
「ニュージーランドに住んでいる親が高齢になってきた」
「オークランドの自宅や現地の預金を相続したら、現地の税金はどうなるのだろうか」
「日本では何か手続きが必要になるのだろうか」
このような不安を感じて、この記事にたどり着いた方もいるのではないでしょうか。
実は、ニュージーランドには現在、日本の相続税に相当する一般的な相続税はありません。ニュージーランドでは過去に遺産に対する税制がありましたが、現在は廃止されています。また、贈与税も廃止されています。
しかし、日本に住んでいる人が、ニュージーランドの財産を相続した場合、原則として、ニュージーランドの財産も日本の相続税の対象になります。
大切な家族の相続で、あとから申告漏れや思わぬ税負担に気づいて慌てないためにも、まずは全体像を確認していきましょう。
【当記事は2026年1月1日時点の法令に基づき作成しております。】
目次
第1章 ニュージーランドの相続税などの課税制度
まずは、ニュージーランドの税制について確認をしていきます。
1-1 ニュージーランドでは相続税がない
ニュージーランドには、現在、日本の相続税に相当する税金はありません。
かつては、ニュージーランドにも相続税がありましたが、1992年に廃止されました。
そのため、ニュージーランド国内の不動産や預金を相続したとしてもニュージーランドでは、相続税は課税されません。
1-2 ニュージーランドでは贈与税もない
ニュージーランドでは、贈与税も2011年に廃止されています。
そのため、ニュージーランドでは、亡くなった時に相続により財産を引き継いだ場合も、生前に贈与で財産を引き継いだ場合も、基本的に相続税も贈与税も課税されません。
1-3 ニュージーランドには一般的なキャピタルゲイン税がない
ニュージーランドでは、一般的なキャピタルゲイン税がありません。キャピタルゲイン税とは、不動産や株式などを売却して利益が出た場合に、その売却益に対してかかる税金のことです。
ただし、購入時から売却する目的で取得していた場合など一定の場合は課税されます。
ニュージーランドでは、現在、相続税、贈与税、一般的なキャピタルゲイン税もありません。
ただし、これはあくまでニュージーランドの税金についてです。
ニュージーランドの財産であっても日本に住んでいる人が相続や贈与により取得した場合、売却した場合などについては基本的に日本の税金の対象となります。
次は、日本の税金について整理をしていきます。
第2章 ニュージーランドでは課税されなくても日本では課税される場合がある
ニュージーランドには現在、日本の相続税に相当する税金はありません。また、贈与税も廃止されており、一般的なキャピタルゲイン税もありません。
しかし、ニュージーランド側で税金がかからないとしても、日本で税金がかからないとは限りません。
どのような場合に日本の税金の対象になるのか、確認していきましょう。
2-1 こんな場合には日本の相続税の対象になる
まず、日本国内にある財産を取得した場合には、亡くなった人や相続人が日本に住んでいない場合であっても、日本の相続税の対象になります。
さらに亡くなった人や相続人の住所、国籍、過去の日本居住歴、財産の所在地によって海外の財産も日本の相続税の対象になることがあります。
亡くなった方、または、相続人のいずれかが日本に住んでいる場合には、一定の例外を除き、海外にある財産も日本の相続税の対象となります。
つまり、ニュージーランドの不動産や預金であっても、亡くなった人もしくは相続人のいずれかが日本に住んでいる場合には、一定の例外を除き、日本の相続税の対象となります。
次のフローチャートで、海外にある財産も日本の相続税の対象に含まれるか判断することができます。
海外財産に日本の相続税がかかるかどうかの詳しい判定については、
「海外の財産に相続税はかかる?日本との違いや注意点を専門家が解説」をご参照ください。

【具体例】
たとえば、ニュージーランド在住の父が亡くなり、東京に住んでいる子どもが、オークランドの不動産とニュージーランドの預金を相続した日本人の親子のケースを考えてみましょう。
この場合、相続人である子どもが日本に住んでいる日本人のため、そのオークランドの不動産やニュージーランドの預金も、日本の相続税の対象になります。ニュージーランド側で相続税がかからないとしても、日本側では相続税を支払うことになる場合があります。
