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カテゴリー: 相続対策

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    国際相続サポート, 相続対策

    • 2026.03.25
    • 門倉 誉士希

    アメリカ贈与税【2026年版】日本から米国在住の子へ送金する前に読む完全ガイド

    【当記事は2026年1月1日時点の法令に基づき作成しております。】   アメリカに住んでいる子ども(孫)に財産を贈与してあげたいけど、贈与税はかかるのかな、、、。 そんな疑問をお持ちですね。 日本に住む方がアメリカに住むお子様やお孫様に贈与を行う場合、アメリカと日本、両方の税制度を確認する必要があります。 場合によってはアメリカと日本の両方で税金がかかる、二重課税となる可能性もあります。 今回は日本に住む方がアメリカに住むお子様やお孫様に財産を贈与する場合の税金について解説します。 この記事を読んで、事前に注意点などを確認した上で、お子様たちへ計画的な贈与を行っていきましょう!   第1章 アメリカの贈与税の仕組み まず初めにアメリカの贈与税の基本を確認しましょう。 1-1 誰が贈与税を負担・申告するのか(納税義務者) アメリカの贈与税は日本の贈与税とは異なり、原則的に財産を渡す側(贈与者)に税金を納める義務があります。 なお、贈与者が納税を行わない場合には財産を受け取った側(受贈者)に税金を納める義務が生じます。 アメリカの贈与税の取扱いは、次のとおり贈与者がアメリカ市民・アメリカ居住者であるか、アメリカ非居住外国人であるかにより異なります。   1-2 課税対象となる財産 課税の対象となる財産は以下のとおり、贈与者がアメリカ市民・アメリカ居住者であるか、アメリカ非居住外国人であるかにより異なります。 贈与者がアメリカ非居住外国人の場合、アメリカにある財産であっても無形財産については贈与税の課税対象から外れます。 したがって、例えば、アメリカ市民ではなくアメリカに住んでいない人(アメリカ非居住外国人)がアメリカ国内にある預金の贈与を行ってもアメリカの贈与税は課税されないこととなります。   1-3 申告・納税期限 アメリカの贈与税は暦年(1月1日~12月31日の1年間)を課税単位とし、申告・納税期限は原則として贈与を行った年の翌年4月15日です。   1-4 計算の仕組み・税率 (1)計算手順 アメリカの贈与税は以下の手順で計算します。 ① その年の贈与財産の合計額を集計 ↓ ② ①から年間基礎控除・配偶者控除・寄附金控除をマイナスし課税価額を計算 ↓ ③ ②の結果として計算された課税価額と過年度の課税価額(合計額)を合計 ↓ ④ ③×税率(統一移転税率※)=贈与税総額を計算 ↓ ⑤ 贈与税総額-贈与税控除・統一移転税額控除・外国税額控除   ※統一移転税率は、アメリカの遺産税(日本の相続税に相当する税金)、贈与税ともに同一の税率表が適用されます。   (2)各種控除の内容 ① 年間基礎控除(Annual exclusion) 年間基礎控除とは、贈与税計算上の財産から差し引くことができるもので、2026年における控除額は財産を受け取った人(受贈者)一人当たり19,000ドルとなっています。 なお、この年間基礎控除には、婚姻関係にある夫婦について、ギフトスプリッティング(Gift splitting)という特例が認められています。財産を渡す人(贈与者)が第三者に対して贈与を行う場合、その財産を渡す人の配偶者の同意を得られれば、その第三者に対して、財産を渡す人とその配偶者がそれぞれ半分ずつ贈与をしたものとみなして、倍の年間基礎控除を用いることができます。 このギフトスプリッティングの特例を使うためには税務当局に申告を行う必要があります。 【具体例】 ・Aは30,000ドルを第三者Cに贈与する、というケース。 ・Aの配偶者Bが同意すれば、Aは第三者Cに15,000ドル(30,000ドルの半分)を贈与したものとみなされ、Aの配偶者Bは第三者Cに15,000ドル(30,000ドルの半分)を贈与したものとみなされる。 ・この場合、AとAの配偶者Bの贈与財産の金額は各15,000ドルずつとなり、それぞれ年間基礎控除額の19,000ドルを超えないこととなるため上記②の課税価額が生じず、贈与税は発生しないこととなる。   ② 配偶者控除(Marital deduction) アメリカ市民である配偶者に対して行った贈与は、その全額が配偶者控除の対象となります。 したがって、アメリカ市民である配偶者に対して行った贈与についてはアメリカの贈与税は生じないこととなります。 一方、アメリカ市民でない配偶者に対して行った贈与については、この配偶者控除に上限があり、年194,000ドルとなっています。   ③ 寄附金控除 一定の慈善団体への寄付金については、贈与税計算上の財産から差し引くことができます。 なお、アメリカ非居住者が贈与を行う場合は、「アメリカにおける」一定の慈善団体への寄付金のみが控除の対象となります。   ④ 統一移転税額控除(Unified credits) 統一移転税額控除とは、納付すべき贈与税額の計算にあたって、贈与税の総額から差し引くことができる控除で、2026年における控除額は5,945,800ドル(贈与財産額ベースで15,000,000ドル)となっています。 なお、アメリカ非居住者が贈与を行う場合は、前述の統一移転税額控除の適用は認められていません。 しかし、日米相続税条約の適用により、贈与者がアメリカ非居住者であったとしても日本人である場合には、統一移転税額控除を適用する特例計算が認められています。 また、この統一移転税額控除の適用によって納付すべき贈与税が生じない場合であっても、その年の贈与財産が受贈者ごとの年間基礎控除の金額を超えるときは、確定申告書の提出が必要となります。   ⑤ 贈与税額控除、外国税額控除(Credit for foreign gift taxes) 納付すべき贈与税額の計算にあたって、贈与税の総額から以下を差し引くことができます。 ・過年度に支払ったアメリカの贈与税の合計額(贈与税額控除) ・アメリカ国外で支払った外国の贈与税のうちの一定額(外国税額控除) 外国税額控除については後の章で詳しく解説します。   (3)税率 2026年現在、上記(1)③の課税価額の合計額に適用する税率は以下の表のとおりで、課税対象となる金額が大きくなればなるほど税率が高くなる超過累進税率(18%~40%)となっています。 また、この税率は「統一移転税率」といって、アメリカの遺産税(日本の相続税に相当する税金)、贈与税ともに同一の税率表が適用されます。   贈与税・遺産税 統一移転税率表   1-5 アメリカの遺産税との関係 (1)アメリカの遺産税の概要 アメリカには日本の相続税に相当する税金として「遺産税」が存在します。 この遺産税は亡くなった方(被相続人)の遺産に対して課税がされるもので、納税義務者は亡くなった方(被相続人)となります。(日本の相続税は亡くなった方から財産を相続した相続人等が納税義務者となります。) なお、亡くなった方(被相続人)がアメリカ市民またはアメリカ居住者である場合には、被相続人の有する全世界の財産が課税の対象となりますが、アメリカ非居住者である場合には、アメリカ国内の財産だけが課税の対象となります。   (2)アメリカの遺産税と贈与税の関係 この遺産税は基本的に亡くなった方の財産に税率をかけて税額を算定することとなっていますが、この税率をかける「課税遺産総額」には、亡くなった方(被相続人)が生前に行った贈与のうち、贈与税の課税価額に算入されたものを合算することとなっています。 そして算定された遺産税からは、過去に支払った贈与税相当額を控除する仕組みとなっています。 つまり、亡くなった方(被相続人)が生前に行った贈与で贈与税の対象となったものは結局遺産税の計算にも反映される、ということになっています。   (3)アメリカの遺産税の税率 亡くなった方(被相続人)の「課税遺産総額」にかける遺産税の税率は、上記贈与税の計算に用いた「統一移転税率」が同様に適用されます。課税対象となる金額が大きくなればなるほど税率が高くなる超過累進税率(18%~40%)となっています。   【「アメリカの遺産税」に関してはこちらの記事をご参照ください。】   1-6 連邦税・州税 これまではアメリカの連邦税としての贈与税について解説してきましたが、州によっては州税としての贈与税が存在します。 連邦税としての贈与税はかからなくても、州税としての贈与税はかかる、という可能性もあります。 州税については、現地の専門家と連携し確認を行う必要があります。   第2章 日本の贈与税との関係 続いて、アメリカの贈与税と日本の贈与税の関係について確認していきましょう。 2-1 日本の贈与税の制度 (1)日本の贈与税の概要 日本の贈与税は財産を貰った人(受贈者)に納税義務があります。 日本の贈与税には暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つの制度があり、相続時精算課税制度を選んだ場合には相続時精算課税制度が適用され、選ばない場合には暦年課税制度が適用される仕組みとなっています。 なお、この選択は贈与者(財産をあげる人)、受贈者(財産を貰う人)のペアごとに行うことが可能です。 贈与税の申告・納税期限は贈与を受けた年の翌年3月15日となります。   暦年課税制度 暦年課税制度の概要は以下のとおりです。 ・その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額が基礎控除額110万円を超えた場合に贈与税が発生します。 ・基礎控除額110万円を超えた金額に税率をかけて贈与税額を算定します。 ・税率は10%~55%の超過累進税率となっています。 ・亡くなった人(被相続人)が亡くなる前7年間に行った相続人等に対する贈与は相続税の対象となります。   相続時精算課税制度 相続時精算課税制度の概要は以下のとおりです。 ・原則、60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫に対して財産を贈与した場合に選択できる制度です。 ・その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額が基礎控除額110万円以内である場合には贈与税がかからず、相続税の対象にもなりません。 ・贈与を受けた財産のうち、年110万円の基礎控除額を超えた部分の累計額が2,500万円を超えた場合にはその超えた部分に一律20%の贈与税がかかります。 ・贈与を受けた財産のうち、年110万円の基礎控除額を超えた部分は財産をあげた人(贈与者)が亡くなった際の相続税の対象となります。 ・相続時精算課税制度を選択する場合には、その選択する年の翌年2月1日から3月15日までの間に税務署に届け出を行う必要があります。 ・この選択は贈与者(財産をあげる人)、受贈者(財産を貰う人)のペアごとに行うことが可能ですが、一度この制度を選択するとその選択をした年分以降はすべてこの制度が適用されることとなり、2度と暦年課税制度に戻ることはできません。   (2)日本の贈与税の納税義務(国外に財産がある場合) 日本の贈与税の納税義務は以下のフローチャートに沿って判断します。 財産をあげた人(贈与者)、財産をもらった人(受贈者)の状況によって、日本国内にある財産だけが贈与税の対象となるのか、日本国外にある財産も贈与税の対象となるのかが異なります。 このように、日本とアメリカの贈与税はその国外にある財産にも課税されることがあることから、同じ財産に両国の贈与税がかかってしまうことがあります。 この二重課税を防ぐために「外国税額控除」という制度があります。   2-2 外国税額控除の適用 贈与税の外国税額控除の具体的なイメージは以下のとおりです。 (1)前提 日本に住んでいる日本国籍の父が日本に住んでいる日本国籍の子に対してアメリカの不動産を贈与し、日本で5,000万円、アメリカで3,000万円の贈与税が発生   (2)計算例 ①日本で支払う贈与税額の計算 日本の贈与税5,000万円-【外国税額控除】アメリカの贈与税3,000万円=日本で実際に支払う贈与税2,000万円 ②実際に支払った贈与税額 日本で支払った贈与税2,000万円+アメリカで支払った贈与税3,000万円=5,000万円   外国税額控除を適用することにより、結果的に日本の贈与税相当額5,000万円のみを納税したこととなります。   【「外国税額控除」についてはこちらの記事をご参照ください。】   第3章 よくある間違いと注意点 次にアメリカの贈与税を考える上でのよくある間違いとその注意点を確認していきましょう。 3-1 現金を物理的に持ち込んでの贈与 財産をあげる人(贈与者)がアメリカに住んでおらず、アメリカ市民でもない場合、アメリカにある財産であっても無形財産についてはアメリカの贈与税の課税対象から外れます。無形財産とは預金、有価証券等をいいます。 これを勘違いし、贈与税がかからないものと思い込んでアメリカに現金を持ち込み贈与した場合、現金は無形財産には該当しないため、アメリカの贈与税の対象となります。   3-2 アメリカ非市民である配偶者に配偶者控除を誤適用 アメリカ市民である配偶者への贈与は、その全額が配偶者控除の対象となります。 したがって、アメリカ市民である配偶者に対して行った贈与についてはアメリカの贈与税は生じません。 しかし、アメリカ市民でない配偶者に対して行った贈与については、この配偶者控除の金額に上限があるため贈与税が発生することがあります。 配偶者がアメリカ市民でないにも関わらず、配偶者控除によって贈与税が発生しないものと勘違いして無計画に贈与を行うとアメリカの贈与税が発生する場合があります。   3-3 ギフトスプリッティングを誤って適用 アメリカの贈与税計算上の年間基礎控除には、婚姻関係にある夫婦について、ギフトスプリッティング(Gift splitting)という特例が認められていますが、この制度はその贈与時点において夫婦の両方がアメリカ市民またはアメリカ居住者でなくては適用できません。 例えば日本人夫婦のうち、一方はアメリカ在住で、一方は日本在住の場合、この特例は適用できないため注意が必要です。   3-4 Form 3520の提出の失念 アメリカ市民またはアメリカ居住者が、アメリカ非居住者から贈与または相続により年10万ドル超の財産を受け取った場合は、Form 3520という報告書をIRS(日本の国税庁に相当する機関)に提出する必要があります。 申告期限は贈与や相続を受けた年の翌年4月15日までとなります。 申告を怠った場合には罰則規定があるため注意が必要です。 アメリカの贈与税は発生しないから提出するものは何もない、と思い込み、提出を失念してしまう場合があるため注意が必要です。   第4章 Q&A   4-1 アメリカで贈与税の納税がない場合でも申告義務が生じることはありますか? あります。 アメリカでは、贈与税の納税額が0円でも申告が必要になる場合があります。たとえば、贈与者については、年間基礎控除額を超える贈与をした場合、夫婦でギフトスプリッティングを使う場合などに、Form 709 の提出が必要です。また、アメリカ市民ではなくアメリカに住んでいない人(アメリカ非居住外国人)がアメリカの贈与税の対象となる贈与をした場合には、Form 709-NA の提出が必要となります。 また、受贈者側に申告義務が生じることもあります。たとえば、アメリカ市民またはアメリカ居住者が、アメリカ非居住者から年間で10万ドル超の財産を受け取った場合には、贈与税の納税とは別に、Form 3520 による報告が必要になります。   4-2 アメリカで贈与税のない州はありますか? あります。 ただし、ここでいう「贈与税のない州」とは、州独自の贈与税がないという意味です。前述してきた連邦贈与税は州とは別に検討が必要です。 州税ベースでは、2026年時点ではコネチカット州が州独自の贈与税を課している州とされています。 したがって、多くの州では州独自の贈与税はありませんが、州によっては遺産税や相続税が存在するため、これについては別途居住州や財産所在地の州法確認が必要となります。   4-3 日本からアメリカに送金する際に税金以外に気を付けることはありますか? まず、送金自体は原則として自由ですが、100万円を超える国外送金や国外からの受領送金については、金融機関から日本の税務署へ国外送金等調書が提出されます。これによって直接的に税金が課税されることはありませんが、送金記録が税務当局に共有される仕組みとなっています。 また、金融機関では、マネーロンダリング対策のため、本人確認に加えて、送金目的や資金の出所などの説明や資料提出を求められることがあります。 さらに、日本から海外口座へ送金する場合、3,000万円相当額を超える送金については、外為法に基づく事後報告が必要になることがあります。 加えて、現金を持参して移動する場合は税関申告にも注意が必要です。 日本では100万円相当額超の現金等を持ち出し・持ち込みする場合に税関申告が必要で、アメリカでも10,000ドル超の通貨等を持って入出国する場合は申告が必要です。   第5章 アメリカに住むお子様・お孫様への贈与についてのご相談は「税理士法人マインライフ」へ アメリカに住む子どもたちへ贈与をした場合、アメリカの贈与税の申告・納税や届出等の手間はかからないだろうか・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。 年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 「アメリカに住む親族への財産の贈与をどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。   第6章 まとめ 今回はアメリカの贈与税について解説してきました。   ・アメリカの贈与税の納税義務者は贈与者(日本の贈与税の納税義務者は受贈者) ・アメリカの贈与税の対象となる財産は、贈与者がアメリカ市民・アメリカ居住者であるか、アメリカ非居住外国人であるか、いずれかにより異なる ・2026年の統一移転税額控除額は贈与財産額ベースで15,000,000ドル(1ドル150円のレートで22.5億円)と非常に高額であるため、贈与税が発生するケースは少ない ・アメリカの贈与税率は超過累進税率で18%~40%となっている ・日本の贈与税とアメリカの贈与税の両方が課税された場合は、外国税額控除を適用できる可能性がある   アメリカの贈与税の制度は日本の贈与税の制度とは異なる部分が多々あり、遺産税との関わりもあるため非常に複雑な制度となっています。 アメリカの贈与税がかかるかもしれない、、、そんなときは早期に専門家に相談をして、正しい判断ができるように努めましょう。
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    国際相続サポート, 相続対策

