でサインをすることで証明をすることになります。       「在留証明書」とは 在留証明とは、日本の住民票の代わりとして利用するもので、海外に住んでいること(現住所)を証明するものです。 ● 取得方法 手順 内容 ①予約 大使館・領事館に予約(署名証明と同時に取得できる場合が多い) ②持参書類 パスポート、現住所が記載された公的書類(運転免許書、公共料金請求書、住民登録カード等) ③申請・発行 申請書に記入して提出します。現住所が事実であることが確認された後に証明書が発行されます。 ④手数料 約10~20USD程度(国によって異なります) ⑤有効期限 原則として発行日から3か月以内に使うのが望ましいです。     ・委任状による対応 相続人の一部または全員が、弁護士や税理士などに委任状を発行することで手続きを代行してもらうことも可能です。 相続人が海外に在住している場合は、様々な手続きの都度「署名(サイン)証明書」が必要になるため相続手続きの一切を弁護士に委任することができます。 実務上はこの方法がスムーズであることが多いです。 ただし、委任状には「署名(サイン)証明書」を添付する必要があるため、初回委任時には大使館又は領事館での手続きが必要になります。 Step6 相続税申告 ・例え海外に住んでいても日本の相続税申告が必要になるケースが多い 被相続人が日本居住者である場合、相続人が非居住者(海外在住)であっても日本国内の財産だけでなく、海外財産も含めて課税対象となります。 ・日本での申告納税業務を代わりに行ってくれる人を選任する必要がある 相続税申告を行うにあたって、相続人が非居住者の場合には日本国内に納税管理人を置く必要があります。 通常は税理士、親族、信託銀行などが担当し、申告書の提出・税金の納付・連絡窓口として機能します。 なお、具体的な手続き方法は後述いたします。 ※被相続人の財産の中に有価証券がある場合には相続税とは別に所得税が課されることも 被相続人が1億円超の有価証券等を保有していた場合、その相続によって含み益が非居住者に移転することから、準確定申告時に所得税(譲渡とみなされる)を課されるケースがあります。 なお、具体的な内容は後述いたします。 Step7 名義変更手続き ・必要書類の整備 ①遺産分割協議書 ②戸籍謄本 ③印鑑証明(または署名証明書) ④登記識別情報 ⑤金融機関所定の相続手続き依頼書 などが必要です。 不動産は法務局、預金は銀行ごとに手続きが異なります。 ・海外在住者の手続き上の留意点 金融機関や法務局では、署名証明書の内容に厳格な様式を求めることもあり、記載ミスや形式不備による再取得が必要になることがあります。 <専門家からのアドバイス> スケジュール管理が重要!! 相続税の申告期限(10ヶ月)、相続放棄の申述期限(3ヶ月)、名義変更に伴う各種期限などが並行して走っているため、全体スケジュールを把握したうえで進行管理を行うことが極めて重要です。 特に海外とのやり取りを含む場合、郵送・翻訳・認証手続きの時間を見込んだ計画が不可欠です。 スケジュールを加味し、しっかりとしたスケジュールを組んでいきましょう。 第2章 相続人が海外在住のときの事例ごとの必要な手続きと流れ 相続人が海外に在住している場合、日本に在住している方のみが相続人の場合と異なり一般的な相続手続き通りに進めることができないケースも存在します。 この章では上記の一般的な手続きでは進められないケースについてより詳しく解説いたします。 2-1. 相続人と連絡が取れない・所在が分からない場合|不在者財産管理人選任/失踪宣告の検討 相続人の一人が海外にいて連絡が取れない、または長年所在不明である場合、他の相続人が勝手に手続きを進めることはできません。 このような場合、家庭裁判所で「不在者財産管理人」の選任を申し立てることで対応可能です。 【不在者財産管理人の役割】 ・申立先:不在者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 ・必要書類:申立書、不在者の戸籍附票(または不在の証明資料)、相続関係図、財産目録、申立人の戸籍謄本など 選任された不在者財産管理人(通常は弁護士)が、失踪中の相続人の代理として遺産分割協議に参加し、登記・名義変更・相続税申告などを行います。 【失踪宣告との違い】 失踪宣告(民法第30条)は、原則として「7年以上」音信不通の相続人について「死亡とみなす」制度です。宣告が確定すれば、その人物は法律上「死亡」扱いとなり、他の相続人で手続きを進めることができます。 2-2. 未成年・判断能力に問題がある相続人が海外在住の場合|特別代理人選任 相続人の中に未成年者や認知症などで判断能力のない者が含まれる場合、遺産分割協議は無効になります。 例え海外に住んでいる相続人であっても同様です。 特に親が子を代表しようとすると利益相反となるため、家庭裁判所に「特別代理人の選任申立て」が必要です。 【ポイント】 ・申立先:原則的には未成年者等の住所地を管轄する裁判所です。 国外に在住している場合に日本の家庭裁判所に緊急管轄が認められるかは個別に判断されます。 ・提出書類:申立書、戸籍謄本、財産目録、遺産分割協議案、陳述書等 ・選任者:一般的に利害関係のない親族または弁護士が選任されます。 ・報酬:家庭裁判所が定めます ・海外在住の子については、代理人の意思疎通のための通訳・翻訳が必要になることもあります。 ※認知症の場合は、別途「成年後見制度」の利用も検討が必要となります。 2-3. 遺言がある場合(公正証書遺言/自筆で検認要)|協議省略と手続き短縮のポイント 遺言書がある場合は、その内容によって遺産分割協議を省略できます。 特に海外在住相続人がいる場合には大幅な手続き短縮につながります。 【公正証書遺言】 ・家庭裁判所の検認が不要 ・登記、金融機関手続きに即時利用可 ・原本は公証役場に保管されているため紛失リスクも少 【自筆証書遺言】 ・検認申立てが必要(相続開始後速やかに家庭裁判所へ) ・添付書類:遺言原本、相続人全員の戸籍、申立書、収入印紙など ※2020年からは法務局による「自筆証書遺言の保管制度」も開始されています。 2-4. 海外から相続放棄したい場合|家裁への郵送申述・署名証明の実務 相続人が海外在住で相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に郵送で申述を行うことが可能です。 【必要な手続き】 ・申立先:被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 ・提出物:相続放棄申述書、署名証明書、在留証明書、パスポートの写し、収入印紙 ・署名証明書/在留証明書:在外公館(日本大使館・領事館)で取得 ・提出期限:相続の開始を知った日から3か月以内(例外あり) <専門家からのアドバイス> この章では特殊な相続手続きが必要となる事例について確認いたしました。 「遺言書がある場合」を除き、今回ご紹介したような事例に該当する場合には非常に手続きが複雑になります。 そのため、税理士だけでなく弁護士の先生など複数の専門家の関与が必要不可欠になります。 また、どの手続きも時間がかかる手続きが多く期限もタイトなためスケジュール管理も非常に重要になります。 相続が発生した時点で早急に専門家にご相談することをオススメします。 第3章 海外に住んでいても相続税の手続きは必要になる 相続人が日本に住んでいない、いわゆる「非居住者」であっても、日本国内に被相続人が住んでいた場合、日本の相続税法に基づく申告・納税義務は原則として生じます。 この章では、非居住者が行うべき税務上の手続きと注意点について記載します。 3-1. 日本に代わりに手続きしてくれる人を決めておく必要がある 【納税管理人制度の概要(相続税法第55条)】 非居住者は、日本の税務署に対して直接申告・納税を行うことができません。 そのため、日本国内に居住する「納税管理人(代理人)」を選任し、税務署へ届出る必要があります。 【実務的な流れ】 1. 納税管理人届出書(「相続税の納税管理人の届出書」)を記入 2. 添付書類として納税管理人の住民票(または法人の登記事項証明書)などを準備 3. 被相続人の最後の住所地を所轄する税務署に提出 4. その後の申告書類・連絡はすべて納税管理人を経由 【納税管理人としてよくある例】 • 国内に住む別の相続人 • 税理士 • 長年の顧問会計士や法律専門家 〈税理士のポイント〉 納税管理人は形式的な届出であっても、税務署とのやり取りや納付義務を負う立場になるため、信頼できる相手を選定する必要があります。 電子申告を行う場合には、実務上税理士が納税管理人となるケースがほとんどです。     3-2. 出国前に持っている株や資産に税金がかかることがある(国外転出時課税) 【国外転出時課税制度(通称:出国税)の概要】 国外転出時課税制度とは出国時に「その資産を譲渡した」と仮定し、含み益に対して所得税(譲渡所得)が課税される制度です。 ・対象者 以下の要件を全て満たす者が対象になります。 ①日本に居住する個人 ②出国時に1億円以上の有価証券や未決済デリバティブを保有している ③過去10年間のうち5年以上日本に居住していた ・本人が国外へ転出するときだけでなく相続・贈与でも対象になる ここでの出国とは「本人が国外へ転出する場合」だけでなく、「海外に在住している者への相続・贈与」でも適用されます。 具体的には下記のような場合が該当します • 被相続人:国内居住者、1.5億円分の株式保有 • 相続人:米国在住の非居住者 → この株式を相続すると、被相続人の最終所得として「含み益に対する所得税」が準確定申告で課税されます したがって、被相続人が有価証券を多額に持っていて相続人が海外に在住している場合にはこの制度の対象となるケースが多いです。 【国外転出時課税制度を適用されない方法】 この国外転出時課税制度の適用を免れる方法が2つあります。 ①納税猶予制度の利用する 以下の手続きを行えば、一定期間納税を猶予する制度を利用することができます。 • 納税管理人を届け出ている • 担保を提供している • 継続的な報告(継続適用届出書)を毎年提出 〈税理士のポイント〉 以下の場合には納税猶予は打ち切られ課税されてしまうのでご注意ください。 ・納税猶予の対象資産を非居住者が売却・贈与した ・帰国しないまま猶予期限を超過した ②海外相続人へ株式等を相続させないようにする 海外在住者が有価証券を相続しない内容で遺産分割協議を成立させれば、国外転出時課税を回避することができます。 なぜなら、海外に在住している相続人が有価証券を相続しなければ国外転出時課税制度の対象にならないからです。 遺産分割協議で国外転出時課税制度の適用を免れることができるようであれば検討しましょう。   〈税理士のポイント〉 遺産分割協議で国外転出時課税制度を免れるには、準確定申告の期限(相続開始後4か月)以内に協議が成立している必要があります。 なぜなら、準確定申告の期限を経過してしまうと法定相続分で分割されたものとして、海外相続人にも按分されたと見なされるからです。 遺産分割協議を確定申告させるまで4か月と非常に期間が短いので注意しましょう。     3-3. 要注意!海外在住者の場合使えない相続税の控除も 相続税申告には一定の要件を満たせば使うことができる特例があり、この特例を上手に利用することで相続税の負担を大きく軽減することができます。 一般的な控除・特例が海外在住者でも使えるか使えないか、ご自身で確認してみてください。   ① 小規模宅地等の特例 要件を満たせば財産を相続する相続人が海外在住者でも適用できます。 【対象となる非居住者】 • 日本国籍を有している • 日本居住者が適用する時と同様の各要件(継続保有等)を満たしている 【提出書類】 • 戸籍、相続関係図、遺産分割協議書 • 署名証明書(印鑑証明の代替) • 在留証明書(住民票の代替) ② 配偶者の税額軽減 非居住者でも配偶者であれば適用が可能です(国籍・住所不問)。 海外で結婚された場合には現地で取得した「婚姻証明書」を相続税申告書に添付するケースが多いです。 ③未成年者控除 原則非居住者も適用が可能ですが、被相続人・相続人ともに相続開始前10年超海外に在住しており、日本国内にある財産にのみ相続税が課される場合には適用が制限されるため注意が必要です。 〈税理士のポイント〉 控除が受けられるかどうかは、実際には個別具体的な事案により異なり判断は困難です。 場合によっては租税条約により二国間で特別なルールを設けている場合もあります。 必ずこれらの特例の適用を受けて申告をする場合には専門家に相談しましょう。   <専門家からのアドバイス> この章では相続人が海外に在住している場合に注意が必要な税務手続きを確認いたしました。 国外転出時課税制度や相続税の特例・控除など制度を知っているかどうかで何百万円も税負担が変わるものも多くあります。 また、どの手続きも期限がありもう少し早く相談してくれたらと思うことも多いです。 専門家の助けなしで全ての手続きを行うことは難しいので、早い段階で専門家にご相談することをオススメします。     第4章 相続人に海外在住者がいる場合には早期に専門家に相談を! 相続人の中に海外在住者がいる場合には早期に専門家に相談いただくことを強くオススメします。 なぜなら、ここまで確認してきたように相続手続きにおいて、相続人が日本国外に居住している場合、国内の相続人だけの場合と比較して「証明書の取得」「郵送の往復」「制度理解」などで時間と手間が大幅に増えるからです。 海外在住者が相続人の場合には、多くの見えない落とし穴があります。 専門家でも国際相続案件に普段から携わっていなければ対応は困難です。 私の経験でも、ちょっとした手続きの遅れで数百万円単位で納税が生じてしまうケースを何度も見てきました。 もう少し早く相談していただければ、と思ったことも一度や二度ではありません。 私たち税理士法人マインライフは、豊富な国際相続の経験と独自の国際的なネットワークを有しております。 「海外に資産がある」「海外に相続人がいる」「相続の手続きが全くわからない」など、お困りごとがあれば、まずはお気軽にご相談ください。 第5章 まとめ いかがだったでしょうか。 本記事では、相続人が海外在住である場合に、どのような場面で特別な手続きや配慮が必要になるのかまとめました。 国内だけで完結する相続と異なり、「国をまたぐ」ことによって法律・手続き・書類・税務など、あらゆる面において複雑性が加わります。だからこそ、早期の手続きと専門家との連携が極めて重要になります。 本記事を参考にしていただき、少しでも悩みごと、困ったことがある場合は、まずは専門家に相談してみてください。 皆さんの相続手続きがスムーズに、そして、未来につながる手続きになること
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    国際相続サポート