逆に、亡くなった人も相続人もニュージーランド在住であっても、日本国内にある不動産や預金を相続する場合には、その日本国内財産について日本の相続税が問題になります。つまり、国際相続では「どこの国に住んでいるか」だけでなく、「どこの国に財産があるか」も重要です。
👉専門家の視点:海外財産がある場合は「誰が取得するか」も重要
海外財産が日本の相続税の対象にならない相続人がいる場合には、日本の相続税負担を軽減できる可能性があります。日本の相続税では、相続人の区分によって、国内財産だけが課税対象になる人と、国外財産まで課税対象になる人がいるためです。
たとえば、相続人のうち一人が海外に長く住んでおり、日本の相続税上、ニュージーランドなどの海外財産が課税対象にならない場合、その相続人にニュージーランドの不動産や預金を取得させることを検討します。日本に住んでいる相続人がニュージーランド財産を取得した場合、その財産も日本の相続税の対象になるためです。
また、相続人の中に、ニュージーランドなどの海外財産が日本の相続税の対象にならない人がいる場合には、その人が国外財産を取得することを前提に、生前に日本国内の財産を国外財産へ組み替えることも検討余地があります。
ただし、税金だけを優先して財産の分け方を決めると、相続人間の不公平感や遺産分割トラブルにつながることもあります。税務上の有利不利だけでなく、家族全体の納得感も含めて判断することが大切です。
専門家に相談してみてください。
2-2 こんな場合には日本の贈与税の対象になる
日本の贈与税についても、相続税と同じように、贈与者・受贈者の住所、国籍、過去の日本居住歴、財産の所在地によって課税関係が変わります。
贈与税は、財産をもらった人である受贈者に課税される税金です。
そのため、ニュージーランド在住の親が、日本に住んでいる子どもにニュージーランドの預金や不動産を贈与する場合には、ニュージーランド側で贈与税がかからなくても、日本の贈与税の対象になる可能性があります。
次のフローチャートで、海外にある財産も日本の贈与税の対象に含まれるか判断することができます。

【具体例】
たとえば、ニュージーランド在住の親が、東京に住んでいる子どもに、ニュージーランドの銀行預金やオークランドの不動産を贈与する日本人の親子のケースを考えてみましょう。
この場合、贈与された財産がニュージーランドにあるとしても、受贈者である子どもが日本に住んでいる日本人ため、日本の贈与税の対象になります。したがって、ニュージーランド側では贈与税がかからないとしても、日本側では贈与税を支払うことになる場合があります。
一方で、親子ともにニュージーランド在住で、日本の贈与税上、子どもが国外財産について課税対象とならない区分に当てはまる場合には、同じニュージーランド財産の贈与でも、日本の贈与税の対象外となります。つまり、贈与は「誰から誰へ」「どこの国の財産を」「どのタイミングで移すか」が重要です。
👉専門家の視点:日本に帰国予定がある場合は「帰国前の贈与」も要検討
親子が現在ニュージーランドに住んでおり、将来的に日本へ帰国する予定がある場合には、帰国前にニュージーランド財産を贈与することを検討する余地があります。贈与税の課税範囲は、贈与時点の親子の住所等で決まるためです。
たとえば、親子がいずれもニュージーランドに長く住んでおり、日本の贈与税上、子どもがニュージーランド財産について課税対象にならない場合には、帰国前に親から子へニュージーランドの預金や不動産を贈与することを検討する余地があります。
日本に帰国した後に贈与を行うと、ニュージーランド財産であっても、原則として日本の贈与税の対象になる可能性があります。
また、帰国前に贈与しておくことで、生前に財産を子どもへ移転することができます。その結果、将来相続が発生した際に、その財産が親の相続財産から外れ、日本の相続税負担を軽減できる可能性があります。
帰国後に相続が発生した場合は、親子ともに日本居住者となっているため、ニュージーランド財産についても日本の相続税の対象になる可能性が高くなります。
2-3 こんな場合は日本の譲渡所得税の対象になる
ニュージーランドには一般的なキャピタルゲイン税がありません。
