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カテゴリー: 国際相続サポート

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    国際相続サポート

    • 2026.07.28
    • 川崎 朝輝

    アメリカの相続順位について/相続財産・州法による違い・相談先を解説

    アメリカに住んでいた親が、現地で亡くなった——そんな知らせを受けたとき、 葬儀などはひと段落したものの、「親の遺産はどう手続きを進めればいいのか?」と悩まれる方は多くいらっしゃいます。 特に、 日本とアメリカのどちらの法律に従うべきなのか? アメリカで再婚していた場合、相続の扱いはどうなるのか? こうした疑問が、次々と出てくるはずです。 実は、アメリカでは相続に関わるルールは州法によって定められており、州ごとに内容が大きく異なります。 なぜ大きく異なるのかというと、アメリカは建国時に13の州が独立国のような状態で集まったため、 「家族・財産・不動産など“生活に関わるルール”は州が決める」 「国防や外交など“国家としての役割”だけを連邦政府が担当する」 という構造で成り立ったためです。 この原則が今も続いているため、相続も州ごとにまったく違う仕組みが存在しているのです。 そのため、アメリカの法律に従う場合は “どの州の法律が適用されるのか” までが重要になります。 この記事では、 ・どの法律(どの州法)が適用されるのか ・主な州(カリフォルニア・ニューヨーク・ハワイ)の相続順位と取り分 ・日本の相続との違い、注意点 をわかりやすく整理し、遺産手続きを進めるための最初の道しるべとして解説していきます。 まずは、この記事を参考に、状況を整理しながら、落ち着いて相続手続きを進めていきましょう。 【当記事は2026年1月1日時点の法令に基づき作成しております。】 第1章 アメリカで相続順位を考える場合、法律が適用される国を確定する 国によって法律が異なるため、アメリカなど海外が関係する相続の場合、どこの法律が適用されるのかを確定させる必要があります。 1-1 アメリカで相続順位を確定させるには、まず準拠法を確定させる まず、相続順位を確定するためには、準拠法を確定させなければなりません。 <日本の法律> 日本では、「相続は、被相続人の本国法による」と規定しています。(通則法第36条) そのため、被相続人(亡くなった人)の国籍のある国の法律を適用することになっています。 亡くなった方が日本国籍の場合 日本法を適用 亡くなった方がアメリカ国籍の場合 アメリカ法を適用 <アメリカの法律> アメリカは日本と異なり、資産の種類によって適用する法律が異なります。 不動産 その不動産がある州(又は国)の法律 動産や金融資産 亡くなった人の最終的なドミサイル(Domicile)がある州(又は国)の法律 ※ドミサイルとは、その人の固定的な本拠地で、仮にそこを離れても戻る意思を持っている場所のことを言います。日本でいう住所や居所地とは異なる考え方です。   1-2 ケース別 ➀ アメリカで亡くなったアメリカ人が所有していた日本の不動産 このケースを考えると 日本の考え方だと国籍で判断するため『アメリカ国籍だからアメリカ法(州法)を適用』 アメリカの考え方だと不動産の所在地で判断するため『不動産が日本にあるから日本法を適用』 と異なることになります。 実は、この場合、日本の法律に従うことになっています。(法律用語で反致といいます。) 通則法第41条に「当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。」と規定されています。 つまり、 日本の原則 → アメリカ法に従え (当事者の本国法によるべき場合において) アメリカの原則 → 日本法に従え (その国の法に従えば日本法によるべきときは) この場合は、日本法によると定めています。 (日本法による。) ② 日本人(ドミサイルはアメリカ)が所有していたアメリカの金融資産 このケースも日本とアメリカで判断基準が異なります。 日本の考え方だと国籍で判断するため『日本国籍だから日本法を適用』 アメリカの考え方だとドミサイルで判断するため『アメリカ法を適用』 この場合は、アメリカの法律に基づき手続きをすることにならざるを得ないと考えられます。 なぜなら、アメリカの金融機関では日本の法律に従って手続きをしてもらえない可能性が高いためです。 実際に手続きを進めるにあたっては国際相続に精通する現地の専門家に確認をする必要があります。 1-3 分け方が確定している財産 州法に規定されている相続順位や取り分などを適用する前に、分け方が確定している場合があります。 具体的には、次の通りです。 1-3-1 遺言書(Will)がある場合 日本でも同様ですが、有効な遺言書がある場合は、その内容に従って財産を分けます。 1-3-2 受取人の指定(POD、TODR、TODD) 所有者が死亡したときに、財産を受け取る人をあらかじめ指定しておく制度です。 ・POD(Payable on Death)は銀行口座の受取人指定 ・TODR(Transfer on Death Registration)は証券の口座の受取人指定 ・TODD(Transfer on Death Deed)は不動産の死亡時譲渡証書 1-3-3 ジョイント・アカウント、ジョイント・テナンシー 複数の人が共同で財産を所有しておくことで、共同所有者のうちの一人が死亡した場合、その持分が自動的に生存する共同所有者に移転します。 ・ジョイント・アカウント:共同名義の銀行口座 ・ジョイント・テナンシー:不動産などの共同所有 1-3-4 リビングトラスト(生前信託) 信託契約で財産の管理・承継方法(誰に承継するかを含め)を指定しておく制度です。 1-3-5 生命保険や退職口座(401K、IRAなど) 生命保険や退職口座については契約で受取人を指定します。 これらの財産に該当しない場合には、州ごとに定められた法律に基づいて財産を分けることになります。 次章では主な州の財産の分け方について確認をしていきます。 第2章 主な州の相続順位の比較 冒頭で記載した通り、アメリカでは相続に関して州ごとに法律を定めているため、州ごとに相続順位や配偶者の取り分などが大きく異なります。 今回は、日本人に関係することの多いカリフォルニア、ニューヨーク、ハワイの3つの州について確認をします。 2-1 カリフォルニア州 <配偶者がいる場合> カリフォルニア州は、コミュニティ財産という考え方があります。 コミュニティ財産とは、婚姻期間中に夫婦で築いた財産で夫婦共有財産と考えます。 夫婦共有の財産のため、コミュニティ財産はすべて配偶者が取得することになります。 そのため、配偶者がいる場合は、まず、コミュニティ財産とコミュニティ財産以外の財産(特有財産:結婚前から保有している財産や相続や贈与で取得した財産など)に分ける必要があります。 コミュニティ財産の分け方 すべて配偶者(遺言等がない場合) 特有財産の分け方 ケース1:配偶者+子ども1人                    → 配偶者1/2、子1/2 ケース2:配偶者+子ども2人以上                   → 配偶者1/3、子ども全体で2/3 ケース3:配偶者+子なし+親あり                   → 配偶者1/2、親1/2 ケース4:配偶者+子なし+親なし+兄弟姉妹あり                   → 配偶者1/2、兄弟姉妹1/2 ケース5:配偶者のみ(子・親・兄弟姉妹なし)                   → 配偶者100% <配偶者がいない場合> 配偶者がいない場合はコミュニティ財産と特有財産にわける必要がありません。 すべての財産について、以下の順番で相続することになります。 ①子ども→②親→③兄弟姉妹→④祖父母→⑤祖父母の子孫(おじおばやいとこ)→⑥亡くなった配偶者に子どもがいる場合はその子ども 2-2 ニューヨーク州 ニューヨーク州の場合は、コミュニティ財産という考え方はありません。 そのため、亡くなった方の財産すべてについて次の割合で相続することになります。 配偶者 子ども 親 兄弟姉妹 ケース1 5万ドル+ 残りの1/2 残りの1/2 0 0 ケース2 100% 不存在の場合 0 0 ケース3 不存在の場合 100% 0 0 ケース4 不存在の場合 不存在の場合 100% 0 ケース5 不存在の場合 不存在の場合 不存在の場合 100% 2-3 ハワイ州 <配偶者がいる場合> ハワイ州にもコミュニティ財産という考え方はありませんが、基本的に配偶者が財産を相続することになります。 そのため、子どもがいても基本的にすべて配偶者が取得することになります。 ケース1:配偶者+子なし+親なし                    → すべて配偶者  ケース2:配偶者+子あり                    → すべて配偶者 ケース3:配偶者+子なし+親あり                    → 配偶者40万ドルと残りの3/4、親は残りの1/4 ケース4:配偶者+子あり+被相続人に配偶者以外との子どもがいる      → 配偶者22万ドルと残りの1/2、その子どもが残りの1/2 ケース5:配偶者+子あり+配偶者に被相続人以外との子どもがいる      → 配偶者33万ドルと残りの1/2、被相続人の子どもが残りの1/2 <配偶者がいない場合> 配偶者がいない場合は、以下の順番で相続することになります。 子ども→②親→③兄弟姉妹や甥姪→④祖父母の子孫(おじおばやいとこ)   このように州によって相続の順番や分け方が大きく異なっています。 そのため、まずはどこの法律が適用されるのかを明確にし、その法律に精通した専門家に依頼をする必要があります。 また、亡くなった方若しくは相続人のいずれかが日本に居住している場合、基本的に日本国外にある財産についてもすべて日本の相続税の対象となります。 次章で専門家を選ぶ際のPointを確認します。 第3章 専門家を選ぶ際の4つのPoint 現地の制度や相場を理解し、日本と現地の専門家が連携できる体制を作ることが、海外相続をスムーズに進める最大のポイントです。特に、日本の専門家を経由して現地の専門家を探すことで手間やリスクを大きく減らせます。 Point1 日本で、海外相続にも精通した専門家に紹介を受けるのが一番のPoint 日本で海外相続にも精通した専門家に紹介を受けるのが一番スムーズです。この後の3つのPointもケアしてもらえます。 自分で現地の専門家を探すのは難しく、報酬や支払いタイミングの交渉も容易ではありません。相場感がないまま契約すると、通常より高い額になるリスクもあります。 国際相続に精通した日本の専門家(税理士や弁護士)であれば、現地の信頼できる専門家とネットワークを持っていることが多く、このようなリスクも軽減できます。また、日本の税務も必要な場合は、一緒に依頼できるメリットもあります。 Point2 州ごとに法律や手続きが違うので適用する法律に精通した専門家を探す アメリカは州ごとに法律が違います。 どの州の法律が適用されるのか確認し、その州に精通した専門家を選ぶことが必要です。 カリフォルニア州の法律に基づいて手続きが必要なのにニューヨーク州専門の弁護士に依頼してしまうとスムーズに手続きが進まないことがあります。 Point3 報酬形態と相場を必ず確認する 現地専門家の報酬は、日本の専門家よりも高額になることが多いです。 それでも、現地での相場として高額なのか妥当なのかについては検討をする必要があります。 なお、主な報酬形態は『遺産総額の○%(例:2〜5%)』『タイムチャージ制(時間あたり○ドル)』のいずれかです。 Point4 報酬を支払うタイミングを確認する 海外の手続きは長期間になることが多いです。 亡くなった方の財産の名義変更手続きなどが完了するまでは、費用を一時的に相続人が立て替える必要があります。 契約によっては、報酬の一部を名義変更完了後に支払うことも可能です。支払時期によって相続人の資金負担が大きく変わるので注意が必要です。 現地の専門家選びは、費用や期間だけでなく、日本での税務との連携も欠かせません。 次の章では、日本の税務の注意点を取り上げます。 第4章 海外の手続きに長期間かかっても日本の相続税は待ってくれない 海外の手続きにどれだけ時間がかかっても、日本の相続税の期限は延びません。 日本の相続税の期限は「相続開始を知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内」です。この期限内に相続税の申告と納税をする必要があります。 亡くなった方と相続人のいずれかでも日本に在住している場合、基本的に海外の財産も含めて日本の相続税の対象になります。 手続きが間に合わない場合は財産の分割が完了していないもの(未分割)として一度申告し納税をすることになります。 その後、手続きが完了し財産の分配が行われた後、必要に応じて申告書を修正し提出することになります。 なお、日本の相続税には各種特例が設けられておりますが、未分割の場合には適用できないものがあります。そのため、手続きが間に合わない場合にはそれらの特例を受けずに申告することになります。 第5章 アメリカに財産があり、お困りの場合はぜひ税理士法人マインライフへご相談ください 財産がアメリカにあり、どのような手続きをすればいいのかわからない・・・。 そのような難しいケースでも、最適なサポート体制が弊社には整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 「海外の財産をどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第6章 まとめ いかがでしたか? アメリカが関係する相続では、「どこの国・どの州の法律が適用されるのか」を最初に押さえることが、いかに重要かイメージしていただけたのではないでしょうか。 このように、アメリカにお住まいのご家族やアメリカ所在の財産が関わる相続では、準拠法や州ごとの相続ルール、日本の相続税の期限、そして日本と現地専門家との連携を意識しながら、計画的に手続きを進めていくことが欠かせません。 この記事のまとめ ・アメリカが関係する相続では、まず「どこの国・どの州の法律(準拠法)が適用されるか」を確認する必要がある。日本法は国籍、アメリカ法は資産の種類やドミサイル(本拠地)によって適用される法律が変わる。 ・遺言書、POD/TOD/TODD、ジョイント・アカウント、リビングトラスト、生命保険や401K・IRAなど、あらかじめ受取人や承継方法が指定されている財産は、その指定どおりに承継され、それ以外の財産について各州の相続順位・取り分が適用される。 ・アメリカでは、州によっても配偶者や子ども、親、兄弟姉妹の相続順位や取り分が大きく異なるため、「どの州法が適用されるか」を明確にしたうえで、その州法に精通した現地専門家に依頼することが重要である。 ・海外の手続きが長期化しても、日本の相続税の申告・納付期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)は延びず、亡くなった方または相続人のいずれかが日本に居住している場合は海外財産も含めて相続税の対象となる。手続きが間に合わない場合は未分割で一度申告し、後から修正することになり、一部特例が使えないこともある。 ・国際相続を円滑に進めるには、海外にも精通した日本の税理士・弁護士を窓口にし、報酬の相場や支払時期も確認しながら、適用される州法に詳しい現地専門家と連携して進めることが大切。 海外に財産がある相続で「何から手をつければいいのかわからない…」という方は、一人で抱え込まず、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 ※本記事における日本国外の情報は、一般に公表されている基本的な内容を平易に解説したものです。具体的な実務にあたっては現地専門家への確認が必要となります。
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    国際相続サポート

    • 2026.07.21
    • 久保 佑介

    相続税の国際二重課税とは?課税パターンと国ごとの違いを整理

    海外口座、海外株式、海外不動産などをお持ちの方が亡くなった場合、「日本でも海外でも相続税がかかるのではないか」と不安に感じる方は多いです。 特に、海外赴任経験がある方や、現在も海外金融資産を保有している方は、相続発生後に初めて「海外財産も日本の相続税の対象になる可能性がある」と知るケースがあります。 ただし、海外財産があるからといって、必ず二重課税になるわけではありません。 海外相続で二重課税に該当するかを判断するための考え方を、具体例と国ごとの違いを交えて解説します。 【当記事は2026年1月1日時点の法令に基づき作成しております。】 「二重課税」専門家の3つの視点👉 ・日本の相続税がかかるか ・海外でも相続税に相当する税金がかかるか ・その二重課税を外国税額控除などで調整できるか 第1章 海外相続で二重課税に該当するかを判断する 海外相続の二重課税は、「日本で課税されるか」「海外で課税されるか」「同じ種類の税金が重なっているか」の順番で確認します。 1-1 日本の相続税がかかるか(日本の相続税の課税範囲を確認する) まず確認すべきことは、海外財産が日本の相続税の対象になるかどうかです。 日本の相続税では、相続人が日本に住所を有している場合など、一定の要件に該当すると、国内財産だけでなく海外財産も含めて「取得したすべての財産」が課税の対象になります。 たとえば、日本人である日本居住者が海外預金を相続した場合「海外にある財産だから日本の相続税は関係ない」とはならず、「取得したすべての財産」に日本の相続税がかかります。 日本の相続税がかかるかどうかを判断する際には、主に次の点を確認します。 ・被相続人(亡くなった人)が相続時にどこに住んでいたか ・相続人が相続時にどこに住んでいるか ・被相続人と相続人の国籍 ・過去10年以内の日本居住歴 ・取得した財産が国内財産か国外財産か 【日本の相続税がかかる範囲の判定表】 ※1 外国人被相続人を除く 外国人被相続人…相続開始時に一定の在留資格を有するもの。 ※2 一時居住者を除く 一時居住者…相続開始時に一定の在留資格を有する者で、相続開始前15年以内の国内居住期間の合計が10年以下であるもの。 ※3 非居住被相続人の前提 非居住被相続人…相続開始前10年以内において、国内に住所を有していた期間中、継続して日本国籍がなかったもの。 特に日本居住の相続人が海外財産を取得する場合には、日本の相続税申告にその海外財産を含める必要があるかを早めに確認することが重要です。 1-2 海外でも相続税に相当する税金がかかるか 次に、海外側で相続税に相当する税金がかかる国であるかを確認します。 海外で課税されるかどうかは、国ごとに大きく異なります。相続税がある国もあれば、遺産税という形で課税する国もあり、相続税自体がない国もあります。 確認すべきポイントは次のとおりです。 ・財産がどの国にあるか ・被相続人(亡くなった人)がその国の居住者または国籍保有者だったか ・相続人がその国の居住者か ・その国に相続税、遺産税などがあるか たとえば米国では、相続に関するものとして「遺産税」があります。 米国遺産税は日本の相続税とは異なり、財産を遺す側である被相続人(亡くなった人)が納税義務者です。 被相続人(亡くなった人)が米国市民・米国居住者であるか、米国非居住者であるかにより税金の取扱いが異なります。 米国非居住者(日本居住)であっても、米国にある財産については米国遺産税の対象になります。 なお、州によっては連邦税以外の州税としての遺産税(相続税)が存在します。 一方で欧州については国ごとの確認が必要です。相続税はEUルールで決まるものではなく、各国ごとの情報を確認する必要があります。 また、国によっては、日本の相続税に相当する税金がない場合もあります。 シンガポール・中国・オーストラリア・ニュージーランドなどではそもそも相続税に相当する税金がありません。 つまり、海外相続では「海外財産があるか」だけでなく、「どの国に財産があるか」を国別に整理することが重要です。 1-3 二重課税を外国税額控除で調整できるか 相続税の外国税額控除とは、「海外財産」に対して日本と海外の両方で相続税がかかるときに、二重課税を調整するための制度です。(二重課税についての判断の基準は下記コラムをご参照ください。) たとえば、イギリスにある財産に対して、日本の相続税とイギリスの相続税の両方がかかってしまう場合 【例】 日本に住んでいる方が、日本に5億円の財産、イギリスに5億円の財産がある状態で亡くなった。 相続人は日本に住んでいる子ども1人。 日本の相続税:全世界の財産(10億円)に対して日本の相続税約4.5億円が発生 イギリスの相続税:イギリス財産(5億円)に対してイギリスの相続税約2億円が発生 日本の相続税約4.5億円から、外国税額控除によってイギリスの相続税約2億円を差し引き、残りの約2.5億円を納めることとなります。 つまり、「海外財産」について2国間において重複して相続税がかかるケースでは、海外で支払った相続税を日本の相続税から差し引けるように外国税額控除を活用することが重要です。(一定の控除限度額があります。) 相続税の外国税額控除とは?制度概要と日本で適用する手続きの全体像 (コラム)👉二重課税に該当するか判断する基準 ここまで確認してきましたが「相続税の二重課税」は、日本の相続税と海外の相続税に相当する税が「海外財産」に重なって課税されるケースを指します。 なお、日本の相続税と海外のキャピタルゲイン課税が生じるケースは、日本と海外の二国間で課税はされますが、税の種類が異なり相続税の二重課税が生じているとは言えません。 相続税の二重課税に該当するかは、次のように整理できます。 つまり、海外で何らかの税金を払ったとしても、それが「相続税に相当する税」なのか、それとも所得税、登録税、印紙税なのかを区別する必要があります。 なお、連邦税と州税(州独自のもの)として遺産税(相続税)が存在する米国の場合には、国際間の二重課税が発生した場合にも外国税額控除の対象は連邦税に限られるケースなどがあるため留意が必要です。 第2章 【具体例】二重課税が発生するパターンを整理する 本章では具体的にどのようなケースにおいて相続税の二重課税が生じるのか確認していきます。 また、制度の異なる海外の国が関与することによる留意点についても確認していきます。 2-1 日本と海外で相続税が課税されるケースを確認する(具体例) 日本と海外で相続税が課税される典型例は、日本の相続税の対象になる国外財産について、財産がある国でも相続税に相当する税金が課税されるケースです。 そのほか日本の財産であっても被相続人(亡くなった人)の住所地などが海外である場合、その国のルールにより相続税に相当する税金が課税されるケースがあります。 【具体例1:日本居住者が米国財産を相続したケース】 日本居住者である日本人が米国財産を相続したケースの具体例 被相続人(亡くなった人):日本に住んでいる日本人 相続人:日本に住んでいる日本人 対象財産:米国財産 日本相続税:国外財産として相続税の課税対象になります。 米国遺産税:米国財産は遺産税(相続税)の課税対象になります。 【結果】同じ米国財産に対して二重課税が生じます。  ※ 被相続人が日本人であるため日米相続税条約による特例計算があります。 専門家の視点👉 ~日米相続税条約~ 2026年現在、被相続人が米国市民または米国居住者の場合の米国遺産税の基礎控除額は1,500万ドル(約22億5,000万円/1ドル=150円)となっています。 一方、被相続人が米国非居住者の場合の基礎控除額は6万ドル(900万円/1ドル=150円)となっています。 つまり、米国非居住者である日本人にとっては基礎控除の適用に大きな差があります。 日米相続税条約では、被相続人が米国非居住者であったとしても日本人である場合には、米国市民、米国居住者の基礎控除額を基準とした特例計算が認められています。 <特例計算の例> 米国非居住者である日本人 全世界にある財産:300万ドル(うち米国財産:100万ドル) 基礎控除額【1,500万ドル】×(米国財産【100万ドル】 ÷ 全世界の財産【300万ドル】)=500万ドル(7.5億円/1ドル=150円) つまり米国では500万ドル(7.5億円/1ドル=150円)まで米国遺産税がかからないことになります。なお、この特例計算の適用を受けるには、米国遺産税の申告期限内に全世界財産を開示して申告し、日米相続税条約の適用をする必要があります。 【具体例2:日本居住者が米国市民から日本財産を相続したケース】 日本居住者が米国市民である被相続人から日本財産を相続したケースの具体例 被相続人(亡くなった人):米国市民 相続人:日本に住んでいる人 対象財産:日本財産 日本相続税:国内財産として相続税の課税対象になります。 米国遺産税:国外財産も遺産税(相続税)の課税対象になります。 【結果】同じ日本財産に対して二重課税が生じます。 ※この二重課税は日本財産に対するものであるため、日本の外国税額控除(対象は国外財産)では調整できず、米国側での二重課税の調整の可否を確認する必要があります。 【具体例3:被相続人がイギリスの長期居住者であったケース】 イギリス、フランス、ドイツ、スペインなどに財産がある場合も、国ごとの相続税制度を確認する必要があります。 たとえばイギリスでは、イギリス財産のほか、被相続人が一定期間イギリス居住者(長期イギリス居住者:long-term UK resident)であった場合には全世界の財産が課税対象になり得ます。 日本居住者がイギリスから帰国(長期イギリス居住者に該当)した被相続人から日本財産を相続したケースの具体例 被相続人(亡くなった人):イギリスに20年住んでいた(その後日本に帰国し2年後に亡くなった) 相続人:日本に住んでいる人 対象財産:日本財産 日本相続税:国内財産として相続税の課税対象になります。 イギリス相続税:国外財産も相続税の課税対象になります。 【結果】同じ日本財産に対して二重課税が生じます。 ※この二重課税も日本財産に対するものであるため、日本の外国税額控除では調整できず、イギリス側での調整措置の確認が必要です。 【理由】イギリス国内に財産はないが、long-term UK resident (長期イギリス居住者)に該当する。 よって全世界にある財産がイギリス相続税の課税の対象となります。 このように、海外側の課税範囲は「財産の所在地」だけでなく、「被相続人や相続人の居住地など」によって変わることがあります。 2-2 課税タイミングのズレによる留意点を確認する(具体例) 国際相続では、日本と海外で申告期限や手続きの進み方が異なるため、課税タイミングのズレにも注意が必要です。 日本の相続税申告は、原則として被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。一方、海外では国によって相続税額が確定しない事情やそもそも申告期限が異なります。 【具体例1:日本の申告期限までに海外税額が確定しないケース】 海外相続では、現地の相続手続(プロベート)が長引き、日本の相続税申告期限である10か月以内に海外の相続税額が確定しないケースがあります。 特に米国・イギリスなどでは、被相続人(亡くなった人)の財産を正式に相続人へ移転するために、裁判所を通じた「プロベート(Probate)」手続が必要になる場合があります。 たとえば、米国不動産などを保有していたケースでは、次のような流れになることがあります。 被相続人(亡くなった人):日本居住の日本人 相続人:日本居住者 対象財産:米国不動産 ①現地裁判所でプロベート開始 ↓ ② 遺言書の有効性確認、相続人確認、遺産管理人などを任命 ↓ ③ 現地弁護士・会計士による財産調査、財産評価を実施 ↓ ④ 米国遺産税の申告・納税額が確定 ↓ ⑤ 裁判所の許可後、財産分配 【結果】このようなケースでは、米国のプロベートだけで1年以上かかることもあります。 一方、日本の相続税申告期限は「10か月」です。 つまり、日本の申告期限の時点では、米国遺産税額が未確定という状況になることがあります。 この場合、日本の相続税申告では、仮に国際間の二重課税が生じると想定されていたとしても、プロベートが完了しておらず税額が未確定のため、外国税額控除の適用はできず、申告を行うことになります。 また、プロベート開始後は、裁判所の承認が得られるまで、対象資産は原則として凍結されることになります。 日本の相続税の計算に含めることとなった海外の財産につき自由に処分できないことは納税資金の確保の観点からも留意する必要があります。 その後、プロベートが完了し税額も確定した段階で、外国税額控除を適用した申告書を再提出(更正の請求手続き)し、還付を受けることを検討することとなります。 プロベートが必要な国では生前にプロベート回避を検討することが重要です。 (プロベートの詳細についてはこちらの記事をご参照ください) 【具体例2:海外の申告期限が日本と異なるケース】 海外相続では、日本と海外で申告期限が異なるため、外国税額控除の適用可否に注意が必要です。 日本の相続税申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」です。 一方、海外では国ごとに申告期限や延長制度があるなど日本とは異なります。 日本より海外の申告期限が長いケースは海外税額が日本の申告時点では未確定という状況がありえます。 二重課税が生じても海外税額が未確定では、外国税額控除の適用はできず、申告を行うことになります。 日本より申告期限が長くなるケースがある国 米国:遺産税申告の期限は、原則として死亡日から9か月以内です。    ただし、期限前に申請を行うことで、6か月の延長が認められる場合があります。    そのため、実務上は最大15か月程度まで申告期間が延びるケースがあります。 フランス:フランス国内で相続発生した場合は6か月以内に申告する必要があります。      フランス国外で相続発生した場合は12か月以内に申告する必要があります。 フランス財産を保有していたケース 被相続人(亡くなった人):日本居住の日本人 相続人:日本居住者 対象財産:フランス財産 フランス相続税の申告手続きを期限内(12か月以内)ギリギリに完了させた。 【結果】日本の外国税額控除の適用には、日本の申告期限(10か月以内)までにフランスでの申告を完了させる必要があります。事例では日本の当初申告の際にはフランスとの二重課税を調整できません。 その後、フランスでの申告・納税が完了した段階で、更正の請求により外国税額控除の適用と還付を検討します。 第3章 国ごとの違いを整理する 海外相続では、国ごとに課税方式や手続きの進め方が異なるため、日本との違いを押さえておくことが重要です。 3-1 米国 米国の相続税は、基礎控除額の大きさと、国だけでなく州独自の遺産税が存在するケースがあることが特徴です。 「専門家の視点👉」での解説の通り、米国市民または米国居住者の場合基礎控除額は1,500万ドル(約22億5,000万円/1ドル=150円)です。米国非居住者であったとしても日本人である場合には、米国市民、米国居住者の基礎控除額を基準とした特例計算が認められています。 よって、そもそも米国遺産税がかからないケースも多いです。 なお、連邦税と州税としての遺産税(相続税)が米国には存在します。 日米相続税条約が対象とするのは連邦税であり、州税としての遺産税は条約の対象外です。 州税に日本の外国税額控除を適用できるかは取扱いが明確でない部分があるため、州税が課された場合には、日本の相続税と二重負担となるリスクも含めて個別に確認が必要です。 【2026年最新版】アメリカの相続税(遺産税)を徹底解説|日本との違い・二重課税の防ぎ方【プロが解説】 3-2 欧州 欧州は国ごとに相続税の仕組みが異なります。ここでは、フランスを例に確認します。 フランスの相続税は、相続人と被相続人(亡くなった人)の親族関係や取得財産の額に応じて税率が変わる累進税率が特徴です。 兄弟姉妹が相続する場合、課税額に応じて35%または45%の税率が適用されることがあります。 日本に比べて税負担が重くなるケースもあるので留意が必要です。 たとえば、フランス財産に日本とフランスの相続税が二重に課税された場合には外国税額控除が適用できます。 ただし外国税額控除には限度額があり、日本で海外財産に課される相続税の金額が限度になります。 相続財産の合計:1億円(日本7,000万円+フランス3,000万円) 日本の相続税:1,000万円 フランス相続税:400万円 ➀【フランス相続税】 400万円 ➁【フランス財産に係る日本相続税】 1,000万円 ×(3,000万円 ÷ 1億円)= 300万円 →控除できるのは少ない方の②300万円となります。 海外での税負担が重い場合には、日本の相続税計算では海外で課された税金の全額を控除できません。 3-3 相続税がない国の扱いを確認する 国によっては、日本の相続税に相当する税金がない場合もあります。 たとえば、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどでは、日本のような相続税はありません。 現地に相続税がない国では、日本と海外で相続税同士の二重課税は通常発生しません。 ただし、相続時または相続後の売却時にキャピタルゲイン課税が発生する場合があります。 また、現地に相続税がない場合でも、日本居住者が海外財産を相続する場合には、日本の相続税申告に含める必要があるかを確認することが重要です。 【徹底解剖】シンガポール移住と相続税のポイント オーストラリアに相続税はある?日本との違いと課税ルールを徹底解説 中国の財産に相続税はかかる?日本在住者が確認すべき相続時の注意点 第4章 国際相続・贈与の相談は「税理士法人マインライフ」へ 相続財産が国際間をまたぐものであるため手続きが複雑になるかもしれない・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 国際相続の経験が豊富な専門家が直接対応 少数精鋭体制で、経験豊富な税理士が必ず対応。 担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告・対策に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、相続に特有の実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 海外の専門家との連携体制が整っており、海外の財産や海外在住者の手続きに対応が可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる税計算だけではなく、納税資金対策や二次相続対策など、将来を見据えたオーダーメイドの提案が得意です。 ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第5章 まとめ 相続税の国際間での二重課税についてここまで確認してきました。 第1章では日本及び海外の二国間において相続税がそれぞれかかるか、また二重課税を外国税額控除で調整できるかをそれぞれ解説しました。 第2章では具体例でどのような場合に二重課税が発生するのか、また制度の異なる海外の国が関与することによる留意点を確認しました。 第3章では海外の国ごとの違いを整理しました。詳細は各国のコラムにて確認してみてください。 国際間をまたぐ相続については、日本と海外で二重課税が生じるケースが多々あります。また各国での制度やルールは異なります。 そこで大切になるのは日本と海外双方の制度に精通した税理士や現地専門家です。 手続きの漏れや課税リスクを回避するためにも専門家への相談が最善の方法になります。   ※本記事における日本国外の情報は、一般に公表されている基本的な内容を平易に解説したものです。具体的な実務にあたっては現地専門家への確認が必要となります。
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    国際相続サポート

