
「日本の相続対策として生前贈与を活用したいけど、子どもがアメリカに住んでいると難しいのかな」
「アメリカの税金のことはよくわからないし」
生前贈与を相続対策として検討している方からのご質問でした。
日本にいる子供だけでなく海外にいる子どもにも平等に生前贈与を行いたいとの要望でしたが、いままでに生前贈与を海外にいる子どもへ行ったことがないため、どうしたら良いのかと悩まれておりました。
ご安心ください。国際的な贈与は注意しなければならない点はもちろんありますが、計画的に準備を行うことで安心して生前贈与を行うことが可能です。
本記事では、アメリカに住んでいる方への贈与についてのポイント・贈与税・相続税の取り扱いを専門家の視点を踏まえ解説しております。
あなたの不安を解消しますので、ぜひ最後まで読んでください。
目次
第1章 アメリカへの生前贈与の3つのポイント
「財産を渡す側(贈与者)=日本居住」「財産を受け取った側(受贈者)=アメリカ居住」の生前贈与の3つのポイント
日本居住者からのアメリカ居住者への生前贈与は以下3つのポイントに留意する必要があります。
ポイント①日本の贈与税
財産を渡す側(贈与者)が日本居住であれば、財産を受け取った側(受贈者)がアメリカ居住でも、原則として全世界の贈与財産に日本の贈与税が課税対象となります。
受贈者は基礎控除(年間110万円)を超える場合には日本での贈与税申告が必要です。
受贈者が日本非居住者(アメリカ居住者)なので納税管理人(※下記<専門家の視点①>)の選任も必要となります。
ポイント②アメリカの贈与税(連邦税)
財産を渡す側(贈与者)が「アメリカの非居住者・非市民」なので、アメリカ国内の不動産などを贈与したときはアメリカ贈与税の対象となります。
贈与者は年間基礎控除(受贈者1人当たり19,000米ドル(2025年))を超える場合にはアメリカでの申告が必要となります。
ただし、無形財産(預金・株式などの有価証券)は、アメリカ贈与税の対象となりません。
また、州によっては州税としての贈与税が存在します。
連邦税としての贈与税はかからなくても、州税としての贈与税はかかることもあります。州税については、現地の専門家と連携し確認を行う必要があります。
ポイント③アメリカの報告義務
アメリカ居住者である財産を受け取った側(受贈者)は、外国人からの贈与の合計が年間10万米ドルを超えるとForm 3520の報告が必要となります。
ただし、授業料・医療費の学校・医療機関への直接支払は除外となります。
アメリカの手続き(贈与税申告・Form 3520の報告)
| 贈与額(USD) | 贈与税申告 | Form 3520の報告 |
| $19,000未満 | 不要 | 不要 |
| $19,000〜$100,000 | 要 | 不要 |
| $100,000超 | 要 | 要 |
※贈与税申告が必要な場合においてもアメリカ贈与税は一般的には生じません。(後述:第2章 具体例②)
<専門家の視点👉>
①日本の納税管理人の選任・届出
海外に住む子どもなどが贈与を受ける場合、日本国内に納税管理人を選任し、税務署に「納税管理人届出書」を提出する必要があります。
- 提出先:海外在住者が贈与税の申告をする場合は、住所を管轄する税務署がありません。
自分で日本国内のどこかの税務署を定めてそこに届出することになります。
実際には、納税管理人の住所に合わせることが多いです。 - 納税管理人:誰でもなれる。日本に住む親族、信頼できる知人、または税理士が選任されるケースが多い。
- 役割:納税管理人は、申告書の提出や税金の納付など受贈者に代わって税務署とやり取りする法的な窓口となります。
②アメリカ贈与税の課税の対象となる財産(財産の種類で異なる)
贈与者がアメリカ非居住外国人(アメリカ市民ではなくアメリカに住んでいない人)である場合、そもそもアメリカ贈与税の対象はアメリカ国内の財産のうち無形財産以外に限られます。
無形財産:預金、株式・債券等の有価証券など
無形財産以外:不動産、現金など
したがって、日本からアメリカへの生前贈与の多くのケースである預金の贈与ではアメリカの贈与税は課税されないこととなります。
③アメリカの報告義務(Form 3520)