    • 2026.02.11
    • 門倉 誉士希

    海外の財産に相続税はかかる?日本との違いや注意点を専門家が解説

    「海外に財産がある場合、日本や海外で相続税がかかるのだろうか。」 「そもそも海外の相続税の仕組みはどうなっているのだろうか。」 海外に財産をお持ちで、ご自身に万が一があったときの税金についてご不安をお持ちですね。 結論を言うと、海外にある財産にも日本の相続税はかかる可能性が高く、海外の相続税はその財産の所在する国によります。 そして、近年日本の国税庁は、海外に財産をお持ちの方の相続税申告に漏れがないか、厳しくチェックをしています。 実際に、厳しい税務調査によって海外財産の計上漏れを指摘され、ペナルティ付きの多額の追徴課税を受け、数千万円単位の税負担を強いられたケースも存在しています。 しかもその数は1件や2件ではなく、毎年全国で多数存在するのです。 この記事では、海外に財産を持っている場合に日本や海外で相続税がかかることになるか、という点についてまとめました。 海外の財産にかかる相続税について知り、自分の財産をどこに置くことが理想なのか考えていきましょう。 1章 海外にある財産に日本の相続税はかかる?その基本と課税対象 結論、亡くなった方が日本人で過去10年以内に日本に住んでいた場合、または、日本人の相続人が過去10年以内に日本に住んでいた場合は、亡くなった方が海外に持っていた財産にも相続税がかかります。 以下は相続税の課税対象が日本国内の財産だけとなるか、海外にある財産も含まれるかの判断のためのフローチャートです。 1-1 海外にある財産でも、日本の課税対象になるケースがある このように、基本的にはほとんどのケースで海外にある財産が日本の相続税の対象となるのです。 逆にいえば、財産を持っている方とその相続人が日本人である場合は、そのどちらもが10年超日本に住んでいない状態でないと海外にある財産にも日本の相続税がかかる、ということになります。 1-2 「被相続人」と「相続人」の住所と国籍で変わる課税範囲 日本の相続税が海外の財産にもかかるかどうかは以下の表のとおり、亡くなった方とその相続人の居住地と国籍によって変わります。 日本の相続税がかかる範囲 ※1 外国人被相続人を除く 外国人被相続人…相続開始時に一定の在留資格を有するもの。 ※2 一時居住者を除く 一時居住者…相続開始時に一定の在留資格を有する者で、相続開始前15年以内の国内居住期間の合計が10年以下であるもの。 ※3 非居住被相続人の前提 非居住被相続人…相続開始前10年以内において、国内に住所を有していた期間中、継続して日本国籍がなかったもの。 ・海外財産を持つ日本在住の方が亡くなった場合は、その財産を相続する人がどこに住んでいたとしても日本の相続税の対象となります。(上記表のケース①、②) ・海外財産を持つ海外在住の方が亡くなった場合は、その財産を相続する人が日本に住んでいる場合は日本の相続税の対象となります。(上記表のケース③) ・亡くなった方もその財産を相続する人も海外に住んでいる場合は、その国籍や過去10年以内に日本に住んでいたかどうかで海外の財産にも日本の相続税がかかるかどうかが決まります。(上記表のケース④~⑲) ・なお、実際に日本の相続税がかかるかどうかは、亡くなった方の日本の相続税の対象となる財産(相続税の課税価格)が相続税の基礎控除(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を超えるかどうかで判断します。 1-3 海外に住んでいたとしてもほとんどのケースで日本の相続税からは免れられない このように、海外に住み、海外に財産を移したとしてもほとんどのケースで日本の相続税からは免れられない仕組みとなっています。 近年の税制改正により、海外に移住して日本の相続税がかからないようにしよう、という対策はより難しくなっています。 2章 財産が国内にあるか、海外にあるかはどう判断する?その原則、ルール その財産が日本の財産(国内財産)となるか海外の財産(国外財産)になるかの判定は財産ごとに以下の所在地により行います。 ちなみに、海外の財産にも日本の相続税がかかる場合、日本の財産の場合と同様に価値のあるものはすべて相続税の対象となります。 主な財産の所在地の判定場所 3章 国内財産、国外財産の判断の具体例 それでは、具体例を基に次の財産が国内財産となるか、国外財産となるかについて見ていきましょう。 【具体例】A銀行(本店は東京都)の北京支店にある普通預金 【判定】国外財産。受入れをした営業所の所在地が国外であるため。 【具体例】日本の証券会社を通じて購入したB社(本店はアメリカ)の株式 【判定】国外財産。B社の本店が国外であるため。 【具体例】C証券会社(本店はアメリカに所在)東京支店で購入した投資信託の受益証券 【判定】国内財産。信託の引受けをした営業所の所在地が国内であるため。 【具体例】D生命保険会社(本店はカナダ)からの死亡保険金(保険契約にかかる事務を行う営業所は東京都にある) 【判定】国内財産。保険の契約に係る事務を行う営業所や事務所が国内にあるため。(ない場合はD生命保険会社の本店が国外にあるため、国外財産となる。) このように財産ごとにその判定の基準となる所在地が異なるため、慎重な判断が必要となります。 4章 主要国別の相続税の課税ルール・ポイント 海外に財産がある場合は日本の相続税だけでなく、財産のある国において相続税がかかることがあります。 続いて、各国の相続税の概要についてみていきましょう。 4-1 アメリカの相続税(遺産税) ・特徴 アメリカには日本の相続税に相当する「遺産税」が存在します。 日本の相続税の納税義務者は「相続人」となりますが、アメリカの遺産税の納税義務者は亡くなった「被相続人」となります。 ・課税対象となる財産の範囲 被相続人がアメリカ市民かアメリカの居住者である場合→全世界の財産が遺産税の対象 被相続人が非居住者である場合→アメリカ国内の財産だけが対象 ・控除額(基礎控除) アメリカの遺産税も日本の相続税と同様に財産が一定の控除額を超えた場合に税がかかる仕組みとなっています。 アメリカの連邦遺産税の基礎控除額(2026年分)は1,500万ドルで1ドル150円の為替レートで換算すると22.5億円となります。 この控除額は日本の相続税に比べて大きなものとなりますが、遺産税の控除額は頻繁に変更されるため最新の税制を確認することが重要です。 ・税率 アメリカの遺産税の税率は累進課税となっています。 財産の金額が大きくなるほど税率も高くなります。 税率は最大で40%(2026年1月現在)となっていますが、遺産税の税率は頻繁に変更されるため最新の税制を確認することが重要です。 ・申告と納税期限 原則:相続発生日から9か月以内に申告と納税が必要 ・州の遺産税にも注意 アメリカでは国税としての遺産税の他に、州ごとに州税としての遺産税が存在します。 州の遺産税については非課税の範囲や税率が州ごとに異なるため、該当する州の法律を確認する必要があります。 国税の遺産税は控除額以下で発生しなかった場合であっても、州税の遺産税は発生する、ということもあります。 【「アメリカの相続税(遺産税)」についてはこちらの記事をご参照ください】 4-2 ドイツの相続税 ・特徴 ドイツには相続税があり、日本の相続税と同様に納税義務者は相続人となります。 ・課税対象となる財産の範囲 被相続人か相続人がドイツの居住者であった場合には全世界の財産が相続税の対象となります。 被相続人と相続人の両方がドイツの非居住者であった場合にはドイツ国内の財産のみが対象となります。 ドイツの居住者であるかどうかはドイツの税制に基づいて判断する必要があるため、慎重な検討が必要です。 ・控除額(基礎控除) ドイツの相続税も一定の控除額が設けられておりますが、被相続人との続柄等によりその控除額と税率が異なる仕組みとなっています。 ・税率 ドイツの相続税の税率は累進課税となっています。 財産の金額が大きくなるほど税率も高くなります。 税率は最大で50%(2026年1月現在)となっています。 ・申告と納税期限 相続税の対象となる財産の移転があった場合→原則的にその事実を知ったときから3か月以内に税務当局に対して届出を行う必要があります。 届出後税務当局から通知が到着→通常、通知後1か月以内に申告する必要があります。 申告後、納税額の決定通知書が到着→通常、通知書が届いてから1か月以内に納税期限が到来します。 4-3 シンガポール シンガポールには相続税はありません。 過去には日本の相続税に相当する「遺産税」がありましたが、2008年2月15日以後の死亡について廃止されました。 また、シンガポールにはキャピタルゲイン(資産の売却益)に対する課税もありません。 4-4 香港 香港には相続税はありません。 4-5 中国 中国には相続税はありません。   世界的に見ると、相続税が無い国は意外と多いのです。 続いて、日本と海外の相続税の両方がかかってしまった場合の対処法について解説します。 5章 要注意!海外財産の相続で発生しうる「二重課税」のリスクとその回避策 亡くなった方が日本に住んでいた場合等は海外にある財産についても日本の相続税がかかること、また、海外においても相続税がかかる国があることを説明してきました。 この相続税のルールは各国で定めているため、海外にある財産に対して日本の相続税と海外の相続税の両方がかかってしまう「二重課税」の問題が生じることがあります。 【例】 ドイツに住んでいるドイツ国籍の人が、ドイツに3億円の預金、日本に2億円の不動産がある状態で亡くなった場合 ドイツの相続税→その全ての財産5億円(ドイツにある3億円と日本にある2億円)が対象 日本の相続税→日本にある財産2億円については日本の相続税の対象 さらに、相続人が日本に住んでいる場合は、原則的に日本においても全ての財産5億円が日本の相続税の対象 【イメージ図】 このように、各国の税金が二重でかかってしまうことを「二重課税」といい、これを防ぐために「外国税額控除」という方法があります。 6章 二重課税を合法的に回避する「外国税額控除」制度とは? 「外国税額控除」とは、簡単に言うと、「海外でも日本でも税金を払うことになったとき、日本の税金から海外で払った分を引ける制度」です。 海外の財産にその所在する国の相続税がかかった場合には、その税額を日本の相続税から控除することができる、ということになります。 具体例を示すと以下のようになります。 【例】 前提:日本に住んでいる方が、日本に7億円の財産、海外に3億円の財産がある状態で亡くなった。相続人は日本に住んでいる子ども1人。 日本の相続税:全世界の財産(10億円)に対して日本の相続税4億円が発生 海外の相続税:海外にある財産(3億円)に対して財産所在国の相続税1億円が発生 この場合、全世界の財産にかかる日本の相続税4億円から、外国税額控除によって海外の財産にかかる海外の相続税1億円を差し引き、残りの3億円だけを納めることとなります。 【イメージ図】 一方、日本の財産に海外の相続税がかかった場合には、その税額を日本の相続税から控除することができません。したがってその場合には、海外の相続税額からその国の外国税額控除のルールに基づいて日本の相続税額を控除できるかを検討することとなります。 日本の相続税申告で外国税額控除の適用を受ける場合、その控除額は以下のうち、いずれか少ない金額となります。 ・海外で支払った相続税相当額 (上記例の場合は海外の相続税1億円) ・日本で支払う相続税のうち海外財産が占める割合分の金額 (上記例の場合は、日本の相続税4億円×海外財産3億円/全世界財産10億円=1.2億円) この「外国税額控除」の適用を怠ると、税金を2重で払ったままとなってしまうため、忘れずに適用を受けることが大切です。 【「外国税額控除」についてはこちらの記事をご参照ください】 7章 海外資産の相続税評価における基本的な原則と評価基準 海外の財産が日本の相続税の対象となる場合、海外の財産も日本の財産と同様に基本的には「財産評価基本通達」という一定のルールに基づいて評価します。 しかし、この「財産評価基本通達」は日本の財産を評価することを前提に作られているため、海外の財産にはそのまま使えないことがあります。 その場合には売買実例価額や精通者意見価格等を考慮して評価することとなります。 具体的には、専門家の鑑定額等をベースに評価を行うこととなります。 8章 国際相続に強い税理士がこれだけは伝えたい特に重要な5つのポイント(注意点) 弊社は国際相続にかかる相続税申告を多数手がけておりますが、海外に財産がある場合の相続税の手続きにおいて特に伝えたい重要なポイントは以下の5つです。 ・海外の財産も日本の相続税の対象となるかの判断 日本の相続税を計算する上では、海外の財産も対象となるか、日本の財産だけが対象となるかを判定することが重要です。これによって日本の相続税額が大きく変わることもあります。 ・海外財産の評価 海外の財産の評価は日本の財産の評価と異なり、特殊な判断が必要となります。 財産によっては海外財産が所在する現地の専門家に鑑定を依頼する必要がある場合もあります。 ・外国税額控除 海外財産に対して2カ国以上の相続税がかかっている場合には二重課税を排除するため外国税額控除の適用を検討する必要があります。 ・優秀な現地(海外財産の所在地)の専門家とつながること 日本の相続手続きを依頼している弁護士や相続税申告を依頼している税理士を経由して現地の優秀な専門家とつながることがポイントとなります。 海外財産の所在する国で相続税の申告が必要となった場合、現地の弁護士や会計士等と連携をして申告書を提出する必要があります。 ゼロからいきなり海外の専門家とつながることは困難であるため、日本の相続手続きを依頼している専門家を通して現地の優秀な専門家とつながることが重要です。 ・日本の相続税の申告・納税期限を守ること 海外に財産があったとしても、相続税の申告・納税期限までに申告書の提出と延納等の手続きをすることにより、税金の負担を最小限に抑えることが重要です。 海外の財産を解約し、財産を手にするには1年~2年程度の期間がかかることが通常です。 一方、日本の相続税の申告・納税期限は相続の開始があったことを知った日から10か月以内となります。 そして、この期限を過ぎてしまうとペナルティの税金がかかることとなります。 海外の財産については、期限までにその相続税の納税資金が確保できない状況も想定されます。 その場合においても、相続税の申告・納税期限までに手続きを行い税金の負担を最小限に抑えることが重要です。 9章 海外が絡む相続税でよくある3つの Q&A  Q:海外に引っ越せば日本の相続税はかからなくて済むの? A:必ずしもそうとは限りません。 現状の日本の相続税のルールでは、被相続人と相続人の双方が日本国籍で、かつ、過去10年超日本に住んでいない場合、海外の財産には日本の相続税はかからないこととなっています。 しかし、海外に引っ越してそこに10年超住み続けるということには、生活・ビザ・家族・仕事・健康保険・年金など税金以外の様々なハードルがあります。 また、近年の税制改正の経緯としては「税金回避目的の海外移住」を封じるような制度強化が行われてきており、今後もこの傾向は続くものと想定されます。 加えて注意すべきなのは、仮に海外に引っ越して10年超が経過したとしても、日本にある財産は日本の相続税の対象となるという点です。 実際には、海外移住を検討したものの断念をした、というケースが多数となります。 Q:海外の財産はどのように把握する? A:遺言書、通帳、契約書、本人の生前の記録・メールなどを通じて、地道に調査します。 海外の銀行口座や証券口座は、日本のように戸籍等を出せば開示されるわけではなく、現地の法制度に従う必要があります。特にプロベート制度を要する国(アメリカ・イギリスなど)では、裁判所の承認なしには情報が開示されないことが多いため、時間も手間もかかります。 【「プロベート手続き」についてはこちらの記事をご参照ください】 Q:海外財産の申告漏れがあった場合、どんなペナルティがある? A:海外財産の申告漏れがあった場合、自主的に修正申告・納税を行った場合には、利息的な性質である延滞税のペナルティの税金が生じます。税務署から申告漏れの指摘を受けた場合は延滞税に加えて過少申告加算税等のペナルティの税金が生じます。 10章 まとめ 海外の相続税は国際相続に強い税理士に相談しよう 海外に財産がある場合の相続税は、被相続人や相続人の住んでいる場所や国籍、財産の所在地がどこにあるかによりその課税関係が異なります。 日本の相続税だけでなく海外の相続税がかかることもあり、その手続きは非常に複雑になります。 日本の相続税に関する知識だけでなく、海外財産が所在する現地の専門家と連携することも重要です。 相続税の手続きを問題なく進めるためには、まずは国際相続の実績のある日本の税理士のサポートを受けることをおすすめします。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。 年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 「海外にある財産の相続手続きをどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 共に海外財産の相続対策の第一歩を踏み出しましょう。
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    国際相続サポート

    • 2026.02.02
    • 久保 佑介

    海外在住の子・孫への贈与~相続時精算課税制度は使えるか~

    「相続時精算課税制度」を利用してお子様・お孫様へ贈与をお考えのあなた 海外在住でも適用が受けられるか心配されていませんか? 実際のところ、通常の要件を満たせば相続時精算課税制度は受けられます。 本記事では、海外在住の受贈者(贈与を受けた者)でも日本の相続時精算課税制度の適用が受けられるのか、 そして、制度を利用する際の注意点について海外税制を踏まえて解説します。 ぜひ記事を読んで、相続時精算課税贈与を行う際の参考にしてください。 第1章 受贈者(贈与を受けた者)が海外在住の場合に相続時精算課税制度は使えるか?  結論、海外在住であっても相続時精算課税制度は使えます。 相続時精算課税制度は、親から子や孫への生前贈与について、「贈与した時点では一定額まで贈与税がかからず、相続が発生した時点で相続税でまとめて精算する」という仕組みです。 相続時精算課税制度についてはこちら(税理士が教える!贈与税がかからない合法テクニック8選「第3章」へ) 日本に住んでいなければ利用できないわけではなく、たとえ受贈者が海外在住であっても相続時精算課税制度の要件さえ満たせば利用可能です。 〈相続時精算課税制度の要件〉 ➀贈与者(あげる人): 60歳以上の父母または祖父母 ➁受贈者(もらう人): 18歳以上の子または孫 ➂手続き:「相続時精算課税選択届出書(一定の書類を添付)」を提出する ※年齢は贈与を行った年の1月1日時点で判定します。 ただし、海外在住者が関与する場合には、税務署に対して納税管理人を定める必要があり、通常の手続きと異なる注意点があります。 第2章 海外在住の子どもに贈与する場合の注意点 海外在住者への贈与はその手続きが日本居住者の場合と異なるケースがあります。以下の点には特にご注意ください。 2-1 納税管理人の届出が必要 海外に住む子どもなどが贈与を受ける場合、日本国内に納税管理人を選任し、税務署に「納税管理人届出書」を提出する必要があります。 納税管理人とは、納税の手続きを代理で行う存在です。例えば、海外に住んでいる人が日本で納税をする必要がある場合に納税管理人の選任が義務付けられています。 ・提出先: 海外在住者が贈与税の申告をする場合は、住所を管轄する税務署がありません。 自分で日本国内のどこかの税務署を定めてそこに届出することになります。 実際には、納税管理人の住所に合わせることが多いです。 ・納税管理人: 誰でもなれる。 日本に住む親族、信頼できる知人、または税理士が選任されるケースが多い。 ・役割: 納税管理人は、申告書の提出や税金の納付など受贈者に代わって税務署とやり取りする法的な窓口となります。 2-2 添付書類を提出することが必要 相続時精算課税制度を使う場合、届出書とともに以下の添付書類を提出する必要があります。 「戸籍謄本・抄本・その他の書類」(次の内容を証する書類) ①受贈者の氏名、生年月日 ②受贈者が贈与者の子・孫などであること ※海外在住者であっても準備する書類に違いはありません。 ※外国籍の場合にはその他の書類(宣誓供述書など)で証明する必要があります。 ※戸籍は日本語なので翻訳は不要ですが、外国語書類は日本語訳を添付する必要があります。 2-3 海外での税務報告義務(米国の場合はForm 3520) 米国に住む子どもなどが日本から贈与を受けた場合、受贈者はForm 3520をIRS(アメリカ内国歳入庁:日本でいう国税庁に相当)に提出しなければなりません。 ・提出基準: 年間10万ドル(1,500万円(150円/1ドル))を超える米国非居住外国人からの贈与を受けた場合に義務発生。相続時精算課税で多額の贈与を受けるケースでは該当することがあるため留意が必要です。 ・提出期限: 翌年4月15日(延長申請をしていれば延長後の期限まで) ・罰則: 未提出の場合、贈与額の最大25%に相当するペナルティが課されることがあります。 したがって、日本側で贈与税をきちんと申告しても、米国側での報告を怠れば重大なリスクを抱えることになります。 2-4 将来相続時に状況が変化し納税義務が発生 相続時精算課税制度は、親から子や孫への贈与について、贈与時点での税負担を軽減し、相続時にまとめて精算する制度です。 将来贈与者に相続が発生した場合、相続時精算課税制度の適用を受けた子どもなどについて相続時の納税義務が贈与時と異なる場合は注意が必要です。 贈与時は全世界に課税される者であったが相続時は日本財産のみに課税されることとなったケース(例 贈与後に贈与者が海外移住し10年超経った場合) 相続税の納税義務の判定では、海外在住者は日本財産のみ課税となることとなるが、相続時精算課税制度により取得していた贈与財産については日本の相続税の申告納税義務が生じる。 →相続時には日本の財産を取得せず、本来相続税の納税義務がない場合であっても、過去の贈与により納税義務が生じるケースとなるため要注意です。 2-5 国外転出時課税制度の対象になる可能性 海外在住者へ贈与を行う場合、国外転出(贈与)時課税制度の対象になることがあります。 国外転出(贈与)時課税制度とは、時価1億円以上の有価証券等を保有している日本居住者がその有価証券等の一部でも海外に住んでいる人へ贈与した場合には、時価により譲渡があったものとしてその含み益に所得税が課税される制度です。 ・対象者(贈与者)の要件: 1 過去10年以内に5年超、日本に住所または居所を有していた 2 贈与時に有価証券等の対象資産を1億円以上保有している  ・対象資産: 上場株式、非上場株式、公社債、投資信託などの金融資産(預貯金や不動産は対象外)。 ・課税内容: 含み益に対して贈与時に譲渡したものとみなし課税されます。 例えば評価額1億円・取得価額5,000万円の株式を贈与すれば、5,000万円の含み益に課税される仕組みです。 留意点は贈与する財産の金額で判断するのではなく、贈与時に有価証券等の対象資産を1億円以上保有しているか否かで判定することです。 上記の例においてたとえ贈与する有価証券等が5,000万円であっても贈与者が対象資産を1億円以上保有していれば当該制度の対象になります。 第3章 海外税制との関係と二重課税 海外在住の子どもに日本から贈与を行う場合、「二重課税」と「税務報告義務」に留意する必要があります。 贈与税は日本国内だけで完結するものではなく、受贈者の居住国でも課税や報告が必要となるケースが少なくありません。ここでは代表的な国別の取り扱いと、租税条約の有無による調整について解説します。 3-1 贈与税が課される国・課されない国 各国の贈与税課税、その対象、留意点は以下の通りです。 国・地域 課税有無 課税主体・特徴 非課税枠等 実務上の留意点 日本 あり 贈与者が日本居住者なら受贈者が海外でも課税 相続時精算課税2,500万円の特別控除 受贈者が海外居住なら納税管理人の届出必須 米国 なし (受贈者側) 贈与税は贈与者が負担。受贈者は非課税。ただしForm 3520の提出義務あり 非課税枠はなし(報告義務は10万ドル超) 未提出で最大25%の罰金。二重課税は発生しないが報告義務違反リスク大 ドイツ あり 受贈者居住地主義。居住者は国外からの贈与にも課税 親子間40万ユーロの非課税枠 日本と二重課税になるが条約で調整不可 シンガポール なし 贈与税制度自体が存在しない ― 日本の贈与税のみ対象。 二重課税なし 香港 なし 贈与税制度自体が存在しない ― 日本の贈与税のみ対象。 二重課税なし (1)米国の場合 ・贈与税の課税主体は「贈与者」であり、受贈者(子どもなど)には課税されません。また、贈与者が米国非居住外国人である場合には課税対象外のため米国贈与税はかかりません。 ・ただし、外国から年間10万ドルを超える贈与を受けた場合には、Form 3520の提出義務があります。 ・つまり、日本で贈与税を納めても、米国側で追加課税はありませんが、報告義務違反に伴うペナルティリスクが大きい点が特徴です。 (2)ドイツの場合 ・ドイツは受贈者居住地主義を採用しており、居住者が国外から贈与を受けた場合も課税対象となります。 ・贈与税率は相続税と同じで、親子間なら免税枠は40万ユーロ。これを超える部分には最大30%の税率が適用される可能性があります。 ・したがって、日本で贈与税を納めても、ドイツでも課税されることがあり、二重課税が生じます。 (3)贈与税が課されない国(例:シンガポール・香港) ・シンガポールや香港などの国では贈与税そのものが存在しません。 ・この場合、日本での贈与税のみが問題となり、二重課税リスクは回避されます。 3-2 租税条約による調整の可否 日本は、相続税及び贈与税に関する二重課税の防止等のための条約として、米国との間でのみ「遺産、相続及び贈与に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約」(日米相続税条約)を締結しています。その他二国間での二重課税が生じている場合には外国税額控除で調整をすることが可能です。 外国税額控除についてはこちら 第4章 国際相続(贈与)は「税理士法人マインライフ」へ 国際相続は、国内相続とは比べものにならないほど複雑で、専門家の存在が成功の分かれ道となります。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 経験豊富な専門家が直接対応 少数精鋭体制で、常に経験豊富な税理士が対応。担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、1人当たりの担当件数も多く、実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 弁護士・司法書士・現地専門家との連携体制が整っており、海外財産や海外在住者の手続きに対応可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる申告業務だけではなく、納税資金対策や二次相続設計など、将来を見据えたオーダーメイド提案が得意です。 「国際相続・贈与をどう扱えばいいのかわからない」「外国税額控除を受けたいが手続きに不安がある」―― そのようなときは、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 最初の一歩を踏み出すことが、複雑な国際相続を解決へ導く最大のカギとなります。 第5章 まとめ ここまでの章において受贈者が海外在住の場合でも、相続時精算課税制度の利用は可能ですが、以下の注意点を挙げてきました。 ・納税管理人の届出 ・添付書類の整備 ・居住国での税務報告義務 ・将来相続時の納税義務 ・国外転出時課税との関係 また、居住国によっては、海外の税務報告や二重課税リスクもあります。 したがって、「日本での贈与税申告」+「海外での税務報告(申告)」 を両輪で進めることが重要です。 実務的には、日本と海外双方の制度に精通した税理士や現地専門家に相談し、手続きの漏れや課税リスクを回避することが最善の対応となります。
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    国際相続サポート