    • 2026.07.08
    • 伊藤 千尋

    税理士が教える。二重国籍の方の相続のポイント!

    二重国籍と相続税の話は、最初はとても難しく感じます。 ですが、最初から細かい条件を全部覚える必要はありません。 大切なのは、日本の相続税がどこまでの財産にかかるのかを先に確認することです。 そのうえで、亡くなった方が二重国籍なのか、相続する人の一人が二重国籍なのかで、追加で気をつけるポイントを見ていくと整理しやすくなります。  第1章 二重国籍とは何か 相続税の話に入る前に、まずは「二重国籍」を簡単に確認しておきましょう。 法務省は、日本の国籍と外国の国籍をあわせて持つ人を「重国籍者」と案内しています。 一般には「二重国籍」と呼ばれることが多いので、この記事でもその言い方で進めます。  1-1 生まれたときから二重国籍のパターン 二重国籍になる人の中には、生まれたときから日本国籍と外国国籍の両方を持つ人がいます。 たとえば、日本人の父と米国人の母の子どもが米国で生まれた場合、日米の両方の国籍を持つことがあります。  1-2 途中から外国籍を持つようになるパターン 一方で、あとから外国籍を持つようになる人もいます。 ただし、ここは注意が必要です。 日本の国籍法では、自分の意思で外国の国籍を取得したときは、日本国籍を失うとされています。 本人は「二つの国籍を持っているつもり」でも、日本の法律ではそうではないことがあります。 相続税では、この違いがそのまま判定に影響することがあります。  1-3 国籍選択をした人も注意が必要 二重国籍の人には、国籍選択が必要になる場合があります。 二重国籍者は18歳に達する前に重国籍となった場合は22歳に達するまで、18歳に達した後に二重国籍となった場合はその時から2年以内までにいずれかの国籍を選択する必要があります。 ただし、日本国籍を選んだからといって、それだけで外国国籍が自動的に消えるとは限りません。相手国の制度によっては、外国国籍がそのまま残ることがあります。  国籍選択をした人ほど、書類で現在の状態を確認してから話を進めたほうが安心です。  1-4 相続税で特に大事なのは「昔」より「今」です 特に大事なのは、相続の時点で今も日本国籍があるかを確認することです。 途中で外国籍を取得した人や、国籍選択をした人は、本人が思っている国籍状態と、日本の法律上の扱いが違うことがあります。 たとえば、長く海外で暮らしている人が「昔は二重国籍だったけれど、今もそうだと思う」と考えているケースです。 もし途中で自分の意思で外国籍を取得していれば、日本の法律上は日本国籍を失っていることがありますし、日本国籍を選んだつもりでも、外国国籍の扱いは別途確認が必要なことがあります。 相続税で大切なのは、気持ちの上でどう思っているかではなく、相続の時点で法的にどうなっているかです。 ここを確認しないまま相続税の手続きを進めると、入口からずれてしまいます。 第2章 相続税がどこまでかかるかをフローチャートで確認 相続税で最初に確認したいのは、日本の相続税がどこまでの財産にかかるのかです。 ここは条件が細かく分かれるため、添付のフローチャートを見ながら確認してください。 次章以降で亡くなった方または相続人が「二重国籍」だった場合のポイントを詳しく解説します。 また、以下の判定表でも日本の相続税がかかる財産の範囲を判定できます。 ※1 外国人被相続人を除く 外国人被相続人…相続開始時に一定の在留資格を有するもの。 ※2 一時居住者を除く 一時居住者…相続開始時に一定の在留資格を有する者で、相続開始前15年以内の国内居住期間の合計が10年以下であるもの。 ※3 非居住被相続人の前提 非居住被相続人…相続開始前10年以内において、国内に住所を有していた期間中、継続して日本国籍がなかったもの。 第3章 亡くなった方が二重国籍だった時の相続のポイント ここでは亡くなった方が二重国籍だった場合のポイントを解説します。 3-1 二重国籍者でも亡くなった時点で日本国籍を有していれば日本国籍者と同様に扱う 亡くなった方が二重国籍でも、亡くなった時点で日本国籍を有していたのであれば日本国籍者と同様に扱います。 つまり、どこまで日本の相続税がかかるかは、相続の時点の住所などをフローチャートで確認します。 ここで大事なのは、「亡くなった方が二重国籍だから相続税も必ず特別になる」と考えないことです。 3-2 もう一つの論点は「準拠法」 亡くなった方が二重国籍だったときに、相続税とは別に出てくるのが準拠法です。 準拠法とは、「だれが相続人になるのか」、「どのように遺産を分けるのか」を、どの国の法律で決めるかというルールです。 日本の相続のルールでは、相続は原則として亡くなった方の本国法によります。  3-3 日本国籍を含む二重国籍なら、日本法で整理できることが多い 日本の相続のルールでは、二つ以上の国籍がある人について、国籍の一つが日本であれば、日本法をその人の本国法とすると定めています。 そのため、たとえば亡くなった方が日米二重国籍だった場合、相続のルールは日本法で整理できることが多いです。 たとえば、父が日米二重国籍で最後まで東京に住み、日本に自宅と預金、米国に証券口座や不動産を持っていたケースです。 この場合、相続税の課税範囲は第2章のフローチャートで確認します。 一方で、だれが相続人になるのか、遺言がなければどのように分けるのかといった基本的な相続ルールは、日本法を基準に考えることになります。 ただし、米国内の不動産などについては、現地での手続や現地法上の検討が別途必要になることがあります。 つまり、税金の問題、相続の準拠法の問題、現地手続の問題は分けて整理すると分かりやすいのです。 一言解説「反致」 亡くなった方が海外にも財産を有していたケースでは、「反致」という言葉が出てくることがあります。 反致とは、いったん外国法で考えることになっても、その外国のルールに従うと日本法で考えることになる場合をいいます。 特に外国に不動産を有しているようなケースでは、この反致が起こることがあります。 亡くなった方が二重国籍のケースでは、海外に財産を有していることも多いため、相続税だけではなく、こうした相続のルールの確認も必要になることがあります。  第4章 相続する人の一人が二重国籍だった時のポイント 相続する人の一人が二重国籍だったとしても、相続税では「二重国籍だから特別になる」というわけではありません。 なぜなら、亡くなった方が二重国籍だった場合と同様に、二重国籍でも被相続人が亡くなった時点で日本国籍を有していたのであれば日本国籍者と同様に扱うからです。 したがって、相続税の世界では、亡くなった時点でその人がどこに住んでいるかが入口になりますし、海外に住んでいる人については、最近10年の居住歴などを見ていきます。 つまり、このケースで大切なのは、二重国籍そのものより、相続人ごとに順番に居住地や国籍を確認することです。 なお、海外在住の二重国籍者については、いわゆる「10年ルール※」が関係しやすいため、その点をあわせて整理しておくことが大切です。   ※「10年ルール」とは、相続が始まる前10年以内に日本に住んでいたことがあるかを見るポイントです。詳しくは添付のURLを参照してください。 https://www.mine-life.jp/can-inheritance-tax-be-avoided-by-moving-abroad-the-truth-about-the-10-year-rule-and-future-amendments 4-1 相続税は、相続人ごとに判断 相続税は、家族全員をまとめて一つの答えにするものではありません。 財産を受け取る人ごとに、どこに住んでいるか、どの条件に当てはまるかを見ていきます。 ですから、相続人の一人が二重国籍だったとしても、その人だけを特別扱いするというより、その人を一人の相続人として個別に見ると考えると分かりやすいです。 たとえば、兄は東京在住、妹はロサンゼルス在住の日米二重国籍という家族では、同じ親の相続でも見方は同じではありません。 兄は日本在住者として見ますし、妹は海外在住者として、日本国籍や最近10年の居住歴をフローチャートで確認します。 つまり、相続人の一人が二重国籍でも、結論はその人ごとに決まるということです。 ここを押さえておくと、家族で整理するときも迷いにくくなります。 4-2 日本に住んでいるなら、まず住所を見れば大丈夫です 相続する人が日本に住んでいるなら、まずは今の住所を見れば十分です。 この場合は、二重国籍であることより、日本在住であることが先に判断基準になります。 したがって、「自分は二重国籍だから特別な確認が必要なのでは」と考えすぎる必要はなく、まずは日本に住んでいる相続人として整理すると分かりやすいです。 たとえば、日米二重国籍の長男が今は東京に住み、親の相続で日本の預金と米国の証券口座を受け取る場面です。 長男は「自分は二重国籍だから、まず10年ルールを見ないといけないのでは」と思うかもしれません。 ですが、このケースでは、まず今日本に住んでいるという事実が判断基準の前に出ます。 ここを先に押さえると、必要以上に難しく考えずに済みます。 4-3 海外に住んでいるなら、日本国籍と最近10年を確認します 相続する人が海外に住んでいる場合は、日本国籍の有無や最近10年の居住歴が関係してきます。 特に大切になるのは、海外に住んでいて、相続の時点で日本国籍がある人です。 たとえば、長女がロサンゼルスに住み、7年前までは福岡に住んでいたケースでは、単に「今は米国在住」と考えるだけでは足りません。 今も日本国籍があるか、最近10年の中に日本在住の期間があるかを見ていく必要があります。 相続開始前に日本国籍を失っていた場合の注意 二重国籍及び10年ルールを考える際に混乱しやすいのは、相続開始前に日本国籍を失っていた場合の取り扱いです。 相続税でよく出てくる「10年ルール」は、海外に住んでいて、相続の時点で日本国籍がある人について確認するポイントです。 したがって、相続開始前に外国籍を選択し、その結果として日本国籍を失っているのであれば、10年ルールは関係ありません。 そのため、最初に確認したいのは、「最近10年で日本に住んでいたか」ではなく、相続の時点で今も日本国籍があるのかどうかです。本人は「昔は二重国籍だった」と思っていても、法律上はすでに日本国籍を失っていることがあります。 10年ルールの前に、まずは戸籍や国籍関係書類で現在の状態を確認しておくことが大切です。  第5章 二重国籍者が関係する相続が起きたら、やるべき3選 相続が起きたときは、いきなり税額計算に入るより、前提を整理することが大切です。 国税庁も、相続税の申告のためには、相続人の確認、遺言の有無、遺産と債務の確認、遺産の評価、遺産の分割などの準備が必要だと案内しています。二重国籍が関わる相続では、これに「今の国籍」と「住所歴」の確認を足すイメージで進めると分かりやすいです。  5-1 まず家族の状況を一枚にまとめる 最初にやるとよいのは、亡くなった方と相続する人について、今の住まい、今の国籍、日本と海外のどちらに住んでいるかを一枚にまとめることです。 ここが整理できるだけで、2章のフローチャートもかなり使いやすくなります。特に家族の中に海外在住者がいるときは、この整理表があるだけで相談が進みやすくなります。  5-2 次に、財産を日本と海外に分けて書き出します 国税庁も、相続税の準備として遺産と債務を確認し、一覧表を作ることを案内しています。 二重国籍や海外在住者が関わるときは、財産を日本の財産と海外の財産に分けて書き出すだけでも、かなり見通しがよくなります。評価の前に、まず整理です。  5-3 国籍と住所が分かる書類をそろえます 次に、戸籍、パスポート、住民票や除票、海外での居住資料など、国籍や住所が分かる書類をそろえていきます。 相続税の判定も、準拠法の確認も、前提資料がないと進みません。特に国際相続では、「どこに住んでいたか」「今も日本国籍があるのか」が大事なので、ここを後回しにしないことが大切です。  第6章 よくある質問 6-1 二重国籍だと、日本で相続税は必ずかかりますか 必ずではありません。 日本の相続税は、二重国籍という事実だけで決まるのではなく、まず相続の時点の住所を見て、その後に日本国籍や最近10年などを確認します。 ですから、まずは第2章のフローチャートで課税財産の範囲を確認することが大切です。  6-2 海外に住んでいれば、日本の相続税は関係ありませんか 一律には言えません。 海外に住んでいても、日本国籍があり、最近10年の中に日本在住の期間がある人などは、海外財産まで日本の相続税の対象になることがあります。ここは思い込みで判断せず、第2章のフローチャートで確認するのが安全です。  6-3 亡くなった方が二重国籍だと、何が増えますか 相続税の確認に加えて、準拠法の確認が増えます。 つまり、「日本の相続税がどこまでかかるか」だけではなく、「どの国の法律で相続人や相続分を決めるか」も確認が必要になります。 6-4 国籍選択をしていれば安心ですか 国籍選択をしていても、それだけで安心とは言い切れません。 日本国籍を選んでも、相手国の制度によっては外国国籍が残ることがあります。 相続税では、相続の時点で今も日本国籍があるのかどうかが大切なので、思い込みではなく書類で確認することが大切です。  6-5 まず何を相談すればよいですか 最初に相談したいのは、税額そのものより、家族の住所・国籍・財産の場所です。 ここが分かると、第2章のフローチャートで課税財産の範囲を確認しやすくなり、亡くなった方が二重国籍なら準拠法の話にも進みやすくなります。最初の整理が早いほど、その後の手続きも進めやすくなります。  第7章 二重国籍者の相続相談は税理士法人マインライフへ 二重国籍や海外在住の家族が関わる相続では、一般的な相続よりも、最初の整理がその後の申告のしやすさを左右します。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 海外の財産をどう扱えばいいのかわからない」「外国税額控除を受けたいが手続きに不安がある」―― そのようなときは、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 最初の一歩を踏み出すことが、複雑な国際相続を解決へ導く最大のカギとなります。 第8章 まとめ いかがだったでしょうか。今回のコラムのポイントをまとめると、次のとおりです。 ·       相続時点で二重国籍の場合には、日本国籍者と同様に扱う ·       相続税は国籍より「住所」が重要で、日本在住なら海外財産も申告対象になりやすい ·       二重国籍の相続は、法律と税金を分けて考えることで、全体像が見えやすくなる 基本的には、二重国籍であること自体と相続手続きや相続税の申告手続きには関連はありませんが、海外に財産がある、海外に住んでいる相続人がいるなどに該当すると、相続手続きは複雑なものになりますので、早い段階で専門家に相談して円滑な相続手続きを進めましょう。
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    国際相続サポート