そのため、ニュージーランド不動産を売却しても、売却目的で取得した場合など一定の場合を除き、ニュージーランドでは税金がかかりません。
しかし、ニュージーランドの不動産を日本に住んでいる人が売却し、その売却により譲渡益が生じた場合、その売却益について日本で譲渡所得に対する所得税・住民税が課税されます。
【具体例】
たとえば、日本に住んでいる子どもが、ニュージーランド在住の父からオークランドの不動産を相続し、その後、その不動産を売却した日本人の親子のケースを考えてみましょう。
まず、日本に住んでいる日本人の子どもが相続しているため、そのオークランドの不動産は日本の相続税の対象になります。
さらに、売却した際に譲渡益が生じていれば、その売却益は日本で譲渡所得に対する所得税・住民税の対象になります。つまり、相続時に相続税、売却時に譲渡所得課税 という二つの論点が発生し得ます。
ここで注意したいのは、売却益が「相続してからの値上がり分」だけではないことです。相続した不動産を売却する場合には、父がその不動産を購入した時の取得費を引き継いで計算します。
不動産を売却したときの譲渡益は、簡単にいうと、売却金額から「購入時の金額や購入手数料など」を差し引いて計算します。この購入時の金額や購入手数料などを、税務上は 取得費 といいます。
父がその不動産を購入した時の取得費を引き継ぐため、かなり昔に安い価格で購入していた場合には、売却代金との差額が大きくなり、日本での譲渡所得が大きくなる可能性があります。
👉専門家の視点:帰国前・相続前の売却で税負担を抑えられる可能性がある
ニュージーランド不動産に大きな含み益がある場合、日本への帰国前や相続発生前に売却することで、将来の日本の税負担を抑えられる可能性があります。
日本の居住者は、原則として国内で生じた所得だけでなく、国外で生じた所得についても日本で課税されます。そのため、日本に住んでいる人がニュージーランド不動産を売却して譲渡益を得た場合、その譲渡益は日本で課税対象になります。
ニュージーランド在住者が将来的に日本へ帰国する予定で、ニュージーランド不動産に大きな含み益がある場合には、日本へ帰国する前に売却することを検討する余地があります。
日本へ帰国して日本の居住者になった後に売却すると、ニュージーランド不動産の売却益も日本の譲渡所得税の対象になる可能性があります。
一方、売却時点で日本の非居住者であり、日本の課税対象とならない場合には、日本での譲渡所得課税を避けられる可能性があります。
ただし、帰国前や相続前に売却する場合でも、ニュージーランド側で課税されないか、売却目的で取得した不動産ではないかなどの確認は必要です。
日本に住んでいる相続人がニュージーランドの財産を相続する場合も同様です。
たとえば、ニュージーランド在住の父が所有している不動産を日本在住の子どもが相続する予定のケースです。
この場合、子どもが相続後に売却すると、父が購入した時の取得費を引き継いで譲渡所得を計算するため、日本で大きな譲渡所得が発生する可能性があります。
一方、相続発生前に父が不動産を売却しておけば、子どもが相続後に不動産を売却して日本の譲渡所得税が発生する、という流れを避けられる可能性があります。
ただし、相続発生前に売却しても、売却代金が父の預金として残る場合、その預金は相続財産になります。相続前の売却は、日本の相続税そのものをなくす対策ではなく、相続後に大きな譲渡所得税が発生するリスクを抑えるための対策として検討するものです。
また、ニュージーランド側で課税されないか、現地の手続きに問題がないかも事前に確認しておきましょう。
このように、ニュージーランドでは相続税・贈与税・一般的なキャピタルゲイン税がないとしても、日本側では相続税・贈与税・譲渡所得税が問題になることがあります。
特に注意すべきなのは、次の3つです。
・日本に住んでいる人がニュージーランド財産を相続する場合
・日本に住んでいる人がニュージーランド財産の贈与を受ける場合
・日本に住んでいる人が、相続後にニュージーランド不動産を売却する場合
ニュージーランド側で税金がかからない場合でも、日本で申告が必要になるケースはあります。
そのため、ニュージーランド財産を相続・贈与・売却する場合には、現地の税金だけでなく、日本側の税金まで含めて確認することが大切です。