    • 2026.01.28
    • 伊藤 千尋

    海外移住で相続税は避けられる?10年ルールの真実と今後の改正動向

     「海外に移住すれば相続税を払わなくて済む」と耳にしたことがある方もいるでしょう。 実際に日本の相続税では、「被相続人及び相続人が10年超海外に住んでいると、一部の財産を除いて日本の相続税が課されない」というルールがあります。 このルールを「10年ルール」といいます。 しかし、実際には国内に残した不動産や預金は課税されますし、今後の税制改正も大きく影響します。 この記事では「10年ルール」の基本と注意点、海外移住で本当に相続税が避けられるのか、さらに今後の税制改正の可能性までわかりやすく解説します。 第1章 相続税の「10年ルール」の3つのポイント 結論からいうと「10年ルール」により相続税を回避するためには以下の3つのポイントを満たす必要があります。 この章ではその3つのポイントについて解説します。 1-1 相続開始前10年超海外に居住している 「10年ルール」により相続税を回避するには、相続開始前10年を超えて日本に住所がないことが要件になります。 なお、日本に住所があるかないかの判定は個別に判断をすることになります。 例えば、日本と海外を行き来している場合には、実質的な生活の拠点が日本にあるのか海外にあるのかを判断し判定をします。 つまり、見かけではなく実態として日本に生活の拠点があると考えられた場合には日本に住所があるものとして課税がされることになります。 1-2 被相続人だけでなく相続人も海外に移住している 「10年ルール」により相続税を回避するには、被相続人(亡くなった人)と相続人(財産を受け取る人)の両方が海外に相続開始前10年を超えて住んでいたことが要件になります。 (相続人が外国籍の場合は相続人が海外に10年を超えて住んでいた要件は必要ありません) 例えば被相続人(父)が相続開始前10年超海外に住んでいたとしても、相続人(子)が日本に住んでいた場合は、原則日本国内にある財産にも海外に所在している財産にも日本の相続税が課されることになります。 つまり、国外移住により日本の相続税を回避するためには相続人も含め家族全員で海外に移住する必要があります。 1-3 財産も全て日本国外にある 「10年ルール」により相続税を完全に回避するには、財産も全て国外に持ち出す必要があります。 例えば、国内の不動産・銀行預金・日本企業の株式(日本の証券会社でなどは、移住の有無にかかわらず相続税の対象となります。 なぜなら、どんな場合でも、日本国内の財産は日本の相続税の課税対象となるからです。 つまり、海外移住により完全に相続税を回避するためには、財産も全て国外に持ち出す必要があります。 ただし、有価証券を海外に持ち出す場合には「国外転出時課税」の適用を受ける可能性があるので注意が必要です。 1-4 フローチャート 海外移住した後に相続が発生した場合に日本の相続税が課されるかどうか」をフローチャートにまとめると次のようになります。 第2章 海外移住だけで相続税回避は難しい では、この「10年ルール」を使い容易に日本の相続税は完全に回避することができるかというと、現実には難しいです。 この章ではその理由を簡潔に記載します。 2-1 「10年を超える居住」だけでは完全に相続税回避はできない 海外移住だけで完全に相続税が回避できるかというと、当てはまらない場合があります。 例えば、日本に財産を残している場合です。 確かに「相続開始前10年を超えて海外に住んでいれば、国外財産には相続税がかからない」というルールは存在します。 しかし、前述したようにこれは「国外財産」に限定される話であり、日本国内に残した財産には相続税が課税されます。 【事例】 母がフランスに12年間住んで亡くなりました。 相続人である娘もフランスに母と同じ12年間フランスに住んでいます。 財産がフランスの銀行預金:5000万円と東京のマンション:8000万円だったとします。 フランスの銀行預金(国外財産):日本の相続税はかかりません。 東京のマンション(国内財産):相続税が課税されます。 このように、海外移住をしても「日本に財産を残している限り、相続税ゼロ」にはならないのです。 2-2 帰国後に亡くなった場合、実質上の居住地の問題、税制改正により相続税が回避できない場合がある 「10年ルール」を満たそうと海外移住しても安心ではなく、相続税が回避できない場合があります。 それぞれのリスクをまずは認識しておくことが重要です。 ・帰国リスク 父が海外に11年住んだ後に帰国し、その数年後に亡くなった場合を考えてみましょう。 この場合、日本に住所があるとみなされ、国外財産も相続税の課税対象となる可能性があります。 つまり「一度帰国したらリセットされる」というイメージです。 ただし、帰国前に10年ルールを満たした状態で財産を贈与した場合には、日本の贈与税は課税されません(もっとも、移住先の国で贈与税等が課される可能性はありますのでご注意ください)。 また、帰国後に亡くなった場合であっても、すでに贈与済みの財産については相続税の課税対象にはなりません。 ・居住地リスク 完全に帰国をしていなくても、頻繁に日本に一時帰国している場合や親族が日本に居住している場合には、課税当局から日本居住者と認定されてしまう可能性があります。 つまり、形式的に海外に住所を移しただけでは日本国内に住所がないとはされません。 ・税制改正リスク 詳しくは後述しますが、富裕層が相続税の回避を目的に海外に移住するのを防ぐために度々税制改正が行われています。 改正の度に要件は厳しくなっていますので、今後も税制改正によりルールが変わってしまうリスクを移住前に認識しておく必要があります。 2-3 海外移住で相続税を回避する上で考慮すべき点 海外移住によって一定のメリットがあるのは事実ですが、それを「相続税ゼロ」に直結させることはできません。 相続税を完全に回避するには、さまざまな制約があるからです。 そのため、相続税を回避するためにはあらかじめ対策をしておく必要が出てきます。 具体的には次のような点を検討する必要があります。 ・財産を国内に残すかどうか 国内に不動産や預金を残していると相続税が課税されるため、すべて国外に移すかどうかが大きな分かれ道となります。 ・移住先国の税制や日本との租税条約の有無 例えばシンガポールは相続税がない国として知られていますが、世界にはアメリカや日本のように相続税が課される国もあります。 したがって、日本の相続税を回避したとしても移住先で相続税が課されてしまうケースもあります。 また、アメリカやフランスのように日本と相続税に関する条約を結んでいる国では、二重課税を防ぐ仕組みがあります。 一方、条約がない国では二重課税のリスクがあります。 ・名義変更手続き 実は海外に移住していた人の相続が発生した場合には、名義変更の手続きに多くの労力と時間がかかります。 現実には言語や現地の法律の問題もあるため一般の方が独力で手続きするのは不可能です。 そのため、専門家に依頼する必要があり、相続税とは別の費用がかかってしまうことになります。 相続が始まる前に「財産を贈与する」、「信託を使う」など承継方法を工夫することで、名義変更の手続きの負担を和らげることができますが、税金とは別の視点で考慮すべき論点です。 ・相続発生のタイミングと移住の時期をどう調整するか 相続開始(被相続人の死亡時)にどこに住んでいるかが重要なので、移住の計画を立てる際には「10年超」という時間軸を逆算して考える必要があります。 まとめると、「海外に移住すれば大丈夫」という単純なものではなく、「どこに住むか」「財産をどこに置くか」「承継の手続きをどうするか」を総合的に考えてはじめて、効果的な相続税対策になるのです。 第3章 10年ルールは変わるか?今後の税制改正の可能性 例え現状は「10年ルール」の要件を満たすことができると考え、海外移住を検討又はすでに海外移住していても、そもそものルールが変わってしまう可能性もあります。 この章では今までの改正の経緯と今後の改正の可能性を解説します。 3-1 日本の税制改正の経緯と今後の考察  相続税のルールは過去から何度も改正されており、海外移住による相続税回避は年々難しくなっています。 もともと日本では、相続人や被相続人が日本国籍を持っているだけで、国外財産も含めて課税されるという非常に広い課税範囲が適用されていました。 しかし、グローバル化の中で海外に生活の拠点を移す人が増え、「国外財産まで日本が課税するのは厳しすぎる」という国際的な批判も出てきました。 しかし、この国籍課税を単純に廃止して、死亡時の居住地でのみ判断をすると相続開始前に短期間だけ海外に移住して国外財産を課税対象から外すという租税回避行為が容易にできることになってしまいます。 そこで課税範囲を一部制限する仕組みとして「5年ルール」が導入されました。 この「5年ルール」では、相続開始前5年以内に日本に住所がある場合は国外財産にも課税されるという内容でした。 しかし、この「5年ルール」を導入しても、実際には富裕層が相続開始前に短期間だけ海外に移住して国外財産を課税対象から外すという事例が相次ぎました。 こうした“抜け道”が広がった結果、2017年の改正で「5年ルール」が「10年ルール」へと延長され、課税逃れが難しくされたのです。 つまり、日本の相続税法は「海外移住による課税逃れを防ぐ方向」に改正され続けており、今後も同じ流れで厳格化が進む可能性が高いと言えます。 3-2 国際的な課税権の動向 日本と同じように相続税(遺産税)を課している国がどのような仕組みになっているかも、今後の改正の可能性を考察するうえで重要になります。 例えば主要国では下記のようになっています。 ・イギリス イギリスでは相続開始前過去20年のうち15年イギリスに居住していた場合には、イギリスに住んでいる者と同様にイギリス国外の財産にも課税されます。 ・フランス フランスでは相続人が過去10年のうち6年フランスに居住していた場合には、フランスに住んでいる者と同様にフランス国外の財産にも課税されます。 ・アメリカ アメリカでは過去の居住期間に応じた取り扱いをしておらず、相続開始時の身分で米国市民(米国に住所がある者)はアメリカ国外の財産にも課税がされます。 したがって、アメリカのように居住期間にかかわらず死亡時だけで判断をする国もあれば、イギリスのようにより長期の期間で判断をする国もあります。 日本よりも長期の居住期間で課税対象の判断をしている国もあるため、日本も同様により長期間で判断することになる可能性は十分あるといえます。 3-3 海外移住を考えるなら税制改正を考慮すべき 制度は今後さらに厳格化される可能性があるため、『将来の改正』を前提に行動することが重要です。 「今は国外財産が課税されない」としても、将来的に再び課税範囲が広がる可能性は十分にあります。 前述したように実際過去にも「5年ルール → 10年ルール」と改正が繰り返されてきました。 ポイントとしてこのように改正があった場合には、相続発生時のルールが適用されることになります。 弊社にご相談があったお客様の中にも、「移住した際には5年ルールだったので5年間であればと相続税の回避を目的に移住したものの途中で10年に期間が延長され相続税は諦めて住みやすい日本に帰国した」という方もいらっしゃいます。 したがって、「今は大丈夫だから」と安心せず、数年先を見越して海外移住は検討する必要があります。 相続税制度は「抜け道をふさぐ方向」に歴史的に改正されてきており、今後も海外移住による回避はますます難しくなると考えられます。 第4章 よくあるQ&A Q1 一時帰国しても大丈夫? 結論:短期間の一時帰国であれば直ちに課税対象になることはありません。 例えば夏休みに数週間だけ帰国して日本の実家に滞在する程度であれば、日本に「住所」があるとは見なされません。ただし、1年の大半を日本で過ごす、住民票を戻す、子どもを日本の学校に通わせるなど生活の拠点が日本にあると判断されると、「日本居住」と扱われるリスクがあります。つまり滞在期間よりも「生活実態」が重要です。 Q2 10年経過したが、日本に帰国したい場合はどうなる? 結論:帰国後に相続が発生すれば、日本の居住者として課税されます。 例えば、父が海外に12年住んだ後に日本に帰国し、3年後に亡くなった場合、亡くなる直前は日本居住者ですので、国内外の財産すべてが日本の相続税の対象になります。したがって、海外移住の「10年ルール」で非課税になっていても、帰国した時点でリセットされるイメージです。 Q3 国籍は日本のままでも適用される? 結論:国籍だけで直ちに課税されることはありませんが、日本国籍者はルールの影響を強く受けます。 相続開始前10年を超えて海外に住んでいる日本国籍者であれば、国外財産は原則課税対象外です。 ただし、日本国籍を持っていると生活の拠点は日本にあるのではと疑われる傾向があります。 国籍を保持するかどうかは税務だけでなく生活全般に関わる大きな判断なので、専門家に相談しながら検討すべきテーマです。 Q4 被相続人、相続人ともに海外に移住したが、それぞれの家族が日本にいる場合は? 結論:日本に残る家族が相続人に含まれていれば、その人には日本の相続税がかかります。 例えば父(被相続人)がアメリカに10年以上住んで亡くなり、相続人の子2人のうち1人はアメリカ居住、もう1人は日本居住だったとします。 この場合、日本に住む子が相続する部分については、日本の相続税の対象になります。 つまり「家族全員が海外居住」でなければ、国外財産も含めて完全に課税を避けることは難しいのです。 Q5 相続税の二重課税になるケースはある? 結論:ありますが、外国税額控除で調整できる場合があります。 例えば、父がアメリカに住んでいてアメリカの不動産を相続した場合、アメリカでも相続税(Estate Tax)がかかり、日本でも課税される可能性があります。 こうした二重課税を避けるために「外国税額控除」という仕組みがあり、海外で支払った相続税を日本の相続税額から差し引けるケースがあります。 ただし、控除には限度があるため、全額が相殺できるとは限りません。 申告も煩雑になるため、国際相続に詳しい税理士に依頼するのが安心です。 第5章 国際相続は「税理士法人マインライフ」へ 国際相続は、国内相続とは比べものにならないほど複雑で、専門家の存在が成功の分かれ道となります。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 「海外の財産をどう扱えばいいのかわからない」「外国税額控除を受けたいが手続きに不安がある」―― そのようなときは、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 最初の一歩を踏み出すことが、複雑な国際相続を解決へ導く最大のカギとなります。 第6章 まとめ いかがだったでしょうか。 今回のコラムを通じて、「海外に移住すれば相続税を避けられる」という単純な話ではなく、10年ルールには厳格な条件があり、国内財産は必ず課税されること、そして制度改正や国際的な課税強化の流れから今後ますます回避が難しくなることをご理解いただけたかと思います。 特に、次のような点が重要です。 ・被相続人と相続人の双方が10年を超えて海外に居住している必要がある ・日本にある財産は移住の有無にかかわらず課税される ・帰国や国籍の保持によって課税対象が広がるリスクがある ・将来の改正でさらに厳格化される可能性が高い つまり、「移住だけで相続税を回避できる」と考えるのは危険であり、資産の置き場所や移住先国の制度、国際的な動きを含めて総合的に検討することが欠かせません。 また、国際相続は制度の違い・言語の壁・申告期限の厳しさなどから、放置すると大きなトラブルに発展するリスクがあります。したがって、相続や移住を検討する段階から、できるだけ早めに専門家に相談することが安心につながります。  
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    相続対策, 国際相続サポート