    • 2026.07.06
    • 門倉 誉士希

    オーストラリアに相続税はある?日本との違いと課税ルールを徹底解説

    オーストラリアにある財産にオーストラリアの相続税はかかるのだろうか…。そんな疑問をお持ちですね。 相続税の制度は国(州)によって異なるため、オーストラリアの相続税は日本とは全く違う仕組みとなっています。 オーストラリアの相続税の制度について知り、今できる相続対策を考えていきましょう。 【当記事は2026年1月1日時点の法令に基づき作成しております。】 第1章 オーストラリアの相続税の基本知識 まずはオーストラリアの相続税の基本について確認していきましょう。 1-1 オーストラリアには相続税がない 結論、現在オーストラリアには相続税の制度はありません。過去には相続税の制度がありましたが、1979年に廃止されています。(州としての相続税は1980年代前半までに廃止されました。) したがって、オーストラリアにある財産にオーストラリアの相続税が課税されることはありません。(しかし、オーストラリアにある財産に他国の相続税が課税されることはあります。) 1-2 オーストラリアのキャピタルゲイン課税 オーストラリアに相続税はありませんが、キャピタルゲイン(値上がり益)に対する課税は存在します。 キャピタルゲインは通常、【売却額(時価)-取得価額】で計算することとなりますが、オーストラリアのキャピタルゲイン課税の制度には以下のような特徴があります。 (1)相続により取得した財産の取得価額 相続により取得した財産の取得価額について特別な規定があります。 亡くなった人(被相続人)が1985年9月19日以前に取得した財産を相続した場合は、原則、その被相続人の死亡時の時価がその財産の取得価額となります。この場合、相続人はキャピタルゲインに対する課税を受けずに取得価額を更新することができます。 【例】 <前提> 状況:被相続人が購入した有価証券を相続人が売却した 被相続人の購入日:1985年8月31日(1985年9月19日以前) 被相続人の購入金額:100万円 被相続人の死亡時の時価:1,000万円 相続人の売却額:1,100万円 <キャピタルゲインの金額> 売却額1,100万円-取得価額1,000万円=キャピタルゲイン100万円 ※被相続人の購入日が1985年9月19日以前のため、取得価額は被相続人の死亡時の時価となります。   一方、亡くなった人(被相続人)が1985年9月20日以後に取得した財産を相続した場合、被相続人が実際に取得した時の取得価額を引き継ぎます。これは日本のキャピタルゲイン課税の制度と同様です。 【例】 <前提> 状況:被相続人が購入した有価証券を相続人が売却した 被相続人の購入日:1990年8月31日(1985年9月20日以後) 被相続人の購入金額:100万円 被相続人の死亡時の時価:1,000万円 相続人の売却額:1,100万円 <キャピタルゲインの金額> 売却額1,100万円-取得価額100万円=キャピタルゲイン1,000万円   ※被相続人の購入日が1985年9月20日以後のため、取得価額は被相続人の購入金額となります。 (2)贈与に伴うキャピタルゲイン課税 オーストラリアには贈与税の制度もありません。相続税と同様、1979年に廃止されています。 しかし、1985年9月20日以後に取得した財産を贈与し、その財産の贈与時の時価がその取得価額を上回っている場合には、【贈与時の時価-取得価額】の金額がキャピタルゲイン課税(所得税)の対象となります。   【例】 <前提> 状況:父が子に有価証券を贈与した 父の購入日:2020年8月31日(1985年9月20日以後) 父の購入金額:700万円 贈与時の時価:1,000万円 <キャピタルゲインの金額> 贈与時の時価1,000万円>取得価額700万円→したがって、キャピタルゲイン課税の対象。 贈与時の時価1,000万円-取得価額700万円=キャピタルゲイン300万円 (3)キャピタルゲインに対する所得税課税 オーストラリアの所得税は以下の算式で計算されます。 Step1 総合所得(給与所得など)-必要経費+キャピタルゲイン(軽減等適用後)=課税所得 Step2 課税所得×税率=所得税 所得税の税率は居住者と非居住者で異なっており、以下のようになっています。 居住者の適用税率:2027年6月30日終了課税年度(注1) (注1) 所得税の課税年度は毎年7月1日から翌年6月30日まで (注2) 上記税率にはメディケア税(課税所得の2%、ほとんどの居住者に適用)は含まれません 非居住者の適用税率:2027年6月30日終了課税年度 キャピタルゲインは同一年中に生じたキャピタルロス(値下がり損)と相殺し、総合所得(給与所得など)と合算し、税率を掛けて所得税を算定します。 オーストラリアの居住者に該当する方は、全世界で発生した所得に対してオーストラリアの所得税が課税されることとなります。したがって、オーストラリアの居住者に該当する方が贈与をすると、その贈与した財産の所在地に関係なくキャピタルゲインに対する所得税が課税されることとなります。 一方、オーストラリアの非居住者に該当する方は、オーストラリア国内で発生した所得に対してのみオーストラリアの所得税がかかります。したがって、オーストラリアの非居住者に該当する方がオーストラリアに所在する一定の財産を贈与すると、そのキャピタルゲインに対する所得税が課税されることとなります。 オーストラリアのキャピタルゲイン課税の対象となる財産の範囲 第2章 日本の相続税との関係 続いて、日本の相続税との関係について確認していきましょう。 2-1 日本の相続税の基本と課税範囲 日本の相続税は亡くなった人(被相続人)の日本にある財産だけが対象になる場合と、海外にある財産も含めてすべての財産が対象になる場合があります。 基本として、亡くなった人(被相続人)が日本国籍で日本に住んでいた場合、亡くなった人(被相続人)のすべての財産が日本の相続税の対象となります。 具体的には、ケース別に以下のフローチャートに沿って判断します。 【日本の相続税の対象となる財産の範囲のフローチャート】 また、以下の判定表でも日本の相続税がかかる財産の範囲を判定できます。 【日本の相続税がかかる範囲の判定表】 ※1 外国人被相続人を除く 外国人被相続人…相続開始時に一定の在留資格を有するもの。 ※2 一時居住者を除く 一時居住者…相続開始時に一定の在留資格を有する者で、相続開始前15年以内の国内居住期間の合計が10年以下であるもの。 ※3 非居住被相続人の前提 非居住被相続人…相続開始前10年以内において、国内に住所を有していた期間中、継続して日本国籍がなかったもの。 2-2 オーストラリアの財産に日本の相続税はかかるか 結論、上記で示したとおり、亡くなった人(被相続人)と相続人の居住地国や国籍などの状況によって、オーストラリアの財産に日本の相続税がかかる場合とかからない場合があります。 逆に言えば、オーストラリアの財産を日本の相続税や贈与税がかからないように移転する、という対策を考えることができます。 2-3 日本の相続税対策 日本の相続税対策として活用が検討されるのは、財産を持つ親や祖父母から子や孫への生前贈与です。 通常、日本にある財産を贈与した場合、日本の贈与税の対象となりますが、日本国外にある財産を贈与した場合については日本の贈与税がかからないケースがあります。 具体的には、ケース別に以下のフローチャートに沿って判断します。   【日本の贈与税の対象となる財産の範囲のフローチャート】 また、以下の判定表でも日本の贈与税がかかる財産の範囲を判定できます。   【日本の贈与税がかかる範囲の判定表】 ※1 外国人贈与者を除く 外国人贈与者…贈与時に一定の在留資格を有するもの。 ※2 一時居住者を除く 一時居住者…贈与時に一定の在留資格を有する者で、贈与前15年以内の国内居住期間の合計が10年以下であるもの。 ※3 非居住贈与者の前提 非居住贈与者…贈与前10年以内において、国内に住所を有していた期間中継続して日本国籍がなかったもの。   基本として、贈与者(財産をあげる人)が贈与時点において日本国籍で日本在住の場合、贈与するすべての財産が日本の贈与税の対象となります。   一方、贈与者(財産をあげる人)と受贈者(財産をもらう人)が共に日本国籍である前提で、贈与者(財産をあげる人)と受贈者(財産をもらう人)が共に贈与前10年以内に日本に住んでいない場合(上記表の⑮のケース)、日本国外にある財産の贈与については日本の贈与税はかかりません。 したがって、贈与者(財産をあげる人)と受贈者(財産をもらう人)が共に10年超海外に住んでいる状態で、今後どちらかが日本に帰国する予定があるならば、その帰国前に海外にある財産を贈与すれば日本の贈与税は課税されないこととなります。 【例】 <前提> 贈与者(財産をあげる人):父(日本国籍・10年超オーストラリアに居住・50代) 受贈者(財産をもらう人):子(日本国籍・10年超オーストラリアに居住・20代) 贈与する財産:オーストラリアの預金1,000万円 状況:転勤を機に父が帰国予定 <贈与税がかかるパターン> 父が日本に帰国した後にオーストラリアの預金を子に贈与 この場合オーストラリアの預金1,000万円の贈与が日本の贈与税の対象となり、お子様に177万円の贈与税が発生します。(同年中にこれ以外の贈与は無い前提の贈与税額) なお、オーストラリアには贈与税の制度がないため税金は発生しません。   <贈与税がかからないパターン> 父が日本に帰国する前にオーストラリアの預金を子に贈与 この場合オーストラリアの預金1,000万円の贈与は日本の贈与税の対象となりません。 また、オーストラリアには贈与税の制度がないため税金は発生しません。 第3章 外国税額控除 続いて、日本の税金とオーストラリアの税金の両方が課税されてしまった場合の対策について解説します。 3-1 オーストラリアと日本のキャピタルゲイン課税の関係 例えば、日本に住んでいる人がオーストラリアにある不動産を売却した場合、そのキャピタルゲイン(譲渡益)に対して日本の所得税(住民税)とオーストラリアの所得税が2重で課税されることがあります。 3-2 外国税額控除 この場合、日本の所得税の確定申告において、外国税額控除を適用し、税金が2重で課税されないような調整を行うことができます。 【例】 <前提> 状況:日本に住んでいる人がオーストラリアにある不動産を売却し、キャピタルゲインが発生 キャピタルゲインに対する日本の税金:約1,000万円 キャピタルゲインに対するオーストラリアの税金:約2,000万円 <外国税額控除のイメージ> 日本の税金約1,000万円-オーストラリアの税金約1,000万円(控除限度額)=日本での納税は限りなく少なくなる。 ※必ずしも全ての外国税額が控除できるわけではありません。 なお、オーストラリアの税金のうち、外国税額控除として差し引きできなかった1,000万円(オーストラリアの税金約2,000万円-外国税額控除の適用を受けた約1,000万円=残額1,000万円)について、日本において還付を受けることはできません。 第4章 オーストラリアの相続手続き 次にオーストラリアの相続手続きのポイントについて解説します。 4-1 プロベート手続きが求められる オーストラリアの相続手続きはプロベートという手続きが必要となることがあります。 プロベートとは、人が亡くなった際に、その遺産を法的に管理・清算し、最終的に相続人へ分配するまでの一連の裁判手続きのことです。 プロベートが不要な日本では、相続人の話し合いにより誰がどの財産を取得するかを決めます。その内容に基づいて、不動産や預金の名義変更などができます。 しかし、プロベートが必要なオーストラリアでは、裁判所の監督のもとで、遺産の確定、債務・税金の清算、相続人への分配がされます。そのため、多くの費用(裁判所費用・弁護士費用)と時間(数か月~1年以上)を要することになります。 現実には、オーストラリアでは相続税はかからないがプロベート手続きが必要になる、というケースが数多くあります。 【「プロベート」についてはこちらの記事をご参照ください。】 4-2 プロベート対策 このプロベート手続きを回避するために以下のような対策があります。 (1)財産を日本へ移す オーストラリアのプロベート手続きを回避するために最も有効な手段は、財産をオーストラリア国外へ移すことです。生前に計画的に行うのが良いでしょう。 ただし、財産を日本へ移す場合には、日本の相続税の対策も併せて考える必要があります。 日本の相続税は日本にある財産は必ず対象となるためです (2)オーストラリアでの生前贈与 例えば、親が子どもに贈与したオーストラリアの財産は親の財産でなくなりますので、将来親が亡くなったときのプロベート手続きの心配はいらなくなります。 また、前述した通り、贈与者(財産をあげる人)と受贈者(財産をもらう人)が共に10年超海外に住んでいる状態で、海外にある財産を贈与すれば日本の贈与税は課税されないこととなります。 そして、オーストラリアには贈与税の制度はありませんので、オーストラリアにある財産を贈与してもオーストラリアにおいて贈与税は課されないこととなります。(贈与する財産によってはキャピタルゲインに対する税金が発生します。) (3)トラスト(信託)やジョイント(共同所有)の活用 オーストラリアにある財産をトラスト(信託)やジョイント(共同所有)にすることは、プロベート手続きを回避する有効な手段となります。 トラスト(信託)とは、財産を所有している人が信託契約によって信頼できる第三者に持っている財産の運用や管理、最終的な処分までを任せるものです。その契約において自分が死亡した時はこの人に財産を渡す、ということを定めておけばプロベートを経ずに財産を移転することができます。 また、ジョイント(共同所有)とは、財産を共同所有にすることです。共同所有者が亡くなった場合にその所有権が残りの共同所有者に移転するため、プロベート手続きが不要となります。代表的なものとしてジョイント・アカウント(共同名義の預金口座)とジョイント・テナンシー(不動産の共同所有)があります。 第5章 オーストラリアの相続はぜひ税理士法人マインライフへご相談ください オーストラリアにある財産に日本の相続税がかかるかもしれない・・・。 また、オーストラリアにある財産のプロベート手続きが不安である・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。   マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 国際相続の経験が豊富な専門家が直接対応 少数精鋭体制で、経験豊富な税理士が必ず対応。 担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告・対策に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、相続に特有の実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 海外の専門家との連携体制が整っており、亡くなった方が外国国籍の場合の手続きの対応が可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる税計算だけではなく、納税資金対策や二次相続対策など、将来を見据えたオーダーメイドの提案が得意です。   「オーストラリア財産の相続手続きをどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第6章 まとめ いかがでしたでしょうか。 オーストラリアの相続には以下のようなポイントがあります。   ・オーストラリアには相続税の制度はない ・オーストラリアにはキャピタルゲイン(値上がり益)に対する課税制度は存在する ・オーストラリアには贈与税の制度は存在しないが、贈与した財産によってはキャピタルゲイン課税の対象となることがある ・日本の相続税は基本として亡くなった人(被相続人)が日本国籍で日本に住んでいた場合、亡くなった人(被相続人)のすべての財産が日本の相続税の対象となる ・日本の相続税対策として生前贈与は有効 ・日本の贈与税は日本国外にある財産を贈与した場合についてはかからないケースがある ・日本の税金とオーストラリアの税金の両方が課税されてしまった場合は外国税額控除を適用する ・オーストラリアの相続手続きは原則的にプロベート手続きが必要となる ・プロベート対策として、財産をオーストラリア国外に移す、子どもに贈与する、トラスト(信託)やジョイント(共同所有)を活用する、といった方法がある ・オーストラリアに財産がある場合の相続で困ったら「税理士法人マインライフ」へ!     オーストラリアに財産がある場合の相続手続きは日本とオーストラリアの法律が絡み大変複雑なものとなります。通常、この手続きを個人一人で行うのは相当な時間と労力を要します。 当記事でオーストラリアの相続制度について理解を深めていただき、読者の皆様が円満な相続を迎えられることを願っております。 国際相続にあたってはやるべきことがたくさんありますが、まずは一歩を踏み出し解決できるところから一つずつ進めていきましょう!   ※本記事における日本国外の情報は、一般に公表されている基本的な内容を平易に解説したものです。具体的な実務にあたっては現地専門家への確認が必要となります。
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    国際相続サポート

    • 2026.04.23
    • 久保 佑介

    ジョイントアカウントと税金(相続税・贈与税)

    「パートナーとの間でジョイントアカウント(共同名義口座)を開設している」 「両親がジョイントアカウントを保有していたが日本の税金は大丈夫だろうか」 私は税理士として、日々、アメリカなど海外に居住経験のある方やその親族の方から、相談を受けます。 その中でも、海外財産と関連して日本の贈与税や相続税取り扱いについて、よくご相談を受けることがあります。 ジョイントアカウントを開設してると、贈与税となるケースと相続税を考慮しなければいけないケースなど、場面に応じて検討すべきことが増えていきます。 本コラムではジョイントアカウントについてその内容・日本の税金について解説します。 あなたのジョイントアカウントに関する疑問を解決しますのでぜひ最後まで読んでみてくださいね。 第1章 ジョイントアカウントについて ジョイントアカウントとは日本にはなじみのないものですが、そもそもどのようなものなのでしょうか。 ジョイントアカウントは「家族で一緒に使える便利な口座」ですが、税金の世界では「このお金は誰の財産か」が問われます。ここでは基本の定義と、典型例としての「夫婦共有」を通じて、押さえるべきポイントを整理します。 1-1 ジョイントアカウントとは ジョイントアカウントとは、共同名義口座のことで複数名が同一の口座の名義人(口座権利者)として登録され、当該口座を共同で管理・利用する仕組みをいいます。 日本では見られませんが、海外の金融機関では一般的に利用されております。 典型例:「夫婦共有」のジョイントアカウント たとえば、次のような使い方はよく見られます。 夫婦の生活費用口座として共同で使う 夫:ジョイントアカウントへ入金(原資) 妻:家賃・光熱費・食費などを口座から支払う(出金) 税金上は「名義が夫婦共同」でも、「入金原資(誰が元手)・使途(誰の何のために使われているか)」によって、相続税や贈与税の判断が変わることがあります。 つまりジョイントアカウントは、便利な口座ではあるものの「誰の帰属」であるかが見えづらくなりやすい点が特徴です。 1-2 ジョイントアカウントの3つのメリット ジョイントアカウントを利用することで以下のメリットがあります。 (メリット1)利便性 夫婦で「生活費の支払い口座」を分けていると、支払いが散らばり、残高確認や精算が煩雑になりがちです。 ジョイントアカウントで一本化しておけば、生活費(家賃・食費・日用品など)を同じ口座から支払えるため家計の全体像が見えるため便利に運用することが出来ます。 (メリット2)権限の分散 夫婦一方の管理能力の喪失(認知症など)又は死亡に備えることが出来ます。 日本では、被相続人(亡くなった人)の死亡後、預金が凍結され出金することはできません。 一方ジョイントアカウントは死亡により所有権が他方の名義人(夫・妻など)に自動的に移転することから、自由にジョイントアカウントを利用し続けることが出来ます。 (メリット3)簡素化(死亡時の手続) ジョイントアカウントでは、前述の通り名義人の一方が死亡した場合に、所有権が他方の名義人(夫・妻など)に自動的に移転します。 これにより、現地国でのプロベート手続きが回避され、他方の名義人へ預金残高を移転させることが出来ます。 なお、生存者受給権が付いていないジョイントアカウントでは上記効果は発生しません。 (プロベート回避は第4章で詳しく見ていきます) 誤解が多い点は、手続が簡単になることと日本の相続税・贈与税の論点があるということは別問題ということです。 税金上は「誰の財産が、誰に移ったのか」を実態で整理する必要があります。 (税金は第2章、第3章で詳しく見ていきます) 第2章 日本の贈与税の取り扱い ジョイントアカウントを利用する上でどんな時に贈与税がかかるのか確認していきます。 2-1 口座開設時、入金時の贈与税の取り扱い ジョイントアカウントでは、例えば夫婦の一方が自己資金で口座を開設し、その口座へ資金を入れたとしても、その時点で直ちに相手方へ贈与税がかかるわけではありません。 ジョイントアカウントは名義人であれば誰でも引き出せる一方、開設時、入金時点では相手方が将来いくらを自分のために引き出すかが未確定であるため、単に夫婦の一方の資金拠出で口座が開設されたことだけをもって、相手方に贈与税を課すことは原則ありません。 ただし、そもそも相手方に無償で自由に使わせるための口座開設と認定できるような場合は別です。 2-2 出金時の贈与税の取り扱い 例えばジョイントアカウントの資金拠出をしていない名義人が、口座から資金を引き出し、使用した場合には原則贈与税がかかります。 もっとも、ジョイントアカウントからの出金であれば何でも課税されるわけではありません。課税が問題になるのは、上記の通りそもそも資金拠出をしていない人が、その口座から自分の利益のために資金を引き出し使用したり、その人名義の不動産などの購入資金に充てたりした場合です。 このような場合には、資金拠出した人からその名義人に対して贈与税の課税がされます。 2-3 生活費は課税されない 夫婦や親子などの一定の扶養義務者からの生活費等として、ジョイントアカウントから出金しているような場合には贈与税はかかりません。 ただし、非課税になるのは、生活費や教育費として必要な都度、直接その支払いに充てるものに限られます。生活費名目で口座から引き出したお金を株式や不動産などの購入資金に回したりした場合には、贈与税がかかるため注意が必要です。 <具体例> 夫が自己資金9,000万円を原資として妻とのジョイントアカウントを開設。 その後1,200万円を追加で入金した。 👉口座開設・入金時は直ちに妻に贈与税がかかるわけではありません。 妻が生活費等として200万円を出金し、使用した。 👉贈与税はかかりません。 相続対策として1億円を出金し、夫婦共有(持分は各1/2)の海外でコンドミニアムを購入した。 👉妻の共有持分(1億円×1/2=5,000万円)については拠出者以外が自己の利益のために取得したものとして、贈与税が課税されます。 第3章 日本の相続税の取り扱い ジョイントアカウントを所有している人が亡くなった場合に相続税がかかるのか確認していきます。 なお、本章では、相続開始時に生じる日本の課税関係を、便宜上「相続税の取り扱い」として解説します。 3-1 相続があった場合の取り扱い ジョイントアカウントへ資金を拠出していた口座名義人が亡くなった場合には相続税がかかります。 相続税の対象となる財産には、現金や預貯金だけでなく、金銭に見積もることができる経済的価値のあるものが広く含まれます。したがって、ジョイントアカウントの残高が海外にある場合でも、日本に居住している人については、国内財産だけでなく海外財産も相続税の課税の対象になります。 もっとも、海外にあるジョイントアカウントは、プロベートがある現地国の法律上「プロベート対象の遺産(日本でいう遺産分割の対象となる遺産)ではない」とされます。 ただし、上記海外での取り扱いにかかわらず、亡くなった人に帰属していたジョイントアカウントが生存名義人へ移ることについては、日本では原則、相続税(一定の場合には贈与税とする実務上の判断があります。)がかかることになります。 3-2 「亡くなった人の拠出部分」が課税対象 ジョイントアカウントを所有している人が亡くなった場合の相続税の課税対象は、「ジョイントアカウントの残高のうち、実質的に誰の財産(誰が拠出)だったのか」です。 実務では、口座開設時の原資、その後の追加入金、入出金の使途、誰が管理・運用していたかを確認することとなります。 そのため、申告時には、預金通帳、残高証明書、ステートメント、送金記録、口座開設書類などを基に、取引経緯を確認しておくことが重要です。 3-3 ジョイントアカウントの手続き 生存者受給権付のジョイントアカウントでは、死亡時の手続きは、日本の預金の相続手続きとは大きく異なります。 日本の預金では特に遺言がない場合には、相続人の分割協議により取得者を決める必要があります。 海外のジョイントアカウントの口座名義人のうち一方が亡くなった場合には、残高は生存名義人に帰属するとされており、この移転は、通常のプロベート手続の対象とはされません。したがって、少なくともその口座残高については、現地でプロベートを経ずに、生存名義人へ自動的に移る仕組みになっています。 <具体例> 夫が自己資金5,000万円で妻とのジョイントアカウントを開設し、妻は資金を拠出していなかった。 👉夫が亡くなった場合には、ジョイントアカウントの5,000万円は妻へ自動的に移り、プロベートを経ずに承継されます。 👉その5,000万円を他の遺産とともに相続により取得したものとして相続税が課税されます。 夫の資金で形成された口座であるため日本の課税の対象になります。 ~例えば、資金の拠出が「夫及び妻で2,500万円ずつ」の場合には~ 👉夫の拠出部分である2,500万円を他の遺産とともに相続により取得したものとして相続税が課税されます。 <専門家の視点👉税金と手続きの違い> 実務上、海外のジョイントアカウントについては日本の「遺言・遺産分割協議」の対象財産となりません。 一方で日本の税金上はここまで説明した通り課税の対象となる財産であるため以下の誤解が生じております。  (誤)遺言書(又は分割協議書)にジョイントアカウント(夫婦共同)は子供へ相続する旨の記載をした。    (正)ジョイントアカウントは上記の相続手続きによらず、生存名義人(夫または妻)が所有することになる。      よって子供が取得することはできません。 第4章 ジョイントアカウントによるプロベート回避 ジョイントアカウントは上述までの通り相続時にプロベートを経ずに、生存名義人へ自動的に移すことが出来る仕組みです。 プロベートの手続きは費用も時間もかかるため、実務上はその手続きを回避するためのプランニングが重要です。 4-1 海外財産にはプロベートが必要な国がある 海外にある財産については、その国によっては、プロベート(人が亡くなった際に、その遺産を法的に管理・清算し、最終的に相続人へ分配するまでの一連の裁判手続きの制度)が必要となります。 代表的な国にはアメリカやイギリス、オーストラリア、香港、シンガポール、カナダ、ニュージーランド、マレーシアなどの国で採用されております。 プロベートのデメリットは、まず時間がかかることです。その手続きは半年から3年かかることもあります。 また、費用が高額になることがあります。具体的には裁判所に支払う費用、弁護士費用などが発生します。 特に、プロベート対象財産が少額であっても、多額の費用や時間がかかり、コスト倒れになることもあります。 【プロベートの仕組みの詳細記事はこちら】 プロベートとは?仕組み・流れ・回避方法を税理士がわかりやすく解説 4-2 ジョイントアカウントによるプロベート回避 ジョイントアカウントは、生存名義人に自動的に移転します。 この移転は遺言による承継ではないため、その口座残高については、通常のプロベート財産として裁判所の分配手続を経るのではなく、契約上の仕組みによって生存者へ移るのが基本です。 プロベートの完了を待たずに又はプロベート手続きをせずに、生存名義人が管理・払戻しを受けられるため「プロベート回避手段」として有効です。 その口座残高を現地国のプロベートの対象外にできる点は大きなメリットといえます。 第5章 国際相続・贈与の相談は「税理士法人マインライフ」へ 相続財産が国際間をまたぐものであるため手続きが複雑になるかもしれない・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 国際相続の経験が豊富な専門家が直接対応 少数精鋭体制で、経験豊富な税理士が必ず対応。 担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告・対策に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、相続に特有の実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 海外の専門家との連携体制が整っており、海外の財産や海外在住者の手続きに対応が可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる税計算だけではなく、納税資金対策や二次相続対策など、将来を見据えたオーダーメイドの提案が得意です。 ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第6章 まとめ いかがだったでしょうか。 日本の制度にはない「ジョイントアカウント」について 第一章ではその仕組みをメリットふまえて解説しました。  第二章及び第三章では具体例とともに贈与税・相続税の税金を中心に解説しました。  第四章ではプロベート回避手段としてのジョイントアカウントのメリットを解説しました。   国際相続ではあまり日本ではなじみのない海外独自の財産・制度が多く存在します。 そこで大切になるのは日本と海外双方の制度に精通した税理士や現地専門家です。 手続きの漏れや課税リスクを回避するためにも専門家への相談が最善の方法になります。
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    相続税申告, 国際相続サポート