ここまで、ニュージーランドと日本の税務について確認してきましたが、次はニュージーランドでの相続手続きについて確認をしていきます。
第3章 ニュージーランドの相続手続き
ニュージーランドには相続税がありませんが、相続手続きは必要です。
ニュージーランドに不動産、銀行預金、投資口座などの財産がある場合には、現地の法律や金融機関のルールに従って、財産を相続人へ移すための手続きが必要になります。
特に重要なのが、プロベート手続きです。
3-1 プロベート手続きが必要
プロベートとは、人が亡くなった際に、その遺産を法的に管理・清算し、最終的に相続人へ分配するまでの一連の裁判手続きのことです。
プロベートが不要な日本では、相続人の話し合いにより誰がどの財産を取得するかを決めます。その内容に基づいて、不動産や預金の名義変更などができます。
しかし、プロベートが必要なニュージーランドでは、裁判所の監督のもとで、遺産の確定、債務・税金の清算、相続人への分配がされます。そのため、多くの費用(裁判所費用・弁護士費用)と時間(数か月~1年以上)を要することになります。
なお、個々の財産価額が少額な預金口座などの場合には、プロベートの手続きを経ずに名義変更をすることが可能な場合があります。
【「プロベート手続き」についてはこちらの記事をご参照ください】
3-2 ニュージーランドの法定相続分
遺言がない場合には、遺産は法定相続分で分配されます。
ニュージーランドの法定相続分については主に次のように規定されています。
・配偶者(パートナーを含みます。以下同じ)と子どもがいる場合
まずは、すべての家財とNZD155,000(1NZD約90円として約1,400万円)を配偶者が取得し、残りの財産を配偶者が1/3、子どもが2/3取得
・子どもがおらず、配偶者と親がいる場合
まずは、すべての家財とNZD155,000を配偶者が取得し、残りの財産を配偶者が2/3、親が1/3取得
・配偶者がおり、子どもがいない場合
配偶者がすべて取得
・子どもはいるが、配偶者がいない場合
子どもがすべて取得
3-3 ニュージーランド財産がある場合はニュージーランドで遺言書の作成をする
ニュージーランドに不動産や預金などの財産がある場合には、ニュージーランドで有効な遺言書を作成しておくことをおすすめします。
日本で作成した遺言書でも、ニュージーランドで使える可能性はありますが、ニュージーランド財産についてそのままスムーズに手続が進むとは限りません。
また、ニュージーランドで有効な遺言書がないとされた場合には、手続きが煩雑になりますし、遺産の分け方は本人の希望ではなく、ニュージーランドの法定相続ルールに従うため、想定外の分配になる可能性もあります。
ニュージーランドで有効な遺言書があってもプロベートの手続きが避けられるということではありませんが、遺言書がない場合よりもスムーズです。
なお、日本でもニュージーランドでも遺言書を作成する場合には注意が必要です。後で作成した遺言書により、先に作成した遺言書が撤回されてしまうことがあるためです。
そのため、日本用の遺言書とニュージーランド用の遺言書を分ける場合には、それぞれの対象財産を明確にし、互いの遺言書を取り消さないように内容を調整して作成する必要があります。
第4章 ニュージーランドの相続は税理士法人マインライフへご相談ください
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第5章 まとめ
ニュージーランドには相続税・贈与税がなく、一般的なキャピタルゲイン税もありません。
ただし、日本に住んでいる人がニュージーランド財産を相続・贈与・売却する場合には、日本の相続税・贈与税・譲渡所得課税が問題になることがあります。
また、ニュージーランドに財産がある場合には、現地でプロベートなどの相続手続きが必要になることがあり、遺言書がないと手続きが煩雑になったり、法定相続ルールにより想定外の分け方になったりする可能性があります。
そのため、ニュージーランドの相続では、「現地に相続税がないから安心」とは言い切れません。
日本の税金とニュージーランドの手続きをあわせて確認することが重要です。
※本記事における日本国外の情報は、一般に公表されている基本的な内容を平易に解説したものです。具体的な実務にあたっては現地専門家への確認が必要となります。