    • 2026.01.25
    • 久保 佑介

    日本からアメリカへ生前贈与/ケース別でわかる税金・手続き

    「日本の相続対策として生前贈与を活用したいけど、子どもがアメリカに住んでいると難しいのかな」 「アメリカの税金のことはよくわからないし」 生前贈与を相続対策として検討している方からのご質問でした。 日本にいる子供だけでなく海外にいる子どもにも平等に生前贈与を行いたいとの要望でしたが、いままでに生前贈与を海外にいる子どもへ行ったことがないため、どうしたら良いのかと悩まれておりました。 ご安心ください。国際的な贈与は注意しなければならない点はもちろんありますが、計画的に準備を行うことで安心して生前贈与を行うことが可能です。 本記事では、アメリカに住んでいる方への贈与についてのポイント・贈与税・相続税の取り扱いを専門家の視点を踏まえ解説しております。 あなたの不安を解消しますので、ぜひ最後まで読んでください。 第1章 アメリカへの生前贈与の3つのポイント 「財産を渡す側(贈与者)=日本居住」「財産を受け取った側(受贈者)=アメリカ居住」の生前贈与の3つのポイント 日本居住者からのアメリカ居住者への生前贈与は以下3つのポイントに留意する必要があります。 ポイント①日本の贈与税 財産を渡す側(贈与者)が日本居住であれば、財産を受け取った側(受贈者)がアメリカ居住でも、原則として全世界の贈与財産に日本の贈与税が課税対象となります。 受贈者は基礎控除(年間110万円)を超える場合には日本での贈与税申告が必要です。 受贈者が日本非居住者(アメリカ居住者)なので納税管理人(※下記<専門家の視点①>)の選任も必要となります。 ポイント②アメリカの贈与税(連邦税) 財産を渡す側(贈与者)が「アメリカの非居住者・非市民」なので、アメリカ国内の不動産などを贈与したときはアメリカ贈与税の対象となります。 贈与者は年間基礎控除(受贈者1人当たり19,000米ドル(2025年))を超える場合にはアメリカでの申告が必要となります。 ただし、無形財産(預金・株式などの有価証券)は、アメリカ贈与税の対象となりません。 また、州によっては州税としての贈与税が存在します。 連邦税としての贈与税はかからなくても、州税としての贈与税はかかることもあります。州税については、現地の専門家と連携し確認を行う必要があります。 ポイント③アメリカの報告義務 アメリカ居住者である財産を受け取った側(受贈者)は、外国人からの贈与の合計が年間10万米ドルを超えるとForm 3520の報告が必要となります。 ただし、授業料・医療費の学校・医療機関への直接支払は除外となります。 アメリカの手続き(贈与税申告・Form 3520の報告) 贈与額(USD) 贈与税申告 Form 3520の報告 $19,000未満 不要 不要 $19,000〜$100,000 要 不要 $100,000超 要 要 ※贈与税申告が必要な場合においてもアメリカ贈与税は一般的には生じません。(後述:第2章 具体例②)   <専門家の視点👉> ①日本の納税管理人の選任・届出 海外に住む子どもなどが贈与を受ける場合、日本国内に納税管理人を選任し、税務署に「納税管理人届出書」を提出する必要があります。 提出先:海外在住者が贈与税の申告をする場合は、住所を管轄する税務署がありません。 自分で日本国内のどこかの税務署を定めてそこに届出することになります。 実際には、納税管理人の住所に合わせることが多いです。 納税管理人:誰でもなれる。日本に住む親族、信頼できる知人、または税理士が選任されるケースが多い。 役割:納税管理人は、申告書の提出や税金の納付など受贈者に代わって税務署とやり取りする法的な窓口となります。 ②アメリカ贈与税の課税の対象となる財産(財産の種類で異なる) 贈与者がアメリカ非居住外国人(アメリカ市民ではなくアメリカに住んでいない人)である場合、そもそもアメリカ贈与税の対象はアメリカ国内の財産のうち無形財産以外に限られます。 無形財産:預金、株式・債券等の有価証券など 無形財産以外:不動産、現金など したがって、日本からアメリカへの生前贈与の多くのケースである預金の贈与ではアメリカの贈与税は課税されないこととなります。 ③アメリカの報告義務(Form 3520) アメリカに住む子どもなどが日本から贈与を受けた場合、「Form 3520」をIRS(日本の国税庁に相当する機関)に提出しなければなりません。 提出基準:年間10万米ドルを超えるアメリカ非居住外国人からの贈与を受けた場合に義務発生。 提出期限:翌年4月15日(延長申請をしていれば延長後の期限まで) 罰則:未提出の場合、贈与額の最大25%に相当するペナルティが課されることがあります。 したがって、日本側で贈与税をきちんと申告・アメリカでの贈与税がかからない場合でも、報告を怠れば重大なリスクを抱えることになります。   <財産の種類別「日本×アメリカ」早見表> (前提:贈与者=日本居住(アメリカ非居住外国人)、受贈者=アメリカ居住) 贈与する財産の種類・所在地によって両国の税金・手続きが以下の通り変わることになります。 贈与財産 ①日本の贈与税 (受贈者) ②アメリカの贈与税 (贈与者) ③Form 3520 (受贈者) 日本の不動産 課税対象(国内財産) 対象外 $100,000超なら提出 アメリカの不動産 課税対象(国外財産) 対象(アメリカ内不動産) →申告が必要 $100,000超なら提出 預金の送金 (日本口座) 課税対象(国内財産) 対象外 $100,000超なら提出 預金の送金 (アメリカ口座) 課税対象(国外財産) 対象外(無形資産) $100,000超なら提出 現金 (アメリカで手渡し) 課税対象(国外財産) 対象(アメリカ内で手渡し) →申告が必要 $100,000超なら提出 授業料・医療費 (学校・病院へ直接支払) 生活費・教育費の“通常必要”なら日本も原則非課税 対象外 Form 3520不要   第2章 アメリカへの生前贈与のよくある具体例(贈与税について) 「財産を渡す側(贈与者)=日本居住」「財産を受け取った側(受贈者)=アメリカ居住」の生前贈与の具体例 ここでは、日本居住者からのアメリカ居住者への生前贈与をよくある具体例を基に各国の「贈与税」を確認していきます。 具体例①:預金の海外送金「110万円」 ①日本の贈与税:申告不要 / ②アメリカの贈与税:なし / ③Form 3520:不要 ① 日本の贈与税 贈与者が日本居住のため、原則、全世界の贈与財産が課税対象となります。 贈与税:110万円 − 基礎控除110万円 = 0円(申告不要) ※年間の贈与額が110万円を超えない年は申告不要。 ② アメリカの贈与税 贈与者はアメリカ非居住外国人(アメリカ非居住・非市民)で、贈与した預金は無形財産。 アメリカ贈与税の対象はアメリカ国内の不動産などの無形財産以外に限られるため課税されません。 ③ Form 3520 アメリカ非居住外国人からの贈与が年間100,000米ドル超で提出義務が発生します。 110万円は100,000米ドル以下であるため不要。   具体例②:預金の海外送金「1,500万円」(100,000米ドル超(145円/1米ドル)) ①日本の贈与税:(受贈者)申告・納税必要 / ②アメリカの贈与税:なし / ③Form 3520:(受贈者)必要  ① 日本の贈与税 贈与者が日本居住のため、原則、全世界の贈与財産が課税対象となります。 贈与税額:366万円 ※税額:1,390万(1,500万円−基礎控除110万円)× 40% − 190万 = 366万円 (注)続柄や他の贈与の有無で税率は変わる場合があります。 申告・納付:受贈者は翌年3/15までに日本で申告・納付する必要があります。 受贈者は日本の非居住者のため、納税管理人の届出書をあわせて提出。 <専門家の視点👉> 生前贈与を一括で行わない相続対策の検討(贈与税率の観点) 例えば半額の750万円の贈与の場合には贈与税額は102万円となります。日本の贈与税率は累進課税(一回の贈与額が大きいほどに税負担が大きい)のため検討の余地があります。 ② アメリカの贈与税 贈与者はアメリカ非居住外国人(アメリカ非居住・非市民)で、贈与した預金は無形財産。 アメリカ贈与税の対象はアメリカ国内の不動産などの無形財産以外に限られるため課税されません。 <専門家の視点👉> もしアメリカ内不動産などのアメリカ国内財産の贈与であれば、年間基礎控除(19,000米ドル(2025年))を超えるため、アメリカ贈与申告が必要になります。 なお、日本人贈与者には「統一移転税額控除(日本人は特例的に適用あり)」という約20億円の大きな控除(一定の調整計算が必要です)が認められるため贈与税はめったにかかりません。 ③ Form 3520 アメリカ非居住外国人からの贈与が年間100,000米ドル超で提出義務が発生します。 100,000米ドルを超えるため提出が必要となります。 <専門家の視点👉> 不提出は贈与額の最大25%に相当するペナルティが課されることがあります。 アメリカ贈与税がかからない場合は特に手続きが漏れるケースが散見されますので確実に提出するようにしましょう。   第3章 アメリカへの生前贈与のよくある具体例(相続税について) 「財産を渡す側(贈与者)=日本居住」「財産を受け取った側(受贈者)=アメリカ居住」の生前贈与の具体例 第2章で確認した生前贈与のその後を各国の「相続税(アメリカ遺産税)」で確認していきます。 日本・アメリカの両国ともに生前贈与された財産は、のちに贈与者に相続があった場合には相続財産に加算して相続税(アメリカ遺産税)を計算することになります。 日本では、原則死亡前7年以内の贈与が相続税に加算され、既に納めた贈与税は相続税から控除します。 アメリカでは、生前の課税贈与(1977年以降)を原則すべて遺産税の計算基礎に合算し、既に納めた贈与税は遺産税から控除します。 具体例①:預金の海外送金「110万円」 ①日本の相続税 死亡が贈与後7年以内の場合には生前贈与の110万円を相続時の亡くなった人(被相続人)の遺産に加算して(贈与はなかったものとみなして)相続税を計算します。 死亡が贈与後7年超の場合には生前贈与の110万円を遺産に加算する必要はありません。 ②アメリカの遺産税 贈与財産(預金)は無形財産で、生前贈与時点ではアメリカ贈与税の課税対象外です。 したがって相続時にアメリカ側の生前贈与分の持ち戻しは通常生じません。 <専門家の視点👉> 日本の相続税は贈与から7年経過しているか否かにより贈与財産を遺産に加算するかどうか取り扱いが異なります。 言い換えると生前贈与の相続対策は、贈与時から7年経過して初めて効果を発揮します。 よって将来を見据えて早めに相続対策を行う必要があります。   具体例②:預金の海外送金「1,500万円」 ①日本の相続税 具体例①と同様に贈与時から7年を経過しているかにより相続税の計算が異なります。 贈与後7年以内の場合には、すでに納付した贈与税(366万円)を相続税の一部に充てることができます。 ②アメリカの遺産税 具体例①と同様に相続時にアメリカ側の生前贈与分の持ち戻しは通常生じません。   実際には、皆さまが検討している生前贈与の金額に応じて日本・アメリカの税額・手続きを検討していくことになります。日本・アメリカ両国とも生前贈与の金額によって、とるべき手続き・税額も異なってくることに留意する必要がございます。特に生前贈与の金額が多額になるケースについては専門家へ相談する必要出てくるでしょう。   第4章 国際相続・贈与の相談は「税理士法人マインライフ」へ 贈与が国際間をまたぐものであるため手続きが複雑になるかもしれない・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。   マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 国際相続の経験が豊富な専門家が直接対応 少数精鋭体制で、経験豊富な税理士が必ず対応。 担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告・対策に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、相続に特有の実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 海外の専門家との連携体制が整っており、海外の財産や海外在住者の手続きに対応が可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる税計算だけではなく、納税資金対策や二次相続対策など、将来を見据えたオーダーメイドの提案が得意です。 「生前贈与を行いたいけれど子どもがアメリカに住んでいるからどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第5章 まとめ いかがだったでしょうか。 相続対策としてアメリカに住んでいる子どもへの生前贈与の活用を検討中のあなたも留意点や具体的な税金のイメージが湧いたのではないでしょうか。 アメリカ居住者への贈与についての3つのポイント「①日本の贈与税」「②アメリカの贈与税(連邦税)」「③アメリカの報告義務」を解説しました。 また、具体例に基づき「贈与税・相続税」の税額を解説しました。 実務的には、当然ですが皆さまが検討している生前贈与の金額に応じて日本・アメリカの税額・手続きを検討していくことになります。 そこで大切になるのは日本とアメリカ双方の制度に精通した税理士や現地専門家です。 手続きの漏れや課税リスクを回避するためにも専門家への相談が最善の方法になります。
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    国際相続サポート

    • 2026.01.23
    • 川崎 朝輝

    相続税の外国税額控除とは?制度概要と日本で適用する手続きの全体像

    「父がアメリカで購入したマンションや株式を相続することになった。日本の相続税とアメリカの相続税の二重課税を回避する方法があるらしいけど」 海外に財産がある相続では、日本と海外の両国で相続手続きが必要になります。 調べていくと「外国税額控除」という制度の存在を知ることになりますが、仕組みが専門的で複雑なため、「自分の場合に本当に使えるのか」「二重課税は避けられるのか」と迷ってしまうことも多いでしょう。 そうなんです。外国税額控除は初めての方にはとても分かりづらい制度です。 でも、海外と日本の両方で課税される可能性がある相続において、「外国税額控除」は二重課税を調整するために欠かせない大事な仕組みなのです。アメリカにある財産を日本に住んでいる人が相続した場合などは、実際に両国で課税されることがあり、その調整のために活用できるのが「外国税額控除」です。 もっとも、外国税額控除があれば全てが解決するわけではありません。控除できるのは海外にある財産に対応する「日本の相続税額」が上限であり、米国の州税のように対象外となる税金もあります。 また、日米租税条約によってアメリカでは超富裕層でなければ相続税がかからないケースも多く、そもそも二重課税自体が発生しない場合も少なくありません。 アメリカ以外の国で考えるとフランスやドイツのように相続税が発生しやすい国もあれば、シンガポールのように相続税が存在しない国もあります。 つまり、「外国税額控除」の適用については現地で相続税が発生しているのか、二重課税になっているのかということも考える必要があります。 本記事では、相続税における外国税額控除の基本と、その限界や注意点をわかりやすく解説します。 控除を使えるのに使わないのはもったいないです。 「使える控除は必ず使う」ための知識を身につけてください。 第1章 相続税の外国税額控除とは 相続税の外国税額控除とは、同じ財産に対して日本と外国の両方で相続税がかかるときに、二重課税を調整するための制度です。 この制度を理解する上で、まずは相続税の外国税額控除の目的や仕組みを整理します。 1-1 制度の仕組み 【日本の相続税の課税方法】 日本では、亡くなった方や相続人が日本に住んでいる場合、国内の財産だけでなく海外の財産も含めて相続税の対象になります。(全世界課税) 【相続税の外国税額控除の制度趣旨】 財産が相続税制度のある国に所在し、その国でも相続税が課される場合は、二重課税になります。 そこで日本では、外国で支払った相続税を日本の相続税から差し引けるようにしており、その調整の仕組みが「相続税の外国税額控除」です。 【例外】 日本国内の財産は日本で課税されるべきものと考えられているため控除の対象外です。さらに海外の財産についても、日本でその財産に課される相続税の金額が限度になります。 この「限度」については、後ほど計算方法とともに解説します。 1-2 二重課税は本当に起きるのか(アメリカ/他国事例) 実は、外国の相続税制度の関係で二重課税にならないことも多いです。 相続税の外国税額控除が必要になるのは、日本と外国の両方で相続税が課されるときなので二重課税になっていなければ適用する必要がありません。 そのため、まずはその国において相続税が課税されるのかを確認することが必要です。 代表的な国について整理します。 アメリカの場合 アメリカでは、非居住者(米国内に住んでいない人)が米国内に財産を持っていると原則相続税が課されます。ただし非居住者の基礎控除は6万ドルしかありません。 ところが、日米相続税条約によって、日本人にも米国市民と同じ大きな基礎控除(2025年時点で約1,400万ドル)が認められます。 (この基礎控除額については改正が多く、金額も大きく変動しますのでご注意ください。) そのため、超富裕層でない限りアメリカで相続税が課されることにならず、結果的に二重課税は発生しないことが多いのです。 二重課税がなければ相続税の外国税額控除を使う必要はありません。 ただし、注意点もあります。アメリカには連邦税とは別に州ごとの相続税制度があります。 しかも、日本の相続税と州税が重なっても、外国税額控除の対象にはなりません。これは、相続税の外国税額控除の対象は「外国の国税」に限られているからです。 アジアの場合 シンガポールや香港などでは、そもそも相続税制度自体が存在しません。現地で課税されることはなく、日本の相続税のみがかかることになります。 したがって、外国税額控除を使う必要はありません。 欧州の場合 フランスやドイツなどは相続税(遺産税)が多くのケースで課税されることになっており、日本に住む相続人にも課税されることがあります。 この場合、日本でも相続税が課税され、さらにフランスやドイツでも相続税が課税されるため、相続税の外国税額控除の適用を受けることになります。 このように、国によって相続税の制度は様々です。まずは亡くなった方が所有していた財産がある国において相続税が発生するかの確認をするようにしましょう。 1-3 計算方法と「日本の相続税が限度」となる考え方 それでは、相続税の外国税額控除の計算方法とその考え方について解説します。 外国税額控除は、海外にある財産についてその国で支払った相続税に相当する税金を控除できます。ただし、その財産に対応して日本で課税される相続税の金額が限度となります。 算式で表すと以下の通りです。 【相続税の外国税額控除の計算】 ※①と②のいずれか少ない金額 ①海外で支払った相続税に相当する税金(外国の国税に限る) ②日本の相続税額 ×(海外にある財産の金額 ÷ 相続財産全体の金額) ②は海外にある財産について日本で課税される相続税を計算しています。 少し複雑なので具体的な金額を用いて確認します。 前提 ・相続財産の合計:1億円(国内7,000万円+国外3,000万円) ・日本の相続税額:1,000万円 ・外国で支払った相続税額:400万円 ➀ 400万円 ➁ 1,000万円 ×(3,000万円 ÷ 1億円)= 300万円 →控除できるのは少ない方の②300万円となります。 この図の通り、②は国外財産に対してかかる相続税額を計算しています。 外国税額控除を適用した後、日本で支払う相続税は 1,000万円 − 300万円 = 700万円 です。 このケースでは、国内財産に対応する相続税だけを日本で納めることになります。 もし、①の外国で支払った税額をそのまま全額控除してしまうと、国内財産に対応する相続税まで差し引くことになり、制度の趣旨に反することになります。 計算の方法について、確認できたと思いますので次章では実際に外国税額控除の適用を受けるための手続きや注意点について解説いたします。 第2章 外国税額控除の実務と注意点 外国税額控除を受ける場合でも、日本の相続税申告と同時に進める必要があります。 海外の手続きに時間がかかったとしても日本の相続税の申告期限は変更されませんので、注意してください。 2-1 相続税の申告と手続きの流れ 相続税の外国税額控除の適用を受ける場合は、相続税申告と同時に手続きを行います。 申告の際には、相続税申告書の「第8表(外国税額控除に関する明細書)」に必要事項を記載し、添付して提出する必要があります。 なお、日本の相続税申告は原則として相続開始から10か月以内が期限ですのでご注意ください。 【相続税申告書第8表】 (出典:国税庁)         さらに、その財産が所在する国で課税されたことを証明する書類、例えば現地の申告書や課税証明書、納税証明書などを添付する必要があります。 これらは外国語で発行されるため、通常は日本語訳を付けて提出します。 2-2 外国税額控除の制度を適用する場合の注意点 既に触れた内容もありますが、相続税の外国税額控除を利用する際には、次の点に特に注意が必要です。 ① 控除の対象は国外財産のみ 外国税額控除の対象となるのは、国外にある財産にかかる相続税です。 日本国内にある財産については、日本で課税されるのが原則であり、控除の対象にはなりません。 ② 州税や地方税は対象外 アメリカなど一部の国では、連邦税に加え、州ごとに独自の相続税が課される場合があります。 しかし、外国税額控除の対象は「外国の国税」に限られるため、州税や地方税については日本で控除することはできません。 このため、州税が課された場合には、日本の相続税と二重に負担するケースもあります。 ③ 海外の申告書類の準備が不可欠 外国税額控除を適用するには、その国で相続税を支払ったことを証明する書類(課税証明書や納税証明書)を添付しなければなりません。 海外の申告や証明書の作成が遅れると、日本の申告期限に必要書類が間に合わないことがあります。 したがって、現地の専門家(税理士・会計士・弁護士など)と連携して書類を揃えることが実務上不可欠です。 第3章 外国税額控除でよくある質問(Q&A)  Q1. 日本の申告期限(10か月)に海外の課税証明が間に合わない場合は? 間に合わなくても控除は可能です。 まずは外国税額控除の適用を受ける前の金額で一度日本の相続税申告書を期限内に提出し、その金額で納税します。 その後、海外の課税証明が発行できた段階で、更正の請求を行い還付を受けることが可能です。 日本の相続税の申告期限は相続開始から10か月ですが、海外の期限は必ずしも一致せず、税金の確定まで長い時間を要する場合もあります。 海外の手続きは時間がかかることが多いため、早めに現地の専門家と連携し、スケジュール管理を徹底することが重要です。   Q2. 外国で支払った税金はどの為替レートで換算しますか? 原則としてその外国で納付すべき日のTTS(対顧客電信売相場)で円換算します。 通常は国内から送金した日のTTSも使えますが、送金が大きく遅れた場合は注意が必要です。   Q3. 相続に関連して発生した税金はすべて外国税額控除の対象になりますか? すべての税金が控除できるわけではありません。あくまで控除の対象は「相続税に相当する税」に限られます。 国によっては相続手続きの際に消費税や不動産取得税に相当する税金が課される場合もありますが、相続税に相当するものではないため控除の対象外です。判断が難しいケースもあるため注意が必要です。   Q4. 日本と違って、亡くなった人の遺産そのものに課税される国の場合は控除の対象になりますか? 亡くなった人の遺産そのものに課税される国(アメリカやフランスなど)であっても、日本の相続税に相当すると認められる税であれば外国税額控除の対象になります。 日本の相続税は「相続人ごと」に課税されますが、国によっては「被相続人の遺産全体」に課税されます。方法が違っても、その性質が相続税に相当すれば控除の対象となります。   Q5. 相続税の計算上、控除できる債務がある場合はどのように計算しますか? 国外財産については、その財産に対応する債務を差し引いた後の価額を用います。国内財産についても同様に債務控除後の価額を基準にします。 つまり、相続人が実際に引き継ぐ純粋な価値部分をもとに外国税額控除を計算します。 第4章 相続税の外国税額控除の適用がある場合は、国際相続に強い税理士の支援が必要 相続税の外国税額控除は、単に日本の相続税を計算するだけでは適用できません。 海外の課税証明書や現地申告書類を揃える必要があり、現地の専門家との連携が不可欠です。 そのため、海外に財産がある相続の場合には、国際案件に強い税理士に相談することが大事です。 ① 税理士にも得意・不得意分野がある 相続業務を日常的に扱っていない税理士も多く、中には年に1件も相続案件を担当していないという税理士も存在します。特に海外が関係する相続となると、いままでまったく経験がない税理士も多く、思わぬトラブルや遅延の原因となり得ます。 税理士であれば誰でもいいということはなく、実績や専門性を見極めて依頼することが大切です。 ② 各国の法律や制度が異なり、現地の専門家との連携が必要なこともある 国ごとに制度が異なるため、日本国内だけでは完結できない手続きが発生することがあります。 国際相続に強い税理士であれば、現地の弁護士や会計士と連携できるネットワークを持っているケースが多く、安心して任せられます。 経験のない税理士に依頼すると、自分で現地の専門家を探す必要に迫られることにもなりかねません。 ③ 国際相続でなくてもタイトなスケジュールがさらにシビアに 相続税の申告期限(10か月以内)は海外の手続きがあるからといって延長されません。海外の手続きはかなり時間がかかり、準備や判断の遅れが致命的になり得ます。 こうしたケースに慣れた税理士でなければ、期限に間に合わないリスクが高まります。 ④ 状況に応じた柔軟で迅速な判断と対応が求められる 海外の申告や手続きなどはその国の法律が関係し、国際相続は一筋縄ではいかないことがほとんどです。 その都度、適切に判断し、書類の整備や申立て方法を柔軟に変更できるかどうかが結果を左右します。 国際相続の経験が豊富な専門家であれば、こうした事態にも迅速・的確に対応でき、スムーズに手続きを進めることができます。 第5章 ご相談は、信頼と実績の「税理士法人マインライフ」へ 海外に財産があり、その国でも税金が発生する??―― そのような難しいケースでも、最適なサポート体制が弊社には整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 「海外の財産をどう扱えばいいのかわからない」「外国税額控除を受けたいが手続きに不安がある」―― そのようなときは、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 第6章 まとめ いかがでしたでしょうか。ここまで、相続税の外国税額控除について解説してきました。 ・相続税の外国税額控除は、日本と外国の両方で相続税が課された場合に二重課税を調整する制度。 ・二重課税は必ずしも発生せず、アメリカやアジアでは課税がないケースも多い一方、欧州では二重課税が起きやすい。 ・控除額は①外国で支払った税額と②日本側の算式で算出した額のうち少ない方が上限。 ・国内財産や州税・地方税は対象外であり、控除できるのは「外国の国税」に相当する税金に限られる。 ・申告には「第8表」への記載と海外の課税証明の添付が必要で、日本の申告期限は相続開始から10か月。 ・実務では為替換算や期限のズレ、対象税目の判定など複雑な点が多く、海外の専門家との連携が不可欠。 海外に財産がある相続は、一般の相続以上に準備や判断が難しくなります。外国税額控除を正しく適用し、損をしないためにも、国際相続に強い税理士に早めに相談することをおすすめします。
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    国際相続サポート