    • 2026.04.14
    • 門倉 誉士希

    アメリカ人の夫が亡くなったら?日本人妻が知っておくべき相続手続きと税金

    アメリカ人である夫が亡くなり、何をすれば良いか分からない、、、。 そんなお悩みをお持ちですね。 当記事では、日本に住むアメリカ人のご主人が亡くなった場合に日本に住む日本人の奥様が行うべき相続手続きについて解説をさせていただきます。 しなければいけないことを整理し、手続きの完了に向けた第一歩を踏み出しましょう。 第1章 アメリカ人の夫が亡くなった場合の相続手続き まずは日本に住むアメリカ人の夫が亡くなった場合の相続手続きについて整理します。 1-1 アメリカ人の夫が亡くなった場合特有の手続き 日本人の夫が亡くなった場合との大きな違いは、日本にあるアメリカ大使館または領事館への連絡が必要となる点です。 具体的には、アメリカ人の夫の死亡地を管轄する大使館または領事館に以下の情報を郵送または窓口にて提出します。 死亡届記載事項証明書(病院から発行される死亡診断書をお住いの市区町村役場に提出することにより取得できます)   亡くなられた方のご遺族の名前、住所、電話番号   亡くなられた方のアメリカのソーシャルセキュリティー番号 ご遺体を日本で火葬・埋葬するか、あるいはご遺体・ご遺骨をアメリカへ空輸して埋葬するのかどうか   上記の情報の提出後、「アメリカ政府発行の英文の死亡報告書」がご遺族に発行されます。 この死亡報告書は、アメリカの年金や保険金請求の手続き、アメリカにある財産の相続手続きで必要となります。 この詳しい手続きについては、以下の在日米国大使館・領事館のホームページにて説明されています。 【在日米国大使館・領事館のホームページ】 https://jp.usembassy.gov/ja/services-ja/death-of-a-u-s-citizen-ja/ 1-2 日本にある財産の相続手続き 亡くなった人(被相続人)がアメリカ人で生活の本拠地(ドミサイル)が日本にある場合、基本的には日本国内の財産については日本の法律に従って相続手続きを進めることとなります。そして、実際の相続手続きにあたっては亡くなった人(被相続人)の相続人を確定するための書類等が必要となります。 しかし、アメリカ人には日本の戸籍が無いため不動産の相続登記や金融機関に提出すべき必要書類が揃わないという問題が生じます。 亡くなった人(被相続人)がアメリカ人でその配偶者が日本人である場合、配偶者の戸籍には結婚の事実等が記載されている可能性もあります。しかし、それだけでは不十分な内容であることが多いです。 そのため、戸籍に代わって以下のような書類を集める必要があります。 【戸籍に代わる書類】 ・アメリカ人である被相続人及びその両親、きょうだい等の出生証明書、婚姻証明書、死亡証明書 等 例えば、出生証明書は、配偶者や親族が、被相続人が出生した地を管轄するカウンティ(郡)に請求をしたり、オンラインで取得をすることができます。 ・宣誓供述書(相続人が被相続人との関係及び被相続人の法定相続人を確認する内容のもの) 宣誓供述書は、相続人の個人情報の他、両親やきょうだい等の家族関係を記載したものをアメリカで公証してもらいます。 特に、戸籍のように「他に子どもはいない」ことの証明は、アメリカの公的書類ではできないので、この宣誓供述書で被相続人の子どもは他にはいないことを述べてもらうことがあります。 ・外国人登録原票、日本における出生届、婚姻届 等(日本に居住する被相続人の場合) 外国人登録原票は、主に弁護士を通じて取得することが多いです。日本での子ども等の家族関係が書かれていますので、法定相続人の調査・確定に有用です。 なお、これらの書類は外国語で作成されるため、手続きに使用するにあたっては日本語訳を添付する必要があります。 通常、日本にある財産の相続手続きにあたっては以下の書類が必要となります。 ・相続を証明する書類(戸籍) ・住所を証明する書類(住民票等) ・遺産分割協議書と印鑑証明書(遺言が無い場合) 1-3 アメリカにある財産の相続手続き(プロベート手続き) アメリカにある財産について相続による名義変更手続きを行う場合、実際の名義変更手続きについて日本の法律に従って進められることはほとんどありません。財産が所在する州の法律に従わなければ名義変更手続きができないことが通常です。 アメリカにある不動産や有価証券等の財産を相続するにあたっては、原則としてアメリカでのプロベート手続き(遺産を裁判所の監督のもとで整理・分配する手続き)が必要となります。このプロベート手続きにおいては、現地の弁護士や裁判所の関与が無ければ解約や名義変更といった相続手続きができないこととなります。 プロベート手続きには相当の時間と専門家に対する費用を要することになります。 【「プロベート手続き」についてはこちらの記事をご参照ください】 1-4 アメリカの年金停止と遺族年金(Social Security)の受取り手続き 日本に住むアメリカ人の夫がアメリカでの勤務歴により米国年金(Social Security)を受給していた、または、受給資格があった場合は以下の手続きを行う必要があります。 ・米国のSocial Security Administration(SSA)に電話で連絡をし、米国年金の受給者であるアメリカ人の夫が死亡した事実を伝え、年金の支給停止と過払い分の返還(※)の要否を確認する (※)亡くなった後の期間に対応する年金は支給対象外となるため、既に振り込まれた分があれば返還が必要となる場合があります。 ・遺族年金の給付の有無の確認を行う 配偶者や子どもは条件を満たせば毎月の遺族年金や一時金を受け取れる可能性があります。 なお、アメリカ大使館または領事館がアメリカの遺族年金に関する相談・申請窓口になっています。 「アメリカ人の夫が日本で亡くなり、アメリカの遺族年金について相談したい。」と連絡すると、必要書類や進め方を教えてもらえます。 【在日米国大使館・領事館のホームページ】 https://jp.usembassy.gov/ja/services-ja/social-security-ja/ 第2章 アメリカ人の夫が亡くなったときの日本の相続税 次にアメリカ人の夫が亡くなったときの日本の相続税について確認しましょう。 2-1 日本の相続税の対象となる財産の範囲 亡くなった人(被相続人)が日本に住んでいるアメリカ人で、その相続人が日本に住んでいる日本人の場合、日本の相続税はその亡くなった人(被相続人)の全世界にある財産が対象となります。 【日本の相続税の課税範囲判定のフローチャート】 また、以下の判定表でも日本の相続税がかかる財産の範囲を判定できます。 【日本の相続税がかかる範囲の判定表】 ※1 外国人被相続人を除く 外国人被相続人…相続開始時に一定の在留資格を有するもの。 ※2 一時居住者を除く 一時居住者…相続開始時に一定の在留資格を有する者で、相続開始前15年以内の国内居住期間の合計が10年以下であるもの。 ※3 非居住被相続人の前提 非居住被相続人…相続開始前10年以内において、国内に住所を有していた期間中、継続して日本国籍がなかったもの。 なお、日本の相続税は亡くなった人の財産(相続税の対象となる財産)が基礎控除額を超えなければ発生しません。 この相続税の基礎控除額は、【3,000万円+(600万円×法定相続人の数)】で計算されます。 なお、被相続人がアメリカ人の場合も日本の相続税を計算する上での「法定相続人の数」や、「法定相続分」は日本の民法に基づいて判断することとなります。 2-2 アメリカの遺族年金は日本の相続税の対象となる 通常、遺族年金は日本の相続税の対象ではありません。 しかし、2026年現在の課税実務上、アメリカの遺族年金については日本の相続税の対象となることとなっています。 この点について、日本の遺族年金とアメリカの遺族年金でその取扱いが大きく異なりますので留意が必要です。 なお、配偶者が受け取るアメリカの遺族年金の相続税計算上の評価額は、「配偶者が将来受け取る年金額の現在価値」となります。配偶者が将来受け取る年金額は相続開始日時点の配偶者の年齢における平均余命に基づき計算します。 【アメリカ遺族年金の相続税計算上の評価額の計算式】 1年当たりの受給額(平均)※×複利年金現価率=相続税計算上の評価額 ※受給額は変動するため亡くなった時点での受給額を基準とします。 【具体例】 ・前提 相続開始日(亡くなった日):令和7年1月 遺族年金受給者:昭和27年1月生まれの女性→「完全生命表」の平均余命は17年 1年当たりの受給額:月650ドル×12か月×相続開始日TTBレート157円=1,224,600円 予定利率:2.5% ・計算 1年当たりの受給額1,224,600円×複利年金現価率13.712=16,791,715円 実際の評価額の計算は下記国税庁HPに必要情報を入力すれば自動計算されます。 【国税庁ホームページ】 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/nofu-shomei/teikikin/shusinteiki.html 2-3 配偶者は「配偶者の税額軽減」の適用を受けることが可能 日本の相続税においては「配偶者の税額軽減」という制度があります。 これは、亡くなった人(被相続人)の配偶者が遺産を相続する場合、一定額まで相続税がかからず、配偶者の税額が軽減される制度です。これにより配偶者の場合、相続する財産が1億6,000万円、もしくは、法定相続分のどちらか多い方までであれば相続税がかかりません。 第3章 アメリカ人の夫が亡くなったときのアメリカの遺産税 アメリカにある日本の相続税に相当する税金として遺産税があります。 アメリカ人の夫が亡くなったときのアメリカの遺産税について確認しましょう。 【「アメリカの相続税(遺産税)」についてはこちらの記事をご参照ください】 3-1 アメリカの遺産税の基礎控除額はとても大きい 2026年現在、亡くなった方(被相続人)がアメリカ人の場合のアメリカ連邦遺産税の基礎控除額は1,500万ドルとなっています。1ドル150円の為替レートで換算すると22.5億円となります。(アメリカ非居住者の場合には控除額が制限される場合あります。) したがって、アメリカ人の場合にはほとんどのケースでアメリカの連邦遺産税は課税されない、というのが実態となります。 なお、このアメリカ遺産税の基礎控除額は毎年のように改正が行われており、実際に遺産税の計算をする際にはその年の基礎控除額の確認が必須となります。 3-2 アメリカにも配偶者の優遇措置がある 仮に亡くなった方(被相続人)の遺産がアメリカの連邦遺産税の基礎控除額を超えた場合、日本の相続税と同様に配偶者には配偶者控除という税制優遇があります。 配偶者がアメリカ人の場合、この配偶者控除は無制限となるためこれに対応する連邦遺産税は発生しないこととなります。 3-3 州税として遺産税に注意 アメリカには、連邦税としての遺産税の他に州によっては州税としての遺産税(相続税)が存在します。連邦税の遺産税はかからない場合でも州税としての遺産税(相続税)はかかる、といった場合もあります。 財産が所在する州の遺産税(相続税)のルールについてもしっかりと確認をする必要があります。 3-4 日本とアメリカの両方で相続税がかかる場合には外国税額控除を適用 複数カ国による二重課税を防ぐために「外国税額控除」という制度があります。 日本在住のアメリカ人の方が亡くなった場合、日本の相続税とアメリカの遺産税(日本の相続税に当たる税金)の両方がかかってしまう二重課税のリスクがあります。 アメリカの遺産税は亡くなった方がアメリカ人の場合、その全世界の財産が対象となります。 一方、日本の相続税も上記2-1のフローチャートの結果に応じて日本国内の財産、または、日本国内・国外すべての財産に課税されることとなります。 つまり、亡くなった方の財産に対してアメリカと日本両方の相続税(遺産税)がかかることある、ということになります。 この複数カ国による二重課税を排除するために「外国税額控除」という制度があります。 【例】 前提:日本に住んでいる方が、日本に20億円の財産、アメリカに20億円の財産がある状態で亡くなった。    相続人は日本に住んでいる子ども1人。 日本の相続税:全世界の財産(40億円)に対して日本の相続税20億円が発生 アメリカの相続税:アメリカにある財産(20億円)に対してアメリカの遺産税4億円が発生   この場合、全世界の財産にかかる日本の相続税20億円から、外国税額控除によってアメリカの遺産税4億円を差し引き、残りの16億円だけを納めることとなります。 なお、実務上は日本の相続税の申告期限(原則被相続人が亡くなってから10ヶ月以内)までにアメリカの遺産税が確定しないことが多いです。 その場合、日本の相続税の申告期限までに一旦20億円を納税します。 そして、アメリカの遺産税4億円が確定次第、当該4億円の外国税額控除を適用した申告書を再提出(更正の請求手続き)し、4億円の還付を受けることとなります。 この外国税額控除の適用に当たっては日本の相続税を計算する税理士と、アメリカの遺産税を計算する会計士・弁護士等の専門家との連携が不可欠となります。 アメリカの専門家を選定する際には、アメリカの遺産税に精通した専門家に依頼しましょう。 【「外国税額控除」についてはこちらの記事をご参照ください】 第4章 トラブルを防ぐための対策 アメリカ人の夫が亡くなった場合の相続手続きにおいて最もポイントとなるのは、アメリカに財産がある場合に必要となるプロベート手続きをいかに回避するか、という点です。 アメリカ人の夫が亡くなった場合の相続手続きの具体的なトラブル対策について確認しましょう。 4-1 プロベート手続きの回避 財産の移動・トラスト・共同所有 アメリカ人の夫がアメリカに財産を持っている場合、その財産を相続するためには原則としてプロベート手続き(遺産を裁判所の監督のもとで整理・分配する手続き)が必要となります。そして、このプロベート手続きには、現地の弁護士や裁判所の関与が必要となり、相当の時間と専門家に対する費用を要することになります。 アメリカ人の夫から財産を相続するにあたっては、このアメリカのプロベート手続きをいかに回避すべきか、というのが最大のポイントとなります。 以下に具体的なプロベート手続きの回避方法をご紹介します。 〇財産の移動 プロベート手続きはアメリカにある財産が対象となります。したがって、財産をアメリカ国外に移せばプロベート手続きの心配はなくなります。 シンプルですが、相続が発生する前にアメリカにある財産を日本に移す、というのはアメリカでの手続きを回避する上で最も有効であり確実な方法となります。 本件の事例とは異なりますが、亡くなった人(被相続人)がアメリカに住んでいるアメリカ人で、日本に銀行口座を残して亡くなったときは、その相続手続には理論上、アメリカの法律が適用されます。その結果、相続人間での相続割合(誰がいくら相続するか)や相続手続き等についてトラブルが生じる可能性があります。 〇トラスト アメリカにある財産にトラスト(信託)を設定することは、プロベート手続きを回避する有効な手段となります。 トラスト(信託)とは、財産を所有している人が信託契約によって信頼できる第三者に持っている財産の運用や管理、最終的な処分までを任せるものです。その契約において自分が死亡した時はこの人に財産を渡す、ということを定めておけばプロベートを経ずに財産を移転することができます。 〇共同所有(ジョイント) 共同所有(ジョイント)とは、財産を共同所有にすることです。共同所有者が亡くなった場合にその所有権が残りの共同所有者に移転するため、プロベート手続きが不要となります。代表的なものとしてジョイント・アカウント(共同名義の預金口座)とジョイント・テナンシー(不動産の共同所有)があります。 4-2 日本と海外のそれぞれで効力のある遺言書を作成する 日本の遺言と同様にアメリカでも遺言(Will)を作成し、遺言で指定した通りに相続財産を分配することが可能です。 日本またはアメリカの方式で作成した遺言書が他方の国においても法的に有効となる場合もありますが、実際にスムーズに手続きが進められるかというと難しい場合が多いです。日本とアメリカに財産がある場合には、日本の財産については日本の方式に従った遺言書を作成し、アメリカにある財産についてはアメリカの方式に従った遺言を作成することがポイントです。一方の国の方式のみで遺言書を作成した場合よりもスムーズに手続きを進めることができます。 ただし、気を付けなくてはいけないのがアメリカにある財産についてアメリカの方式の遺言書があったとしてもそれだけではプロベート手続きを回避することはできない、という点です。トラストと組み合わせることなどにより、プロベート手続きの回避もできるようにしておくことが重要です。 4-3 海外に財産がある場合には専門家に相談を ご主人がアメリカ人で相続が発生した場合、そのご相談は国際相続に精通した日本の専門家(税理士や弁護士)に依頼されることをお勧めします。 日本にお住まいのアメリカ人の日本の相続税・アメリカの遺産税、両国での相続対策を検討する上ではアメリカの法律だけでなく、日本の法律についても精通している必要があります。両者は密接に関わり合うためです。 また、トラストの設定などアメリカ現地の専門家のサポートが必要となった場合、自分で現地の専門家を探すのは難しく、報酬や支払いタイミングの交渉も容易ではありません。相場感がないまま契約すると、通常より高い金額になるリスクもあります。 国際相続に精通した日本の専門家(税理士や弁護士)であれば、現地の信頼できる専門家とネットワークを持っていることが多く、このようなリスクも軽減できます。 第5章 アメリカ人夫の相続はぜひ税理士法人マインライフへご相談ください アメリカ人の夫の遺産に日本の相続税やアメリカの遺産税がかかるかもしれない・・・。 また、アメリカ人の夫がアメリカに財産を持っていて、プロベート手続きが不安である・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 「アメリカ人の夫の相続手続きをどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第6章 まとめ いかがでしたでしょうか。 アメリカ人の夫が亡くなった場合の相続手続きには以下のようなポイントがあります。 ・日本に住むアメリカ人が亡くなった場合は日本にあるアメリカ大使館または領事館への連絡が必要 ・日本にある財産の相続手続きには戸籍に代わる出生証明書、婚姻証明書、死亡証明書、宣誓供述書等が必要になる ・アメリカにある財産の相続手続きには原則としてプロベート手続きが必要となる ・亡くなったアメリカ人の夫が米国年金を受給していた場合にはその相続人が遺族年金を受け取れる場合がある ・米国の遺族年金は日本の相続税の対象となる ・日本の相続税の計算上、配偶者が財産を受け取った場合には配偶者の税額軽減の制度の適用が可能 ・アメリカの連邦遺産税は基礎控除額が多額であるため発生しないことが多い ・アメリカの連邦遺産税にも配偶者の優遇措置がある ・アメリカの連邦税としての遺産税はかからなくとも、州税としての遺産税がかかることがあるので注意が必要 ・日本の相続税とアメリカの遺産税の両方がかかる場合には外国税額控除の適用を検討する ・アメリカのプロベート手続きを回避する手段として、財産をアメリカ国外に移動したり、トラストや共同所有(ジョイント)とする方法がある ・遺言を作成する場合には財産のある国それぞれの方式で作成することがおすすめ(遺言だけではプロベートの回避はできないことに注意) ・アメリカ人のご主人が亡くなった場合の相続手続きは国際相続に精通した日本の専門家(税理士や弁護士)に相談した方が良い ・アメリカ人夫の相続で困ったら「税理士法人マインライフ」へ! アメリカ人のご主人が亡くなった場合の相続手続きは日本人が亡くなった場合とは異なり、日本とアメリカ双方の法律が絡み大変複雑なものとなります。 通常、この手続きを個人一人で行うのは相当な時間と労力を要するものと想定されます。 当記事を参考にしていただき、相続のためにすべきことを整理していただいた上で、ご相続人の皆様が円満な相続を迎えられることを願っております。 国際相続にあたってはやるべきことがたくさんありますが、まず今できることを一つずつ進めていきましょう!
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    国際相続サポート