    • 2026.03.19
    • 久保 佑介

    【徹底解剖】シンガポール移住と相続税のポイント

    「何とか相続税の課税から逃れられないか」「シンガポール移住はどうだろうか?」 シンガポールには相続税(遺産税)がないため、移住を通じて相続税の回避を検討する方がたくさん居ます。 しかし実務上は「シンガポールに住めば相続税を回避できる」というほど単純な話ではありません。 日本の税制は年々複雑化しており、安易な移住には多くのリスクが潜んでいます。 本記事では、シンガポール移住について  相続税の回避要件  事例による相続税が課される・課されないケースのまとめ  シンガポール税制の魅力  節税するための4つの注意点   を税の専門家の視点を踏まえて詳しく解説します。 ぜひ記事を参考にシンガポール移住を検討してください。 第1章:【結論】シンガポールへの移住は場合によっては相続税が回避可能 1-1シンガポールに移住すれば本当に相続税を避けられるのか? 結論から言えば、シンガポールに移住することで日本の相続税を回避できるケースはあります。 しかし、以下の3つの条件「①被相続人要件」「②相続人要件」「③財産要件」をすべて満たす必要があります。 【課税されない3条件】※いずれも日本国籍を所有している前提 条件 内容 ① 被相続人が日本の非居住者  10年以内に国内に住所がない場合 ② 相続人も日本の非居住者 10年以内に国内に住所がない場合 ③ 財産がすべて海外にある 日本に預金・不動産・株式など国内資産が一切存在しない つまり、具体的には相続開始時に以下のような状況が条件となります。 • 被相続人:シンガポールに永住権を取得し、10年超滞在している。 • 相続人:同様にシンガポールに永住権を取得し、10年超滞在している。 • 財産:すべてシンガポールの銀行口座、不動産、シンガポール法人の株式等で、日本国内資産がゼロ。 このようなケースであれば、日本の相続税は課されません。 1-2 シンガポール移住における3つの誤解 日本の相続税法の仕組みは、「被相続人の住所(居住実態)」だけではなく「相続人の住所(居住実態)」と「財産の所在」で課税可否が判断される点がポイントです。 以下のような誤解によって、課税リスク見誤る事例が多く見られます。 ❌ 誤解1:「被相続人だけが移住すればよい」 → 被相続人だけの移住では不十分です。相続人が日本に住んでいる場合、相続人が取得する全世界の財産が課税対象になります。 ❌ 誤解2:「相続開始直前までに移住すればよい」 →「移住後も10年間は日本の相続税の課税対象になります。」 日本の相続税法では、被相続人又は相続人のいずれかが相続前10年以内に国内に住所がある場合には、相続時にシンガポールに在住していたとしても「居住者」と同様に扱われます。出国しても即座に免税とならないということです。 ❌ 誤解3: 「日本に住民票を置いていなければ非居住者と認定される」 → 税務上の「居住者」か否かは、実際の生活実態(生活の本拠)がどこにあるかで判定されます。たとえ住民票を抜いても、居住用不動産の有無、納税実績、職業、家族の生活状況なども含めて総合的に判断されるため「形式的な移住」として否認されるケースがあります。 【課税回避に向けて不可欠な4つの「実務要件」】 1. シンガポールにおける生活の本拠を客観的に構築する  → 納税履歴、家族帯同、医療記録などが有効 2. 日本との経済的関係を遮断する  → 日本企業との雇用関係、口座、証券口座、不動産などを整理 3. 相続人側の移住も同時並行で設計する  → 相続人が日本在住の場合、被相続人が非居住者でも課税される 4. 10年を越える移住期間を確保する  → 相続はいつ起きるかわからない。高齢になってからの移住では手遅れになる可能性が高い 【専門家の視点👉】 シンガポール移住での相続税回避は「実現可能だが、計画的である必要がある」 • シンガポールには「相続税が存在しない」という絶対的な魅力があります。 • 日本の相続税を回避するには、被相続人・相続人の両方が、税務上明確な非居住者である必要があります。 • 単なる形式的な移住や住民票の移動では不十分であり、生活・財産・家族関係まで含めた包括的な移住設計が求められます。 • 実務では「移住後10年超を経過」「相続人も同様に移住後10年超を経過」「日本財産ゼロ」というハードルを越えた場合のみ、初めて相続税の課税対象外となります。 第2章:シンガポール移住で相続税が課される・課されないケースのまとめ 2-1「課税されるかどうか」は組み合わせで決まる 前章で説明したとおり、日本の相続税がかかるかどうかは、以下3つの要素の組み合わせで決まります。 1. 被相続人の居住状況(出国10年超経過しているか) 2. 相続人の居住状況(出国10年超経過しているか) 3. 相続財産の所在地(日本国外にあるか) この章ではケースごとに事例で相続税の課税要件をまとめます。 <相続税課税の一覧表>※各人日本国籍を有している前提 被相続人 相続人 財産所在地 相続税課税 非居住10年以下 非居住10年超  国外  全世界財産に課税 非居住10年超  日本居住 国外  全世界財産に課税 非居住10年超  非居住10年超 国内財産あり 国内財産に課税 非居住10年超 非居住10年超 国外 ❌ 課税なし 日本居住 日本居住 国内外に財産あり 全世界財産に課税 ケース1:被相続人が出国10年以下 → 相続税あり 事例 • 被相続人:2020年に日本を出国しシンガポールに移住 • 相続開始:2028年(出国から8年) • 相続人:非居住者(シンガポール在住) • 財産:すべてシンガポール所在 この場合、被相続人が「出国後10年超経過していない」ため、相続税法では日本の居住者とみなされ、相続人が非居住者であっても国外財産を含む全財産が課税対象となります。 ケース2:相続人が日本在住 → 相続税あり(国外財産含む) 事例 • 被相続人:シンガポールに15年居住(非居住者) • 相続人:東京都在住の長男 • 財産:シンガポールの預金・不動産 この場合、相続人が日本の居住者であるため、被相続人が非居住者であっても、日本の相続税法の適用が及びます。相続人が取得する財産がすべて国外にあっても、日本で申告・納税が必要となります。 ケース3:日本国内に財産がある → 常に相続税課税 事例 • 被相続人:シンガポールに12年在住、非居住10年超 • 相続人:オーストラリアに12年在住、非居住10年超 • 財産:東京の不動産とシンガポールの預金 この場合、相続人・被相続人の双方が非居住者でも、日本国内にある「不動産」には相続税が課されます。所在地が日本である財産については、居住者・非居住者の区分にかかわらず課税されます。 ケース4:課税されないパターン 事例 • 被相続人:シンガポールで永住権を持ち、15年間生活 • 相続人:カナダで13年間生活しており、日本との関係なし • 財産:すべてシンガポール国内に所在する現金・預金・不動産 このケースでは、次のすべてを満たしています: • 被相続人 → 出国10年超・日本に帰国歴なし • 相続人 → 出国10年超・日本での所得なし • 財産 → 日本国内に一切なし そのため、日本の相続税法の適用範囲外となり、申告納税義務は発生しません。 2-2 相続人が複数名いる場合の注意点 相続人の中に1人でも「日本居住者」が含まれると、その人が取得する相続分については、日本の相続税が課されます。 • 相続人A(海外居住):課税対象外 • 相続人B(日本居住):課税対象 相続人ごとに課税対象が分かれるということです。 この場合、申告納税義務も相続人Bのみに発生し、遺産分割協議や納税方法においても調整が必要です。 2-3 この章のまとめ シンガポールでの相続税の課税可否は「誰が・どこに・何を」受け取るかで決まってきます。 まずはご自身の状況を正確に把握しておきましょう。 判断軸 ポイント  対応策 被相続人の居住状況  出国10年超経過が必要  早期移住+生活の本拠地移転 相続人の居住状況 日本居住者は課税対象 海外移住や贈与・信託も検討 財産の所在 日本にあれば必ず課税  財産の組替え・海外移管を検討 第3章:他国と比較したシンガポール税制の魅力とは 3-1 相続税・贈与税が「完全にゼロ」の国、シンガポール シンガポールにおける最大の税制上の魅力は、相続税も贈与税も一切存在しないという点です。 もともとシンガポールには「遺産税(Estate Duty)」という制度がありましたが、2008年に完全廃止され、現在は死亡に伴う税金は一切課されていません。贈与についても同様で、生前贈与に対する課税制度もなく、富の移転そのものに課税されない構造が出来上がっています。 これは世界的にも非常に希少な制度設計であり、多くの富裕層や資産家、ファミリーオフィスが同国を資産保全の拠点とする大きな理由の一つとなっています。 