    • 2026.01.20
    • 伊藤 千尋

    知らなきゃ損する!海外口座の相続手続きガイド

    「海外に預金口座がある場合、相続手続きはどう進めればいいのか――。」 近年は海外赴任や留学、移住などで海外の銀行口座を開設する方が増えています。 帰国時に解約するケースもありますが、金利や利便性の面から、口座を残したまま日本に戻る方も少なくありません。 しかし、いざご家族が亡くなったとき、海外口座は日本の預金口座と同じ手順では進まないのが実情です。 国によっては裁判所の手続き(プロベート)が必要になったり、翻訳・認証(アポスティーユ等)を求められたりして、想定以上に時間と手間がかかることが多いです。 このコラムでは、海外の預金口座を相続する際の一般的な手続きについてわかりやすく解説しますが、実際に手続きを行う際には国際相続に精通した専門家に依頼することを強くおすすめいたします。 第1章 国によって異なる海外口座の相続手続き 海外口座の相続は、ざっくり言うとプロベート手続きが必要なものと不要なものの2タイプに分かれます。 また、国のルールに加えて、銀行や各自治体(州など)が定めたルールを把握する必要があります。 1-1 プロベートが必要な国 アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、香港、シンガポールなどの国では、銀行が相続人だけの申告で払い戻しをしてくれないことが多く、裁判所でプロベート手続きが必要になります。 そのため相続発生時には、相続人は ① 口座情報の把握・受取人指定の有無の確認と、金融機関への死亡連絡(口座凍結) ② 現地裁判所でプロベート(遺産清算手続)を申立て、権限を証明する書面を取得 ③ ②の裁判所で取得した書面+死亡証明書等を金融機関へ提出し、払戻し・解約・相続人(または遺産)名義への移管/送金を実行 という手続きを踏んで、口座の相続を行なっていきます。 プロベートとは、裁判所が遺言の有効性や遺産管理の権限(遺言執行者・遺産管理人)を確認し、遺産の管理・分配を公的に進めるための手続きです。 ※プロベートの詳しい概要は下記の別記事で解説しています。 https://www.mine-life.jp/what-is-probate-working-flow-how-to-avoid-2 1-2 プロベートが不要(または中心ではない)国 フランス、ドイツ、イタリアなどのEUでは、裁判所のプロベートではなく、現地の公証人に依頼をして、相続人であることを証明する書類(相続証明書(Certificate of Heirship)や欧州相続証明書(European Certificate of Succession)等)を作成して、それらをベースに銀行手続きが進むことが多いです。 そのため相続発生時には、相続人は公証人を通じて、 ① 金融機関へ死亡の連絡をして、口座の入出金停止(凍結)を行う ② 相続人の確定と、解約(払戻)に必要な書類を整える(例:日本では、「被相続人・相続人の戸籍謄本等」、「印鑑証明書」、「遺言書」または「遺産分割協議書」など) ③ 金融機関所定の相続書類(払戻請求書/相続届など)と②の書類を提出し、解約・払戻(相続人代表口座への振込等)を実行 という手続きを踏んで、口座の相続を行なっていきます。 1-3 国のルールに加えて、銀行や各自治体での運用ルールも把握が必要 同じ国でも、銀行や各自治体(州など)によって運用が違うのは海外相続でよくあることです。 たとえば、以下のようなものがあります。 ・残高が小さいと「簡易手続き」が使えるケースがある ・共同名義口座は形態により自動的に共同名義人が相続することになるケースがある つまり最初にやるべきは、「日本の相続の常識」で突き進むより、その預金に必要な手続きを見極めることです。 次章以降、海外に口座を保有している方が亡くなった場合に実際に取るべき手続きを順に追って解説していきます。 第2章 海外口座の相続でまず確認したいこと この章では、相続が発生した際にまず確認すべきことを解説していきます。 2-1 相続の基本情報を確認する 相続手続きにおいて「相続人は何人いるのか」、「財産はどのようなものがあるのか」、「財産はどこにあるのか」等の基本情報を最初に整理しておくと、銀行・専門家への相談が一気に進みます。 ・亡くなった方と相続人の関係・人数 被相続人の出生から死亡までの戸籍情報を取得し、法定相続人を確定していきます。 ・財産が所在している国・種類 どのような財産がどの国にあるか整理します。 ・名義(単独名義・共同名義など) プロベート国では特に、共同名義・受取人指定(POD/TOD等)があると手続きの方法が変わることがあります。 2-2 手続きと相続税のスケジュールを確認する 海外に財産がある場合には、日本の相続税の申告期限等とのスケジュール管理が重要になります。 日本の相続税は、死亡を知った日の翌日から10か月以内に申告が必要です。 一方で、プロベートが必要な国は10か月以内に現金化まで終わらないことも普通にあります。 なので、実務では、 ・「海外口座の名義変更・解約・送金」が終わる時期の目安を置く ・終わらない前提で、相続税申告にどう織り込むか(評価資料の取り方、申告の仕方)を先に決める という順番で進めるのが安全です。 第3章 海外口座の名義変更とお金の受け取り方を確認する 日本の銀行口座の相続手続きは「戸籍の一式」と「遺言書又は分割協議書」を提出すれば手続きを進めることができますが、海外口座の相続は、「戸籍を出せば終わり」という話になりにくいのが特徴です。 ポイントは、その国がプロベート(裁判所手続き)が必要な国か/不要な国かで、銀行に求められる“手続きの型”が変わるということです。 ここでは、実際にお金を受け取るまでに押さえるべき流れを、3つに分けて解説します。 3-1 海外の銀行に出す書類を確認する 海外の銀行が確認したいのは、次の3点です。 「①亡くなった事実」「②相続人は誰か」「③誰に払ってよいか」 この3点を示すために、大きく3つの分類の書類が必要になります。 (1)死亡の証明+身分関係の証明(誰が亡くなり、誰が家族か) ・死亡証明(死亡診断書・死亡証明書など) ・戸籍一式(出生から死亡までつながるもの) ・相続人の本人確認書類(パスポート等) 日本で取得した原本を提出することが多いです(コピーでもよいかは各銀行に確認することをおすすめします) (2)「受け取る権限」の証明(誰が受け取り担当者か) ここが国によって一番変わるポイントです。 ・プロベートが必要な国: 裁判所によるプロベート手続きが原則必要になります。(共同名義財産や受取人指定財産の場合は必要でないケースもあります) ・プロベートが不要(中心ではない)国: 相続証明書・公証人の証書※など、「相続人(または受取人)が誰か」を示す書類を準備して進めることが多いです。 ※相続証明書・公証人の証書:国によって呼び方は違いますが、目的は共通で 「この人が相続人/遺産を受け取る権限者です」 を第三者(銀行など)に示す書類です。一般的には、口座のある国(現地)の公証人が発行・作成する相続人(受取権限)を証明する公式書類 が該当し、現地の公的なホームページを確認又は現地の弁護士に依頼して各国ごとに異なる「必要書類」を取得する必要があります。なお、EUにおいて公証人が作成した証書は、EU圏内であれば他の国でも共通して使うことができます。 (3) 翻訳・公的な証明(認証/アポスティーユ等) 海外の銀行は「公的に正しいと確認できるか」を重視します。 そのため、翻訳や、翻訳証明、公的証明が不足すると、いったん提出したにもかかわらず「認証が足りない」、「翻訳が正式ではない」として差し戻しにあい、再提出で時間が延びるということがよくあります。 最初から「翻訳の要否」「翻訳証明の要否」「認証/アポスティーユの要否」を確認しておくと、遠回りを防げます。 アポスティーユとは、外国で公文書を提出する際に領事認証等を省略できるよう、発行国の当局がその公文書の真正(署名者の資格・署名・公印など)を証明する認証(証明書)です。 3-2 相続人どうしのお金の分け方を確認する 海外口座は、銀行にとっては「誰に払えばトラブルにならないか」という点が重要になります。 したがって、確認ができるまでは預金の払い出しはできず、相続人の間で「受け取り方」を先に決める必要があります。 (1)プロベートが必要な場合(裁判所手続きが中心) 遺産管理者が口座を回収し、あとで相続人に分配する流れになることが多いです。 銀行側も「遺産管理者に払う」前提で話が進みます。 (2)プロベートが必要でない場合(相続人証明が中心) EUでは遺言がなければ法定相続人に分配されることになるか、また、相続人が「誰が受け取るか」を書面で合意し、銀行に提出する流れになることもあります。 → 相続人全員の署名を求められることもあります。 また、日本で作る「遺産分割協議書」がそのまま通るかはケース次第です。 海外では、日本の遺産分割協議書は「私文書」なため遺産分割協議書だけでは手続きが進まないことも多々あります。また、署名方法(サイン証明)や言語、内容等が現地と異なるため、現地専門家と連携して手続きにあたる必要があります。 3-3 海外から日本の口座にお金を送る方法を確認する 送金は「できる/できない」より、「止まらずに通す」のがポイントになります。 事前に次の事項を押さえておくとスムーズです。 (1)両替のタイミング(円換算のズレに注意) 相続税の計算や相続人同士の分配では、円換算が絡みます。 「いつのレートで円に直すか」を決めておくと、後から揉めにくくなります。 (2)送金の限度額・手数料(受取側の条件もセットで確認) 海外送金は、銀行側の限度額や中継銀行の手数料で、想定より目減り・遅延が起こりがちです。 また、受取側(日本の銀行)にも「着金時に必要な情報」「目的の確認」など着金のための条件が設定されていることがあります。 (3)チェックされやすいポイント(書類不足は「保留」の原因) 相続による送金は不自然な取引ではありませんが、マネーロンダリング対策の観点で確認が入ることがあります。 このときにポイントになるのが、「お金の出どころ(亡くなった方の口座であること)」、「受取人が正当な相続人であること」等が書類で説明できることです。 必要書類をそろえておくと、銀行から照会が来ても送金手続が止まりにくくなります。 第4章 日本の相続税のルールと届出を確認する 海外に預金口座があっても、条件によっては日本の相続税の対象になります。 しかも相続税の申告は、「亡くなったことを知った日の翌日から10か月」が期限です。 海外の手続きは長引きやすいので、税金の確認は早めに進めるのが安全です。 また、相続手続きが終わらない前提で、相続税申告にどう織り込むか(評価資料の取り方、申告の仕方)を先に決める必要があります。 4-1 海外口座に日本の相続税がかかるか確認する まず整理したいのは、次の3点です。 (1) 被相続人・相続人の「居住関係」 「亡くなった方や相続人が、いつ・どこに住んでいたか」で、日本の相続税のかかり方が変わります。 まずは住んでいた国・期間などの基本情報をまとめます。 居住地による日本の相続税のかかり方は、簡易的にまとめると下記のフローチャートで判断できます。(簡易的なフローチャートですので、最終的には専門家又は税務署でご確認ください) (2) 対象資産の範囲(何が相続財産になるか) 海外口座でも、預金だけでなく、証券口座・保険・年金口座などが混ざっていることがあります。 口座の種類まで確認します。 (3) 評価(いくらとして申告するか)と根拠資料 基本は死亡日時点の残高をベースに、銀行のステートメント(残高証明・取引明細など)で裏付けます。 期限までに申告できない又は少なく申告すると、加算税や延滞税がかかることもあるため、資料集めは優先度が高いです。 4-2 CRS制度について 「海外口座だから税務署に分からないだろう」とは言いにくい時代になっています。 CRS(共通報告基準)は、各国の税務当局が、金融機関から受け取った「非居住者の口座情報を、相手国の税務当局へ年1回まとめて自動的に提供(交換)」していく仕組みです。 つまり、海外口座の申告は「見つかるか見つからないか」ではなく、きちんと説明できる形で申告できるかが大切になります。 4-3 海外側で必要になる税金の手続きを確認する 国によっては、海外側で相続に関する税金(相続税・遺産税に類するもの)や手数料がかかることがあります。 日本の相続税と重なる可能性もあるため、必要に応じて条約や外国税額控除などを含めた検討が必要になります。 海外の制度は国ごとに差が大きいので、日本と現地の両方を見られる体制で進めるのが安心です。   【国外財産調書について】 海外資産の状況によっては、相続とは別に「国外財産調書」の提出対象になることがあります。 (1)誰が出す?(対象者) 原則として、日本居住者(非永住者を除く)で、12月31日時点の国外財産の合計額が5,000万円超の方が対象です。 (2)いつまでに出す?(提出期限) その年の翌年6月30日までに、所轄税務署へ提出します。 (3)相続があった年の注意点 相続開始年の国外財産調書は、相続や遺贈で取得した国外財産を記載しないで提出できる取扱いがあります(提出義務の判定も一定の除外あり)。 (4)出し忘れ・不備の影響(ペナルティ) 期限内提出があると、国外財産に関する申告漏れがあった場合に加算税が5%軽減される一方、提出がない・記載がない場合は5%加重されることがあります。 また、虚偽記載や正当な理由のない未提出は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となる可能性があります。   第5章 金額が小さい海外口座も相続税申告の対象 「残高が少ない海外口座」をどう扱うかは、手間とのバランスが悩みどころです。 海外口座の相続手続きは、前述したように海外で行う手続きも多く専門家に任せるのはコストもかかります。 そのため実務的には、多めの概算の金額で相続税申告は行い、相続手続きは行わないということもありえます。 例えば仮にアメリカに口座残高1,000ドル(約15万円)の預金口座があるとします。 この預金口座を相続する際に、現地の専門家に依頼をすると100万円かかってしまう場合、預金口座の残高よりも報酬の方がかかってしまうため手続きをしないということもあります。 ただし、相続税申告においてはたとえ1,000ドルでも申告に含めなければ申告漏れになってしまうので申告は必ず行う必要があるということです。 この章では、具体的に少額の海外口座の場合の相続手続きの考え方を解説していきます。 5-1 申告に入れない場合のリスクを確認する 少額だからといって「申告しない」判断は、後から説明が難しくなることがあります。 相続税は期限があり、申告が遅れたり申告額が少ないと加算税・延滞税がかかる場合があります。 さらに、CRSのような仕組みで口座情報が把握され得る点も踏まえ、「省略してよいか」ではなく、「現実的にいくらで計上するか」を考え、資料の収集、検討するのが得策です。 5-2 手間・費用とリスクを比べて方針を決める まずは、専門家報酬・翻訳費用・認証(アポスティーユ等)・送金手数料の目安を把握する必要があります。 「回収して日本へ送金」「回収は時間をかけつつ、申告は期限に間に合わせる」など、対応パターンを整理する こともあります。 迷う場合は、先に「税務側だけ固める」発想(評価資料の確保・申告方針の決定)が安心です。 第6章 専門家に相談して安全に手続きを進める 海外口座の相続は、海外での手続きが必須になり、現実的に専門家のサポートなしに手続きを進めることは困難です。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 「海外の財産をどう扱えばいいのかわからない」「外国税額控除を受けたいが手続きに不安がある」―― そのようなときは、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 最初の一歩を踏み出すことが、複雑な国際相続を解決へ導く最大のカギとなります。 第7章 まとめ いかがだったでしょうか。 本記事では、海外口座の相続について ・国によってプロベートが必要なケース/不要なケースがあること ・日本の相続税の申告期限(10か月)を意識して、スケジュールを逆算する必要があること ・戸籍・翻訳・認証、現地の相続証明書など、日本とは異なる書類や手続きが求められること ・残高が少ない口座でも、申告や対応方針をあいまいにしない方が安全なこと ・日本と海外双方の制度を見ながら、専門家と連携して進める重要性 といったポイントをコンパクトに整理しました。 海外口座の相続は、「とりあえず日本と同じようにやってみる」と行き詰まりやすい分野です。 ご自身だけで抱え込まず、早めに全体像とリスクを把握し、専門家へ相談しながら、無理のないスケジュールと方法で進めていきましょう。
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    国際相続サポート