    • 2026.04.09
    • 伊藤 千尋

    中国の財産に相続税はかかる?日本在住者が確認すべき相続時の注意点

    中国で財産を相続する場合はどうしたらいいのか? このように疑問をお持ちの方も多くいるのではないでしょうか。     中国本土で財産を相続するときには、相続税というものはありません。 ただし、中国にある財産を相続する際には名義変更と送金の段取りが重要になります。   また、中国で相続税がかからない場合でも、例えば日本在住の方であれば、日本の相続税が課される可能性があります。   そもそもCRS(共通報告基準)という制度が存在し、海外口座の情報は各国の税務当局に自動で共有されます。 そのため、正確な把握と適切な申告が必要になるのです。   この記事では中国財産がある方から財産を相続する場合に気を付けるべき事項をまとめています。 この記事を読んで手続きを円滑に進められれば幸いです 第1章 中国に相続税はない 中国本土には相続税がなく、相続そのものに税金はかかりません。   ただし、香港・マカオ・台湾は独自制度で運用されています。 香港とマカオは相続税がなく、台湾には相続税が設けられています。   地域差は実務の細部に及ぶため、「本土」・「香港」・「マカオ」・「台湾」を分けて考え、各地域での最新の運用を確認しながら進めましょう。   また、中国には相続税はありませんが、中国にある財産を相続する場合にはその名義変更や送金手続きが重要になります。 次章では中国にある財産の名義変更、送金手続きについて確認していきます。 第2章 中国の財産の名義変更、日本への送金手続き 名義変更・送金手続きがうまく回るかどうかは、必要書類の整え方と手順の設計にかかっています。 作業は大きく、「財産の把握」、「名義変更(登記・銀行)」、「外貨両替と送金」という三つの段階に分かれます。 どの段階でも本人確認と書類の整合性が重視され、一枚の不足や表記の不一致が差し戻しの原因になりがちです。   相続人が一人なら、遺産分割の同意書がいらない分だけ手続きは進みやすいです。 ただし、氏名の表記や親族関係を示す書類に少しでも不一致・不足があると、役所や銀行から差し戻されて「出直し」が増え、結局は時間がかかります。 そのため、最初に提出書類の作りをきっちり設計することが大切です。   中国では他の国に比べてインターネット等で得られる情報が少ないため、いずれの手続きも非常に困難になるケースが多いです。 ここでは一般的な手続きの流れや方法を記載しますが、実際には現地専門家と対応を検討しながら進める必要があります。   ※アポスティーユ=国際的に文書の正しさを証明する仕組み(提出先の国が条約加盟国の場合に利用可)。 2-1 中国にある「財産の把握」 最初の一歩は、どこに何があるのかを把握し一覧にすることです。   不動産、銀行・証券、保険などを推定も含めて洗い出し、優先順位を付けて照会していきます。           中国国内での手続きでは、明確に正当な権限の確認ができない相手に情報を開示しません。 そのため、入念に書類を準備して手続きを進める必要があります。   また、現地の弁護士や専門職に委任して進める場合は、委任状の形式や本人確認の方法を事前にすり合わせておくと行き違いを防げます。   パスポート・戸籍・翻訳書類の氏名表記は最初に統一しておくと、後の差し戻しを大幅に減らせます。 2-2 中国における不動産の権利と「名義変更」手続き 中国の不動産は、建物の所有権と土地の使用権を一体として取り扱い、日本と同様に名義変更手続きを行います。   具体的には、相続が発生したら以下の流れで手続きを進めます。 ①不動産権証(不动产权证书)で用途、使用期限、権利の種類を確認します。 ②死亡事実や親族関係を示す日本の書類を中国語に翻訳します。 ③公証・アポスティーユを付して、不動産登記機関に継承登記を申請します。   地域によっては公告や追加照会が求められることがあり、提出書類の精度と、窓口の最新案内に合わせた準備がスピードを左右します。   農村の宅基地を含む物件は「房地一体」で扱われ、備考欄への注記など地域運用の差が大きいため、登記センターに事前照会して要件を確認しておくと安心です。   被相続人又は相続人が中国国籍の場合は、親族関係を示す書類として、親族関係公証書、出生公証書、死亡公証書などを中国国内の公証処で取得することもあります。   公証手続については、日本の公証役場ではなく、中国現地の公証処での公証が必要となる場合がありますので注意が必要です。 2-3 中国における預金の名義変更手続き 中国では預金の名義変更手続きも困難となります。   銀行では、被相続人の口座がいったん凍結され、相続人の申請に基づいて払戻しや名義変更が行われます。 ただし、中国の銀行では正当な権限の確認ができない相手に情報を開示しないので、その手続きも順調に進まないことが多いです。   具体的な必要書類は銀行ごとに細部が異なります。 事前に最新のリストを取り寄せ、戸籍・身分証の中国語訳、公証、委任状、銀行所定の相続書類、送金先口座の情報などをそろえてから窓口に向かうのが効率的です。 2-4 中国の預金を日本に送金する際のポイント 日本への送金時のポイントは、「相続を目的とする正当性の説明と裏付け資料を揃えられるか」になります。 中国の外貨・海外送金には目的と真実性の審査があり、用途、金額、回数の取り扱いは銀行の運用と提示書類の整合で決まります。   外貨両替と送金の際には以下の点に注意しましょう。 ・名義変更の完了時期を確認しておく ・為替レートや手数料を見込んだ両替のタイミングを計画する ・相続目的での枠超えの扱い(中国人が外貨に両替して送金する金額が5万米ドルを超える際には所定の手続きを経る必要があります)を適用できるようにする   ・着金予定日までを含めた計画表を先に作っておく   また、送金手続きと注意点については下記のような地域差があります。 ・香港:外貨の出入りは比較的スムーズ。ただしKYC(本人確認)が厳格で、書類整合性のチェックが細かい。 ・マカオ:相続税はないものの、不動産移転で印紙税などの周辺費用が発生し得る。費用見込みを事前に確認。 ・台湾:相続税の申告スケジュールを送金計画と一体で組み立てる必要がある。(評価・書類準備の期間を要する)。   いずれの地域でも、銀行担当者と早めに要件をすり合わせておくと安心です。 第3章 日本で相続税がかかる場合も 相続人が日本の居住者である場合、海外の財産も相続税の対象になり得ます。 この記事では日本側の制度説明を最小限にとどめますが、「対象になる可能性がある」という前提で、評価資料の準備と期限管理を先に進めておくと、後戻りを避けられます。 後述するCRSの運用が広がっているため、「申告しなければ分からない」という考え方は通用しません。 3-1 中国にある財産でも相続人が日本にいれば日本の相続税の課税の対象 日本の居住者が財産を相続する場合は、中国にある財産も課税の対象になり得ます。 最終的な判定は居住地や国籍、経緯に左右されるため、判断が難しい場合は早めに専門家へ確認をとって、迷いのないスケジュールを引きましょう。 日本側での検討を最低限に抑えつつも、「対象になり得る」という前提で準備しておけば、後で制度の線引きを見直すことがあっても対応できます。 3-2 中国にある財産の評価 中国に財産がある場合、その価額を評価するというのも重要になります。 なぜなら、日本の相続税を計算する際には、中国にある財産の価額を算定して、日本の税率に乗じることになるからです。   財産の評価には資料の精度と段取りが重要になります。 不動産は権利証・登記情報・市場価格など現地資料にもとづいて評価し、預金は残高証明と基準日の外国為替レートで円換算します。   取り寄せや翻訳、公証に時間を要するため、申告期限から逆算して、誰がいつ、どの資料を用意するかを明確にし、換算の根拠やレートの出所をあわせてファイルしておくと、後日の問合せにも強くなります。 3-3 CRS制度に注意 CRS(共通報告基準)は、各国の税務当局が金融口座情報を自動的に交換する国際的な枠組みです。 例えばCRS参加国であるシンガポールに預金を持っている人が亡くなった場合には、日本の税務署がシンガポールの税務当局に要請をすればその方のシンガポールにある預金情報を取得することができるのです。 この制度により、以前は外国の預金まで税務署が調査することは難しかったのですが、容易に把握することができるようになりました。   中国本土、香港、マカオはいずれも参加し、2018年から情報交換が始まっています。   実務では、口座や残高を最初から正確に把握し、名寄せされても困らない状態に整えておくこと、そして日本側で適切に申告・整理しておくことが、追加の手間や修正を避けるうえで最も効果的です。 金額の多少にかかわらず、対象や条件に応じて情報は交換され得るため、最初から適切に申告をすることが安安心に繋がります。 第4章 専門家に早めに相談するのが安心 国際相続では、言語、制度、タイムラインという複数の壁が同時に立ちはだかります。 名義変更、送金、日本側の評価と申告といった一連の作業を一本の線で設計できる体制が整えば、必要書類の順番や提出先、確認の手戻りが減り、全体のスピードが一気に上がります。 4-1 国際相続に強い税理士なら安心   国際相続に強い税理士を窓口に一本化できると、迷いが消えます。 翻訳、公証、アポスティーユの要否と順番、銀行の要求書類の事前確認表づくり、評価基準日の設定や為替レートの根拠管理、そしてCRS時代に求められる説明可能性を担保した書類整備まで、流れ全体を見通して組み立てられることが、時間と費用の無駄を減らす最大の効果です。 4-2 事前の準備で手間を減らせます 生前から情報を「見える化」しておくと、相続時の負担は劇的に小さくなります。 銀行名・支店・口座番号を含む口座一覧、不動産の所在地・証書番号・用途・使用期限を記した権利証と登記情報、投資や保険の契約一覧、戸籍やパスポートなど重要書類の保管場所、銀行担当や登記窓口、代理人といった現地の連絡先など。 これらを一つの場所に集約し、氏名表記を最初にそろえるだけで、後の差し戻しや重複作業が目に見えて減ります。 4-3 専門家の関与で家族トラブルも防げます 第三者が関与すると、感情と作業を分離でき、誤解の芽を早い段階で摘み取れます。 相続人が1人のときでも、銀行や登記で伝えるべき「言い回し」や、証跡の残し方、期日の管理を支援してもらうことで、スムーズに完了へ近づけます。 第5章 国際相続は「税理士法人マインライフ」へ 国際相続は、国内相続とは比べものにならないほど複雑で、専門家の存在が成功の分かれ道となります。   税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。   マインライフが選ばれる理由 「海外の財産をどう扱えばいいのかわからない」「外国税額控除を受けたいが手続きに不安がある」―― そのようなときは、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。   最初の一歩を踏み出すことが、複雑な国際相続を解決へ導く最大のカギとなります。 第6章 まとめ いかがだったでしょうか。 中国本土には相続税がありませんが、放置して良いわけではなく、実務の中心は名義変更(登記・銀行)と日本への送金です。   さらにCRS(共通報告基準)により海外口座情報は各国税務当局へ共有され得るため、正確な把握と整った書類が不可欠です。香港・マカオ・台湾は本土と制度が異なる点にも注意しましょう。   「中国に財産がある」「相続人が海外在住」と分かった時点で、すでに国際相続の土俵です。   早めに相談すれば、書類の差し戻しや送金の行き詰まりを減らし、スムーズな手続き・不要な税負担の回避・家族関係の円満維持につながります。 最初の一歩が、安心の相続への最短ルートです。  
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    相続対策, 国際相続サポート

    • 2026.03.25
    • 門倉 誉士希

    アメリカ贈与税【2026年版】日本から米国在住の子へ送金する前に読む完全ガイド

    【当記事は2026年1月1日時点の法令に基づき作成しております。】   アメリカに住んでいる子ども(孫)に財産を贈与してあげたいけど、贈与税はかかるのかな、、、。 そんな疑問をお持ちですね。 日本に住む方がアメリカに住むお子様やお孫様に贈与を行う場合、アメリカと日本、両方の税制度を確認する必要があります。 場合によってはアメリカと日本の両方で税金がかかる、二重課税となる可能性もあります。 今回は日本に住む方がアメリカに住むお子様やお孫様に財産を贈与する場合の税金について解説します。 この記事を読んで、事前に注意点などを確認した上で、お子様たちへ計画的な贈与を行っていきましょう!   第1章 アメリカの贈与税の仕組み まず初めにアメリカの贈与税の基本を確認しましょう。 1-1 誰が贈与税を負担・申告するのか(納税義務者) アメリカの贈与税は日本の贈与税とは異なり、原則的に財産を渡す側(贈与者)に税金を納める義務があります。 なお、贈与者が納税を行わない場合には財産を受け取った側(受贈者)に税金を納める義務が生じます。 アメリカの贈与税の取扱いは、次のとおり贈与者がアメリカ市民・アメリカ居住者であるか、アメリカ非居住外国人であるかにより異なります。   1-2 課税対象となる財産 課税の対象となる財産は以下のとおり、贈与者がアメリカ市民・アメリカ居住者であるか、アメリカ非居住外国人であるかにより異なります。 贈与者がアメリカ非居住外国人の場合、アメリカにある財産であっても無形財産については贈与税の課税対象から外れます。 したがって、例えば、アメリカ市民ではなくアメリカに住んでいない人(アメリカ非居住外国人)がアメリカ国内にある預金の贈与を行ってもアメリカの贈与税は課税されないこととなります。   1-3 申告・納税期限 アメリカの贈与税は暦年(1月1日~12月31日の1年間)を課税単位とし、申告・納税期限は原則として贈与を行った年の翌年4月15日です。   1-4 計算の仕組み・税率 (1)計算手順 アメリカの贈与税は以下の手順で計算します。 ① その年の贈与財産の合計額を集計 ↓ ② ①から年間基礎控除・配偶者控除・寄附金控除をマイナスし課税価額を計算 ↓ ③ ②の結果として計算された課税価額と過年度の課税価額(合計額)を合計 ↓ ④ ③×税率(統一移転税率※)=贈与税総額を計算 ↓ ⑤ 贈与税総額-贈与税控除・統一移転税額控除・外国税額控除   ※統一移転税率は、アメリカの遺産税(日本の相続税に相当する税金)、贈与税ともに同一の税率表が適用されます。   (2)各種控除の内容 ① 年間基礎控除(Annual exclusion) 年間基礎控除とは、贈与税計算上の財産から差し引くことができるもので、2026年における控除額は財産を受け取った人(受贈者)一人当たり19,000ドルとなっています。 なお、この年間基礎控除には、婚姻関係にある夫婦について、ギフトスプリッティング(Gift splitting)という特例が認められています。財産を渡す人(贈与者)が第三者に対して贈与を行う場合、その財産を渡す人の配偶者の同意を得られれば、その第三者に対して、財産を渡す人とその配偶者がそれぞれ半分ずつ贈与をしたものとみなして、倍の年間基礎控除を用いることができます。 このギフトスプリッティングの特例を使うためには税務当局に申告を行う必要があります。 【具体例】 ・Aは30,000ドルを第三者Cに贈与する、というケース。 ・Aの配偶者Bが同意すれば、Aは第三者Cに15,000ドル(30,000ドルの半分)を贈与したものとみなされ、Aの配偶者Bは第三者Cに15,000ドル(30,000ドルの半分)を贈与したものとみなされる。 ・この場合、AとAの配偶者Bの贈与財産の金額は各15,000ドルずつとなり、それぞれ年間基礎控除額の19,000ドルを超えないこととなるため上記②の課税価額が生じず、贈与税は発生しないこととなる。   ② 配偶者控除(Marital deduction) アメリカ市民である配偶者に対して行った贈与は、その全額が配偶者控除の対象となります。 したがって、アメリカ市民である配偶者に対して行った贈与についてはアメリカの贈与税は生じないこととなります。 一方、アメリカ市民でない配偶者に対して行った贈与については、この配偶者控除に上限があり、年194,000ドルとなっています。   ③ 寄附金控除 一定の慈善団体への寄付金については、贈与税計算上の財産から差し引くことができます。 なお、アメリカ非居住者が贈与を行う場合は、「アメリカにおける」一定の慈善団体への寄付金のみが控除の対象となります。   ④ 統一移転税額控除(Unified credits) 統一移転税額控除とは、納付すべき贈与税額の計算にあたって、贈与税の総額から差し引くことができる控除で、2026年における控除額は5,945,800ドル(贈与財産額ベースで15,000,000ドル)となっています。 なお、アメリカ非居住者が贈与を行う場合は、前述の統一移転税額控除の適用は認められていません。 しかし、日米相続税条約の適用により、贈与者がアメリカ非居住者であったとしても日本人である場合には、統一移転税額控除を適用する特例計算が認められています。 また、この統一移転税額控除の適用によって納付すべき贈与税が生じない場合であっても、その年の贈与財産が受贈者ごとの年間基礎控除の金額を超えるときは、確定申告書の提出が必要となります。   ⑤ 贈与税額控除、外国税額控除(Credit for foreign gift taxes) 納付すべき贈与税額の計算にあたって、贈与税の総額から以下を差し引くことができます。 ・過年度に支払ったアメリカの贈与税の合計額(贈与税額控除) ・アメリカ国外で支払った外国の贈与税のうちの一定額(外国税額控除) 外国税額控除については後の章で詳しく解説します。   (3)税率 2026年現在、上記(1)③の課税価額の合計額に適用する税率は以下の表のとおりで、課税対象となる金額が大きくなればなるほど税率が高くなる超過累進税率(18%~40%)となっています。 また、この税率は「統一移転税率」といって、アメリカの遺産税(日本の相続税に相当する税金)、贈与税ともに同一の税率表が適用されます。   贈与税・遺産税 統一移転税率表   1-5 アメリカの遺産税との関係 (1)アメリカの遺産税の概要 アメリカには日本の相続税に相当する税金として「遺産税」が存在します。 この遺産税は亡くなった方(被相続人)の遺産に対して課税がされるもので、納税義務者は亡くなった方(被相続人)となります。(日本の相続税は亡くなった方から財産を相続した相続人等が納税義務者となります。) なお、亡くなった方(被相続人)がアメリカ市民またはアメリカ居住者である場合には、被相続人の有する全世界の財産が課税の対象となりますが、アメリカ非居住者である場合には、アメリカ国内の財産だけが課税の対象となります。   (2)アメリカの遺産税と贈与税の関係 この遺産税は基本的に亡くなった方の財産に税率をかけて税額を算定することとなっていますが、この税率をかける「課税遺産総額」には、亡くなった方(被相続人)が生前に行った贈与のうち、贈与税の課税価額に算入されたものを合算することとなっています。 そして算定された遺産税からは、過去に支払った贈与税相当額を控除する仕組みとなっています。 つまり、亡くなった方(被相続人)が生前に行った贈与で贈与税の対象となったものは結局遺産税の計算にも反映される、ということになっています。   (3)アメリカの遺産税の税率 亡くなった方(被相続人)の「課税遺産総額」にかける遺産税の税率は、上記贈与税の計算に用いた「統一移転税率」が同様に適用されます。課税対象となる金額が大きくなればなるほど税率が高くなる超過累進税率(18%~40%)となっています。   【「アメリカの遺産税」に関してはこちらの記事をご参照ください。】   1-6 連邦税・州税 これまではアメリカの連邦税としての贈与税について解説してきましたが、州によっては州税としての贈与税が存在します。 連邦税としての贈与税はかからなくても、州税としての贈与税はかかる、という可能性もあります。 州税については、現地の専門家と連携し確認を行う必要があります。   第2章 日本の贈与税との関係 続いて、アメリカの贈与税と日本の贈与税の関係について確認していきましょう。 2-1 日本の贈与税の制度 (1)日本の贈与税の概要 日本の贈与税は財産を貰った人(受贈者)に納税義務があります。 日本の贈与税には暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つの制度があり、相続時精算課税制度を選んだ場合には相続時精算課税制度が適用され、選ばない場合には暦年課税制度が適用される仕組みとなっています。 なお、この選択は贈与者(財産をあげる人)、受贈者(財産を貰う人)のペアごとに行うことが可能です。 贈与税の申告・納税期限は贈与を受けた年の翌年3月15日となります。   暦年課税制度 暦年課税制度の概要は以下のとおりです。 ・その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額が基礎控除額110万円を超えた場合に贈与税が発生します。 ・基礎控除額110万円を超えた金額に税率をかけて贈与税額を算定します。 ・税率は10%~55%の超過累進税率となっています。 ・亡くなった人(被相続人)が亡くなる前7年間に行った相続人等に対する贈与は相続税の対象となります。   相続時精算課税制度 相続時精算課税制度の概要は以下のとおりです。 ・原則、60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫に対して財産を贈与した場合に選択できる制度です。 ・その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額が基礎控除額110万円以内である場合には贈与税がかからず、相続税の対象にもなりません。 ・贈与を受けた財産のうち、年110万円の基礎控除額を超えた部分の累計額が2,500万円を超えた場合にはその超えた部分に一律20%の贈与税がかかります。 ・贈与を受けた財産のうち、年110万円の基礎控除額を超えた部分は財産をあげた人(贈与者)が亡くなった際の相続税の対象となります。 ・相続時精算課税制度を選択する場合には、その選択する年の翌年2月1日から3月15日までの間に税務署に届け出を行う必要があります。 ・この選択は贈与者(財産をあげる人)、受贈者(財産を貰う人)のペアごとに行うことが可能ですが、一度この制度を選択するとその選択をした年分以降はすべてこの制度が適用されることとなり、2度と暦年課税制度に戻ることはできません。   (2)日本の贈与税の納税義務(国外に財産がある場合) 日本の贈与税の納税義務は以下のフローチャートに沿って判断します。 財産をあげた人(贈与者)、財産をもらった人(受贈者)の状況によって、日本国内にある財産だけが贈与税の対象となるのか、日本国外にある財産も贈与税の対象となるのかが異なります。 このように、日本とアメリカの贈与税はその国外にある財産にも課税されることがあることから、同じ財産に両国の贈与税がかかってしまうことがあります。 この二重課税を防ぐために「外国税額控除」という制度があります。   2-2 外国税額控除の適用 贈与税の外国税額控除の具体的なイメージは以下のとおりです。 (1)前提 日本に住んでいる日本国籍の父が日本に住んでいる日本国籍の子に対してアメリカの不動産を贈与し、日本で5,000万円、アメリカで3,000万円の贈与税が発生   (2)計算例 ①日本で支払う贈与税額の計算 日本の贈与税5,000万円-【外国税額控除】アメリカの贈与税3,000万円=日本で実際に支払う贈与税2,000万円 ②実際に支払った贈与税額 日本で支払った贈与税2,000万円+アメリカで支払った贈与税3,000万円=5,000万円   外国税額控除を適用することにより、結果的に日本の贈与税相当額5,000万円のみを納税したこととなります。   【「外国税額控除」についてはこちらの記事をご参照ください。】   第3章 よくある間違いと注意点 次にアメリカの贈与税を考える上でのよくある間違いとその注意点を確認していきましょう。 3-1 現金を物理的に持ち込んでの贈与 財産をあげる人(贈与者)がアメリカに住んでおらず、アメリカ市民でもない場合、アメリカにある財産であっても無形財産についてはアメリカの贈与税の課税対象から外れます。無形財産とは預金、有価証券等をいいます。 これを勘違いし、贈与税がかからないものと思い込んでアメリカに現金を持ち込み贈与した場合、現金は無形財産には該当しないため、アメリカの贈与税の対象となります。   3-2 アメリカ非市民である配偶者に配偶者控除を誤適用 アメリカ市民である配偶者への贈与は、その全額が配偶者控除の対象となります。 したがって、アメリカ市民である配偶者に対して行った贈与についてはアメリカの贈与税は生じません。 しかし、アメリカ市民でない配偶者に対して行った贈与については、この配偶者控除の金額に上限があるため贈与税が発生することがあります。 配偶者がアメリカ市民でないにも関わらず、配偶者控除によって贈与税が発生しないものと勘違いして無計画に贈与を行うとアメリカの贈与税が発生する場合があります。   3-3 ギフトスプリッティングを誤って適用 アメリカの贈与税計算上の年間基礎控除には、婚姻関係にある夫婦について、ギフトスプリッティング(Gift splitting)という特例が認められていますが、この制度はその贈与時点において夫婦の両方がアメリカ市民またはアメリカ居住者でなくては適用できません。 例えば日本人夫婦のうち、一方はアメリカ在住で、一方は日本在住の場合、この特例は適用できないため注意が必要です。   3-4 Form 3520の提出の失念 アメリカ市民またはアメリカ居住者が、アメリカ非居住者から贈与または相続により年10万ドル超の財産を受け取った場合は、Form 3520という報告書をIRS(日本の国税庁に相当する機関)に提出する必要があります。 申告期限は贈与や相続を受けた年の翌年4月15日までとなります。 申告を怠った場合には罰則規定があるため注意が必要です。 アメリカの贈与税は発生しないから提出するものは何もない、と思い込み、提出を失念してしまう場合があるため注意が必要です。   第4章 Q&A   4-1 アメリカで贈与税の納税がない場合でも申告義務が生じることはありますか? あります。 アメリカでは、贈与税の納税額が0円でも申告が必要になる場合があります。たとえば、贈与者については、年間基礎控除額を超える贈与をした場合、夫婦でギフトスプリッティングを使う場合などに、Form 709 の提出が必要です。また、アメリカ市民ではなくアメリカに住んでいない人(アメリカ非居住外国人)がアメリカの贈与税の対象となる贈与をした場合には、Form 709-NA の提出が必要となります。 また、受贈者側に申告義務が生じることもあります。たとえば、アメリカ市民またはアメリカ居住者が、アメリカ非居住者から年間で10万ドル超の財産を受け取った場合には、贈与税の納税とは別に、Form 3520 による報告が必要になります。   4-2 アメリカで贈与税のない州はありますか? あります。 ただし、ここでいう「贈与税のない州」とは、州独自の贈与税がないという意味です。前述してきた連邦贈与税は州とは別に検討が必要です。 州税ベースでは、2026年時点ではコネチカット州が州独自の贈与税を課している州とされています。 したがって、多くの州では州独自の贈与税はありませんが、州によっては遺産税や相続税が存在するため、これについては別途居住州や財産所在地の州法確認が必要となります。   4-3 日本からアメリカに送金する際に税金以外に気を付けることはありますか? まず、送金自体は原則として自由ですが、100万円を超える国外送金や国外からの受領送金については、金融機関から日本の税務署へ国外送金等調書が提出されます。これによって直接的に税金が課税されることはありませんが、送金記録が税務当局に共有される仕組みとなっています。 また、金融機関では、マネーロンダリング対策のため、本人確認に加えて、送金目的や資金の出所などの説明や資料提出を求められることがあります。 さらに、日本から海外口座へ送金する場合、3,000万円相当額を超える送金については、外為法に基づく事後報告が必要になることがあります。 加えて、現金を持参して移動する場合は税関申告にも注意が必要です。 日本では100万円相当額超の現金等を持ち出し・持ち込みする場合に税関申告が必要で、アメリカでも10,000ドル超の通貨等を持って入出国する場合は申告が必要です。   第5章 アメリカに住むお子様・お孫様への贈与についてのご相談は「税理士法人マインライフ」へ アメリカに住む子どもたちへ贈与をした場合、アメリカの贈与税の申告・納税や届出等の手間はかからないだろうか・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。 年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 「アメリカに住む親族への財産の贈与をどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。   第6章 まとめ 今回はアメリカの贈与税について解説してきました。   ・アメリカの贈与税の納税義務者は贈与者(日本の贈与税の納税義務者は受贈者) ・アメリカの贈与税の対象となる財産は、贈与者がアメリカ市民・アメリカ居住者であるか、アメリカ非居住外国人であるか、いずれかにより異なる ・2026年の統一移転税額控除額は贈与財産額ベースで15,000,000ドル(1ドル150円のレートで22.5億円)と非常に高額であるため、贈与税が発生するケースは少ない ・アメリカの贈与税率は超過累進税率で18%~40%となっている ・日本の贈与税とアメリカの贈与税の両方が課税された場合は、外国税額控除を適用できる可能性がある   アメリカの贈与税の制度は日本の贈与税の制度とは異なる部分が多々あり、遺産税との関わりもあるため非常に複雑な制度となっています。 アメリカの贈与税がかかるかもしれない、、、そんなときは早期に専門家に相談をして、正しい判断ができるように努めましょう。
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    相続対策, 国際相続サポート