アメリカに住む子どもなどが日本から贈与を受けた場合、「Form 3520」をIRS(日本の国税庁に相当する機関)に提出しなければなりません。
- 提出基準:年間10万米ドルを超えるアメリカ非居住外国人からの贈与を受けた場合に義務発生。
- 提出期限:翌年4月15日(延長申請をしていれば延長後の期限まで)
- 罰則:未提出の場合、贈与額の最大25%に相当するペナルティが課されることがあります。
したがって、日本側で贈与税をきちんと申告・アメリカでの贈与税がかからない場合でも、報告を怠れば重大なリスクを抱えることになります。
<財産の種類別「日本×アメリカ」早見表>
(前提:贈与者=日本居住(アメリカ非居住外国人)、受贈者=アメリカ居住)
贈与する財産の種類・所在地によって両国の税金・手続きが以下の通り変わることになります。
| 贈与財産 | ①日本の贈与税 (受贈者) | ②アメリカの贈与税 (贈与者) | ③Form 3520 (受贈者) |
| 日本の不動産 | 課税対象(国内財産) | 対象外 | $100,000超なら提出 |
アメリカの不動産 | 課税対象(国外財産) | 対象(アメリカ内不動産) →申告が必要 | $100,000超なら提出 |
| 預金の送金 (日本口座) | 課税対象(国内財産) | 対象外 | $100,000超なら提出 |
| 預金の送金 (アメリカ口座) | 課税対象(国外財産) | 対象外(無形資産) | $100,000超なら提出 |
| 現金 (アメリカで手渡し) | 課税対象(国外財産) | 対象(アメリカ内で手渡し) →申告が必要 | $100,000超なら提出 |
| 授業料・医療費 (学校・病院へ直接支払) | 生活費・教育費の“通常必要”なら日本も原則非課税 | 対象外 | Form 3520不要 |
第2章 アメリカへの生前贈与のよくある具体例(贈与税について)
「財産を渡す側(贈与者)=日本居住」「財産を受け取った側(受贈者)=アメリカ居住」の生前贈与の具体例
ここでは、日本居住者からのアメリカ居住者への生前贈与をよくある具体例を基に各国の「贈与税」を確認していきます。
具体例①:預金の海外送金「110万円」
①日本の贈与税:申告不要 / ②アメリカの贈与税:なし / ③Form 3520:不要
① 日本の贈与税
贈与者が日本居住のため、原則、全世界の贈与財産が課税対象となります。
贈与税:110万円 − 基礎控除110万円 = 0円(申告不要)
※年間の贈与額が110万円を超えない年は申告不要。
② アメリカの贈与税
贈与者はアメリカ非居住外国人(アメリカ非居住・非市民)で、贈与した預金は無形財産。
アメリカ贈与税の対象はアメリカ国内の不動産などの無形財産以外に限られるため課税されません。
③ Form 3520
アメリカ非居住外国人からの贈与が年間100,000米ドル超で提出義務が発生します。
110万円は100,000米ドル以下であるため不要。
具体例②:預金の海外送金「1,500万円」(100,000米ドル超(145円/1米ドル))
①日本の贈与税:(受贈者)申告・納税必要 / ②アメリカの贈与税:なし / ③Form 3520:(受贈者)必要
① 日本の贈与税
贈与者が日本居住のため、原則、全世界の贈与財産が課税対象となります。
贈与税額:366万円
※税額:1,390万(1,500万円−基礎控除110万円)× 40% − 190万 = 366万円
(注)続柄や他の贈与の有無で税率は変わる場合があります。
申告・納付:受贈者は翌年3/15までに日本で申告・納付する必要があります。
受贈者は日本の非居住者のため、納税管理人の届出書をあわせて提出。
<専門家の視点👉>
生前贈与を一括で行わない相続対策の検討(贈与税率の観点)
例えば半額の750万円の贈与の場合には贈与税額は102万円となります。日本の贈与税率は累進課税(一回の贈与額が大きいほどに税負担が大きい)のため検討の余地があります。
② アメリカの贈与税
贈与者はアメリカ非居住外国人(アメリカ非居住・非市民)で、贈与した預金は無形財産。
アメリカ贈与税の対象はアメリカ国内の不動産などの無形財産以外に限られるため課税されません。