3-2 所得税・法人税もフラットかつ低率 シンガポールの税制度のもう一つの特徴は、「フラットで低率な直接税制度」です。具体的には以下のような構成です。 税目 シンガポール  日本 相続税 なし 累進課税(最高55%) 贈与税 なし 累進課税(最高55%) 所得税(個人) 累進課税(最高24%) 累進課税(住民税と合わせて最高55%) 法人税  一律17%(軽減措置あり) 実効税率 約30% キャピタルゲイン課税 原則なし  上場株などにあり 特に注目すべきは、キャピタルゲインに課税されない点です。 日本では、株式などの譲渡に譲渡益課税がかかるため、資産運用を重ねるほど税負担が増しますが、シンガポールでは運用による増加分には原則課税されません。 3-3 他国と比較しても際立つ「課税ゼロの強さ」 以下は、日本・シンガポール・他の主要国における相続税制度の比較です。 国名 相続税  贈与税 特徴 日本 最大55% 最大55%  居住歴と国籍で課税が決まる シンガポール なし なし キャピタルゲイン課税も原則なし アメリカ 連邦税 最大40% +州税あり  基礎控除 年間18,000米ドル(2024年)  市民権・居住で課税対象 イギリス 原則40%  存命中の贈与も課税対象  原則7年以内の贈与は 相続税課税あり カナダ 相続税はなし だがみなし譲渡課税  なし 遺産全体にキャピタルゲイン課税 オーストラリア  なし (贈与含めCGTで代替)  なし 贈与時に譲渡益課税 このように、「相続・贈与・キャピタルゲインのすべてが非課税」という国は、世界的に見てもシンガポールと香港くらいであり、特にシンガポールは法制度・経済環境・インフラ整備・治安の安定性を兼ね備えている点で、極めて競争力の高い国といえます。   3-4 この章のまとめ シンガポールは、相続税回避だけではない「制度的合理性」の国といえます。 シンガポールの魅力は、単に「税金がかからない」という理由だけではありません。以下の点で、資産承継・事業継続・国際的な活動に適した基盤が整っています • 遺産税・贈与税ゼロで、承継コストが極小 • 税務・法務制度が整備されており、予測可能性が高い • 英語圏であり、国際的な法制度・教育環境に優れる • アジア中心にアクセスしやすく、日本からの距離も近い(時差は1時間) 第4章:シンガポール移住で相続税を節税するための4つの注意点 日本の相続税は世界的に見ても高水準であり、課税対象となる財産の範囲も広いため、富裕層を中心に「相続税対策としての海外移住」を検討するケースが増えています。 しかし、現行の相続税法および所得税法の制度設計上、単純に「住民票を抜いて海外に移住する」だけでは、日本の課税関係から逃れることはできません。形式的な移住や短期的な対策では不十分であり、制度を深く理解したうえで、長期的・実質的な戦略が求められます。 この章では、特に注意すべき以下の4つのポイントについて、制度的根拠と実務上のリスクを交えて解説します。 4-1 4つの注意点 ① 10年以内に亡くなると課税される(出国後10年超ルール) 被相続人が出国後10年超を経過していない場合、日本の居住者とみなされ、海外にある財産であっても日本の相続税の課税対象となります。 【重要ポイント】 • 「非居住者」となるには、「出国後10年超経過」が絶対条件 • 10年以下で死亡した場合、海外移住していても全世界財産が課税対象になる • 「一時帰国」などがあると10年カウントがリセットされるリスクもある 【対策】 • 早期に出国して10年をしっかり経過させること • 日本国内に帰属しうる経済的拠点(家族、住居、収入源)がないよう整理 • 出国からの年次報告・出入国記録の保存 ② 相続人が日本在住だと課税対象になる(相続人10年超ルール) 被相続人が出国後10年超を経過していても、相続人が日本に居住している場合、相続税の課税対象になります。 【よくある誤解】 「父は完全に海外永住していたから、日本の相続税は関係ないのでは?」 → 相続人が日本居住である限り、日本ではその人の取得財産に課税できます。つまり、相続人ベースでも「10年超非居住」が要件となります。 【実務での注意点】 • 相続人が複数いて、1人でも日本居住者がいると、その人の分には課税 • 相続人が将来的に帰国する可能性がある場合もリスク要因 • 生前贈与・信託・持株会社スキームなどの併用を検討 ③ 日本にある財産には必ず課税される(所在地課税) 「相続財産の所在地が日本にある場合、非居住者であっても課税される」 【該当する財産の例】 • 日本国内の不動産(マンション、土地、ビルなど) • 日本の金融機関にある預貯金 • 日本企業の株式(非上場・上場問わず) • 日本の生命保険会社の契約 【対策】 • 移住前に不動産や預金を海外移転または売却 • 海外信託やホールディングカンパニーによるスキーム構築(慎重な設計必要) • 生命保険等は受取人の居住地も含め要チェック ④ 出国時に「出国税」がかかる場合あり(国外転出時課税) 2015年に創設された「国外転出時課税制度」により、一定の条件を満たす場合、出国時点で保有する有価証券等の含み益に対して所得税が課税されます。 【対象者】 • 有価証券等(上場株・非上場株・投資信託・デリバティブなど)を1億円以上保有 • 過去10年のうち5年超日本に居住していた人 • 出国により日本の居住者でなくなる人 【課税内容】 • 含み益に対して所得税(税率15.315%) • 実際には売却していなくても、課税される • 納税猶予制度あり 【注意点】 • 出国税の対象になるかどうか、資産評価の事前確認が必要 • 納税猶予制度を利用する場合でも、毎年の届出義務や担保提供などが必要 • 無申告や届出漏れがあった場合、重加算税・延滞税などのリスク 4-2 節税だけでなく「否認リスク」にも注意 「住民票を海外に移しただけ」では非居住者と認められないので、注意しましょう。 税務上の「非居住者」として扱ってもらうには、単に住民票を移すだけでは不十分です。 生活の本拠(住居・職業・医療・日常生活)がどこにあるかが重視され、形式的な移住と判断されれば、全世界の財産が課税対象になります。 <主な客観的事実> 以下の実態に基づいて総合的に判断されます。 • 住居の状況: 居住用不動産の有無、その利用状況(賃貸しているか、自己が居住しているかなど)。 • 職業: 事業活動の中心地、勤務地。 • 生計を共にする親族の居所: 配偶者やその他の扶養親族がどこに住んでいるか。 • 資産の所在: 主要な金融資産や不動産がどこにあるか。 • 納税実績: どの国で所得税やその他の税金を申告・納税しているか。 • 移動履歴: 国内外への出入国の頻度や滞在期間。 第5章 国際相続・贈与の相談は「税理士法人マインライフ」へ 税金が国際間をまたぐものであるため手続きが複雑になるかもしれない・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 国際相続の経験が豊富な専門家が直接対応 少数精鋭体制で、経験豊富な税理士が必ず対応。 担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告・対策に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、相続に特有の実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 海外の専門家との連携体制が整っており、海外の財産や海外在住者の手続きに対応が可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる税計算だけではなく、納税資金対策や二次相続対策など、将来を見据えたオーダーメイドの提案が得意です。 ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第6章 まとめ シンガポール移住で相続税を回避したいと考えるあなた。 しかし、制度・費用・生活・法務リスクを総合的に判断した結果、「実行しないほうが良い」ということは十分にあり得ます。また、せっかく要件を満たしても継続することができないケースも散見されます。 やむを得ず帰国せざるを得ない場合にも、帰国前に海外財産の生前贈与を検討するなど専門家へ相談することで相続対策が可能であったケースもあります。 国際相続はルールや手続きが複雑かつ難解です。国際相続に精通した税理士・弁護士になどに相談し、慎重に判断することが非常に大切です。 シンガポールへの移住をお考えの場合は、まずは専門家に相談し、戦略を立てた上で移住を実現してください。        
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    国際相続サポート, 相続対策