    • 2026.03.19
    • 久保 佑介

    【徹底解剖】シンガポール移住と相続税のポイント

    「何とか相続税の課税から逃れられないか」「シンガポール移住はどうだろうか?」 シンガポールには相続税(遺産税)がないため、移住を通じて相続税の回避を検討する方がたくさん居ます。 しかし実務上は「シンガポールに住めば相続税を回避できる」というほど単純な話ではありません。 日本の税制は年々複雑化しており、安易な移住には多くのリスクが潜んでいます。 本記事では、シンガポール移住について  相続税の回避要件  事例による相続税が課される・課されないケースのまとめ  シンガポール税制の魅力  節税するための4つの注意点   を税の専門家の視点を踏まえて詳しく解説します。 ぜひ記事を参考にシンガポール移住を検討してください。 第1章:【結論】シンガポールへの移住は場合によっては相続税が回避可能 1-1シンガポールに移住すれば本当に相続税を避けられるのか? 結論から言えば、シンガポールに移住することで日本の相続税を回避できるケースはあります。 しかし、以下の3つの条件「①被相続人要件」「②相続人要件」「③財産要件」をすべて満たす必要があります。 【課税されない3条件】※いずれも日本国籍を所有している前提 条件 内容 ① 被相続人が日本の非居住者  10年以内に国内に住所がない場合 ② 相続人も日本の非居住者 10年以内に国内に住所がない場合 ③ 財産がすべて海外にある 日本に預金・不動産・株式など国内資産が一切存在しない つまり、具体的には相続開始時に以下のような状況が条件となります。 • 被相続人:シンガポールに永住権を取得し、10年超滞在している。 • 相続人:同様にシンガポールに永住権を取得し、10年超滞在している。 • 財産:すべてシンガポールの銀行口座、不動産、シンガポール法人の株式等で、日本国内資産がゼロ。 このようなケースであれば、日本の相続税は課されません。 1-2 シンガポール移住における3つの誤解 日本の相続税法の仕組みは、「被相続人の住所(居住実態)」だけではなく「相続人の住所(居住実態)」と「財産の所在」で課税可否が判断される点がポイントです。 以下のような誤解によって、課税リスク見誤る事例が多く見られます。 ❌ 誤解1:「被相続人だけが移住すればよい」 → 被相続人だけの移住では不十分です。相続人が日本に住んでいる場合、相続人が取得する全世界の財産が課税対象になります。 ❌ 誤解2:「相続開始直前までに移住すればよい」 →「移住後も10年間は日本の相続税の課税対象になります。」 日本の相続税法では、被相続人又は相続人のいずれかが相続前10年以内に国内に住所がある場合には、相続時にシンガポールに在住していたとしても「居住者」と同様に扱われます。出国しても即座に免税とならないということです。 ❌ 誤解3: 「日本に住民票を置いていなければ非居住者と認定される」 → 税務上の「居住者」か否かは、実際の生活実態(生活の本拠)がどこにあるかで判定されます。たとえ住民票を抜いても、居住用不動産の有無、納税実績、職業、家族の生活状況なども含めて総合的に判断されるため「形式的な移住」として否認されるケースがあります。 【課税回避に向けて不可欠な4つの「実務要件」】 1. シンガポールにおける生活の本拠を客観的に構築する  → 納税履歴、家族帯同、医療記録などが有効 2. 日本との経済的関係を遮断する  → 日本企業との雇用関係、口座、証券口座、不動産などを整理 3. 相続人側の移住も同時並行で設計する  → 相続人が日本在住の場合、被相続人が非居住者でも課税される 4. 10年を越える移住期間を確保する  → 相続はいつ起きるかわからない。高齢になってからの移住では手遅れになる可能性が高い 【専門家の視点👉】 シンガポール移住での相続税回避は「実現可能だが、計画的である必要がある」 • シンガポールには「相続税が存在しない」という絶対的な魅力があります。 • 日本の相続税を回避するには、被相続人・相続人の両方が、税務上明確な非居住者である必要があります。 • 単なる形式的な移住や住民票の移動では不十分であり、生活・財産・家族関係まで含めた包括的な移住設計が求められます。 • 実務では「移住後10年超を経過」「相続人も同様に移住後10年超を経過」「日本財産ゼロ」というハードルを越えた場合のみ、初めて相続税の課税対象外となります。 第2章:シンガポール移住で相続税が課される・課されないケースのまとめ 2-1「課税されるかどうか」は組み合わせで決まる 前章で説明したとおり、日本の相続税がかかるかどうかは、以下3つの要素の組み合わせで決まります。 1. 被相続人の居住状況(出国10年超経過しているか) 2. 相続人の居住状況(出国10年超経過しているか) 3. 相続財産の所在地(日本国外にあるか) この章ではケースごとに事例で相続税の課税要件をまとめます。 <相続税課税の一覧表>※各人日本国籍を有している前提 被相続人 相続人 財産所在地 相続税課税 非居住10年以下 非居住10年超  国外  全世界財産に課税 非居住10年超  日本居住 国外  全世界財産に課税 非居住10年超  非居住10年超 国内財産あり 国内財産に課税 非居住10年超 非居住10年超 国外 ❌ 課税なし 日本居住 日本居住 国内外に財産あり 全世界財産に課税 ケース1:被相続人が出国10年以下 → 相続税あり 事例 • 被相続人:2020年に日本を出国しシンガポールに移住 • 相続開始:2028年(出国から8年) • 相続人:非居住者(シンガポール在住) • 財産:すべてシンガポール所在 この場合、被相続人が「出国後10年超経過していない」ため、相続税法では日本の居住者とみなされ、相続人が非居住者であっても国外財産を含む全財産が課税対象となります。 ケース2:相続人が日本在住 → 相続税あり(国外財産含む) 事例 • 被相続人:シンガポールに15年居住(非居住者) • 相続人:東京都在住の長男 • 財産:シンガポールの預金・不動産 この場合、相続人が日本の居住者であるため、被相続人が非居住者であっても、日本の相続税法の適用が及びます。相続人が取得する財産がすべて国外にあっても、日本で申告・納税が必要となります。 ケース3:日本国内に財産がある → 常に相続税課税 事例 • 被相続人:シンガポールに12年在住、非居住10年超 • 相続人:オーストラリアに12年在住、非居住10年超 • 財産:東京の不動産とシンガポールの預金 この場合、相続人・被相続人の双方が非居住者でも、日本国内にある「不動産」には相続税が課されます。所在地が日本である財産については、居住者・非居住者の区分にかかわらず課税されます。 ケース4:課税されないパターン 事例 • 被相続人:シンガポールで永住権を持ち、15年間生活 • 相続人:カナダで13年間生活しており、日本との関係なし • 財産:すべてシンガポール国内に所在する現金・預金・不動産 このケースでは、次のすべてを満たしています: • 被相続人 → 出国10年超・日本に帰国歴なし • 相続人 → 出国10年超・日本での所得なし • 財産 → 日本国内に一切なし そのため、日本の相続税法の適用範囲外となり、申告納税義務は発生しません。 2-2 相続人が複数名いる場合の注意点 相続人の中に1人でも「日本居住者」が含まれると、その人が取得する相続分については、日本の相続税が課されます。 • 相続人A(海外居住):課税対象外 • 相続人B(日本居住):課税対象 相続人ごとに課税対象が分かれるということです。 この場合、申告納税義務も相続人Bのみに発生し、遺産分割協議や納税方法においても調整が必要です。 2-3 この章のまとめ シンガポールでの相続税の課税可否は「誰が・どこに・何を」受け取るかで決まってきます。 まずはご自身の状況を正確に把握しておきましょう。 判断軸 ポイント  対応策 被相続人の居住状況  出国10年超経過が必要  早期移住+生活の本拠地移転 相続人の居住状況 日本居住者は課税対象 海外移住や贈与・信託も検討 財産の所在 日本にあれば必ず課税  財産の組替え・海外移管を検討 第3章:他国と比較したシンガポール税制の魅力とは 3-1 相続税・贈与税が「完全にゼロ」の国、シンガポール シンガポールにおける最大の税制上の魅力は、相続税も贈与税も一切存在しないという点です。 もともとシンガポールには「遺産税(Estate Duty)」という制度がありましたが、2008年に完全廃止され、現在は死亡に伴う税金は一切課されていません。贈与についても同様で、生前贈与に対する課税制度もなく、富の移転そのものに課税されない構造が出来上がっています。 これは世界的にも非常に希少な制度設計であり、多くの富裕層や資産家、ファミリーオフィスが同国を資産保全の拠点とする大きな理由の一つとなっています。 3-2 所得税・法人税もフラットかつ低率 シンガポールの税制度のもう一つの特徴は、「フラットで低率な直接税制度」です。具体的には以下のような構成です。 税目 シンガポール  日本 相続税 なし 累進課税(最高55%) 贈与税 なし 累進課税(最高55%) 所得税(個人) 累進課税(最高24%) 累進課税(住民税と合わせて最高55%) 法人税  一律17%(軽減措置あり) 実効税率 約30% キャピタルゲイン課税 原則なし  上場株などにあり 特に注目すべきは、キャピタルゲインに課税されない点です。 日本では、株式などの譲渡に譲渡益課税がかかるため、資産運用を重ねるほど税負担が増しますが、シンガポールでは運用による増加分には原則課税されません。 3-3 他国と比較しても際立つ「課税ゼロの強さ」 以下は、日本・シンガポール・他の主要国における相続税制度の比較です。 国名 相続税  贈与税 特徴 日本 最大55% 最大55%  居住歴と国籍で課税が決まる シンガポール なし なし キャピタルゲイン課税も原則なし アメリカ 連邦税 最大40% +州税あり  基礎控除 年間18,000米ドル(2024年)  市民権・居住で課税対象 イギリス 原則40%  存命中の贈与も課税対象  原則7年以内の贈与は 相続税課税あり カナダ 相続税はなし だがみなし譲渡課税  なし 遺産全体にキャピタルゲイン課税 オーストラリア  なし (贈与含めCGTで代替)  なし 贈与時に譲渡益課税 このように、「相続・贈与・キャピタルゲインのすべてが非課税」という国は、世界的に見てもシンガポールと香港くらいであり、特にシンガポールは法制度・経済環境・インフラ整備・治安の安定性を兼ね備えている点で、極めて競争力の高い国といえます。   3-4 この章のまとめ シンガポールは、相続税回避だけではない「制度的合理性」の国といえます。 シンガポールの魅力は、単に「税金がかからない」という理由だけではありません。以下の点で、資産承継・事業継続・国際的な活動に適した基盤が整っています • 遺産税・贈与税ゼロで、承継コストが極小 • 税務・法務制度が整備されており、予測可能性が高い • 英語圏であり、国際的な法制度・教育環境に優れる • アジア中心にアクセスしやすく、日本からの距離も近い(時差は1時間) 第4章:シンガポール移住で相続税を節税するための4つの注意点 日本の相続税は世界的に見ても高水準であり、課税対象となる財産の範囲も広いため、富裕層を中心に「相続税対策としての海外移住」を検討するケースが増えています。 しかし、現行の相続税法および所得税法の制度設計上、単純に「住民票を抜いて海外に移住する」だけでは、日本の課税関係から逃れることはできません。形式的な移住や短期的な対策では不十分であり、制度を深く理解したうえで、長期的・実質的な戦略が求められます。 この章では、特に注意すべき以下の4つのポイントについて、制度的根拠と実務上のリスクを交えて解説します。 4-1 4つの注意点 ① 10年以内に亡くなると課税される(出国後10年超ルール) 被相続人が出国後10年超を経過していない場合、日本の居住者とみなされ、海外にある財産であっても日本の相続税の課税対象となります。 【重要ポイント】 • 「非居住者」となるには、「出国後10年超経過」が絶対条件 • 10年以下で死亡した場合、海外移住していても全世界財産が課税対象になる • 「一時帰国」などがあると10年カウントがリセットされるリスクもある 【対策】 • 早期に出国して10年をしっかり経過させること • 日本国内に帰属しうる経済的拠点(家族、住居、収入源)がないよう整理 • 出国からの年次報告・出入国記録の保存 ② 相続人が日本在住だと課税対象になる(相続人10年超ルール) 被相続人が出国後10年超を経過していても、相続人が日本に居住している場合、相続税の課税対象になります。 【よくある誤解】 「父は完全に海外永住していたから、日本の相続税は関係ないのでは?」 → 相続人が日本居住である限り、日本ではその人の取得財産に課税できます。つまり、相続人ベースでも「10年超非居住」が要件となります。 【実務での注意点】 • 相続人が複数いて、1人でも日本居住者がいると、その人の分には課税 • 相続人が将来的に帰国する可能性がある場合もリスク要因 • 生前贈与・信託・持株会社スキームなどの併用を検討 ③ 日本にある財産には必ず課税される(所在地課税) 「相続財産の所在地が日本にある場合、非居住者であっても課税される」 【該当する財産の例】 • 日本国内の不動産(マンション、土地、ビルなど) • 日本の金融機関にある預貯金 • 日本企業の株式(非上場・上場問わず) • 日本の生命保険会社の契約 【対策】 • 移住前に不動産や預金を海外移転または売却 • 海外信託やホールディングカンパニーによるスキーム構築(慎重な設計必要) • 生命保険等は受取人の居住地も含め要チェック ④ 出国時に「出国税」がかかる場合あり(国外転出時課税) 2015年に創設された「国外転出時課税制度」により、一定の条件を満たす場合、出国時点で保有する有価証券等の含み益に対して所得税が課税されます。 【対象者】 • 有価証券等(上場株・非上場株・投資信託・デリバティブなど)を1億円以上保有 • 過去10年のうち5年超日本に居住していた人 • 出国により日本の居住者でなくなる人 【課税内容】 • 含み益に対して所得税(税率15.315%) • 実際には売却していなくても、課税される • 納税猶予制度あり 【注意点】 • 出国税の対象になるかどうか、資産評価の事前確認が必要 • 納税猶予制度を利用する場合でも、毎年の届出義務や担保提供などが必要 • 無申告や届出漏れがあった場合、重加算税・延滞税などのリスク 4-2 節税だけでなく「否認リスク」にも注意 「住民票を海外に移しただけ」では非居住者と認められないので、注意しましょう。 税務上の「非居住者」として扱ってもらうには、単に住民票を移すだけでは不十分です。 生活の本拠(住居・職業・医療・日常生活)がどこにあるかが重視され、形式的な移住と判断されれば、全世界の財産が課税対象になります。 <主な客観的事実> 以下の実態に基づいて総合的に判断されます。 • 住居の状況: 居住用不動産の有無、その利用状況(賃貸しているか、自己が居住しているかなど)。 • 職業: 事業活動の中心地、勤務地。 • 生計を共にする親族の居所: 配偶者やその他の扶養親族がどこに住んでいるか。 • 資産の所在: 主要な金融資産や不動産がどこにあるか。 • 納税実績: どの国で所得税やその他の税金を申告・納税しているか。 • 移動履歴: 国内外への出入国の頻度や滞在期間。 第5章 国際相続・贈与の相談は「税理士法人マインライフ」へ 税金が国際間をまたぐものであるため手続きが複雑になるかもしれない・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 国際相続の経験が豊富な専門家が直接対応 少数精鋭体制で、経験豊富な税理士が必ず対応。 担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告・対策に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、相続に特有の実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 海外の専門家との連携体制が整っており、海外の財産や海外在住者の手続きに対応が可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる税計算だけではなく、納税資金対策や二次相続対策など、将来を見据えたオーダーメイドの提案が得意です。 ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第6章 まとめ シンガポール移住で相続税を回避したいと考えるあなた。 しかし、制度・費用・生活・法務リスクを総合的に判断した結果、「実行しないほうが良い」ということは十分にあり得ます。また、せっかく要件を満たしても継続することができないケースも散見されます。 やむを得ず帰国せざるを得ない場合にも、帰国前に海外財産の生前贈与を検討するなど専門家へ相談することで相続対策が可能であったケースもあります。 国際相続はルールや手続きが複雑かつ難解です。国際相続に精通した税理士・弁護士になどに相談し、慎重に判断することが非常に大切です。 シンガポールへの移住をお考えの場合は、まずは専門家に相談し、戦略を立てた上で移住を実現してください。        
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    相続税申告, 国際相続サポート