<専門家の視点👉>
もしアメリカ内不動産などのアメリカ国内財産の贈与であれば、年間基礎控除(19,000米ドル(2025年))を超えるため、アメリカ贈与申告が必要になります。
なお、日本人贈与者には「統一移転税額控除(日本人は特例的に適用あり)」という約20億円の大きな控除(一定の調整計算が必要です)が認められるため贈与税はめったにかかりません。
③ Form 3520
アメリカ非居住外国人からの贈与が年間100,000米ドル超で提出義務が発生します。
100,000米ドルを超えるため提出が必要となります。
<専門家の視点👉>
不提出は贈与額の最大25%に相当するペナルティが課されることがあります。
アメリカ贈与税がかからない場合は特に手続きが漏れるケースが散見されますので確実に提出するようにしましょう。
第3章 アメリカへの生前贈与のよくある具体例(相続税について)
「財産を渡す側(贈与者)=日本居住」「財産を受け取った側(受贈者)=アメリカ居住」の生前贈与の具体例
第2章で確認した生前贈与のその後を各国の「相続税(アメリカ遺産税)」で確認していきます。
日本・アメリカの両国ともに生前贈与された財産は、のちに贈与者に相続があった場合には相続財産に加算して相続税(アメリカ遺産税)を計算することになります。
日本では、原則死亡前7年以内の贈与が相続税に加算され、既に納めた贈与税は相続税から控除します。
アメリカでは、生前の課税贈与(1977年以降)を原則すべて遺産税の計算基礎に合算し、既に納めた贈与税は遺産税から控除します。
具体例①:預金の海外送金「110万円」
①日本の相続税
死亡が贈与後7年以内の場合には生前贈与の110万円を相続時の亡くなった人(被相続人)の遺産に加算して(贈与はなかったものとみなして)相続税を計算します。
死亡が贈与後7年超の場合には生前贈与の110万円を遺産に加算する必要はありません。
②アメリカの遺産税
贈与財産(預金)は無形財産で、生前贈与時点ではアメリカ贈与税の課税対象外です。
したがって相続時にアメリカ側の生前贈与分の持ち戻しは通常生じません。
<専門家の視点👉>
日本の相続税は贈与から7年経過しているか否かにより贈与財産を遺産に加算するかどうか取り扱いが異なります。
言い換えると生前贈与の相続対策は、贈与時から7年経過して初めて効果を発揮します。
よって将来を見据えて早めに相続対策を行う必要があります。
具体例②:預金の海外送金「1,500万円」
①日本の相続税
具体例①と同様に贈与時から7年を経過しているかにより相続税の計算が異なります。
贈与後7年以内の場合には、すでに納付した贈与税(366万円)を相続税の一部に充てることができます。
②アメリカの遺産税
具体例①と同様に相続時にアメリカ側の生前贈与分の持ち戻しは通常生じません。
実際には、皆さまが検討している生前贈与の金額に応じて日本・アメリカの税額・手続きを検討していくことになります。日本・アメリカ両国とも生前贈与の金額によって、とるべき手続き・税額も異なってくることに留意する必要がございます。特に生前贈与の金額が多額になるケースについては専門家へ相談する必要出てくるでしょう。
第4章 国際相続・贈与の相談は「税理士法人マインライフ」へ
贈与が国際間をまたぐものであるため手続きが複雑になるかもしれない・・・。
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第5章 まとめ
いかがだったでしょうか。
相続対策としてアメリカに住んでいる子どもへの生前贈与の活用を検討中のあなたも留意点や具体的な税金のイメージが湧いたのではないでしょうか。
アメリカ居住者への贈与についての3つのポイント「①日本の贈与税」「②アメリカの贈与税(連邦税)」「③アメリカの報告義務」を解説しました。
また、具体例に基づき「贈与税・相続税」の税額を解説しました。
実務的には、当然ですが皆さまが検討している生前贈与の金額に応じて日本・アメリカの税額・手続きを検討していくことになります。
そこで大切になるのは日本とアメリカ双方の制度に精通した税理士や現地専門家です。
手続きの漏れや課税リスクを回避するためにも専門家への相談が最善の方法になります。