    • 2026.01.25
    • 久保 佑介

    日本からアメリカへ生前贈与/ケース別でわかる税金・手続き

    「日本の相続対策として生前贈与を活用したいけど、子どもがアメリカに住んでいると難しいのかな」 「アメリカの税金のことはよくわからないし」 生前贈与を相続対策として検討している方からのご質問でした。 日本にいる子供だけでなく海外にいる子どもにも平等に生前贈与を行いたいとの要望でしたが、いままでに生前贈与を海外にいる子どもへ行ったことがないため、どうしたら良いのかと悩まれておりました。 ご安心ください。国際的な贈与は注意しなければならない点はもちろんありますが、計画的に準備を行うことで安心して生前贈与を行うことが可能です。 本記事では、アメリカに住んでいる方への贈与についてのポイント・贈与税・相続税の取り扱いを専門家の視点を踏まえ解説しております。 あなたの不安を解消しますので、ぜひ最後まで読んでください。 第1章 アメリカへの生前贈与の3つのポイント 「財産を渡す側(贈与者)=日本居住」「財産を受け取った側(受贈者)=アメリカ居住」の生前贈与の3つのポイント 日本居住者からのアメリカ居住者への生前贈与は以下3つのポイントに留意する必要があります。 ポイント①日本の贈与税 財産を渡す側(贈与者)が日本居住であれば、財産を受け取った側(受贈者)がアメリカ居住でも、原則として全世界の贈与財産に日本の贈与税が課税対象となります。 受贈者は基礎控除(年間110万円)を超える場合には日本での贈与税申告が必要です。 受贈者が日本非居住者(アメリカ居住者)なので納税管理人(※下記<専門家の視点①>)の選任も必要となります。 ポイント②アメリカの贈与税(連邦税) 財産を渡す側(贈与者)が「アメリカの非居住者・非市民」なので、アメリカ国内の不動産などを贈与したときはアメリカ贈与税の対象となります。 贈与者は年間基礎控除(受贈者1人当たり19,000米ドル(2025年))を超える場合にはアメリカでの申告が必要となります。 ただし、無形財産(預金・株式などの有価証券)は、アメリカ贈与税の対象となりません。 また、州によっては州税としての贈与税が存在します。 連邦税としての贈与税はかからなくても、州税としての贈与税はかかることもあります。州税については、現地の専門家と連携し確認を行う必要があります。 ポイント③アメリカの報告義務 アメリカ居住者である財産を受け取った側(受贈者)は、外国人からの贈与の合計が年間10万米ドルを超えるとForm 3520の報告が必要となります。 ただし、授業料・医療費の学校・医療機関への直接支払は除外となります。 アメリカの手続き(贈与税申告・Form 3520の報告) 贈与額(USD) 贈与税申告 Form 3520の報告 $19,000未満 不要 不要 $19,000〜$100,000 要 不要 $100,000超 要 要 ※贈与税申告が必要な場合においてもアメリカ贈与税は一般的には生じません。(後述:第2章 具体例②)   <専門家の視点👉> ①日本の納税管理人の選任・届出 海外に住む子どもなどが贈与を受ける場合、日本国内に納税管理人を選任し、税務署に「納税管理人届出書」を提出する必要があります。 提出先:海外在住者が贈与税の申告をする場合は、住所を管轄する税務署がありません。 自分で日本国内のどこかの税務署を定めてそこに届出することになります。 実際には、納税管理人の住所に合わせることが多いです。 納税管理人:誰でもなれる。日本に住む親族、信頼できる知人、または税理士が選任されるケースが多い。 役割:納税管理人は、申告書の提出や税金の納付など受贈者に代わって税務署とやり取りする法的な窓口となります。 ②アメリカ贈与税の課税の対象となる財産(財産の種類で異なる) 贈与者がアメリカ非居住外国人(アメリカ市民ではなくアメリカに住んでいない人)である場合、そもそもアメリカ贈与税の対象はアメリカ国内の財産のうち無形財産以外に限られます。 無形財産:預金、株式・債券等の有価証券など 無形財産以外:不動産、現金など したがって、日本からアメリカへの生前贈与の多くのケースである預金の贈与ではアメリカの贈与税は課税されないこととなります。 ③アメリカの報告義務(Form 3520) アメリカに住む子どもなどが日本から贈与を受けた場合、「Form 3520」をIRS(日本の国税庁に相当する機関)に提出しなければなりません。 提出基準:年間10万米ドルを超えるアメリカ非居住外国人からの贈与を受けた場合に義務発生。 提出期限:翌年4月15日(延長申請をしていれば延長後の期限まで) 罰則:未提出の場合、贈与額の最大25%に相当するペナルティが課されることがあります。 したがって、日本側で贈与税をきちんと申告・アメリカでの贈与税がかからない場合でも、報告を怠れば重大なリスクを抱えることになります。   <財産の種類別「日本×アメリカ」早見表> (前提:贈与者=日本居住(アメリカ非居住外国人)、受贈者=アメリカ居住) 贈与する財産の種類・所在地によって両国の税金・手続きが以下の通り変わることになります。 贈与財産 ①日本の贈与税 (受贈者) ②アメリカの贈与税 (贈与者) ③Form 3520 (受贈者) 日本の不動産 課税対象(国内財産) 対象外 $100,000超なら提出 アメリカの不動産 課税対象(国外財産) 対象(アメリカ内不動産) →申告が必要 $100,000超なら提出 預金の送金 (日本口座) 課税対象(国内財産) 対象外 $100,000超なら提出 預金の送金 (アメリカ口座) 課税対象(国外財産) 対象外(無形資産) $100,000超なら提出 現金 (アメリカで手渡し) 課税対象(国外財産) 対象(アメリカ内で手渡し) →申告が必要 $100,000超なら提出 授業料・医療費 (学校・病院へ直接支払) 生活費・教育費の“通常必要”なら日本も原則非課税 対象外 Form 3520不要   第2章 アメリカへの生前贈与のよくある具体例(贈与税について) 「財産を渡す側(贈与者)=日本居住」「財産を受け取った側(受贈者)=アメリカ居住」の生前贈与の具体例 ここでは、日本居住者からのアメリカ居住者への生前贈与をよくある具体例を基に各国の「贈与税」を確認していきます。 具体例①:預金の海外送金「110万円」 ①日本の贈与税:申告不要 / ②アメリカの贈与税:なし / ③Form 3520:不要 ① 日本の贈与税 贈与者が日本居住のため、原則、全世界の贈与財産が課税対象となります。 贈与税:110万円 − 基礎控除110万円 = 0円(申告不要) ※年間の贈与額が110万円を超えない年は申告不要。 ② アメリカの贈与税 贈与者はアメリカ非居住外国人(アメリカ非居住・非市民)で、贈与した預金は無形財産。 アメリカ贈与税の対象はアメリカ国内の不動産などの無形財産以外に限られるため課税されません。 ③ Form 3520 アメリカ非居住外国人からの贈与が年間100,000米ドル超で提出義務が発生します。 110万円は100,000米ドル以下であるため不要。   具体例②:預金の海外送金「1,500万円」(100,000米ドル超(145円/1米ドル)) ①日本の贈与税:(受贈者)申告・納税必要 / ②アメリカの贈与税:なし / ③Form 3520:(受贈者)必要  ① 日本の贈与税 贈与者が日本居住のため、原則、全世界の贈与財産が課税対象となります。 贈与税額:366万円 ※税額:1,390万(1,500万円−基礎控除110万円)× 40% − 190万 = 366万円 (注)続柄や他の贈与の有無で税率は変わる場合があります。 申告・納付:受贈者は翌年3/15までに日本で申告・納付する必要があります。 受贈者は日本の非居住者のため、納税管理人の届出書をあわせて提出。 <専門家の視点👉> 生前贈与を一括で行わない相続対策の検討(贈与税率の観点) 例えば半額の750万円の贈与の場合には贈与税額は102万円となります。日本の贈与税率は累進課税(一回の贈与額が大きいほどに税負担が大きい)のため検討の余地があります。 ② アメリカの贈与税 贈与者はアメリカ非居住外国人(アメリカ非居住・非市民)で、贈与した預金は無形財産。 アメリカ贈与税の対象はアメリカ国内の不動産などの無形財産以外に限られるため課税されません。 <専門家の視点👉> もしアメリカ内不動産などのアメリカ国内財産の贈与であれば、年間基礎控除(19,000米ドル(2025年))を超えるため、アメリカ贈与申告が必要になります。 なお、日本人贈与者には「統一移転税額控除(日本人は特例的に適用あり)」という約20億円の大きな控除(一定の調整計算が必要です)が認められるため贈与税はめったにかかりません。 ③ Form 3520 アメリカ非居住外国人からの贈与が年間100,000米ドル超で提出義務が発生します。 100,000米ドルを超えるため提出が必要となります。 <専門家の視点👉> 不提出は贈与額の最大25%に相当するペナルティが課されることがあります。 アメリカ贈与税がかからない場合は特に手続きが漏れるケースが散見されますので確実に提出するようにしましょう。   第3章 アメリカへの生前贈与のよくある具体例(相続税について) 「財産を渡す側(贈与者)=日本居住」「財産を受け取った側(受贈者)=アメリカ居住」の生前贈与の具体例 第2章で確認した生前贈与のその後を各国の「相続税(アメリカ遺産税)」で確認していきます。 日本・アメリカの両国ともに生前贈与された財産は、のちに贈与者に相続があった場合には相続財産に加算して相続税(アメリカ遺産税)を計算することになります。 日本では、原則死亡前7年以内の贈与が相続税に加算され、既に納めた贈与税は相続税から控除します。 アメリカでは、生前の課税贈与(1977年以降)を原則すべて遺産税の計算基礎に合算し、既に納めた贈与税は遺産税から控除します。 具体例①:預金の海外送金「110万円」 ①日本の相続税 死亡が贈与後7年以内の場合には生前贈与の110万円を相続時の亡くなった人(被相続人)の遺産に加算して(贈与はなかったものとみなして)相続税を計算します。 死亡が贈与後7年超の場合には生前贈与の110万円を遺産に加算する必要はありません。 ②アメリカの遺産税 贈与財産(預金)は無形財産で、生前贈与時点ではアメリカ贈与税の課税対象外です。 したがって相続時にアメリカ側の生前贈与分の持ち戻しは通常生じません。 <専門家の視点👉> 日本の相続税は贈与から7年経過しているか否かにより贈与財産を遺産に加算するかどうか取り扱いが異なります。 言い換えると生前贈与の相続対策は、贈与時から7年経過して初めて効果を発揮します。 よって将来を見据えて早めに相続対策を行う必要があります。   具体例②:預金の海外送金「1,500万円」 ①日本の相続税 具体例①と同様に贈与時から7年を経過しているかにより相続税の計算が異なります。 贈与後7年以内の場合には、すでに納付した贈与税(366万円)を相続税の一部に充てることができます。 ②アメリカの遺産税 具体例①と同様に相続時にアメリカ側の生前贈与分の持ち戻しは通常生じません。   実際には、皆さまが検討している生前贈与の金額に応じて日本・アメリカの税額・手続きを検討していくことになります。日本・アメリカ両国とも生前贈与の金額によって、とるべき手続き・税額も異なってくることに留意する必要がございます。特に生前贈与の金額が多額になるケースについては専門家へ相談する必要出てくるでしょう。   第4章 国際相続・贈与の相談は「税理士法人マインライフ」へ 贈与が国際間をまたぐものであるため手続きが複雑になるかもしれない・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。   マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 国際相続の経験が豊富な専門家が直接対応 少数精鋭体制で、経験豊富な税理士が必ず対応。 担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告・対策に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、相続に特有の実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 海外の専門家との連携体制が整っており、海外の財産や海外在住者の手続きに対応が可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる税計算だけではなく、納税資金対策や二次相続対策など、将来を見据えたオーダーメイドの提案が得意です。 「生前贈与を行いたいけれど子どもがアメリカに住んでいるからどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第5章 まとめ いかがだったでしょうか。 相続対策としてアメリカに住んでいる子どもへの生前贈与の活用を検討中のあなたも留意点や具体的な税金のイメージが湧いたのではないでしょうか。 アメリカ居住者への贈与についての3つのポイント「①日本の贈与税」「②アメリカの贈与税(連邦税)」「③アメリカの報告義務」を解説しました。 また、具体例に基づき「贈与税・相続税」の税額を解説しました。 実務的には、当然ですが皆さまが検討している生前贈与の金額に応じて日本・アメリカの税額・手続きを検討していくことになります。 そこで大切になるのは日本とアメリカ双方の制度に精通した税理士や現地専門家です。 手続きの漏れや課税リスクを回避するためにも専門家への相談が最善の方法になります。
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    相続対策