    • 2026.03.14
    • 川崎 朝輝

    海外にいるはずの相続人が所在不明/所在調査から手続き完了までの対処法

    「母が亡くなり手続きを進めたいのに、海外にいる弟と連絡がつかない……」 相続人のうち一人が海外に住んでいて、長年連絡が取れないまま。 手続きを進めたいのに、何から手をつけていいのか分からない。 いつまでに何をすればいいのかも分からず、ただ日だけが過ぎていく。 そんな状況に、焦りや不安を感じていませんか? 実は、連絡が取れない相続人がいる場合でも、相続手続きをすることは可能です。 本記事では、所在不明の相続人がいる場合に取るべき具体的な対応や制度の活用方法を、実務経験に基づいて分かりやすくご紹介します。 結論から言えば、 ➀できる限り所在を調べる → ➁見つからない場合は家庭裁判所に申立てを行う という二段階で進めます。 また、相続手続きを進めるうえで最も注意すべきなのが、「相続開始から10か月以内に行う相続税の申告・納税」です。 この期限に間に合わせるためにも、全体の流れと各ステップにかかる時間を把握しておくことが大切です。 ここでは、相続手続きを期限内に進めるための主な流れを時系列で整理します。 1. 相続人が海外にいて、所在や連絡先が不明の場合の対応 まずは、相続人が海外にいて所在や連絡先が不明な場合の相続手続きの主な流れと期限を線表で整理します。 この線表を確認しながらそれぞれの手続きの内容をご確認ください。 【相続手続きの主な流れ及び期限の線表】 ※①は戸籍などの収集、⑤は遺産分割協議、⑥は名義変更の手続きです。 なお、「③相続人の調査」で相続人への連絡が取れれば「④管理人の選任」は不要となります。 また、相続税を亡くなった方の資金で支払うのではなく、ご自身の手許の資金で支払う場合は「⑥名義変更」の手続きは10か月過ぎてから行っても大丈夫です。   1-1 相続手続きの主な流れ(死亡~遺産分割~名義変更) ① 戸籍などの収集(目安:1か月~2か月) 相続手続きの最初のステップは、被相続人(亡くなった方)の死亡と相続人を確定することです。 そのために、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人全員の戸籍を収集します。 これらの戸籍は、本籍地の市区町村役場で取得します。 また、令和6年3月からは「戸籍の広域交付制度」により、全国どこの市区町村役場からでも戸籍が取得できるようになり、以前より便利になっています。 ただし、制度上の制約や混雑状況により、取得には日数がかかることもあるため、早めの準備と役所への事前確認をおすすめします。 自分で取得するのが大変であれば、税理士や弁護士に依頼して全国の戸籍・住民票を取得してもらうこともできます。 ※なお、海外に住む相続人であっても、日本国籍を有していれば通常は戸籍に記載されています。 ただし、外国籍の方や国籍喪失者は戸籍に記載されていないこともあるため、その場合は別途、国籍や親子関係等を証明する書類(出生証明書、宣誓供述書など)が必要になります。 ② 遺産の調査(目安:1〜3か月) 被相続人がどのような財産を持っていたかを確認します。 不動産の登記簿謄本(法務局)、預金・証券(金融機関・証券会社)への照会、年金記録や生命保険加入の有無の確認が含まれます。不動産であれば、被相続人の名前で名寄せをすることで全国に所在する被相続人名義の不動産を特定できます。 海外にも財産がある場合は、現地の専門家の協力が必要になることもあります。調査には時間がかかるため、できるだけ早めに着手するのが重要です。 ③ 相続人の調査(目安:3か月以上) 連絡が取れない相続人の居所や連絡先を調査します。 SNS、LinkedIn、在外公館(日本大使館・領事館)への照会、民間調査会社の活用など、手段はさまざまです。 ここで大切なのは、見つからなかったとしても「調査した記録」をきちんと残しておくことです。 この記録は、のちに家庭裁判所へ不在者財産管理人の申立てを行う際の重要な証拠資料になります。 ※調査方法についてはこのあとで詳しくご紹介します。 ④ 不在者財産管理人の選任(目安:1〜3か月) ③の調査を行っても相続人の所在が不明なままであれば、家庭裁判所に申し立てを行い、不在者財産管理人を選任してもらいます。 不在者財産管理人は、所在不明の相続人に代わり、遺産分割協議などの手続きを行うために、家庭裁判所が選任する代理人です。 申立ての際には、所在調査の内容や経過を証明する資料の提出が求められます。 ※申立て手続きの詳細についても後述します。 ⑤ 遺産分割協議(目安:1か月) 相続人全員で、誰がどの財産を相続するかを話し合います。 不在者がいる場合には、④で選任された不在者財産管理人が代理で協議に参加します。 話し合いの結果は「遺産分割協議書」にまとめ、相続人全員の署名と実印が必要です。 ※海外在住の相続人については、日本の印鑑証明書が取得できないため、日本の印鑑証明書の代わりとして、在外公館(日本大使館・領事館)で発行される「サイン証明(署名証明)」を取得・添付する必要があります。相続人が外国籍の場合は、在外公館ではなく海外のNotary office(公証役場)でサイン証明を取得することになります。 注意点:海外居住の相続人がいる場合、遺産分割協議書のやり取りに国際郵送の時間がかかるほか、大使館・領事館への移動や予約にも日数が必要になるため、国内よりも時間に余裕を持った対応が求められます。 ⑥ 名義変更(目安:1〜2か月) 遺産分割協議書が完成したら、不動産・預貯金・株式などの名義を相続人名義へ変更します。 各機関(法務局、銀行、証券会社など)に遺産分割協議書、戸籍、本人確認書類などを提出して手続きします。 ※海外居住の相続人については、本人確認書類の翻訳、公的住所証明書などの追加提出を求められることもあります。 ⑦ 相続税の申告・納税(期限:10か月以内) 相続税の申告が必要な場合は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に、申告と納税を行う必要があります。 遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合が対象です。 被相続人が日本に居住していた場合、相続人が海外に住んでいたとしても、日本に居住している相続人と同様に、日本の相続税の対象になります。 手続きには時間がかかることが多いため、②の遺産調査と並行して、早めに税理士に相談し、申告準備を進めることが重要です。 1-2 相続人が海外・不明な場合でも要注意!期限が決まっている相続手続きとは? 相続人が不明でも、期限のある手続きは待ってくれない。 相続人の1人が海外に住んでいて連絡が取れない、あるいは所在すら分からない。 このような状況でも、一部の相続手続きには「期限」が定められており、放置すると不利益を被る可能性があります。 例えば、相続放棄や相続税の申告などは、「相続開始を知った日」から〇か月以内に行わなければならないと明記されており、相続人の状況にかかわらずタイムリミットがカウントされます。 ここでは、海外・不明な相続人がいる場合でも必ず意識すべき、代表的な「期限付き手続き」について解説します。 【表】期限が定められている主な相続手続き 手続き名 期限 概要 相続放棄 3か月以内 相続人としての権利を放棄する。借金などを引き継ぎたくないときに有効。 準確定申告 (被相続人の所得税) 4か月以内 亡くなった方が生前に得た所得を、相続人が代理で申告する。 相続税申告 10か月以内 基礎控除額を超える財産がある場合に必要。延滞すると加算税・延滞税の対象。 相続登記 (不動産の名義変更) 3年以内 (2024年4月以降義務化) 登記を怠ると過料(最大10万円)の対象となるため要注意。   ■ 相続放棄(3か月以内) 相続放棄は、「被相続人が多額の借金を残していた場合」などに有効な制度です。 相続人が自らの意思で家庭裁判所に申し立て、相続人の立場そのものを放棄します。 ただし、この手続きには厳格な期限があります。 原則として、相続人が「被相続人が亡くなったこと」と「自分が相続人であること」を知った日から3か月以内に申述しなければなりません。 ・ポイント  ✅ 海外にいる相続人にもこの期限は適用されます。 ✅ 連絡が取れない場合でも、他の相続人は「自身の判断」で放棄の可否を決める必要があります。 ■ 準確定申告(4か月以内) 被相続人が亡くなるまでに得た所得について、相続人が代理で申告する手続きです。 この申告は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に行う必要があります。 ・ポイント ✅ 所在不明の相続人がいる場合、状況に応じて代表相続人が申告を行うことも検討されます。 ✅ 申告期限に遅れると、延滞税・無申告加算税・重加算税などのペナルティが科されます。 ■ 相続税の申告・納税(10か月以内) 被相続人の財産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告・納税が必要です。 この申告・納税の期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内と決められており、相続人の一部が海外や所在不明であっても期限は変更されません。 なお、所在不明の相続人については相続開始を知った日が来ていないため期限も到来しません。 ・ポイント ✅ 所在不明な相続人がいるなどの理由で分割協議ができない場合でも申告が必要となります。分割ができていない場合は、各種特例の適用が受けられなくなります。 ✅ 分割協議ができない場合は、基本的に名義変更もできないため、被相続人の預金から納税資金を捻出することができません。相続人の手許の資金若しくは銀行等から借り入れて納める必要があります。 ✅ 遅延すると、延滞税・無申告加算税・重加算税などのペナルティが科されます。 ■ 相続登記の申請(3年以内) 2024年4月の法改正により、相続登記は義務化されました。 これにより、相続により不動産を取得した場合、相続開始を知った日から3年以内に登記申請をしなければならないとされています。 ・ポイント ✅登記を放置した場合、最大10万円の過料が課される可能性があります。 相続人が不明でも「期限に間に合わせること」が重要 所在不明の相続人がいる場合、各種手続きが思うように進まないことも多く、対応が遅れがちです。 しかし、期限を過ぎることで発生する不利益の方が大きいため、他の相続人は可能な範囲で手続きを進めておくことが重要です。 円滑に手続きを進めるためのポイントをお伝えします。 2. 期限内に円滑に手続きを進めるための2つのポイント ● ポイント1:国際相続に強い弁護士・税理士に依頼すること 相続に海外在住者や所在不明者が関わる場合は、国際相続に強い専門家(弁護士・税理士)に早期に相談しないと手続きが期限に間に合いません。 相続手続きは、ただでさえ戸籍・財産・税務など複数の分野が絡み合う複雑な手続きです。 それに加えて相続人が海外にいたり、財産が海外にある場合は、言語や制度の違い、どこの国の法律に基づいて手続きすべきか等とても複雑になります。 日常的に国際相続を扱っていない専門家では、対応できないことも多くあります。 一方で、国際相続を専門とする事務所では、現地の弁護士や連携したルートが既に整備されており、調査や申立てもスピーディに進行できます。 相続税の申告期限は10か月。海外の相続人が絡む手続きには時間的・専門的な壁があるからこそ、最初の一歩を誤らないことが最も重要です。 国際相続に精通した弁護士・税理士への相談が、スムーズな相続の鍵となります。 ● ポイント2:期限から逆算したスケジューリングと証拠の保存 手続きを円滑に進めるためには、期限を見据えて計画をたてることが重要です。 特に所在不明の相続人がいる場合は、できる限り早期に捜索を開始し、調査の過程や手段を証拠として記録に残すことが欠かせません。 また、相続開始から6か月を目安に捜索の進捗を整理し、発見できなかった場合には、不在者財産管理人の選任に向けた家庭裁判所への申立て準備へと進むことが必要です。 海外に不明な相続人がいる場合に相続手続きを円滑に進めるためには、期限を意識したスケジューリングと、専門家の支援が欠かせないことがわかりました。 では実際に、相続人が「海外にいて所在が不明なケース」では、どのようにしてその所在を調査していけばよいのでしょうか。 次章では、相続人の行方が分からない場合に取るべき具体的な調査方法について、順を追って解説していきます。 ここでの対応が、その後の手続き全体に大きく影響するため、早期かつ確実な対応が重要です。 3. Step1:所在不明の相続人を捜索 相続人が「海外に住んでいる」「連絡先が不明」「所在不明である」といった場合には、まずその相続人を捜索する必要があります。また、家庭裁判所での手続きに進むためには、所在調査を尽くした記録を残すことが重要です。ここでは、実務上よく行われる調査手段を4つ紹介します。 ● アクション①:戸籍・戸籍の附票を取得して転出国を特定しよう まずは被相続人の戸籍をさかのぼって相続人を確定させ、そのうえで、相続人本人の戸籍の附票を取得しましょう。 附票には、日本国内での転出先や住所の履歴が記載されているため、どの国に移住したのか、あるいはどこに住んでいたのかが分かることがあります。 ✅ 転出先が「〇〇国」などと明記されていれば、次のステップで在外公館への照会が可能になります。 または、外国籍の相続人であれば、弁護士による弁護士会照会を通じて、当該相続人の出入国記録や外国人登録原票を取得することで出国先を把握できることがあります。 ● アクション②:在外公館(日本大使館・領事館)に所在照会を依頼しよう 転出先の国が判明した場合は、該当国にある在外公館(日本大使館・領事館)を通じて所在の照会を行うことができます。 この手続きでは、照会理由書、戸籍謄本、関係図などの添付資料が求められます。 ✅ 回答には数週間〜数か月かかる場合があり、また国によっては照会不可・未回答となることもあります。 ✅ 回答が得られなかった場合でも、「照会を行った事実」自体が調査実績として証拠になります。 ● アクション③:SNSやLinkedInなどの投稿をチェックし、記録しよう 近年では、SNSやLinkedInなどを使った調査も有効です。 LinkedInとは、勤務先や所在地、最終更新日などが分かるビジネスSNSです。 プロフィールには居住地・勤務先・最終ログイン日などが記載されていることが多く、相続人の現況を把握できる手がかりとなります。特に、LinkedInは実名、写真付きでの登録をしていることが多いので、人物を特定することができ、さらにメッセージを直接送ることもできるので有用です。 ✅ 発見したプロフィールや投稿内容はスクリーンショットやPDF化して保存し、裁判所に提出できるようにしておきましょう。 ● アクション④:必要に応じて民間の調査会社に依頼しよう 個人での調査が限界に近づいたら、調査会社(探偵)に依頼するのも一つの手段です。 報告書には調査方法・調査結果・居所の有無などが明記されており、裁判所の申立て時に有効な資料として利用できます。例えば、アメリカでは個人の名前や生年月日、SSN等を元に、その人の住所、資産、親族関係、仕事等を調べられる民間のデータベースがあります。そして、住所と思われるところにレターを送り、所在を確認することがあります。 ✅ 調査費用は数万円〜十数万円程度が一般的です。費用対効果を見極めつつ、必要に応じて検討しましょう。 4. Step2:所在不明の相続人がいても手続きを滞りなく進める方法 所在が分からない相続人の捜索を尽くしても、発見に至らない場合──。 そんなときは、法的な手続きを活用して、他の相続人だけでも相続を前に進めることが可能です。ここでは、代表的な2つの制度をご紹介します。 ● アクション①:家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申立てよう 相続人の一人が所在不明でも、調査を尽くした証拠があれば、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることができます。裁判所は、相続人に代わって不在者財産管理人を選任することになるので、相続人が所在不明であることを慎重に確認します。そのため、申立をする場合は、詳細な調査資料を提出する必要があります。 不在者財産管理人とは、所在不明の相続人に代わって、遺産分割協議や名義変更などの手続きに参加する代理人のことです。裁判所が中立的な弁護士を不在者財産管理人として選任します。  選任には2〜3か月ほどかかることもあるため、調査を始めたら並行して準備しておくとよいでしょう。なお、申立にあたっては、不在者財産管理人の報酬として予納金(50万円程度)を納める必要があります。 ✅ 原則として不在者財産管理人は法定相続分を確保する必要があります。 ✅ 裁判所が認めるまで、他の相続人だけで遺産分割をすることはできません。 ● アクション②:家庭裁判所に失踪宣告の申立てをしよう(今後も発見することが難しい場合)  失踪宣告は、所在不明から7年を経過した場合に家庭裁判所へ申立てができる手続きで、法律上その人を「死亡」とみなして扱えるようになります。 宣告が認められれば、他の相続人だけで自由に遺産分割協議を進めることができます。 起算日や公告期間など注意すべき点もあるため、専門家への相談が重要です。 ●不在者財産管理人の選任と失踪宣告の比較 以下の比較表では、不在者財産管理人の選任と失踪宣告の違いをまとめています。 項目 不在者財産管理人の選任 失踪宣告 内容 家庭裁判所が代理人を選任 家庭裁判所が「死亡」とみなす法的認定 要件 一定期間連絡が取れない(数か月~数年) 7年以上生死不明、かつ、起算日が明確であること 目的 代理人による遺産分割協議などの相続手続きを行う 相続人を死亡とみなし、他の相続人で分割協議や名義変更が行える 分割方法 原則として法定相続分まで 他の相続人のみで遺産分割協議が可能 手続きに 必要な期間 比較的短期間(1〜3か月程度) 公示期間含めて数か月〜半年かかることも 効力 本人が現れたら終了 宣告が取り消されるまで死亡とみなされる 不在者財産管理人が代理で遺産分割協議に参加する場合、不在者の法定相続分はその取り分として確保する必要があります。 これを他の相続人で自由に分けるには、失踪宣告によって法律上「死亡」扱いとする必要があります。 起算日が明確でない等の理由からすぐには失踪宣告できないこともあるため、将来的に失踪宣告を行う可能性がある場合には、調査の記録を残しておくことが大切です。 5. 財産も不要なら「相続放棄」の選択肢も 相続放棄をすると、法律上「はじめから相続人でなかった」扱いになるため、遺産分割や名義変更などの手続きにも関わる必要がなくなります。 6. 国際相続に強い弁護士・税理士の支援が必要となる理由 相続手続きを円滑に進めるには、専門家のサポートが不可欠ですが、特に「国際相続」が関わる場合には、国際相続に精通した弁護士・税理士を選ぶことが非常に重要です。その理由は以下の通りです。 ① 弁護士・税理士にも得意・不得意分野がある 相続業務を日常的に扱っていない弁護士や税理士も多く、中には年に1件も相続案件を担当していないという専門家も存在します。特に海外が関係する相続となると、経験がまったくない専門家も多く、思わぬトラブルや遅延の原因となり得ます。 弁護士・税理士であれば誰でもいいということはなく、実績や専門性を見極めて依頼することが大切です。 ② 各国の法律や制度が異なり、現地の専門家との連携が必要なこともある 国ごとに制度が異なるため、日本国内だけでは完結できない手続きが発生することがあります。 国際相続に強い専門家であれば、現地の弁護士や会計士と連携できるネットワークを持っているケースが多く、安心して任せられます。 経験のない専門家に依頼すると、自分で現地の専門家を探す必要に迫られることにもなりかねません。 ③ 国際相続でなくてもタイトなスケジュールがさらにシビアに 相続税の申告期限(10か月以内)や相続登記の義務(3年以内)などの期限があります。相続人の所在不明や海外在住などが絡むと、それだけで時間がかかりやすく、準備や判断の遅れが致命的になり得ます。 こうしたケースに慣れた弁護士・税理士でなければ、期限に間に合わないリスクが高まります。 ④ 状況に応じた柔軟で迅速な判断と対応が求められる 相続人の調査によって新たな事実が判明したり、海外の法律が関係したりと、国際相続は一筋縄ではいかないことが多々あります。 その都度、適切に判断し、書類の整備や申立て方法を柔軟に変更できるかどうかが結果を左右します。 国際相続の経験が豊富な専門家であれば、こうした事態にも迅速・的確に対応でき、スムーズに手続きを進めることができます。 7. 国際相続に強い税理士 4つの基準 国際相続をスムーズに進めるには、「経験豊富な専門家に早期に相談すること」が非常に重要です。とはいえ、「誰に相談すべきか分からない」という声も多く聞かれます。そこで、以下のポイントを参考にして、適切な税理士を見つけましょう。 専門家を探すときは、まずは事務所のホームページを丁寧に確認することが基本です。以下の点に着目しましょう 【基準①】「相続専門」や「国際相続対応」と明記されているか 多くの税理士は法人の顧問や個人の確定申告を中心に業務を行っています。相続、国際相続の経験が豊富な税理士はホームページに「相続専門」や「国際相続対応」と明記されています。 【基準②】国際相続の実績が紹介されているか 具体的な実績が紹介されている場合があります。同様の案件実績があれば安心して任せることができるでしょう。 【基準③】経験年数や実績は十分か 目安としては10年以上の実務経験や、相続・国際案件を継続的に扱っている実績があるか確認できるとよいでしょう。 【基準④】海外の専門家との連携体制があるか 特に不動産・預金・証券などが海外にある場合は、現地の法律家や専門家とスムーズに連携できるかが重要です。信頼できる国際相続の専門家は、各国の現地弁護士・税理士・会計士とのネットワークを持っており、自分で探す手間を省いてくれます。 ホームページで詳細までわからない場合は、相談時に「経験」や「対応実績」を率直に尋ねてみましょう。「国際相続はどのくらい扱っていますか?」「海外に住む相続人との手続き経験はありますか?」など、率直に質問して大丈夫です。経験があれば、過去の対応例を具体的に説明してくれるはずです。 8. ご相談は、信頼と実績の「税理士法人マインライフ」へ 相続人が海外在住、さらには所在不明―― そのような難しいケースでも、最適なサポート体制が弊社には整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 経験豊富な専門家が直接対応 少数精鋭体制で、常に経験豊富な税理士が対応。担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、1人当たりの担当件数も多く、実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 弁護士・司法書士・現地専門家との連携体制が整っており、海外財産や海外在住者の手続きに対応可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる申告業務だけではなく、納税資金対策や二次相続設計など、将来を見据えたオーダーメイド提案が得意です。 期限が迫る中、「海外在住で手続きが進まない」「申告時期が不安」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 9. まとめ ・相続人が海外にいて連絡が取れない場合でも、相続手続きを進める方法はある ・相続税申告や相続放棄など、期限のある手続きは待ってくれないため、早めの対応が不可欠 ・所在不明の相続人がいるときは、まずは調査記録を残すことが重要 ・発見できなかった場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申立てることで手続きを進められる ・状況に応じて、失踪宣告を検討する場合もある(7年以上行方不明など) ・海外在住の相続人がいる場合、印鑑証明の代わりにサイン証明を取得する必要がある ・名義変更や相続税申告など、並行して進めることができる手続きは計画的に動かす ・相続や国際案件に慣れていない専門家では対応が遅れるリスクもあるため、経験豊富な専門家への早期相談が鍵 海外に相続人がいる場合や連絡が取れない相続人がいる場合でも、制度を正しく理解し、必要な手続きを段階的に進めれば、相続は確実に前に進められます。この記事がその第一歩となれば幸いです。
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    国際相続サポート