    • 2026.01.17
    • 門倉 誉士希

    【ケース別】外国人配偶者が関わる場合の相続を税理士が解説します

    「自分の配偶者は外国人だけど、将来の相続で困ることはないだろうか、、、?」そんなご不安をお持ちですね。 日本在住の日本人(=日本国籍)の方が亡くなり、その日本にある遺産を日本在住の日本人の配偶者が相続する場合、当然に日本の法律に基づいて相続の内容が決まることになります。 しかし、亡くなった方が外国人(=外国籍)である場合や、遺産が外国にある場合は日本の法律に沿っているだけでは相続の内容が決まらないことがあります。 相続は海外の法律が絡むととても複雑になります。そして最悪の場合、遺産を相続できない又は相続するまで長い時間がかかる、ということもあり得ます。 当記事では外国人の配偶者が関わる場合の相続についてケース別に解説します。 自分の場合はどのケースに当てはまるかを把握し、将来の相続に備えましょう。 第1章 相続で外国人の配偶者が関わる場合の基本 まず、被相続人(亡くなった人)が外国人の配偶者である場合と、相続人が外国人の配偶者である場合、それぞれの相続の基本について確認していきましょう。 1-1 被相続人が外国籍の配偶者の場合の相続 まずは被相続人(亡くなった人)が外国籍の配偶者だった場合の相続の基本について確認します。 なお、被相続人(外国籍)、相続人(日本人の配偶者)ともに日本在住の前提とします。 (1)準拠法 被相続人が外国籍の場合、日本の法律に従うと、原則として被相続人の本国法(国籍を持っている国の法律)に基づいて相続の内容(法定相続人や相続分など)が決まることとなります(通則法第36条)。 ただし、例えばその本国の法律が、「不動産は所在地の法律に従うこと」と定めている場合は不動産が所在する国の法律に従うこととなります。この場合結果的に、日本に所在する不動産は日本の法律に基づいて相続の内容(法定相続人や相続分など)が決まることとなります(法律用語ではこれを「反致」と言います)。 また、本国の法律が、「動産は被相続人の生活の本拠地(ドミサイル)の法律に従うこと」と定めている場合は、日本に所在している動産(金融資産等)であっても被相続人の生活の本拠地(ドミサイル)の法律に基づいて相続の内容(法定相続人や相続分など)が決まることとなります。なお、アメリカの各州の相続法ではこのような定めになっていることが多いです。 被相続人の本国法によって取り扱いが異なることとなり、また、本国法によっては被相続人の財産の種類、財産の所在地、生活の本拠地がどこであるかで最終的に従うべき法律が異なることとなります。 実際の具体例を見てみましょう。 【例】 <前提> 被相続人:日本在住(ドミサイルは日本)・アメリカ国籍 相続人:日本在住・日本国籍の配偶者 相続財産:日本に不動産と預金、アメリカに有価証券 <準拠法> この場合、被相続人はアメリカ国籍であるため、本国法であるアメリカの法律(州法)に基づいて法定相続人や法定相続分が決まることとなります。 <日本の不動産の相続> アメリカの法律(州法)では基本的に不動産はその所在地の法律により法定相続人や相続分が決まることとされています。 したがって、被相続人がアメリカ人であっても、日本の不動産に関してはその所在地である日本の法律に基づいて相続することとなります。 <アメリカの有価証券の相続> アメリカの法律(州法)では基本的に動産は生活の本拠地(ドミサイル)に基づいて法定相続人や相続分が決まることとなります。 したがって、被相続人がアメリカ人であっても、有価証券等の動産については被相続人の生活の本拠地(ドミサイル)である日本の法律に基づくこととなります。 ただし、実際の相続手続きについては日本の法律だけでは進められないことが多く、次の(2)②のような実態があります。 (2)実際の相続手続き ①日本国内の財産の相続手続きのポイント 被相続人が外国人の場合、日本国内の財産について日本の法律に従って相続手続きを進められる場合であっても、実際の手続きにあたっては不動産の相続登記や金融機関に提出すべき必要書類が揃わないという問題が生じます。外国人には戸籍がないためです。 被相続人が日本人の場合、生まれてから亡くなるまでの戸籍を取得すれば両親、子ども、配偶者、きょうだいの全てがわかるので、法定相続人が誰か特定することができます。他方、被相続人が外国人でその配偶者が日本人である場合、配偶者の戸籍には結婚の事実等が記載されている可能性もあります。 しかし、それだけでは不十分な内容であることが多いので、戸籍に代わって以下のような書類を集める必要があります。 【戸籍に代わる書類】 ・外国人である被相続人及びその両親、きょうだい等の出生証明書、婚姻証明書、死亡証明書 等 ・宣誓供述書(相続人が被相続人との関係及び被相続人の法定相続人を確認する内容のもの) ・外国人登録原票、日本における出生届、婚姻届 等(日本に居住する被相続人の場合) なお、これらの書類は外国語で作成されるため、手続きに使用するにあたっては日本語訳を添付する必要があります。 通常、日本にある財産の相続手続きにあたっては以下の書類が必要となります。 ・相続を証明する書類(戸籍) ・住所を証明する書類(住民票等) ・遺産分割協議書と印鑑証明書(遺言がない場合) ②国外の財産の相続手続きのポイント 国外の財産について相続による名義変更手続きを行う場合、準拠法が日本法となる場合においても、実際の名義変更手続きが日本の法律に従って進められるかというとそのようなことはほとんどなく、財産所在地の法律に従わなければ名義変更手続きができないことが通常です。 上記(1)の具体例の場合、アメリカの有価証券を相続するにあたっては、原則としてアメリカでのプロベート手続き(遺産を裁判所の監督のもとで整理・分配する手続き)が必要となり、現地の弁護士や裁判所の関与がなければ解約や名義変更といった相続手続きができないこととなります。 プロベート手続きには相当の時間と専門家に対する費用を要することになります。 【「プロベート手続き」についてはこちらの記事をご参照ください。】 (3)相続税の課税関係 相続税については日本の相続税と国外(本国や財産の所在地)の相続税の両方が課税されることがあり、両国の税制や租税条約を確認する必要があります。 なお、被相続人が外国人の場合も日本の相続税を計算する上での「法定相続人の数」や、「法定相続分」は日本の民法に基づいて判断することとなります。 また、日本の相続税においては「配偶者の税額軽減」という制度があります。 これは、被相続人の配偶者が遺産を相続する場合、一定額まで相続税がかからず、配偶者の税額が軽減される制度です。配偶者の場合、相続する財産が1億6,000万円、もしくは、法定相続分のどちらか多い方までであれば相続税がかかりません。 【「国際相続における日本の相続税」についてはこちらの記事をご参照ください。】 また、両国間の二重課税を防ぐために「外国税額控除」という制度があります。 【「外国税額控除」についてはこちらの記事をご参照ください。】 1-2 相続人が外国籍の配偶者の場合の相続 次に相続人が外国籍の配偶者だった場合の基本について確認します。 なお、被相続人(日本人)、相続人(外国籍の配偶者)ともに日本在住の前提とします。 (1)準拠法 被相続人が日本国籍の場合、被相続人の本国法である日本の法律に基づいて相続の内容(法定相続人や相続分など)が決まることになります。 この場合、相続人の国籍は一切関係ないため、相続人が外国籍であったとしても日本国籍の相続人である場合と同じ整理となります。 (2)実際の相続手続き ①日本国内の財産の相続手続きのポイント 被相続人が日本人である場合、その準拠法は日本の法律となり、日本国内の財産の相続手続きを行う場合には一般的な日本の相続手続きと大きく変わることはありません。 しかし、その相続人である配偶者が外国人である場合、戸籍がないためこれに代わって以下のような書類を集める必要があります。 【戸籍に代わる書類】 ・相続人である外国人の配偶者の出生証明書、婚姻証明書 等 ・宣誓供述書(相続人が被相続人との関係及び被相続人の法定相続人を確認する内容のもの) ・外国人登録原票、日本における出生届、婚姻届 等(日本に居住する相続人の場合) なお、これらの書類は外国語で作成されるため、手続きに使用するにあたっては日本語訳を添付する必要があります。 ②国外の財産の相続手続きのポイント 国外の財産について相続による名義変更手続きを行う場合、準拠法が日本法となる場合においても、実際の手続きは財産所在地の法律に従わなければ進められないことが通常です。 とはいっても、日本人が多く居住する国や地域では、財産の種類、金額によっては現地の裁判所が日本の遺言や遺産分割協議書の効力を認めた、というケースもあるようです。 実際の相続手続きにあたっては国際相続に精通する現地の専門家に確認を行う必要があります。 (3)相続税の課税関係 相続税については日本の相続税と国外(本国や財産の所在地)の相続税の両方が課税されることがあり、両国の税制や租税条約を確認する必要があります。 「配偶者の税額軽減」は配偶者が外国籍だった場合も適用が可能です。 【国際相続における日本の相続税についてはこちらの記事をご参照ください。】 両国間の二重課税を防ぐために「外国税額控除」という制度があります。 【「外国税額控除」についてはこちらの記事をご参照ください。】 第2章 【ケース別】配偶者が外国人の場合の相続のポイント 亡くなった配偶者(被相続人)、または、相続人である配偶者が外国籍であった場合の相続のポイントをまとめると以下のようになります。 なお、被相続人、相続人共に日本在住の前提としています。  ※ 被相続人、相続人ともに日本在住の前提 第3章 配偶者が外国籍の場合の注意点(トラブル防止の対策) 次に配偶者が外国籍である場合の相続における法務と税務の注意点を確認しましょう。 3-1 遺言について 外国籍の配偶者が遺言を作成する場合、一定の条件に当てはまれば日本国内で日本法に従って作成した遺言が有効となります。 しかし、実際に遺言を作成する場合には「財産の所在地ごとに遺言を作成する」のが重要です。財産の所在地以外の国で遺言を作成したとしても、実際の相続が発生した際にその遺言通りに手続きが進められる保証はないためです。 また、財産の所在国によっては遺言が最適な対策とも限らない場合もあります。 そもそも財産を国外に残さないことやトラストやジョイントアカウントなどの対策も含めて最適な方法を検討する必要があります。 3-2 住所・生活の本拠地(ドミサイル)について 当記事は被相続人、相続人ともにその住所・生活の本拠地(ドミサイル)は日本にある前提としました。 被相続人、相続人の双方または片方の住所・生活の本拠地が国外にあれば、準拠法や相続税の課税関係も大きく異なる可能性があることについても留意が必要です。 第4章 国際相続のご相談はマインライフへ 配偶者が外国人で相続の手続きが複雑になるかもしれない・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。 年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 「配偶者が外国人で相続手続きをどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第5章 まとめ いかがでしたでしょうか。 配偶者が外国人の場合の相続は日本人夫婦の相続とは異なる点が多々ありますが、そのポイントは以下の通りです。 ・原則として被相続人の本国法に基づいて相続の内容(法定相続人や相続分など)が決まる ・ただし、本国法によっては、財産の種類によって財産の所在地や生活の本拠地(ドミサイル)の法律に基づいて相続の内容が決まることもある ・実際の相続手続きは財産の所在地の法律に基づいて進めることが通常。 ・日本で相続手続きを行う場合、外国人については相続を証明する書類として戸籍に代わる宣誓供述書等が必要 ・日本の相続税と国外の相続税がかかる可能性がある ・日本の相続税の計算にあたっては「配偶者の税額軽減」と「外国税額控除」の適用が可能 ・遺言等の相続対策を行うにあたっては複数の方法を含めて慎重な検討が必要 ・配偶者が外国人で相続手続きに不安を感じたら「税理士法人マインライフ」へ! 配偶者が外国人の場合の相続は複数の法律や言語が絡み合いとても複雑なものになります。 スムーズな相続を実現するには生前からの準備・対策を行うことが不可欠です。 相続対策は早く始めれば始めるほど、大きな効果を生みます。 将来の相続に備えて、今できることをひとつずつ着実に行っていきましょう!
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    国際相続サポート

    • 2026.01.07
    • 川崎 朝輝

    プロベートとは?仕組み・流れ・回避方法を税理士がわかりやすく解説

    「アメリカにある父の遺産、どうやって手続きすればいいの……?」 日本国内の財産でさえ難しい相続手続き。 それが海外の財産となれば、なおさら戸惑いを感じている方も多いのではないでしょうか。 実際に調べてみると、目にするのが「プロベート」という聞きなれない言葉。 さらに、英語・法律・制度の壁に加え、時間も費用もかかる手続きと知り、「どうしよう……」と頭を抱えている方も少なくないでしょう。 プロベート手続きは確かに複雑で、財産がある現地の専門家に依頼する必要があります。 そして、日本側でも税金や名義変更などの手続きが関わるため、複数の専門家と連携しながら進める必要があるのが現実です。 だからこそ重要なのが、日本にいながらも全体像を把握し、信頼できる専門家に相談できる体制を整えることです。 本記事では、 ・プロベートとはどのような制度なのか? ・日本と海外の相続手続きの違いは? ・どんな場合にプロベートが必要になるのか? ・プロベートを回避できる方法は? ・プロベート手続きの具体的な流れは? ・現地専門家を選ぶ際の注意点は? ・プロベートが長引く場合の日本の相続税の対応は? といった疑問にお答えしながら、日本にいる相続人が“最初に知っておきたいこと”をわかりやすく解説します。 この記事を読んで、プロベートの制度を正しく理解し、スムーズで正しい相続手続きを行なってください。   第1章 プロベートとは?海外の相続では裁判が必要??  プロベート(Probate)とは、人が亡くなった際に、その遺産を法的に管理・清算し、最終的に相続人へ分配するまでの一連の裁判手続きの制度です。  アメリカやイギリス、オーストラリア、香港、シンガポール、カナダ、ニュージーランド、マレーシアなどの国で採用されている制度です。日本やドイツ、フランスなどの国では原則としてプロベートのような裁判手続きは不要です。 プロベートが不要な日本では、相続人の話し合いにより誰がどの財産を取得するかを決めます。その内容に基づいて、不動産や預金の名義変更などができます。 しかし、プロベートが必要な国では、裁判所の監督のもとで、遺産の確定、債務の弁済、相続人への分配がされます。そのため、多くの費用と時間を要することになります。   1-1 プロベートが必要な理由 プロベートは、亡くなった人の財産をしっかりと整理し安全に引き継ぐために、必要となります。 そのため、裁判所が財産をチェックしていく制度です。 遺言が本物であるか?相続人が正しいか?(本当に相続人か?)借金や税金も適切に整理、清算できているか?といったことなどを裁判所が中立の立場で監督しています。 では、日本の手続きとプロベート手続きが必要なアメリカの相続手続きの比較をしてみましょう。 1-2 日本の相続手続きとの違い/日本とアメリカの比較 日本の相続手続きとプロベート手続きが必要なアメリカの相続手続きには次のような違いがあります。 日本人でもアメリカの法律に従う必要があるのか?という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。次は、その疑問についてお答えします。 1-3 日本人なのにプロベートが必要になるの? 日本人であっても遺産を取得する際に、プロベートの手続きが必要になる場合があります。 日本の法律では、相続は被相続人(亡くなった人)の本国法(日本人であれば日本の法律)によると定められています。しかし、アメリカの多くの州では、不動産が所在する場所の法律を適用すると定められています。 つまり、日本人がアメリカの不動産を所有している場合は、日本の法律では日本の法律が適用されると定めており、アメリカの法律ではアメリカの法律が適用されると定めています。 このように日本とアメリカでどちらの国の法律を適用するか異なることもあります。 実際にこのようなケースではアメリカにある不動産の手続きをするので現地のアメリカの法律により相続手続きをする必要があります。 そして、日本人であってもアメリカに不動産を所有している場合にはプロベートの手続きが必要になります。 日本人でもプロベートの必要があることは分かったけど、どういう場合に必要になるのか?疑問を持たれた方も多いと思います。 基本的にはプロベートのある国に財産があれば必要になりますが、回避する方法もあります。 次の章ではプロベートはどのような場合に回避できるのか?について解説していきます。 第2章 プロベート手続きを回避する5つの方法 プロベートの手続きは費用も時間もかかるため、プロベート手続きを回避する方法がいくつも用意されています。そのうちの5つの方法をご紹介いたします。 ※注意!! いずれの方法も相続が発生する前(ご存命中)に、手を打っておく必要がありますので、注意してください。 2-1 【方法1】死亡時の受取人の指定(POD、TODR、TODD) 不動産や預貯金などの財産について、所有者が死亡した際にその財産を受け取る人をあらかじめ指定しておく方法です。この方法は非常に簡単に行うことができます。 • POD (Payable-on-Death) Accounts: 銀行口座の受取人指定 所有者が死亡した場合の受取人を事前に銀行に申し出ておくものです。 この手続きがされている場合は所有者の死亡後にプロベートを経ずに指定された受取人が受け取ることができます。なお、所有者が存命中は、受取人には権利はなく、所有者は自由に口座を利用・変更・解約できます。 • TODR (Transfer-on-Death Registration): 証券口座の受取人指定 PODと同様に、証券会社や発行会社に所定の用紙を提出するだけで、プロベートを経ずに受取人へ有価証券の所有権を移転することができます。 • TODD (Transfer-on-Death Deed): 不動産における死亡時譲渡証書 不動産の権利証に受取人を指定し、これを法務局に登記することで、プロベートを経ずに受取人へ所有権を移転することができます。所有者はいつでも撤回することが可能で米国などに不動産しか所有していない方に適しています。 ※注意!! TODRやTODDは、口座の種類、証券会社、または州によっては設定ができない場合があります。そのため、事前に金融機関や現地の弁護士に確認が必要です。 受取人に指定した人が先に死亡するケースに備えて、代替の受取人を指定できる場合もあります。 TODDは、国や州によっては居住用不動産に限定されている場合や債務を承継する必要が生じる場合があります。メリットだけでなくデメリットになる場合もありますので指定をする前に現地の弁護士に確認をしておきましょう。 2-2 【方法2】共同所有:残りの生存者へ移転(ジョイント) 複数の人が共同で財産を所有しておくことで、共同所有者のうちの一人が死亡した場合に、その持分が自動的に生存する共同所有者に移転するものです。自動的に移転するためプロベートの手続きが不要となります。 • ジョイント・アカウント (Joint Account) 共同名義の預金口座です。米国の夫婦の預金口座として多く利用され、口座名義人の死亡により、自動的に生存名義人に財産が移転されます。 • ジョイント・テナンシー (Joint Tenancy) 不動産などを共同所有するものです。ジョイント・アカウント同様、共同所有者の一人が死亡した場合にはその死亡した共同所有者の持分が生存する他の共同所有者に自動的に移転・帰属します。 ※注意!! • 共同所有者全員が亡くなるとプロベートが必要となります!! • ジョイントにする際に贈与税注意!! 不動産などをジョイントにする際に、資金を拠出していない人が名義人として加わる場合には、日本では資金を拠出した人からの贈与とみなされ、贈与税が発生します。 2-3 【方法3】生前信託(Living Trust) 日本にも同様の制度がありますが、信託制度を活用する方法です。 信託とは、財産を所有している人が信頼できる第三者に、持っている財産の運用や管理、最終的な処分まで任せるものです。そして、どのように運用、管理、処分などをするのかについてあらかじめ契約で定めておきます。その契約で、自分が死亡した時はこの人に財産を渡すということを定めておけばプロベートを経ずに財産を移転することができます。 ※注意!! • 日本の財産は一緒に信託財産として管理などができない場合があります。 • 受託者になる要件として米国非居住者は、基本的に米国で生前信託の受託者になることはできません。 • 信託の設定には多くの手間や費用がかかります。 • 一度信託を設定した後も、新たに財産を取得した場合などは、それらも想定して信託や遺言を設定しておくか、その都度変更しなければ、新たに取得した財産についてプロベートを回避することができません。 2-4 【方法4】日本法人による間接保有 日本の法人が海外財産を保有する方法です。法人が保有している場合は、個人の相続手続きであるプロベートは必要なくなります。個人が所有するのは日本の法人の株式となるため、日本国内の他の財産と同じように相続手続きをすることができます。 ※注意!! 法人の設立や法人への資産の移管に伴う複雑な税務や法務の検討が必要となります。 法人へ資産を移管する際に、所得税や贈与税などが発生する場合があります。 2-5 【方法5】少額資産 遺産の総額が一定額以下の場合には、プロベート手続きが不要または簡略化される場合があります。 ※注意!! 少額であるかについては、国や地域、金融機関などによって大きく異なります。 なお、受取人が指定されている生命保険金や退職年金は、プロベートの対象になりません。 また、その国の遺言書を作成している場合でもプロベート手続きは必要となり遺言書の内容は裁判所を通じて検認され執行されます。遺言書は亡くなった方の意思を明確にする重要な書類になり、遺言で指定された遺言執行者がプロベートの手続を行うことになります。 次章では、プロベートの具体的な手続きの流れについてご説明します。 第3章 プロベートを進めていく具体的な流れ この章ではプロベートの手続きが必要になってしまった場合、どのような流れで手続きが進むのか解説していきます。 プロベートの手続きの6つのStep 【Step1】 相続の発生とプロベートの申立 人が死亡すると相続が開始します。 遺言がある場合は、まずその遺言書を裁判所に提出して有効かどうかをチェックしてもらいます。  遺言がない場合は、裁判所が「誰が遺産を管理するか(遺産管理人)」を決めます。 【Step2】 遺言執行者又は遺産管理人が正式に任命される  遺言で指定されていた遺言執行者(遺言に書かれた内容を故人に代わって実行する人)や裁判所が選んだ遺産管理人が手続きの責任者となります。 裁判所から管理をする『許可書』が発行されます。 【Step3】 財産や借金を調査し目録(リスト)を作成  故人が持っていた財産(預金・不動産・株など)や借金や税金をすべて調べてリストを作成します。 このリストは裁判所に提出し、その後の手続きのベースになります。 【Step4】 債務・税金の清算 財産の中から、遺言執行者や遺産管理人の報酬、故人の借金や未払の税金などを優先して支払います。そのため、日本のように相続人が個人的に借金を引き継ぐことは基本的にありません。 【Step5】 財産の分配  債務や税金の清算後、残った財産を相続人に分配します。 遺言がある場合→遺言に書かれた内容に従って分配されます。  遺言がない場合→各州の法律に従って相続人に分配されます。 【Step6】 裁判所への完了報告   全ての手続きが完了した後、その旨を裁判所に報告しプロベートは終了となります。 ~プロベートの4つのデメリット~ 1 期間が長期間:プロベートの手続きは半年から3年かかることもあります。 2 費用が高額:裁判所に支払う費用、鑑定費用、弁護士費用などが発生し、高額になることがあります。特に、プロベート対象財産が少額であっても、多額の費用や時間がかかり、コスト倒れになることが多々あります。 3 プライバシーの問題:手続きの中で遺言書の内容や遺産の内訳が公開され、プライバシーを確保することができません。 4 国際相続の複雑さ:国際相続の場合、日本の戸籍謄本などの書類は翻訳の上翻訳証明を付けることが多く、別途、海外の公的書類(出生証明書、婚姻証明書、死亡証明書など)や宣誓供述書などを集める必要があります。これらの書類は、アポスティーユ認証または領事認証が必要となる場合があります。また、遺言書や遺産分割協議書が外国語で記載されている場合、翻訳が必要となることもあります。  なお、プロベートの手続きは裁判手続きのため現地の弁護士に依頼するのが通常です。現地の弁護士を選ぶ際の注意点について次章で詳しく解説します。 第4章 現地の専門家を選ぶ際の4つのPoint 現地の制度や相場を理解し、日本と現地の専門家が連携できる体制を作ることが、海外相続をスムーズに進める最大のポイントです。特に、日本の専門家を経由して現地の専門家を探すことで手間やリスクを大きく減らせます。 Point 1 日本の専門家に紹介を受けるのが一番のPoint 日本の専門家に紹介を受けるのが一番スムーズに進みます。この後の3つのPointもケアしてもらえます。 自分で現地の専門家を探すのは難しく、報酬や支払いタイミングの交渉も容易ではありません。相場感がないまま契約すると、通常より高い額になるリスクもあります。 国際相続に精通した日本の専門家(税理士や弁護士)であれば、現地の信頼できる専門家とネットワークを持っていることが多く、このようなリスクも軽減できます。また、日本の税務も必要な場合は、一緒に依頼できるメリットもあります。 Point 2 州ごとに法律や手続きが違うので適用する法律に精通した専門家を探す アメリカは州ごとに法律が違います。 どの州の法律が適用されるのか確認し、その州に精通した専門家を選ぶことが必要です。 カリフォルニア州の法律に基づいて手続きが必要なのにニューヨーク州専門の弁護士に依頼してしまうとスムーズに手続きが進まないことがあります。 Point 3 報酬形態と相場を必ず確認する 現地専門家の報酬は、日本の専門家よりも高額になることが多いです。 それでも、現地での相場として高額なのか妥当なのかについては検討をする必要があります。 なお、主な報酬形態は『遺産総額の○%(例:2〜5%)』『タイムチャージ制(時間あたり○ドル)』のいずれかです。 Point 4 報酬を支払うタイミングを確認する プロベートの手続きは長期間になります。 この間、遺産は裁判所の管理下にあり、自由に使ったり名義変更したりできません。 そのため、費用を一時的に相続人が立て替える必要が生じる場合があります。 契約によっては、報酬の一部を名義変更完了後に支払うことも可能です。支払時期によって相続人の資金負担が大きく変わるので注意が必要です。 現地の専門家選びは、費用や期間だけでなく、日本での税務との連携も欠かせません。 次の章では、日本の税務の注意点を取り上げます。 第5章 プロベートが終わっていなくても日本の相続税は待ってくれない プロベートにどれだけ時間がかかっても、日本の相続税の期限は延びません。 日本の相続税の期限は「相続開始を知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内」です。この期限内に相続税の申告と納税をする必要があります。 亡くなった方と相続人のいずれかでも日本に在住している場合、基本的に海外の財産も含めて日本の相続税の対象になります。 プロベート手続きが間に合わない場合は財産の分割が完了していないもの(未分割)として一度申告し納税をすることになります。 その後、プロベート手続きが完了し財産の分配が行われた後、必要に応じて申告書を修正し提出することになります。 なお、日本の相続税には各種特例が設けられておりますが、未分割の場合には適用できないものがあります。そのため、プロベート手続きが間に合わない場合にはそれらの特例を受けずに申告することになります。 第6章 海外に財産があり、お困りの場合はぜひ税理士法人マインライフへご相談ください 財産が海外にあり、プロベートの手続きが必要かもしれない・・・。 そのような難しいケースでも、最適なサポート体制が弊社には整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 「海外の財産をどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第7章 まとめ いかがだったでしょうか。 相続が発生した時、海外に財産がある場合はプロベートという制度の適用を受けなければならなくなります。 プロベート制度のまとめ ・プロベートは、亡くなった人の財産を法的に整理・清算し、相続人へ分配するための裁判手続き ・アメリカなどに不動産や口座がある場合、日本人でもプロベートが必要になる ・プロベートは時間も費用もかかるが、回避できる方法(受取人指定、共同所有、生前信託など)もある ・回避できない場合は6つのステップで進行する(遺言提出~完了報告) ・デメリットは長期化・高額費用・情報公開・国際書類の煩雑さ ・現地の専門家選びは、日本の専門家経由が最も安全でスムーズ ・日本の相続税は、プロベートが終わらなくても10か月以内に申告・納税が必要 プロベートは手続きが煩雑で、時間も費用も想像以上にかかるものです。 まずは信頼できる日本の専門家に相談し、現地との橋渡しをしてもらうことから始めましょう。
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    国際相続サポート