    • 2025.12.16
    • 久保 佑介

    税理士が解説/父が亡くなった後は誰が実家を相続したらいい?【相続税早見表つき】

    父親が亡くなった時、実家の自宅は母親と子どものどちらが相続した方が良いのでしょうか? 「母が住み続ける実家を、誰が相続するのが最も安全で税務的にも有利か」という論点は、とても相談が多いご質問です。 実際には個々の事情があるためケースバイケースとなることがほとんどです。 相続税に特化した税理士だからこそ税金はもちろん税金以外も含めてそれぞれの良い点・注意点を解説していきます。 あなたの実家は誰が引き継ぐのが最善なのか。ぜひ最後まで読んでください。きっと解決策が見つかるはずです。 第1章 父親が亡くなった後は誰が実家を取得すべきか【具体例(相続税)】 基本的には母親・同居の子どもが税金面を考慮すると実家を引き継ぐのが最善でしょう。 母親・同居の子どもが実家を取得した場合には「小規模宅地等の特例」が適用できるためです。 「小規模宅地等の特例」は実家である自宅の土地の価額の80%を相続税の課税対象となる遺産総額より減額することができます。 詳細は本章の後半<税理士の解説👉>にて解説します。 「相続税早見表」の使い方 本章では「4人家族」の実家の相続税を「相続税早見表」を使用しながら考えていきます。 まずは「相続税早見表」の使い方をマスターして具体例の「4人家族」の実家の相続税を見ていきましょう。 相続税早見表とは「遺産総額」と「配偶者の有無及び子供の人数」により相続税の納税額の目安を確認できるものです。 また、相続税早見表のうち「左の表」は配偶者がいる場合の相続税を表しています。 配偶者がいる場合には、1億6,000万円(又は法定相続分のうち多い金額)まで配偶者へ相続税がかからない「配偶者の税額軽減」の適用があります。「右の表(配偶者がいない場合)」と見比べて相続税の金額が大きく異なるのはこの特例の影響です。 詳細は本章の後半<税理士の解説👉>にて解説します。 (使い方) 1. 遺産総額とは、被相続人(亡くなった方)の財産から借金や葬式費用などを差し引いた金額で、相続税の課税対象となる基礎です。預金や不動産、生命保険などが含まれます。 2. 被相続人の 「遺産総額」 に最も近いものをご確認ください (注) 「小規模宅地等の特例」「生命保険金の非課税」 など遺産総額より控除することのできるものがあります。これらを考慮することにより正確な相続税を確認することができます。 <例>「遺産総額1億円」で「配偶者あり及び子供2人」のケース    以下の相続税早見表より相続税は315万円と確認できます。 →最新の「相続税早見表(特典)」をダウンロード 【具体例】遺産総額1億円のケースの取得者ごとの相続税 遺産総額1億円の場合に実家の自宅を取得するのが「母親」の場合と「子ども(別居)」の場合に分けてそれぞれ相続税がいくらかかるのか見ていきましょう。 【具体例】 (親族図) (財産構成:遺産の総額:1億円) ①実家の家屋:500万円 ②実家の土地:5,000万円                  ③預貯金:4,500万円 (注)相続税は法定相続分(母:1/2、長男:1/4、二男:1/4)で遺産分割しているものとしております。    遺産分割の方法は相続人全員の同意により自由に取り決めることが可能です。 遺産分割の方法については第3章(Q1~4)をご覧ください。 【具体例】「母親又は長男(同居)が実家の自宅を取得した場合」 ・相続税 60万円 ・遺産総額 6,000万円(1億円▲4,000万円) (※1)小規模宅地等の特例について▲4,000万円(5,000万円×80%)適用可能 (※2)配偶者の税額軽減について適用可能 【具体例】「二男(別居)が実家の自宅を取得した場合」 ・相続税 315万円 ・遺産総額 1億円 (※1)小規模宅地等の特例については適用不可 (※2)配偶者の税額軽減について適用可能 【具体例】「取得者ごとの相続税の比較」 取得者の違いにより相続税に255万円(315万円▲60万円)の差が生じます。 実家の自宅を「母親又は長男(同居)」が取得する場合には、土地について小規模宅地等の特例の適用が可能です。土地の価額の80%を減額することができるため▲4,000万円を財産額より控除できます。 一方で「二男(別居)」が取得する場合には、土地について小規模宅地等の特例の適用はできません。 相続税負担を考えると実家の自宅を取得するのは「母親又は長男(同居)」が良いでしょう。 <税理士の解説👉> 「2大特例」を解説します。具体例のように相続税は「特例の適用可否で大きく差が出ます」 実家の相続を考える上で特に影響の大きい2つの特例をご紹介します。 ①小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等) 小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)は、亡くなった方の自宅の敷地など一定の土地について、土地評価を最大80%減額できる制度です。 <主な要件> ・取得者が以下の①又は②の要件を満たすこと ①「配偶者」であること ②「配偶者以外の親族」の場合   被相続人と同居していること   申告期限までその土地を保有し、引き続きその建物に居住していること ・限度面積は330㎡まで(超えた場合には超えた部分については適用なし) ※その他一定の場合の一定の別居親族などにも認められます。  父親が亡くなった際に子どもが上記特例を受けようとする場合のポイントは「同居」しているかどうかです。既に独立して別居しているような子どもについては配偶者(母親)がいる場合には適用する余地が一切ありません。 つまり「母親」または「同居の子ども」が自宅を取得することが良いでしょう。 ②配偶者の税額軽減 配偶者の税額軽減は、被相続人の配偶者が取得した財産について、次のいずれか多い金額までの相続税が課されない制度です。  A:配偶者の法定相続分相当額(相続人が配偶者と子の場合は1 / 2 )  B:1億6,000万円 配偶者である母親は、父親が亡くなった際に上記特例により多くのケースで相続税は「0円」となります。 第2章 父親が亡くなって母親が自宅を取得しない方が良いケースもある【失敗例(相続税)】 第1章とは異なり母親が自宅を取得することで相続税がかえって増えてしまうケースがあります。 本章では失敗例を具体例に基づき解説します。 2-1【失敗例①】母親がある程度財産を持っている場合 母親がある程度財産を持っている場合には、1次相続(父親の相続)だけでなく2次相続(母親の相続)も踏まえて取得者を考慮するのが良いです。 実家の自宅を取得するのが「母親」の場合と「子ども」の場合に分けて1次相続・2次相続トータルでそれぞれ相続税がいくらかかるのか見ていきましょう。  【失敗例①】 (親族図) (「父」財産構成:遺産の総額:1億円)(「母」財産構成:遺産の総額:1億円) ①実家の家屋:500万円         ①預貯金:5,000万円 ②実家の土地:5,000万円        ②有価証券:5,000万円  ③預貯金:4,500万円 (注)相続税は法定相続分(1次相続 母:1/2、長男:1/4、二男:1/4)(2次相続 長男:1/2、二男:1/2)で遺産分割しているものとしております。   遺産分割の方法は相続人全員の同意により自由に取り決めることが可能です。      遺産分割の方法については第3章(Q1~4)をご覧ください。 【失敗例①】「母親が実家の自宅を取得した場合」 (「父」遺産の取得内容) 母:①実家の家屋:500万円   ②実家の土地:1,000万円(5,000万円▲4,000万円)   ③預貯金:1,500万円    計:3,000万円 長男・二男:預貯金:各1,500万円(3,000万円の1/2) ・(父:1次相続)相続税 60万円 ・遺産総額 6,000万円(1億円▲4,000万円) (※1)小規模宅地等の特例について▲4,000万円適用可能 (※2)配偶者の税額軽減について適用可能 (「母」遺産の取得内容) 長男・二男:①実家の家屋:500万円       ②実家の土地:5,000万円       ③預貯金:6,500万円(1,500万円+5,000万円)       ④有価証券:5,000万円        計:各8,500万円(1億7,000万円の1/2) ・(母:2次相続)相続税 2,440万円 ・遺産総額 1億7,000万円(1億円+7,000万円[父からの相続分]) (※3)小規模宅地等の特例については適用できないものとします。(適用できる場合の詳細は下記<税理士の視点👉>の参考をご覧ください。) ・トータル相続税 2,500万円(60万円+2,440万円) <税理士の視点👉> 上記(母:2次相続)で小規模宅地等の特例が適用できる場合【参考】 「将来同居を予定している」 母親が父親の相続後も自宅に住み続ければ、1次相続(父親の相続時)に同居していない子どもが1次相続後に母親と同居することで特例の適用ができるケースがあります。 「家なき子(別居親族)」 別居している子どもであっても、母親以外に自宅に住んでいる親族がいない・自己所有(子ども所有)の家に住んでいないなど一定の要件を満たす場合には特例の適用ができるケースがあります。 【参考:2次相続で小規模宅地の特例が適用できるものとした場合】 ・(母:2次相続)相続税 1,360万円 ・遺産総額 1億3,000万円(1億円+3,000万円[父からの相続分]) (※4)小規模宅地等の特例について▲4,000万円適用可能 ・トータル相続税 1,420万円(60万円+1,360万円) 【失敗例①】「子どもが実家の自宅を取得した場合」 ・(父:1次相続)315万円 ・遺産総額 1億円 (※1)小規模宅地等の特例については適用不可 (※2)配偶者の税額軽減について適用可能 ・(母:2次相続)相続税 1,840万円 ・遺産総額 1億5,000万円(1億円+5,000万円[父からの相続分]) ・トータル相続税 2,155万円(315万円+1,840万円) 【失敗例①】「取得者ごとの相続税の比較」 取得者の違いにより相続税に345万円(2,500万円▲2,155万円)の差が生じます。 結果的に子どもが実家の自宅を取得した場合には2次相続で母親から相続する遺産総額が少なくなるため、事例のケースでは実家を1次相続で子どもに相続させる方が結果的に相続税負担が少なく済むことになります。 <税理士の視点👉失敗例①まとめ> 失敗例①のケースでは「子どもが実家の自宅を取得する」だけでなく父親の遺産を母親は一切取得せず、全ての遺産を子どもが取得することで相続税負担が大きく軽減されます。 母親が父親の遺産を取得するとその取得した分が2次相続で再度相続税の対象となってしまうからです。2次相続において小規模宅地等の特例など相続税を減額できるケースはまだしも減額できないケースは特に2次相続の負担が重くなります。 父親の遺産を母親が一切取得しないケースを見ていきましょう。 「子どもが実家の自宅を含めて遺産を全て取得した場合(母親は一切取得しない)」 ・(父:1次相続)相続税 630万円 ・遺産総額 1億円 (※1)小規模宅地等の特例については適用不可 (※2)配偶者の税額軽減についても適用不可 ・(母:2次相続)相続税 770万円 ・遺産総額 1億円 ・トータル相続税 1,400万円(630万円+770万円) 父親の遺産を母親は一切取得しないことで相続税負担が大きく軽減します。 (まとめ) 配偶者の税額軽減は、1億6,000万円(又は法定相続分のうち多い金額)まで配偶者の相続税がかからないことになるため有効に活用すべきですが、1次相続(父親の相続)だけでなく2次相続(母親の相続)も踏まえて特例を活用することが重要です。 失敗例①のケースでは小規模宅地等の特例を考慮しなくても、母親が財産を一切取得しないことで、1次・2次相続全体の相続税を大きく軽減させる結果となりました。 2-2【失敗例②】母親が自宅を取得すると相続税の基礎控除を超えてしまう場合 父親及び母親の遺産総額がいずれも基礎控除額(注)以下の場合に母親が自宅を取得することで母親の相続時に相続税が発生してしまうケースがあります。 実家の自宅を取得するのが「母親」の場合と「子ども」の場合に分けて相続税の発生の有無を確認していきます。 (注)基礎控除額:相続税では、すべての人に共通して使える「非課税ライン」である基礎控除があります。 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 【失敗例②】 (親族図) (「父」財産構成:遺産の総額:4,000万円)     ①実家の家屋:1,000万円               ②実家の土地:3,000万円      基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円   (「母」財産構成:遺産の総額:4,000万円) ①預貯金:4,000万円 基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円 【失敗例②】「母親が実家の自宅を取得した場合」 ・(父:1次相続)相続税 0円 ・遺産総額 1,600万円(4,000万円▲2,400万円) (※1)小規模宅地等の特例について▲2,400万円適用可能 ・(母:2次相続)相続税 470万円 ・遺産総額 8,000万円(4,000万円+4,000万円[父から相続した家屋・土地]) (※2)小規模宅地等の特例については適用できません。 ・トータル相続税 470万円(0円+470万円) 【失敗例②】「子どもが実家の自宅を取得した場合」 ・(父:1次相続)相続税 0円 ・遺産総額 4,000万円 (※1)小規模宅地等の特例については適用できません。 ・(母:2次相続)相続税 0円 ・遺産総額 4,000万円 ・トータル相続税 0円 【失敗例②】「取得者ごとの相続税の比較」 取得者の違いにより相続税に470万円の差が生じます。 そもそも遺産額が基礎控除額以下の場合、母親が自宅を取得すると2次相続で相続税が発生してしまうことがあります。1次相続で子どもに相続させることで相続税の発生を防ぐことができます。 第3章 自宅を「母親・子ども」が相続する方法・注意点【Q&A】 ここまでの具体例・失敗例でご紹介した相続税の負担以外の部分を確認します。 そもそも自宅を「母親」「子ども」が単独で取得するのが難しい場合の遺産分割の方法や自宅を売却した場合の特例、その他認知症リスクへの対策など実務で特に重要となる論点にしぼり、一問一答形式でご紹介します。 【Q&A】 Q1:遺産分割の割合は法定相続分じゃないとダメでしょうか? A1: 遺産分割の方法は相続人全員の同意により自由に取り決めることが可能です。   相続人が母・子2人の場合に法定相続分(母:1/2、子:各1/4)で必ず分割しなければならないわけではありません。 Q2:遺産はほぼ実家である自宅のみです。公平に分割するために共有名義(1/3ずつなど)にするのはどうでしょうか? A2: 公平に分割できないから「とりあえず共有名義にしよう」と安易に決めてしまうのは危険です。将来、重大な問題が生じることがあります。 <事例>自宅を兄弟3人が共有したとします。 その後、兄弟の誰かが亡くなると、持分はその人の配偶者や子へ承継され、共有者がどんどん増えていきます。 → 5人 → 10人 → 20人と増えるケースも実際に起こっています。 不動産の共有は「将来の争いの火種」であり、専門家としてはおすすめしません。 ただし、近日中に売却する予定がある場合には「共有取得」や「(注)換価分割」による遺産分割を検討することも良いでしょう。 (注)換価分割(かんかぶんかつ) 不動産を売却し、現金で平等に分ける方法です。(共有取得とは異なり遺産分割協議時点で売却することが確定している場合にとれる方法です。) 将来のトラブルを避けるために「いっそのこと売却して現金で分けたい」という家庭に向いています。 (注意点)売却まで時間がかかる場合もあります。 Q3:遺産はほぼ実家である自宅のみです。自宅を取得する人とそれ以外の人で公平に遺産分割はできませんか? A3: (注)代償分割による遺産分割の方法があります。 (注)代償分割(だいしょうぶんかつ) 不動産を相続した人が、他の相続人に「代償金」を渡す方法です。 実務上、よく使われる方法です。 例:母親が実家を取得 → 代わりに他の相続人に母親保有の預貯金を支払い、バランスを取る。 (注意点)母親に資金力が必要です。 Q4:代償分割により母親が自宅を取得したいのですが、支払う資金が足りません。自宅を売却するしかありませんか? A4: 配偶者居住権を設定することで代償分割以外の方法かつ自宅を売却せずに公平な分割を図ることが可能です。 配偶者居住権とは、自宅に住む配偶者に「住む権利(居住権)」を、「それ以外の権利(所有権)」はその他の相続人が取得するという制度です。 自宅に住む母は自宅の所有権を相続しなくても、居住権だけを相続して引き続き住むことができます。 母は配偶者居住権のみを相続し、他の相続人がそれ以外の権利を相続することができるため代償金を支払わず公平な分割を図ることが可能になります。 <税理士の視点👉> (注意点1)配偶者居住権は単独売却できない 例えば配偶者居住権の設定後にバリアフリーのマンションに移りたい、施設に入るために自宅を売却したい際にも配偶者居住権は単独で売却できません。 この場合にとれる方法は配偶者が生前に配偶者居住権を放棄・合意解除することが考えられますが、贈与税又は所得税が課税されます。 (注意点2)配偶者居住権にも小規模宅地等の特例がある 配偶者居住権・それ以外の権利のいずれも小規模宅地等の特例の適用は可能です。 ただし、母親以外の取得者である子どもは同居要件を満たす必要があります。 よって、小規模宅地等の特例を受けられない子どもがそれ以外の権利を取得する場合には配偶者居住権の設定により相続税がいくらになるのか検討する必要があります。 Q5:売却時に使える可能性がある制度は?(Ⓐ同居の場合) A5:自宅に住んでいる相続人が売却した場合はⒶマイホームの3,000万円特別控除(居住用財産の譲渡所得控除)が使えます。 事例:母親が自宅を相続して売却 母親は実家(戸建)に居住中。通院が増え「駅近マンションへ住替え」を検討。 売却益は3,000万円(売却価額▲取得価額) 売却益から3,000万円を控除し、譲渡所得税は0円となる Q6:売却時に使える可能性がある制度は?(Ⓑ別居の場合) A6:自宅に住んでいない相続人が売却した場合はⒷ空き家の3,000万円特別控除(空き家の譲渡所得特別控除)が使えます。 ※相続した実家が空き家の場合に、要件を満たせば利用できる。 事例:子どもが自宅を取得して、空き家のまま売却を検討 母親は数年前に施設へ入居し、父親は生前に実家で一人暮らしで実家が空き家のまま。 相続後3年以内に売却。 <主な要件> ① 建物:昭和56年5月31日以前に建てられた一戸建て。区分所有建物(マンション)ではない ② いずれかを満たすこと:「耐震基準を満たす建物として売る」「耐震リフォームしてから売る」「建物を解体して更地として売る」 ③ 期限:相続開始から 3年を経過する日の属する年の12月31日まで に売却する ④ 売却代金:1億円以下 Q7:売却時に使える可能性がある制度は? (Ⓒその他) A7:Q5、6以外にもⒸ取得費加算の特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)が使えます。 上記特例は支払った相続税の一部を「取得費」に上乗せできる制度です。 取得費が増えると、売却益(譲渡所得)が少なくなり、結果として所得税・住民税が圧縮されます。 <主な要件> ①支払った相続税がある ②期限:相続開始から3年10か月以内に売却する  ※不動産以外の有価証券などにも適用があります。 <税理士の視点👉> 取得費加算の特例の併用可否について 「Ⓐマイホームの3,000万円特別控除」と「Ⓒ取得費加算の特例」の併用  →併用できます。 「Ⓑ空き家の3,000万円特別控除」と「Ⓒ取得費加算の特例」の併用  →同一の物件に対して併用はできません。 Q8:母親が認知症になった場合のリスクは? A8:「家が動かせない」売却・賃貸・修繕などの法律行為が母親ではできなくなるリスクがあります。 <税理士の視点👉> 認知症になると「法律行為」がほぼできなくなる 認知症などで判断能力が低下すると、売買契約・賃貸契約(貸す・借りる)・リフォーム契約・大規模修繕の同意などの「意思表示が必要な行為」ができなくなります。 <よくある困りごと> 老朽化が進んで建替えたいのに、母の判断能力が低下して同意が取れない 住み替えのために売却したいのに、契約ができず足止め 修繕が必要なのに、所有者としての意思表示ができない 子どもが代わりに手続きしたくても「代理権」がなくてできない こうした状況になると、不動産の運用や管理が完全にストップしてしまいます。 対処するには「成年後見制度」を利用する 母親の判断能力が失われた場合、家族が代理で契約を進めるには家庭裁判所で「成年後見人」を選任してもらう必要があります。 しかし、成年後見制度は次のようなデメリットもあります。 <成年後見制度のデメリット> 裁判所への申立てが必要で手続きが煩雑 専門職後見人(司法書士・弁護士)が就任すると、毎月の報酬が発生 財産の管理はすべて後見人の判断になり、家族が簡単に自由に動かせない 不動産の売却などは裁判所の許可が必要になり、スピード感がない つまり、実務的にはとても負担の大きい制度です。 (対策)認知症への備えとして「家族信託(民事信託)」という選択肢もある リスクを避けるため、母親が元気なうちに「家族信託(民事信託)」を設定することも、近年多く採用されています。 家族信託の仕組みはシンプルに言うと次のとおりです。 (1)母=「委託者(財産を預ける人)」 (2)子=「受託者(財産を管理する人)」 (3)母=「受益者(利益を受ける人)」 この関係を信託契約で結び、母の自宅の管理権限を「子」に移す形になります。 <家族信託を使うメリット> 母が判断能力を失っても、委託された子が不動産を売却・賃貸など可能 成年後見制度より柔軟で、家族で運用しやすい 裁判所の管理下には置かれないため、運用の自由度が高い 相続発生後の財産承継(誰に渡すか)まで設計できる ただし、家族信託は判断能力があるうちに、将来の財産管理を子が代わりにできるようにしておく点がポイントです。また「設計が複雑」なため、専門家のサポートが必要です。 Q9:自宅を取得した子どもが先に亡くなった場合のリスクは? A9:自宅の所有権を有する子どもが亡くなった場合、その所有権は子の配偶者・子の子(母親にとって孫)へ移ります。 そうすると、法的には母親の同意を得なくても、子の配偶者・子の子は自宅不動産を売却できてしまうことになり得ます。もちろん、母に使用貸借又は賃貸借により居住する権限が認められる可能性もあり、その場合買い手がつきにくくなりますが、いずれにしろ母の住む権利を明確にしていないと、生活基盤が不安定になります。元の家族の関係によってはトラブルに発展するリスクがあります。 (対策)配偶者居住権、遺言や家族信託で事前に設計しておく 第4章 まとめ いかがだったでしょうか。 第1章では、父親が亡くなった後は誰が自宅を取得すべきかについて「母親」または「同居の子ども」が自宅を取得することが良いことを相続税負担の観点より解説しました。 第2章では、母親が自宅を取得しない方が良いケースを失敗例にて解説しました。 「母親がある程度財産を持っている場合」や「(母親が自宅を取得することで)相続税の基礎控除を超えてしまう場合」には相続税がかえって増えてしまうことがあることを確認しました。 第3章では、自宅を「母親・子ども」が相続する方法・注意点を解説しました。 そもそも自宅を「母親」「子ども」が単独で取得するのが難しい場合の遺産分割の方法や自宅を売却した場合の特例を紹介しました。 「母親と子ども」のどちらが自宅を取得すべきか検討する上で一番最初にすべきことは「現状把握」です。 あなたの家族の現状で1次相続・2次相続の相続税がいくらかかるのか本コラム特典の「相続税早見表」を利用してまず確認してみてください。 税金以外の家族の事情も大切です。ただし税金面を事前にクリアにしておくことで大切な部分に目を向けることができるのではないでしょうか。 相続時に急に困ることのないように今日から相続対策を考えてみてくださいね    
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    相続対策

