
「相続時精算課税制度」を利用してお子様・お孫様へ贈与をお考えのあなた
海外在住でも適用が受けられるか心配されていませんか?
実際のところ、通常の要件を満たせば相続時精算課税制度は受けられます。
本記事では、海外在住の受贈者(贈与を受けた者)でも日本の相続時精算課税制度の適用が受けられるのか、
そして、制度を利用する際の注意点について海外税制を踏まえて解説します。
ぜひ記事を読んで、相続時精算課税贈与を行う際の参考にしてください。
目次
第1章 受贈者(贈与を受けた者)が海外在住の場合に相続時精算課税制度は使えるか?
結論、海外在住であっても相続時精算課税制度は使えます。
相続時精算課税制度は、親から子や孫への生前贈与について、「贈与した時点では一定額まで贈与税がかからず、相続が発生した時点で相続税でまとめて精算する」という仕組みです。
相続時精算課税制度についてはこちら(税理士が教える!贈与税がかからない合法テクニック8選「第3章」へ)
日本に住んでいなければ利用できないわけではなく、たとえ受贈者が海外在住であっても相続時精算課税制度の要件さえ満たせば利用可能です。
〈相続時精算課税制度の要件〉
➀贈与者(あげる人): 60歳以上の父母または祖父母
➁受贈者(もらう人): 18歳以上の子または孫
➂手続き:「相続時精算課税選択届出書(一定の書類を添付)」を提出する
※年齢は贈与を行った年の1月1日時点で判定します。
ただし、海外在住者が関与する場合には、税務署に対して納税管理人を定める必要があり、通常の手続きと異なる注意点があります。
第2章 海外在住の子どもに贈与する場合の注意点
海外在住者への贈与はその手続きが日本居住者の場合と異なるケースがあります。以下の点には特にご注意ください。
2-1 納税管理人の届出が必要
海外に住む子どもなどが贈与を受ける場合、日本国内に納税管理人を選任し、税務署に「納税管理人届出書」を提出する必要があります。
納税管理人とは、納税の手続きを代理で行う存在です。例えば、海外に住んでいる人が日本で納税をする必要がある場合に納税管理人の選任が義務付けられています。
・提出先:
海外在住者が贈与税の申告をする場合は、住所を管轄する税務署がありません。
自分で日本国内のどこかの税務署を定めてそこに届出することになります。
実際には、納税管理人の住所に合わせることが多いです。
・納税管理人:
誰でもなれる。
日本に住む親族、信頼できる知人、または税理士が選任されるケースが多い。
・役割:
納税管理人は、申告書の提出や税金の納付など受贈者に代わって税務署とやり取りする法的な窓口となります。
2-2 添付書類を提出することが必要
相続時精算課税制度を使う場合、届出書とともに以下の添付書類を提出する必要があります。
「戸籍謄本・抄本・その他の書類」(次の内容を証する書類)
①受贈者の氏名、生年月日
②受贈者が贈与者の子・孫などであること
※海外在住者であっても準備する書類に違いはありません。
※外国籍の場合にはその他の書類(宣誓供述書など)で証明する必要があります。
※戸籍は日本語なので翻訳は不要ですが、外国語書類は日本語訳を添付する必要があります。
2-3 海外での税務報告義務(米国の場合はForm 3520)
米国に住む子どもなどが日本から贈与を受けた場合、受贈者はForm 3520をIRS(アメリカ内国歳入庁:日本でいう国税庁に相当)に提出しなければなりません。
・提出基準:
年間10万ドル(1,500万円(150円/1ドル))を超える米国非居住外国人からの贈与を受けた場合に義務発生。相続時精算課税で多額の贈与を受けるケースでは該当することがあるため留意が必要です。
・提出期限:
翌年4月15日(延長申請をしていれば延長後の期限まで)
・罰則:
未提出の場合、贈与額の最大25%に相当するペナルティが課されることがあります。
したがって、日本側で贈与税をきちんと申告しても、米国側での報告を怠れば重大なリスクを抱えることになります。
2-4 将来相続時に状況が変化し納税義務が発生
相続時精算課税制度は、親から子や孫への贈与について、贈与時点での税負担を軽減し、相続時にまとめて精算する制度です。
将来贈与者に相続が発生した場合、相続時精算課税制度の適用を受けた子どもなどについて相続時の納税義務が贈与時と異なる場合は注意が必要です。
贈与時は全世界に課税される者であったが相続時は日本財産のみに課税されることとなったケース(例 贈与後に贈与者が海外移住し10年超経った場合)
相続税の納税義務の判定では、海外在住者は日本財産のみ課税となることとなるが、相続時精算課税制度により取得していた贈与財産については日本の相続税の申告納税義務が生じる。
→相続時には日本の財産を取得せず、本来相続税の納税義務がない場合であっても、過去の贈与により納税義務が生じるケースとなるため要注意です。
2-5 国外転出時課税制度の対象になる可能性