    • 2025.12.22
    • 伊藤 千尋

    国際相続は誰に相談すべきか?失敗しないポイント

    「相続人の一人が海外に住んでいる」又は「海外に財産がある」そんな時にまず誰に相談したらいいのか? おそらく今記事を読んでいる方もそのような悩みがあるのかと思います。 結論としては、最初の相談窓口は“国際相続に強い税理士法人”が最適といえます。 なぜなら、国境をまたぐ相続は二重課税・手続の壁が大きく、国際相続に強い税理士法人なら評価・翻訳・期限管理までサポートし、現地専門家と連携して無駄な税負担と手戻りを防げるからです。 国際相続に精通した税理士が全体像(税務・法務・登記・海外手続)を設計し、必要に応じて税理士・弁護士・司法書士・海外弁護士や公認会計士などをチームにして進めるのが、最短かつ安全な進め方です。 申告期限や海外手続は待ってくれません—この記事を読んで「相談してみよう」と思っていただければ幸いです。 第1章 国際相続は専門家に相談すべき 国際相続の場合の結論としては「迷わず専門家へ相談すべき」です。 海外がからむ相続は、日本だけの手続きでは完結しないことが多く、準備の遅れがそのまま負担やリスクに直結します。 最初から国際相続に強い専門家に相談するのがいちばん安心で早い進め方です。 【なぜ専門家が必要なのか】 ①手続きが「日本+海外」で二重になるから 海外がからむ相続の場合、日本国内の手続きとは別に海外での手続きが必要となります。 例えば、アメリカに証券口座がある場合、日本では相続税の申告、アメリカ側では口座名義を変える手続きや裁判所を通す手続き(プロベート)が必要になることがあります。 ※プロベート=遺産の内容や相続人を裁判所の管理下で確認・整理する手続きです。 ②税金の判断ミスがコスト増につながるから 海外がからむ相続の場合、税務手続きだけをとっても非常に複雑になることが多いです。 海外の財産の評価方法、日本の相続税の申告、外国で払った税金の精算(外国税額控除)など、判断を誤ると税金が増えたり、期限に遅れて加算税がかかったりします。 ・必要書類の準備に時間がかかるから 海外がからむ相続の場合、まず書類をそろえることが最大のポイントで、準備に最も労力を要します。 戸籍の収集、翻訳、海外提出のための認証手続きなど、取り寄せに数週間〜数か月かかることも珍しくありません。 早く動くほど有利です。 第2章 【ケース別】誰に相談するといいか 相続は専門家ごとに守備範囲が異なります。 税務(評価・申告・納税設計)は税理士、紛争や契約・準拠法は弁護士、不動産の相続登記は司法書士、海外の裁判所手続(プロベート)や現地金融機関対応は海外弁護士——それぞれ役割が分かれています。 この章では複雑な国際相続において、「相談時期」・「相談内容」に応じて誰に相談すべきか解説いたします。 ただし、専門家だからといって皆が国際相続に精通しているわけではありません。 最も安心かつ安全なのは、「国際相続に精通している専門家に依頼すること」です。 専門家選びを間違えると、二度手間、三度手間になる可能性もあります。 2-1. 相続開始「前」:生前の準備 相談内容 まず相談する専門家 主なサポート 生前の相続税対策など、税金に関わること 税理士 ・相続税の試算 ・財産評価・節税設計 ・納税資金計画 ・二次相続の見通し プロベート対策など、法務手続きに関わること 弁護士 ・遺言・信託の法的設計 ・準拠法の検討 ・将来紛争の予防 ・各国の法務要件の確認 基本的には税金に係わることは税理士、名義変更等の手続き関係に係わることは弁護士にご相談いただければ大丈夫です。 2-2. 相続開始「後」:発生後の対応   相談内容(発生後) まず相談する専門家 主なサポート 海外に財産がある 税理士(国際相続) ※必要に応じ海外弁護士 ・日本の相続税申告・評価 ・海外での名義変更やプロベート要否の判断 ・金融機関・現地専門家との連携 ・翻訳・認証の段取り 相続人が海外在住 or 外国籍 税理士+司法書士 ・署名証明・領事認証・アポスティーユの要否判断 ・本人確認書類の整合(氏名表記ゆれ等) ・相続登記・銀行手続の要件整理 被相続人が外国籍 税理士(国際相続) ※必要に応じ弁護士 ・課税範囲の確認(居住歴・国籍等) ・準拠法の整理 ・日本申告と各国手続の並走管理 ・必要書類の翻訳・認証手配 手続きの中でも最も優先すべきは相続税申告になります。 なぜなら、申告手続きには明確な期限があり期限を過ぎてしまうとペナルティがあるからです。 したがって、ご相続が発生した場合にはまず税理士にご相談いただくのが最も安心な方法だと思います。 2-3. まずは無料相談する 悩んだらまずは無料相談してみるのがいいでしょう。 海外がからむ相続の場合、必要な手続きや書類はケースによって様々です。 そこで、国際的なネットワークがあるかどうか、実績が豊富かどうか、海外の法律に詳しいかどうか、料金が明確か、フットワークが軽そうか、自分との相性を見てみましょう。 迷ったら:税理士法人マインライフにご相談ください。 全体像を整理し、必要に応じて各専門家へおつなぎします。 第3章 相談を始める前に準備しておくべきこと 「税理士に何をどう相談すればいいのか分からない」という方も多いかと思います。 この章では、ご相談前にご準備いただくとスムーズに進むポイントを、分かりやすくご案内します。 3-1. 相談内容はどんな内容でも大丈夫 海外がからむ相続のことなら、内容があいまいでも大丈夫です。 最初から論点をきれいに整理できている方は多くありません。 ・相続税のこと ・不動産の相続登記 ・海外で必要な手続き(プロベート等) ・遺言・信託の扱い ・口座や名義の変更 ・書類の翻訳・認証(アポスティーユ等) など、気になっていることをそのまま伝えてください。専門家が全体像を整理し、必要な手順を一緒に決めていきます。 相続の手続きは申告期限まで長い付き合いになります。 初回相談では、話しやすいか・説明がわかりやすいか・自分に合うかもチェックして、安心して任せられる税理士を選びましょう。 3-2 準備するもの 一般的には下記のような書類をご準備いただけるといいかと思います。 ☑ 財産がわかる資料(通帳・残高証明、証券明細、保険証券のコピー など) ☑ 家族関係がわかる書類(戸籍一式/家族関係図でも可) その他必要なものがないか、面談の予約時にご確認いただけるといいかと思います。 【税理士法人マインライフにご相談いただく場合】 ① 事前にメモしておいてほしいこと ☑亡くなった日 ☑財産の全体像(何があるか・どこにあるか・名義・だいたいの金額) ☑住んでいた国/国籍(故人・相続人) ☑海外での手続きの進み具合(現地の相続手続きが進んでいるか など) ☑その他(遺言の有無、信託、贈与、保険、共同名義 など) ② 面談当日にあると助かるもの(そろう範囲でOK) ☑財産がわかるもの(通帳・残高証明、証券の明細、保険証券のコピー など) ☑家族関係がわかるもの(戸籍や家族関係図 など) ☑日本に不動産がある場合:固定資産税の課税明細、登記簿 など ☑遺言・信託の書類(あれば) ☑海外とのやり取りの控え(現地の弁護士・会計士の連絡先やメール など) ☑本人確認書類(運転免許証など)と連絡先 すべて完璧にそろっていなくて大丈夫です。わかる範囲でお持ちください。 必要なものは面談で一緒に整理し、集め方もこちらでご案内します。 3-3. 費用の目安 国際相続は複雑な案件が多いため、費用については案件によって変動するとされていることが多いです。 なので、明確な金額の提示がなく作業が進んでから報酬の提示を受けることになることも少なくないようです。 専門家に依頼する際には必ず報酬について確認するようにしましょう。 【税理士法人マインライフにご相談いただく場合】 税理士法人マインライフでは、報酬規程を設けるとともに初回相談は無料で行っています。 ※簡易的な報酬表になりますので詳しくは下記の弊社ホームページをご確認ください。 https://www.mine-life.jp/service/international-inheritance-support また、ヒアリング後に業務範囲・スケジュール・お見積書を提示し、ご同意いただいた後に着手します。 追加報酬が生じる場合には、事前にご説明したうえで再度お見積りをさせていただきますのでご安心ください。 第4章 相談事例 下記は、実際に私たちにご相談いただいた案件をベースに、状況・対応・結果・学びの順で整理した事例です。 ※個人が特定されない範囲で再構成しています。 相談すべきかお悩みになっている方の参考になれば幸いです。 事例A|相続人の一人が海外在住だったケース 【状況】 相続が起きたタイミングで、お子さまの一人がちょうど海外赴任中。財産は日本だけ、遺言はなし。なので、遺産分割協議が必要でした。 【対応】 海外にいる相続人の署名証明(署名の本物確認)と在留証明を、現地の大使館や役所で取ってもらいました。 日本側では協議書の案を用意して、翻訳が必要かもチェック。 時差や郵送時間を見込みつつ、申告期限(10か月)から逆算してスケジュールを立てました。 【結果】 書類の取り寄せに時間はかかったものの、期限内に協議成立→申告まで完了しました。 【ポイント】 海外の手続きは予約・郵送で思ったより時間がかかることが多いです。できるだけ早めに着手しましょう。 事例B|被相続人が外国籍で、海外にも財産があったケース 【状況】 被相続人は外国籍で日本に居住。財産は日本と海外の両方にありました。 【対応】 日本側は当法人で評価と申告の設計、必要書類の整理、期限管理を担当することになりました。 海外側は、提携の日本の弁護士と現地の弁護士で連携して、プロベート(裁判所の手続き)や名義変更・換金を進めました。 日本の申告に必要な海外資産の評価額・基準日を早めに固めるため、海外の進行と並走しました。 【結果】 海外の名義変更・換金と日本の申告を同時並行で無事完了。 【ポイント】 プロベートは現地弁護士との連携が必須です。 日本の申告でも海外資産の評価額が必要なので、海外手続きは早めにスタートが鉄則です。 事例C|海外在住のお母さまの財産について、生前対策のご相談 【状況】 お母さまは海外在住で預金が多め。相続人の子どもは日本在住で、「日本の相続税が心配…」というご相談でした。 【対応】 まず前提を確認。一般論として、相続人が日本居住だと海外の財産も課税対象になり得ます。 「子どもが海外移住して、相続の10年以上前から海外居住なら日本課税を外れる可能性がある」――という理屈上の選択肢もお伝えしましたが、仕事や家族の事情を考えると現実的ではなし。 そこで、生前贈与の活用や資産配分の見直しなど、無理のない対策に切り替え。 さらに手続き面の負担を減らすため、現地の弁護士とリビングトラスト(生前信託)を作成してもらいました。 【結果】 税金はできる範囲での軽減策になりました。 手続きはトラストを用いてシンプル化しました。家族の暮らしを大きく変えず、コストと効果のバランスをとった形で落ち着きました。 【ポイント】 相続税の“劇的な対策”は、年齢・居住地・家族事情によっては難しいこともあります。 でも早めに相談すれば、選べる手段は確実に増えます。 第5章 国際相続は税理士法人マインライフへ 国際相続は、国内相続とは比べものにならないほど複雑で、専門家の存在が成功の分かれ道となります。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 「海外の財産をどう扱えばいいのかわからない」「外国税額控除を受けたいが手続きに不安がある」―― そのようなときは、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 最初の一歩を踏み出すことが、複雑な国際相続を解決へ導く最大のカギとなります。 第6章 まとめ いかがだったでしょうか。 今回のコラムでは、国際相続では専門家ごとに守備範囲が異なること、そして最初の相談窓口として“国際相続に精通した税理士法人又は弁護士法人”を起点にするのが安全かつ最短であることをお伝えしました。 税務(評価・申告・納税設計)と、法務・登記・海外プロベート等の複数の手続を一枚の設計図で並走させ、必要に応じて税理士・弁護士・司法書士・海外弁護士にバトンをつなぐ体制づくりが重要です。 さらに、国際相続の手続きには時間がかかるため、早めの準備が成否を左右します。 特に、次のような点が重要です。 ・まずは国際相続に精通した専門家を起点に:全体設計(論点・担当・スケジュール)を作り、連携先専門家を適切に紹介・調整できる窓口を選ぶ ・相談のハードルは低く:テーマが曖昧でもOK。「あるものだけ」で持参し、不足は必要書類リストで埋める ・費用は事前に提示してくれる専門家を選ぶ:初回無料相談等で費用も確認できるといいでしょう つまり、「誰でもよいから相談」ではなく、国際相続の実務に慣れ、他士業と連携できる税理士法人を最初の窓口に選ぶことが、期限遅延・手戻り・過大コストを避ける近道です。 相続や海外資産の整理を検討し始めた段階から、どうぞ早めにご相談ください。 最初の一歩(全体像の把握と期限逆算)が、その後の負担を大きく減らします。
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    相続対策