    • 2026.02.25
    • 伊藤 千尋

    税理士が教える!アメリカ不動産相続手続き完全解説

    「日本在住の日本人がアメリカに不動産を持っている場合、相続手続きや相続税申告はどうすればいいのか…」 日本だけでなくアメリカに不動産がある場合の手続きは国をまたいで同時進行になり、より複雑なものになります。 アメリカの不動産を名義変更するだけでも日本側では戸籍や死亡届受理証明などの公文書を整える必要があり、米国側では登記や裁判所の手続きの要否を見極める必要があります。 さらに、税金は米国(連邦・州)と日本の両方を意識しなければなりません。 本コラムは、専門用語をできるだけ避けて、名義変更等の相続手続きと税務申告の税務手続きに大きく分けて迷いやすいポイントを順番に解説します。 第1章 相続手続き(裁判所の手続き/名義変更) アメリカの不動産がある方の相続では、名義変更等の「法務手続き」が特に重要になります。 ここでは「手続きの進め方」と「物件の所有形態や所在地等の条件に応じた手続きの違い」を解説します。 1-1 初動は書類の確保 (1)まず集める3点セット(死亡から2週間を目安) ・「死亡証明(Death Certificate)」 日本人が亡くなった場合には「戸籍(除籍)謄本」や「住民票の除票」・「死亡届受理証明書」の原本が必要になります。 アメリカで使う場合には、「追加の認証(アポスティーユ)」が必要になります。 追加の認証(アポスティーユ)とは 発行機関:外務省(東京/大阪の窓口 または 郵送) 申請者:相続人/代理人(弁護士・司法書士・行政書士など) 申請の流れ:窓口又は郵送 翻訳:アポスティーユ自体に翻訳は不要です。ただし、提出先が英訳を要求することが多いので公文書(戸籍・受理証明)は英訳を添付することが多いです。また、英訳分についても翻訳証明(認証翻訳)が必要になるケースもあります。 東京等の公証役場では、翻訳証明の認証をする際に戸籍謄本等についてのアポスティーユをワンストップで即日取得できるので便利です。 ※最終的には提出先(米国の登記所・裁判所・銀行)の受理要件に合わせて書類と部数・翻訳有無を決めることになりますのでアポスティーユ前に提出先に確認しましょう。 ・「遺言・信託の原本」 遺言(Will)があれば原本、信託(Living Trust)があれば「誰が次の管理人(後任受託者:Successor Trustee)なのか」を確認します。 次の1-2で詳しく解説しますが、信託に入っている資産は、原則裁判所に行かずに手続きを進められます。 ・「不動産とお金の資料」 不動産の最新の権利証/登記情報(ディード)、ローン残高、火災保険・責任保険の証券、住民組合(HOA)の書類、賃貸中なら契約書・敷金の状況、銀行の名義や受取人指定(POD/TOD)※の有無を集めます。 ※PODは主に預金口座について、TODは主に証券口座や不動産について、死亡時にあらかじめ指定された者に権利を移転させる取り決めであり、後述するプロベート手続を回避する手段として用いられます。 (2) 書類ごとにどの手続きが必要か、仕分ける 信託名義・共同名義(サバイバーシップ付き)・死亡後移転の事前指定(TOD)・受取人指定のある保険や年金は、基本的に裁判所に行かずに名義を移せます。 単独名義の不動産や口座は、原則として裁判所を通す相続手続き(プロベート:Probate)が必要です。 まずは資産ごとに「裁判所が必要か不要か」を二箱に分けるイメージで仕分けしましょう。 (3) 支払いは止めない 光熱費・固定資産税・保険料・HOA・ローンは止めないでください。 止めてしまうと保険の失効や延滞金・差押えの原因になります。 なお、プロベート手続き中の場合には遺産は裁判所の管理下に置かれ、相続財産の使用や処分が制限されます。これらの支払い継続の責任は、裁判所から任命される人格代表者(遺言執行者/遺産管理人)に生じることになります。 また、賃貸中なら、家賃の入金先を一時的な遺産用口座や信託口座に切り替え、入出金の記録を月ごとにまとめておきましょう。(領収書や請求書を必ず保存) 1-2 信託・共同名義・TODならプロベート手続きは不要/単独名義は原則必要 アメリカの不動産は生前の手続き状況や物件の所有形態によってプロベート手続きが必要かどうか変わります。 基本的にはプロベート手続きが不要なものを抑えましょう。 (1)プロベート手続きが不要なパターン ・信託に入った不動産 生前に「家の管理を信託に入れておく」と決めている状態です。 亡くなった後は信託の管理人(受託者)が、そのまま登記の名義変更や受取人への分配を進めます。 ・共同名義で“残った人に自動で移る”タイプ 夫婦や親子などがサバイバーシップ※付きの共同名義にしている場合、死亡証明を出せば残った人に自動で移る仕組みです。 とくに夫婦の結婚期間中に得た財産を共有とみなす州では、配偶者にスムーズに移りやすい形が用意されています。 ※サバイバーシップ:共同名義で、一方が亡くなると自動でもう一方へ名義が移る仕組み。 ・不動産の死亡後移転の事前指定(TOD) 「亡くなったらこの不動産はAさんに渡す」と生前に役所へ書面を提出しておく制度です。 これが記録されていれば、裁判所に行かずに受取人へ名義を移せます。 (2)プロベート手続きが必要なパターン(原則) プロベート手続きが必要になるのは、故人の単独名義の不動産や口座に受取人指定が無いときです。 この場合は、故人が住んでいた本拠の州で手続きを開始し、必要に応じて不動産がある別の州でも追加の手続き(下で説明)をします。 流れはおおむね①申立て → ②財産の管理(評価・借金の清算・税金) → ③分けるという順番です。 専門家の助けを借りるとスムーズです。   別の州に不動産があるときの“追加手続き” 住んでいた州での相続手続きを始めたうえで、物件のある州でも追加の相続手続きをすることがよくあります。 例:日本在住・本拠は日本、米国のA州に家、B州にも別荘がある → A州とB州でそれぞれ追加の手続きが要る、というイメージです。 1-3 名義変更は「評価→登記→口座・契約」の順で行うのがオススメ 書類が整うと実際に名義の変更手続きに移りますが、後々のことも考えて「評価→登記→口座・契約」の順で行いましょう。 (1) まず価値の証明(評価・査定) 不動産の死亡日時点の価値を、第三者の評価書や査定書で押さえます。 これは ①相続税・州税の判断、 ②将来売るときの利益計算(いわゆる取得価額のステップアップの基準)、 ③相続人どうしの公平な分け方 に影響してきます。 写真や修繕履歴、近所の売買事例も一緒に保存すると安心です。 (2) 次に登記の名義を変える 郡の登記所(カウンティ・レコーダー)に出す「名義変更の書面(ディード)」を作って提出します。 署名の公証はほぼ必須になります。 日本など海外で署名する場合、大使館・領事館の公証や前述したアポスティーユという国際的な書類の認証が必要になることがあります。 場所によっては英訳の添付を求められることもあるので、事前に登記所や専門家へ確認をしましょう。 (3) 最後に口座と契約を切り替える 不動産の火災保険・賠償責任保険の名義や、公共料金・HOA・警備・インターネットなどの契約名義を新しい所有者名に変更します。 賃貸中なら、家賃の振込先・敷金の預かり先を切り替えて、入金管理の表(家賃・修繕・税金・保険など)をつけ始めます。 銀行口座も、相続用(遺産)や信託用の専用口座にまとめておくと、翌年の確定申告が楽になります。 ただし、米国の金融機関では、故人の口座の解約や名義変更自体が、日本居住者にとって高いハードルとなる場合も多いです。 第2章 税務手続き(連邦/州税/日本) 次に「税務手続き」について確認していきます。 結論としては日本在住の日本人がアメリカに不動産を持っている場合でも、不動産の価格が高額でなければ場合にはアメリカでの納税は発生しません。 ただし、日本での相続税申告にもアメリカの不動産を含める必要がありますので日本での申告にも注意が必要です。 では、具体的な内容を確認していきましょう。 2-1 米国連邦の相続税:「申告をする必要があるか、納税が生じるか」を確認 (1)申告が必要になる目安 亡くなった日の時点での米国内資産の合計額(通常は不動産の時価)が6万ドルを超えるとForm 706-NA の提出が死亡後9か月以内に必要になります。 なお、計算が期限内に間に合わない場合になど必要な場合には「6か月の延長届(Form 4768)」を提出することが可能です。 (2)税額が発生するかの目安 米国では、その年ごとに大きな非課税枠(基礎控除)があり、2025年は 13,990,000ドルです。 しかし、これは米国の市民・居住者に直接適用される制度で、日本在住の日本人(アメリカから見た場合のNon-resident,、Non-citizen、NRNC)にはそのままの形では適用されません。 ただし日米の相続税条約が“助け舟”になります。 日米相続・贈与税条約(1954年)により、日本在住の被相続人が米国内資産だけで米国相続税がかかる場合、米国側の“大きな非課税枠”に相当する控除の“按分(比例)分”を使える仕組みがあります。 ざっくり言うと、「米国の非課税枠 ×(米国内資産 ÷ 仮に米国居住者だったと想定した全世界資産)」という比例計算で、米国の課税が軽くなる/ゼロになる可能性があります。   【具体例】 亡くなった方の全資産が「世界で2,000万ドル」、そのうち米国内不動産が500万ドルだとします。 このとき条約の考え方では、米国の“特別控除”を 500万/2,000万=25%だけ使えるイメージになります。 結果として米国相続税が大きく減る/申告は必要でも納税ゼロになることもあります。 ※実際の計算は控除や債務、評価の取り扱い・添付書類など細かい要件に従います。 2-2 州の相続税・遺産税:「物件がある州だけ」確認すれば十分 州税については、物件がある州に州税があるかを確認し、ある場合はその州の基準額・控除・期限に合わせて申告をすることになります。 なぜなら、一部の州だけが州レベルの相続税(Estate Tax)や相続人課税型(Inheritance Tax)の制度を持っているからです。 したがって、日本在住の方にとって重要なのは、「不動産が建っている州」のルールです。 同州に州税があれば、その不動産部分に対し州の申告・納税が要る可能性があり(例:ワシントン州・オレゴン州など)、なければ州レベルの申告は不要になります(固定資産税などの年次の税は別ものです)。 2-3 日本の相続税:原則10か月以内に申告+外国税額控除で二重課税を調整 日本居住の相続人がいれば、海外資産(米国不動産)を含めて日本の相続税の対象になります。 申告期限は原則10か月(死亡日の翌日から起算)になります。 あまりケースとしては多くありませんが、米国で支払う相続税(連邦・州)がある場合、日本の相続税申告で「外国税額控除」を使い、二重課税を調整できます。 【外国税額控除についてはリンク先を参照ください。】 不動産の評価額については、米国側の評価書の金額に基づき、円貨に換算して評価します。 申告書の提出時には、米国側の評価書・計算根拠の和訳を添えて提出するとスムーズです。   「取得価額のステップアップ」とは?――日本在住でも効果あり 亡くなった時点で、相続した不動産の“取得価額”(買った値段)を、その時点の時価に近い金額へ更新できる扱いを俗にステップアップと呼びます。 米国税法(IRC §1014)に基づく一般ルールで、相続後に売るときの利益が小さくなり、譲渡益課税が軽くなる効果があります。評価書を確実に残しておきましょう。 不動産が夫婦共有の扱いになる“コミュニティ財産州”(アリゾナ、カリフォルニア等)では、要件を満たすと全体が時価へ調整される取り扱いがあり、将来の譲渡税に大きく効きます。 物件州のルールに左右されるため、現地の専門家に要件確認をしましょう。 なお、ステップアップは米国の所得税の計算に用いるルールであり、日本の譲渡所得の取得費計算とは異なることにご留意ください。 第3章 相続前の対策は「信託/TOD/共同名義+州の性格」で手間と税負担を抑えることができます! 3-1 自動承継(サバイバーシップ)の活用が近道   配偶者に自動で移る共同名義(サバイバーシップ付き)を使うと、登記の名義変更だけで済むことが多く、スピードとコストのバランスがよいです。 さらに、取得価額のステップアップで将来の譲渡益税が下がる可能性もあります。 ただし、遺言で細かく配分する自由度は下がる面があるため、信託と組み合わせて二次相続(次に配偶者が亡くなるとき)まで見据えて設計するのがより良い方法です。アメリカではファミリートラストという形で夫婦が共同してトラストを作り、夫婦のいずれかが生存している限りはトラストで資産を運用して、2人とも亡くなった時点でトラストを清算し、予め定めた方法で資産を分配することがあります。   日本での課税に注意! 夫婦のどちらか一方が資金を全額拠出した場合、共同名義の創設時に日本では贈与税が課税される可能性があります。また、死亡時の自動承継は日本の相続税法上、みなし贈与(死因贈与契約とみることもできる)として相続税の課税対象となります。 3-2 TODが使える州は生前の一枚の紙で不動産移転を簡単に TODは、「亡くなったらこの人へ」と受取人を先に登録しておく仕組みです。 生前に登記所へ記録しておけば、亡くなった後は受取人が登記を引き継ぐだけで済み、裁判所を通す手続きを避けられます。 たくさん不動産がある場合は、広い資産は信託に入れつつ、特定の物件だけTODにするなど、組み合わせで費用・スピード・柔軟性のバランスを取れます。(居住用不動産にのみTODを認めている州もあるなど、どの州でも使えるわけではない点に注意が必要です) 3-3 信託(リビングトラスト)の活用でプロベート手続きを回避 日本在住の日本人が米国不動産を円滑に承継する最短ルートは、リビングトラストでプロベート(裁判所手続)を回避することです。 リビングトラスト(生前信託)は、「亡くなったらこのルールで物件を渡す」という私的な設計図です。 ポイントは「作るだけでは足りず、名義(登記)を信託へ移しておく必要がある」ということ。 これができていれば、亡くなった後は裁判所を介さず、信託の管理人(受託者)が登記の移転や分配をそのまま進められます。 州をまたいで物件があっても、各州ごとの追加プロベートを原則避けやすいのが最大の利点です。 第4章 国際相続は「税理士法人マインライフ」へ 国際相続は、国内相続とは比べものにならないほど複雑で、専門家の存在が成功の分かれ道となります。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 「海外の財産をどう扱えばいいのかわからない」「外国税額控除を受けたいが手続きに不安がある」―― そのようなときは、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 最初の一歩を踏み出すことが、複雑な国際相続を解決へ導く最大のカギとなります。 第5章 まとめ いかがだったでしょうか。 本コラムは日本在住の日本人がアメリカに不動産を持っていることを前提に、相続の進め方を法務(登記・裁判所)と税務(米国連邦・州・日本)の両輪で整理しました。 国をまたぐ相続の中心は、実は名義の移し替えです。 信託・共同名義(自動承継)・TODであれば、原則プロベート不要ですが、単独名義はプロベートが原則必要で、別の州の物件はその州で追加手続きが生じます。 生前に信託やTOD、LLCを使っておけば、この負担を大きく減らせます。 税務は「米国連邦、物件の所在州、日本」で要否を確認します。 連邦は日本居住者向けの706‑NAが基準で、条約の按分により納税ゼロとなることもあります。 州税は物件がある州だけ見ればOKです。 日本の相続税はアメリカの不動産を含めて10か月以内に申告をする必要があります。 情報の行き来が濃くなった今、書類の整合性と手順の順守が何よりの安全策です。 「アメリカに不動産がある」時点で国際相続のステージに立っています。 早めに専門家へ相談すれば、差し戻し・登記遅延・不要な税負担を避け、家族関係の円満にもつながります。    
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    国際相続サポート

    • 2026.02.19
    • 川崎 朝輝

    3分でわかる!あなたは国外財産調書が必要か?【フローチャート付き】

    海外の銀行口座や株式、不動産をお持ちの方へ。 「国外財産調書」という言葉をどこかで耳にしたことはありませんか? 実は、ここ数年、国税庁は国外財産の把握にかなりの力を入れています。 その一環として設けられたのが「国外財産調書」です。 最近は、海外に財産を保有されている方も増えており、「自分も提出の対象になるのでは?」と悩まれる方も増えています。 国外財産調書は、毎年12月31日時点で国外にある財産の合計が5,000万円を超える場合に提出が義務づけられている届出書です。 とはいえ、 「提出が必要かどうかよく分からない」 「もし出さなかったらどうなるのか不安」 「書き方が難しそうで挫折しそう」 こうした疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか? この記事では、3分で提出要否を判定できるフローチャートを用意しました。 さらに、制度の詳細、提出しなかった場合のペナルティと提出するメリット、作成方法までを、税理士の視点で分かりやすく解説します。 「提出が必要かどうか」この記事を読めば整理できます。 ぜひ最後までご覧いただき、制度を正しく理解し、今ある不安を取り除いてください。 まずは、国外財産調書の提出が必要か否かについて確認をしていきましょう。 第1章 3分で分かる!国外財産調書の提出要否フローチャート 国外財産調書の提出が必要かどうかは、いくつかの条件を確認するだけで判断できます。 ここでは、3分で提出要否を判定できるフローチャートをご用意しました。 なお、判定を行う際の注意点(相続財産やローン付き不動産、共有財産の扱いなど)は、1-3で補足していますので、併せてご確認ください。 次に、制度の概要や提出する様式について確認をしましょう。   1-1 国外財産調書の制度概要 国外財産調書は、毎年12月31日時点で国外にある財産の合計が5,000万円を超える場合に、日本の居住者に提出が義務づけられている届出書です。 なお、提出期限は翌年の6月30日までです。 提出する際の様式は次の通りです。   1-2 国外財産調書を提出しないとペナルティ、提出すれば優遇も 国外財産調書は提出しないとペナルティが課されます。反対に、提出すれば税務上の優遇もあります。 1-2-1 提出がない場合のペナルティ 国外財産調書を提出しなかったり、記載すべき項目が欠けていたりした場合、その財産について所得税や相続税の申告漏れがあると、過少申告加算税や無申告加算税が通常より5%重くなります。 ・過少申告加算税=申告額が少なかった場合のペナルティ ・無申告加算税=申告すべき税金を申告しなかった場合のペナルティ さらに、偽りの記載や正当な理由のない未提出の場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることもあります。 そのため、国外財産調書を提出すべき方は、必ず提出しましょう。 1-2-2 提出した場合の優遇 提出期限内に国外財産調書を提出していれば、その財産に関して所得税や相続税の申告漏れがあった場合でも、過少申告加算税や無申告加算税が5%軽減されます。   1-3 提出要否を判断する際の3つの注意点 注意1 ローン付きの海外不動産 ローン付きの不動産を所有している場合、ローン残高を差引く前の不動産評価額で判定します。 たとえば7,000万円の海外不動産を所有し、ローン残高が3,000万円ある場合、実質は4,000万円ですが、国外財産調書の判定額はローン残高を差引く前の7,000万円となります。 したがって、この不動産だけを所有している場合でも 「7,000万円>5,000万円」となり、提出対象です。 注意2 共有財産の場合 国外財産を夫婦や親族と共有している場合は、その持分の割合に応じて計算します。 しかし、持分が定まっていない場合や持分が明らかになっていない場合は、各共有者の持分は相等しいものと推定して計算することになっています。 海外でよく見られるジョイントアカウント(共同口座)やジョイントテナンシー(共同名義不動産)も同様に取り扱うことになっています。 注意3 相続で取得した国外財産 国外財産を相続した場合、相続をした年の国外財産調書では考慮する必要がありません。 しかし、翌年の年末に引き続き保有している場合は考慮する必要があります。 次の章では国内財産か国外財産かを判定するPointを確認していきます。 第2章 国内財産か国外財産か?判定の2つのPoint 次の2つのポイントを押さえれば、ほとんどの方はお持ちの財産について判断できると思います。 なお、この判定は相続税法に基づいて行われます。細かく知りたい方は国税庁の資料(参考)をご確認ください。 Point1 預金・有価証券は「口座の所在地」で判定! 預金や有価証券は、管理している金融機関や証券会社の所在地で判断します。 外貨預金や外国株式であっても、日本国内の証券会社で管理されていれば 国内財産(対象外)。 一方、日本の株式であっても、海外の証券会社で管理していれば 国外財産(対象)となります。 Point2 不動産は「物件の所在地」で判定! 日本にある不動産は、国内財産(対象外)。 一方、海外にある不動産は、国外財産(対象)となります。 たとえ、日本の不動産会社から購入したとしても、所在が海外であれば国外財産に該当します。 プラスα 暗号資産は「所有者の住所地」で判定! 暗号資産は国外の取引所で取引をしていたとしても所有者の住所地で判断します。 国外財産調書は日本の居住者に提出義務があるもので、その日本の居住者にとって暗号資産は国内財産(対象外)となります。 最近は暗号資産で大きな利益を得ている方も多いですが、国外財産調書については心配する必要はありません。 出典:国税庁ホームページ 国外財産調書制度(FAQ)令和7年6月 次の章では、国外財産の評価方法と外貨から円への換算ルールについて確認します。 第3章 国外財産の評価と為替換算 国外財産調書では、毎年12月31日時点に保有している国外財産の価額を円換算して記載する必要があります。 対象財産の価額をどのように評価し、どの為替レートで換算するのかを正しく理解しておくことが大切です。 3-1 評価額の出し方 国外財産は、その年の12月31日における「時価」を計算する必要があります。 「時価」というのは、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額のことをいいます。 つまり、実際にその財産を売買するときの一般的な値段ということです。 しかし、「時価」を求めやすい財産と求めにくい財産があります。 「時価」を求めにくい財産は、合理的に見積もった価額などを用いて計算することになります。 【時価を求めやすい財産】 現金・預金 : その年12月31日の残高 上場株式等 : 金融商品取引所等の公表するその年の12月31日の最終価格         (ない場合は、その直近の日の最終価格) 未収入金・貸付金 : その年12月31日の元本の額 【時価を求めにくい財産】 土地、建物 ① 固定資産税の評価額を使う方法 その国で日本の固定資産税に相当する税金がある場合は、税金を計算するための不動産の評価額(課税標準額)を使います。 ② 購入価額を基準に見積もる方法 購入時の価格に、その国の不動産統計指数などを参考にして合理的な変動率を乗じて価額を見積もります。 ③ 実際の売却価額を使う方法 国外財産調書の提出までの間に売却した場合、その売却価額を評価額とします。 ④ 建物は償却して評価する方法 建物に限り、購入価額から経過年数に応じた償却費を控除して計算します。 金融市場で取引のない有価証券(非上場株式など) ① 直近に売買が成立していて、適正と認められるものがあればその価額 ② 実際の売却価額を使う方法   国外財産調書の提出までの間に売却した場合、その売却価額を評価額とします。 ③ 法人の純資産価額に持株割合を乗じて計算した金額 ④ いずれの計算も難しい場合は取得した価額 貴金属、書画骨とう及び美術工芸品 ① 直近に売買が成立していて、適正と認められるものがあればその価額 ② 実際の売却価額を使う方法   国外財産調書の提出までの間に売却した場合、その売却価額を評価額とします。 ③ いずれの計算も難しい場合は取得した価額 【評価する場合の注意】 ローンがある場合 海外不動産などにローンが付いている場合でも、ローン残高を差し引かずに不動産の評価額全体で判定します。 (例:7,000万円の不動産に3,000万円のローンがあっても、4,000万円ではなく7,000万円で計算します。) 共有財産の場合 夫婦や親族と共有している財産は、持分割合に応じて評価します。 持分が明らかでない場合は「等分して所有している」と推定されます。 海外によくあるジョイントアカウントやジョイントテナンシーも、同様に持分割合で計算します。   3-2 為替換算の基準 その年の12月31日における最終のTTBにより為替換算を行います。 財産債務調書には、邦貨(円)で提出の要否の判定、及び、記載をする必要があります。 国外財産ついてはその国の通貨で評価するため、最後に円に換算する必要があります。 その際に用いるのが、取引金融機関が公表するその年の12月31日における最終の対顧客直物電信買相場(TTB)又はこれに準ずる相場(同日にこれらの相場がない場合には、同日前のこれらの相場のうち、同日に最も近い日のこれらの相場)になります。 一通り、国外財産調書について確認をしてきました。 次の章では、よくあるQ&Aについて確認をしていきましょう。 第4章 よくある疑問Q&A Q1 期限後に提出した場合はどうなる? A1 期限後でも、自主的に提出したものであれば、期限内に提出したものとみなされて、『1-2-2 提出した場合の優遇』を受けられます。 ただし、所得税や相続税の調査があり、修正されることを予知した後に提出した場合は対象外となります。 Q2 提出したあとに誤りや記載漏れがみつかったらどうすればいいの? A2 誤りや記載漏れに気づいたら、直した内容ですべての国外財産を記載しなおして再提出します。 誤りや記載漏れの部分だけではなく、すべての国外財産を記載して提出する必要があります。 この場合もQ1と同じく、自主的に提出したものであれば期限内に提出されたものとみなされて、『1-2-2 提出した場合の優遇』を受けられます。 誤りや記載漏れに気づいたらそのままにせず、早めに再提出しましょう。 Q3 国外財産調書と財産債務調書はどう違うの?両方提出しないといけないの? A3 提出の要件に該当する人は両方とも提出が必要になります。 両方とも提出する場合には、国外財産調書に記載した国外財産については、財産債務調書には詳細に記載する必要はありません。 なお、財産債務調書とは一定の所得や財産がある方が提出する書類で国外財産調書と比較すると次の通りになります。 項目 国外財産調書 財産債務調書 提出 すべき人 居住者 (非永住者を除く)で、 国外財産の合計が 5,000万円超の人 次の➀と➁のいずれかに該当する人 ➀所得が2,000万円を超え かつ 総資産が3億円以上又は 有価証券等を1億円以上 ➁居住者で総資産が10億円以上 対象財産 国外にある財産のみ 国内、国外問わずすべての財産・債務 基準日 12月31日 提出期限 翌年6月30日 提出先 所轄税務署 ペナルティ 相続税・所得税とも 加算税を5%加重 (死亡した方の所得税を除く) 所得税のみ加算税を5%加重 (相続税は加重なし) 優遇 相続税・所得税とも加算税を5%軽減 刑罰 虚偽記載または 提出義務不履行の場合 1年以下の懲役または 50万円以下の罰金 明示なし 疑問になりやすい項目についてQ&A形式で解説していきました。 しかし、いろいろな財産があり自分で作成して提出するには不安な方もいらっしゃると思います。 次の章では、税理士に相談するメリットについて触れていきます。 第5章 税理士に相談するメリット 国税庁はCRSなどの制度により、他国の金融機関からの情報提供を受け、国外資産の把握を強化しています。 しかも、国外財産調書は実務上ミスが起こりやすい制度です。 税理士に相談することで次のようなメリットが得られます。 5-1 記載漏れや評価ミスを防げる 国外財産調書は、財産ごとに評価方法や換算レートを正しく適用する必要があります。 税理士に依頼することで、記載漏れや評価ミスを防ぎ、安心して提出できます。 5-2 新しい視点からの提案が受けられる 調書を作成する過程では、財産の全体像を把握します。 税理士が関与すれば、所得税や将来の相続税を見据えた財産管理・運用の提案を受けられることもあります。 5-3 税務に関する相談を継続的に受けることができる 税務に関する相談は内容が多岐にわたり、短期的な対応だけでなく長期的な視点で考えることが大切です。 例えば、所得税の対策は1年だけだとあまり効果が見えにくくても、毎年継続することで大きな効果をもたらすことがあります。 また、相続税の対策は、早い段階から長期的に取り組むことでより効果が高まります。 そのため、信頼のできる税理士に継続的に相談できる体制を整えておくことは、大事な資産を守るためにとても大切です。 第6章 ご相談は、信頼と実績の「税理士法人マインライフ」へ 財産が海外にあり、国外財産調書の提出が必要そう・・・。 海外に財産があるとどのような弊害があるのか心配、いい対策案はないか?等のお困りのことがございましたらまずは税理士法人マインライフまでご相談ください。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の税理士として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 経験豊富な税理士が直接対応 少数精鋭体制で、常に経験豊富な税理士が対応。担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、1人当たりの担当件数も多く、実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 弁護士・司法書士・現地専門家との連携体制が整っており、海外財産や海外在住者の手続きに対応可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる申告業務だけではなく、納税資金対策や二次相続設計など、将来を見据えたオーダーメイド提案が得意です。 「海外の財産をどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第7章 まとめ いかがだったでしょうか? 国外財産調書は、海外に資産をお持ちの方にとって無視できない重要な制度です。 国外財産が5,000万円を超える居住者にとっては提出が必須です。 また、未提出や虚偽記載には加算税の加重や刑罰のリスクがあり、正しく提出していれば加算税の軽減という優遇措置も受けられます。 さらに、判定方法や評価の仕組みは複雑で、ローン・共有・相続財産など誤解しやすい点も多いため注意が必要です。 制度を正しく理解し、早めに対応することが何よりも大切です。もし少しでも不安があれば、ぜひ税理士にご相談ください。
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