海外在住者へ贈与を行う場合、国外転出(贈与)時課税制度の対象になることがあります。
国外転出(贈与)時課税制度とは、時価1億円以上の有価証券等を保有している日本居住者がその有価証券等の一部でも海外に住んでいる人へ贈与した場合には、時価により譲渡があったものとしてその含み益に所得税が課税される制度です。
・対象者(贈与者)の要件:
1 過去10年以内に5年超、日本に住所または居所を有していた
2 贈与時に有価証券等の対象資産を1億円以上保有している
・対象資産:
上場株式、非上場株式、公社債、投資信託などの金融資産(預貯金や不動産は対象外)。
・課税内容:
含み益に対して贈与時に譲渡したものとみなし課税されます。
例えば評価額1億円・取得価額5,000万円の株式を贈与すれば、5,000万円の含み益に課税される仕組みです。
留意点は贈与する財産の金額で判断するのではなく、贈与時に有価証券等の対象資産を1億円以上保有しているか否かで判定することです。
上記の例においてたとえ贈与する有価証券等が5,000万円であっても贈与者が対象資産を1億円以上保有していれば当該制度の対象になります。
第3章 海外税制との関係と二重課税
海外在住の子どもに日本から贈与を行う場合、「二重課税」と「税務報告義務」に留意する必要があります。
贈与税は日本国内だけで完結するものではなく、受贈者の居住国でも課税や報告が必要となるケースが少なくありません。ここでは代表的な国別の取り扱いと、租税条約の有無による調整について解説します。
3-1 贈与税が課される国・課されない国
各国の贈与税課税、その対象、留意点は以下の通りです。
| 国・地域 | 課税有無 | 課税主体・特徴 | 非課税枠等 | 実務上の留意点 |
| 日本 | あり | 贈与者が日本居住者なら受贈者が海外でも課税 | 相続時精算課税2,500万円の特別控除 | 受贈者が海外居住なら納税管理人の届出必須 |
| 米国 | なし (受贈者側) | 贈与税は贈与者が負担。受贈者は非課税。ただしForm 3520の提出義務あり | 非課税枠はなし(報告義務は10万ドル超) | 未提出で最大25%の罰金。二重課税は発生しないが報告義務違反リスク大 |
| ドイツ | あり | 受贈者居住地主義。居住者は国外からの贈与にも課税 | 親子間40万ユーロの非課税枠 | 日本と二重課税になるが条約で調整不可 |
| シンガポール | なし | 贈与税制度自体が存在しない | ― | 日本の贈与税のみ対象。 二重課税なし |
| 香港 | なし | 贈与税制度自体が存在しない | ― | 日本の贈与税のみ対象。 二重課税なし |
(1)米国の場合
・贈与税の課税主体は「贈与者」であり、受贈者(子どもなど)には課税されません。また、贈与者が米国非居住外国人である場合には課税対象外のため米国贈与税はかかりません。
・ただし、外国から年間10万ドルを超える贈与を受けた場合には、Form 3520の提出義務があります。
・つまり、日本で贈与税を納めても、米国側で追加課税はありませんが、報告義務違反に伴うペナルティリスクが大きい点が特徴です。
(2)ドイツの場合
・ドイツは受贈者居住地主義を採用しており、居住者が国外から贈与を受けた場合も課税対象となります。
・贈与税率は相続税と同じで、親子間なら免税枠は40万ユーロ。これを超える部分には最大30%の税率が適用される可能性があります。
・したがって、日本で贈与税を納めても、ドイツでも課税されることがあり、二重課税が生じます。
(3)贈与税が課されない国(例:シンガポール・香港)
・シンガポールや香港などの国では贈与税そのものが存在しません。
・この場合、日本での贈与税のみが問題となり、二重課税リスクは回避されます。
3-2 租税条約による調整の可否
日本は、相続税及び贈与税に関する二重課税の防止等のための条約として、米国との間でのみ「遺産、相続及び贈与に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約」(日米相続税条約)を締結しています。その他二国間での二重課税が生じている場合には外国税額控除で調整をすることが可能です。
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第5章 まとめ
ここまでの章において受贈者が海外在住の場合でも、相続時精算課税制度の利用は可能ですが、以下の注意点を挙げてきました。
・納税管理人の届出
・添付書類の整備
・居住国での税務報告義務
・将来相続時の納税義務
・国外転出時課税との関係
また、居住国によっては、海外の税務報告や二重課税リスクもあります。
したがって、「日本での贈与税申告」+「海外での税務報告(申告)」 を両輪で進めることが重要です。
実務的には、日本と海外双方の制度に精通した税理士や現地専門家に相談し、手続きの漏れや課税リスクを回避することが最善の対応となります。