    • 2025.12.16
    • 久保 佑介

    税理士が解説/父が亡くなった後は誰が実家を相続したらいい?【相続税早見表つき】

    父親が亡くなった時、実家の自宅は母親と子どものどちらが相続した方が良いのでしょうか? 「母が住み続ける実家を、誰が相続するのが最も安全で税務的にも有利か」という論点は、とても相談が多いご質問です。 実際には個々の事情があるためケースバイケースとなることがほとんどです。 相続税に特化した税理士だからこそ税金はもちろん税金以外も含めてそれぞれの良い点・注意点を解説していきます。 あなたの実家は誰が引き継ぐのが最善なのか。ぜひ最後まで読んでください。きっと解決策が見つかるはずです。 第1章 父親が亡くなった後は誰が実家を取得すべきか【具体例(相続税)】 基本的には母親・同居の子どもが税金面を考慮すると実家を引き継ぐのが最善でしょう。 母親・同居の子どもが実家を取得した場合には「小規模宅地等の特例」が適用できるためです。 「小規模宅地等の特例」は実家である自宅の土地の価額の80%を相続税の課税対象となる遺産総額より減額することができます。 詳細は本章の後半<税理士の解説👉>にて解説します。 「相続税早見表」の使い方 本章では「4人家族」の実家の相続税を「相続税早見表」を使用しながら考えていきます。 まずは「相続税早見表」の使い方をマスターして具体例の「4人家族」の実家の相続税を見ていきましょう。 相続税早見表とは「遺産総額」と「配偶者の有無及び子供の人数」により相続税の納税額の目安を確認できるものです。 また、相続税早見表のうち「左の表」は配偶者がいる場合の相続税を表しています。 配偶者がいる場合には、1億6,000万円(又は法定相続分のうち多い金額)まで配偶者へ相続税がかからない「配偶者の税額軽減」の適用があります。「右の表(配偶者がいない場合)」と見比べて相続税の金額が大きく異なるのはこの特例の影響です。 詳細は本章の後半<税理士の解説👉>にて解説します。 (使い方) 1. 遺産総額とは、被相続人(亡くなった方)の財産から借金や葬式費用などを差し引いた金額で、相続税の課税対象となる基礎です。預金や不動産、生命保険などが含まれます。 2. 被相続人の 「遺産総額」 に最も近いものをご確認ください (注) 「小規模宅地等の特例」「生命保険金の非課税」 など遺産総額より控除することのできるものがあります。これらを考慮することにより正確な相続税を確認することができます。 <例>「遺産総額1億円」で「配偶者あり及び子供2人」のケース    以下の相続税早見表より相続税は315万円と確認できます。 →最新の「相続税早見表(特典)」をダウンロード 【具体例】遺産総額1億円のケースの取得者ごとの相続税 遺産総額1億円の場合に実家の自宅を取得するのが「母親」の場合と「子ども(別居)」の場合に分けてそれぞれ相続税がいくらかかるのか見ていきましょう。 【具体例】 (親族図) (財産構成:遺産の総額:1億円) ①実家の家屋:500万円 ②実家の土地:5,000万円                  ③預貯金:4,500万円 (注)相続税は法定相続分(母:1/2、長男:1/4、二男:1/4)で遺産分割しているものとしております。    遺産分割の方法は相続人全員の同意により自由に取り決めることが可能です。 遺産分割の方法については第3章(Q1~4)をご覧ください。 【具体例】「母親又は長男(同居)が実家の自宅を取得した場合」 ・相続税 60万円 ・遺産総額 6,000万円(1億円▲4,000万円) (※1)小規模宅地等の特例について▲4,000万円(5,000万円×80%)適用可能 (※2)配偶者の税額軽減について適用可能 【具体例】「二男(別居)が実家の自宅を取得した場合」 ・相続税 315万円 ・遺産総額 1億円 (※1)小規模宅地等の特例については適用不可 (※2)配偶者の税額軽減について適用可能 【具体例】「取得者ごとの相続税の比較」 取得者の違いにより相続税に255万円(315万円▲60万円)の差が生じます。 実家の自宅を「母親又は長男(同居)」が取得する場合には、土地について小規模宅地等の特例の適用が可能です。土地の価額の80%を減額することができるため▲4,000万円を財産額より控除できます。 一方で「二男(別居)」が取得する場合には、土地について小規模宅地等の特例の適用はできません。 相続税負担を考えると実家の自宅を取得するのは「母親又は長男(同居)」が良いでしょう。 <税理士の解説👉> 「2大特例」を解説します。具体例のように相続税は「特例の適用可否で大きく差が出ます」 実家の相続を考える上で特に影響の大きい2つの特例をご紹介します。 ①小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等) 小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)は、亡くなった方の自宅の敷地など一定の土地について、土地評価を最大80%減額できる制度です。 <主な要件> ・取得者が以下の①又は②の要件を満たすこと ①「配偶者」であること ②「配偶者以外の親族」の場合   被相続人と同居していること   申告期限までその土地を保有し、引き続きその建物に居住していること ・限度面積は330㎡まで(超えた場合には超えた部分については適用なし) ※その他一定の場合の一定の別居親族などにも認められます。  父親が亡くなった際に子どもが上記特例を受けようとする場合のポイントは「同居」しているかどうかです。既に独立して別居しているような子どもについては配偶者(母親)がいる場合には適用する余地が一切ありません。 つまり「母親」または「同居の子ども」が自宅を取得することが良いでしょう。 ②配偶者の税額軽減 配偶者の税額軽減は、被相続人の配偶者が取得した財産について、次のいずれか多い金額までの相続税が課されない制度です。  A:配偶者の法定相続分相当額(相続人が配偶者と子の場合は1 / 2 )  B:1億6,000万円 配偶者である母親は、父親が亡くなった際に上記特例により多くのケースで相続税は「0円」となります。 第2章 父親が亡くなって母親が自宅を取得しない方が良いケースもある【失敗例(相続税)】 第1章とは異なり母親が自宅を取得することで相続税がかえって増えてしまうケースがあります。 本章では失敗例を具体例に基づき解説します。 2-1【失敗例①】母親がある程度財産を持っている場合 母親がある程度財産を持っている場合には、1次相続(父親の相続)だけでなく2次相続(母親の相続)も踏まえて取得者を考慮するのが良いです。 実家の自宅を取得するのが「母親」の場合と「子ども」の場合に分けて1次相続・2次相続トータルでそれぞれ相続税がいくらかかるのか見ていきましょう。  【失敗例①】 (親族図) (「父」財産構成:遺産の総額:1億円)(「母」財産構成:遺産の総額:1億円) ①実家の家屋:500万円         ①預貯金:5,000万円 ②実家の土地:5,000万円        ②有価証券:5,000万円  ③預貯金:4,500万円 (注)相続税は法定相続分(1次相続 母:1/2、長男:1/4、二男:1/4)(2次相続 長男:1/2、二男:1/2)で遺産分割しているものとしております。   遺産分割の方法は相続人全員の同意により自由に取り決めることが可能です。      遺産分割の方法については第3章(Q1~4)をご覧ください。 【失敗例①】「母親が実家の自宅を取得した場合」 (「父」遺産の取得内容) 母:①実家の家屋:500万円   ②実家の土地:1,000万円(5,000万円▲4,000万円)   ③預貯金:1,500万円    計:3,000万円 長男・二男:預貯金:各1,500万円(3,000万円の1/2) ・(父:1次相続)相続税 60万円 ・遺産総額 6,000万円(1億円▲4,000万円) (※1)小規模宅地等の特例について▲4,000万円適用可能 (※2)配偶者の税額軽減について適用可能 (「母」遺産の取得内容) 長男・二男:①実家の家屋:500万円       ②実家の土地:5,000万円       ③預貯金:6,500万円(1,500万円+5,000万円)       ④有価証券:5,000万円        計:各8,500万円(1億7,000万円の1/2) ・(母:2次相続)相続税 2,440万円 ・遺産総額 1億7,000万円(1億円+7,000万円[父からの相続分]) (※3)小規模宅地等の特例については適用できないものとします。(適用できる場合の詳細は下記<税理士の視点👉>の参考をご覧ください。) ・トータル相続税 2,500万円(60万円+2,440万円) <税理士の視点👉> 上記(母:2次相続)で小規模宅地等の特例が適用できる場合【参考】 「将来同居を予定している」 母親が父親の相続後も自宅に住み続ければ、1次相続(父親の相続時)に同居していない子どもが1次相続後に母親と同居することで特例の適用ができるケースがあります。 「家なき子(別居親族)」 別居している子どもであっても、母親以外に自宅に住んでいる親族がいない・自己所有(子ども所有)の家に住んでいないなど一定の要件を満たす場合には特例の適用ができるケースがあります。 【参考:2次相続で小規模宅地の特例が適用できるものとした場合】 ・(母:2次相続)相続税 1,360万円 ・遺産総額 1億3,000万円(1億円+3,000万円[父からの相続分]) (※4)小規模宅地等の特例について▲4,000万円適用可能 ・トータル相続税 1,420万円(60万円+1,360万円) 【失敗例①】「子どもが実家の自宅を取得した場合」 ・(父:1次相続)315万円 ・遺産総額 1億円 (※1)小規模宅地等の特例については適用不可 (※2)配偶者の税額軽減について適用可能 ・(母:2次相続)相続税 1,840万円 ・遺産総額 1億5,000万円(1億円+5,000万円[父からの相続分]) ・トータル相続税 2,155万円(315万円+1,840万円) 【失敗例①】「取得者ごとの相続税の比較」 取得者の違いにより相続税に345万円(2,500万円▲2,155万円)の差が生じます。 結果的に子どもが実家の自宅を取得した場合には2次相続で母親から相続する遺産総額が少なくなるため、事例のケースでは実家を1次相続で子どもに相続させる方が結果的に相続税負担が少なく済むことになります。 <税理士の視点👉失敗例①まとめ> 失敗例①のケースでは「子どもが実家の自宅を取得する」だけでなく父親の遺産を母親は一切取得せず、全ての遺産を子どもが取得することで相続税負担が大きく軽減されます。 母親が父親の遺産を取得するとその取得した分が2次相続で再度相続税の対象となってしまうからです。2次相続において小規模宅地等の特例など相続税を減額できるケースはまだしも減額できないケースは特に2次相続の負担が重くなります。 父親の遺産を母親が一切取得しないケースを見ていきましょう。 「子どもが実家の自宅を含めて遺産を全て取得した場合(母親は一切取得しない)」 ・(父:1次相続)相続税 630万円 ・遺産総額 1億円 (※1)小規模宅地等の特例については適用不可 (※2)配偶者の税額軽減についても適用不可 ・(母:2次相続)相続税 770万円 ・遺産総額 1億円 ・トータル相続税 1,400万円(630万円+770万円) 父親の遺産を母親は一切取得しないことで相続税負担が大きく軽減します。 (まとめ) 配偶者の税額軽減は、1億6,000万円(又は法定相続分のうち多い金額)まで配偶者の相続税がかからないことになるため有効に活用すべきですが、1次相続(父親の相続)だけでなく2次相続(母親の相続)も踏まえて特例を活用することが重要です。 失敗例①のケースでは小規模宅地等の特例を考慮しなくても、母親が財産を一切取得しないことで、1次・2次相続全体の相続税を大きく軽減させる結果となりました。 2-2【失敗例②】母親が自宅を取得すると相続税の基礎控除を超えてしまう場合 父親及び母親の遺産総額がいずれも基礎控除額(注)以下の場合に母親が自宅を取得することで母親の相続時に相続税が発生してしまうケースがあります。 実家の自宅を取得するのが「母親」の場合と「子ども」の場合に分けて相続税の発生の有無を確認していきます。 (注)基礎控除額:相続税では、すべての人に共通して使える「非課税ライン」である基礎控除があります。 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 【失敗例②】 (親族図) (「父」財産構成:遺産の総額:4,000万円)     ①実家の家屋:1,000万円               ②実家の土地:3,000万円      基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円   (「母」財産構成:遺産の総額:4,000万円) ①預貯金:4,000万円 基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円 【失敗例②】「母親が実家の自宅を取得した場合」 ・(父:1次相続)相続税 0円 ・遺産総額 1,600万円(4,000万円▲2,400万円) (※1)小規模宅地等の特例について▲2,400万円適用可能 ・(母:2次相続)相続税 470万円 ・遺産総額 8,000万円(4,000万円+4,000万円[父から相続した家屋・土地]) (※2)小規模宅地等の特例については適用できません。 ・トータル相続税 470万円(0円+470万円) 【失敗例②】「子どもが実家の自宅を取得した場合」 ・(父:1次相続)相続税 0円 ・遺産総額 4,000万円 (※1)小規模宅地等の特例については適用できません。 ・(母:2次相続)相続税 0円 ・遺産総額 4,000万円 ・トータル相続税 0円 【失敗例②】「取得者ごとの相続税の比較」 取得者の違いにより相続税に470万円の差が生じます。 そもそも遺産額が基礎控除額以下の場合、母親が自宅を取得すると2次相続で相続税が発生してしまうことがあります。1次相続で子どもに相続させることで相続税の発生を防ぐことができます。 第3章 自宅を「母親・子ども」が相続する方法・注意点【Q&A】 ここまでの具体例・失敗例でご紹介した相続税の負担以外の部分を確認します。 そもそも自宅を「母親」「子ども」が単独で取得するのが難しい場合の遺産分割の方法や自宅を売却した場合の特例、その他認知症リスクへの対策など実務で特に重要となる論点にしぼり、一問一答形式でご紹介します。 【Q&A】 Q1:遺産分割の割合は法定相続分じゃないとダメでしょうか? A1: 遺産分割の方法は相続人全員の同意により自由に取り決めることが可能です。   相続人が母・子2人の場合に法定相続分(母:1/2、子:各1/4)で必ず分割しなければならないわけではありません。 Q2:遺産はほぼ実家である自宅のみです。公平に分割するために共有名義(1/3ずつなど)にするのはどうでしょうか? A2: 公平に分割できないから「とりあえず共有名義にしよう」と安易に決めてしまうのは危険です。将来、重大な問題が生じることがあります。 <事例>自宅を兄弟3人が共有したとします。 その後、兄弟の誰かが亡くなると、持分はその人の配偶者や子へ承継され、共有者がどんどん増えていきます。 → 5人 → 10人 → 20人と増えるケースも実際に起こっています。 不動産の共有は「将来の争いの火種」であり、専門家としてはおすすめしません。 ただし、近日中に売却する予定がある場合には「共有取得」や「(注)換価分割」による遺産分割を検討することも良いでしょう。 (注)換価分割(かんかぶんかつ) 不動産を売却し、現金で平等に分ける方法です。(共有取得とは異なり遺産分割協議時点で売却することが確定している場合にとれる方法です。) 将来のトラブルを避けるために「いっそのこと売却して現金で分けたい」という家庭に向いています。 (注意点)売却まで時間がかかる場合もあります。 Q3:遺産はほぼ実家である自宅のみです。自宅を取得する人とそれ以外の人で公平に遺産分割はできませんか? A3: (注)代償分割による遺産分割の方法があります。 (注)代償分割(だいしょうぶんかつ) 不動産を相続した人が、他の相続人に「代償金」を渡す方法です。 実務上、よく使われる方法です。 例:母親が実家を取得 → 代わりに他の相続人に母親保有の預貯金を支払い、バランスを取る。 (注意点)母親に資金力が必要です。 Q4:代償分割により母親が自宅を取得したいのですが、支払う資金が足りません。自宅を売却するしかありませんか? A4: 配偶者居住権を設定することで代償分割以外の方法かつ自宅を売却せずに公平な分割を図ることが可能です。 配偶者居住権とは、自宅に住む配偶者に「住む権利(居住権)」を、「それ以外の権利(所有権)」はその他の相続人が取得するという制度です。 自宅に住む母は自宅の所有権を相続しなくても、居住権だけを相続して引き続き住むことができます。 母は配偶者居住権のみを相続し、他の相続人がそれ以外の権利を相続することができるため代償金を支払わず公平な分割を図ることが可能になります。 <税理士の視点👉> (注意点1)配偶者居住権は単独売却できない 例えば配偶者居住権の設定後にバリアフリーのマンションに移りたい、施設に入るために自宅を売却したい際にも配偶者居住権は単独で売却できません。 この場合にとれる方法は配偶者が生前に配偶者居住権を放棄・合意解除することが考えられますが、贈与税又は所得税が課税されます。 (注意点2)配偶者居住権にも小規模宅地等の特例がある 配偶者居住権・それ以外の権利のいずれも小規模宅地等の特例の適用は可能です。 ただし、母親以外の取得者である子どもは同居要件を満たす必要があります。 よって、小規模宅地等の特例を受けられない子どもがそれ以外の権利を取得する場合には配偶者居住権の設定により相続税がいくらになるのか検討する必要があります。 Q5:売却時に使える可能性がある制度は?(Ⓐ同居の場合) A5:自宅に住んでいる相続人が売却した場合はⒶマイホームの3,000万円特別控除(居住用財産の譲渡所得控除)が使えます。 事例:母親が自宅を相続して売却 母親は実家(戸建)に居住中。通院が増え「駅近マンションへ住替え」を検討。 売却益は3,000万円(売却価額▲取得価額) 売却益から3,000万円を控除し、譲渡所得税は0円となる Q6:売却時に使える可能性がある制度は?(Ⓑ別居の場合) A6:自宅に住んでいない相続人が売却した場合はⒷ空き家の3,000万円特別控除(空き家の譲渡所得特別控除)が使えます。 ※相続した実家が空き家の場合に、要件を満たせば利用できる。 事例:子どもが自宅を取得して、空き家のまま売却を検討 母親は数年前に施設へ入居し、父親は生前に実家で一人暮らしで実家が空き家のまま。 相続後3年以内に売却。 <主な要件> ① 建物:昭和56年5月31日以前に建てられた一戸建て。区分所有建物(マンション)ではない ② いずれかを満たすこと:「耐震基準を満たす建物として売る」「耐震リフォームしてから売る」「建物を解体して更地として売る」 ③ 期限:相続開始から 3年を経過する日の属する年の12月31日まで に売却する ④ 売却代金:1億円以下 Q7:売却時に使える可能性がある制度は? (Ⓒその他) A7:Q5、6以外にもⒸ取得費加算の特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)が使えます。 上記特例は支払った相続税の一部を「取得費」に上乗せできる制度です。 取得費が増えると、売却益(譲渡所得)が少なくなり、結果として所得税・住民税が圧縮されます。 <主な要件> ①支払った相続税がある ②期限:相続開始から3年10か月以内に売却する  ※不動産以外の有価証券などにも適用があります。 <税理士の視点👉> 取得費加算の特例の併用可否について 「Ⓐマイホームの3,000万円特別控除」と「Ⓒ取得費加算の特例」の併用  →併用できます。 「Ⓑ空き家の3,000万円特別控除」と「Ⓒ取得費加算の特例」の併用  →同一の物件に対して併用はできません。 Q8:母親が認知症になった場合のリスクは? A8:「家が動かせない」売却・賃貸・修繕などの法律行為が母親ではできなくなるリスクがあります。 <税理士の視点👉> 認知症になると「法律行為」がほぼできなくなる 認知症などで判断能力が低下すると、売買契約・賃貸契約(貸す・借りる)・リフォーム契約・大規模修繕の同意などの「意思表示が必要な行為」ができなくなります。 <よくある困りごと> 老朽化が進んで建替えたいのに、母の判断能力が低下して同意が取れない 住み替えのために売却したいのに、契約ができず足止め 修繕が必要なのに、所有者としての意思表示ができない 子どもが代わりに手続きしたくても「代理権」がなくてできない こうした状況になると、不動産の運用や管理が完全にストップしてしまいます。 対処するには「成年後見制度」を利用する 母親の判断能力が失われた場合、家族が代理で契約を進めるには家庭裁判所で「成年後見人」を選任してもらう必要があります。 しかし、成年後見制度は次のようなデメリットもあります。 <成年後見制度のデメリット> 裁判所への申立てが必要で手続きが煩雑 専門職後見人(司法書士・弁護士)が就任すると、毎月の報酬が発生 財産の管理はすべて後見人の判断になり、家族が簡単に自由に動かせない 不動産の売却などは裁判所の許可が必要になり、スピード感がない つまり、実務的にはとても負担の大きい制度です。 (対策)認知症への備えとして「家族信託(民事信託)」という選択肢もある リスクを避けるため、母親が元気なうちに「家族信託(民事信託)」を設定することも、近年多く採用されています。 家族信託の仕組みはシンプルに言うと次のとおりです。 (1)母=「委託者(財産を預ける人)」 (2)子=「受託者(財産を管理する人)」 (3)母=「受益者(利益を受ける人)」 この関係を信託契約で結び、母の自宅の管理権限を「子」に移す形になります。 <家族信託を使うメリット> 母が判断能力を失っても、委託された子が不動産を売却・賃貸など可能 成年後見制度より柔軟で、家族で運用しやすい 裁判所の管理下には置かれないため、運用の自由度が高い 相続発生後の財産承継(誰に渡すか)まで設計できる ただし、家族信託は判断能力があるうちに、将来の財産管理を子が代わりにできるようにしておく点がポイントです。また「設計が複雑」なため、専門家のサポートが必要です。 Q9:自宅を取得した子どもが先に亡くなった場合のリスクは? A9:自宅の所有権を有する子どもが亡くなった場合、その所有権は子の配偶者・子の子(母親にとって孫)へ移ります。 そうすると、法的には母親の同意を得なくても、子の配偶者・子の子は自宅不動産を売却できてしまうことになり得ます。もちろん、母に使用貸借又は賃貸借により居住する権限が認められる可能性もあり、その場合買い手がつきにくくなりますが、いずれにしろ母の住む権利を明確にしていないと、生活基盤が不安定になります。元の家族の関係によってはトラブルに発展するリスクがあります。 (対策)配偶者居住権、遺言や家族信託で事前に設計しておく 第4章 まとめ いかがだったでしょうか。 第1章では、父親が亡くなった後は誰が自宅を取得すべきかについて「母親」または「同居の子ども」が自宅を取得することが良いことを相続税負担の観点より解説しました。 第2章では、母親が自宅を取得しない方が良いケースを失敗例にて解説しました。 「母親がある程度財産を持っている場合」や「(母親が自宅を取得することで)相続税の基礎控除を超えてしまう場合」には相続税がかえって増えてしまうことがあることを確認しました。 第3章では、自宅を「母親・子ども」が相続する方法・注意点を解説しました。 そもそも自宅を「母親」「子ども」が単独で取得するのが難しい場合の遺産分割の方法や自宅を売却した場合の特例を紹介しました。 「母親と子ども」のどちらが自宅を取得すべきか検討する上で一番最初にすべきことは「現状把握」です。 あなたの家族の現状で1次相続・2次相続の相続税がいくらかかるのか本コラム特典の「相続税早見表」を利用してまず確認してみてください。 税金以外の家族の事情も大切です。ただし税金面を事前にクリアにしておくことで大切な部分に目を向けることができるのではないでしょうか。 相続時に急に困ることのないように今日から相続対策を考えてみてくださいね    
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