    • 2025.11.21
    • 伊藤 千尋

    税理士が教える!贈与税がかからない合法テクニック8選【贈与契約書及びチェックリスト付き】

    「どうせ渡す(受け取る)なら、合法に・シンプルに・ムダなく。」 今年から贈与を始める方も毎年贈与を行っている方もそう考えているかもしれません。 本記事は、「贈与税がかからない(または申告不要になる)制度・特例」を、プロの視点で使い方やNG例、証憑の残し方まで一気に整理しました。 以下に8つのテクニックの一覧表を添付します。 テクニック 対象となる贈与(援助) 手続き 金額の上限 チェックリスト ①生活・教育・医療・冠婚葬祭の 「都度払い」 扶養義務者から被扶養者への援助 なし 社会通念上適当と認められる金額 □ 扶養義務者からの援助ですか。 □ 必要な都度渡している又は扶養義務者が直接振り込んでいますか。 □ 使ったことが分かる証拠(領収書や振り込んだことが分かる通帳)を残していますか。 □ 生活費を負担する場合には社会通念上適当と認められる内容・金額ですか。 □ 香典・祝金は社会通念上相当な金額ですか。 ②暦年課税の年間110万円の基礎控除 通常の贈与(制限なし) 110万円を超えると贈与税申告が必要 暦年で110万円(申告不要の場合) □ (申告をしない場合)その年の受け取った金額の合計が110万円以下ですか。 □ 受贈者(受け取った人)単位で判定をしていますか。 □ 贈与契約書を作成しましたか。 □ 受贈者が受取った財産を管理していますか。 ③相続時精算課税制度を利用する 60歳以上の父母(祖父母)から 18歳以上の子(孫)への贈与 「相続時精算課税選択届出書」を 初回適用時に税務署へ提出 累計2,500万円 (毎年110万円の基礎控除あり) □ 初回適用時に選択届出を期限内に提出しましたか。 □ (申告をしない場合) その年に特定贈与者から受け取った金額の合計が110万円以下ですか。 □ 複数特定贈与者の年は110万円を按分して計算していますか。 ④夫婦間の「居住用不動産の配偶者控除」 婚姻20年以上の夫婦間の 居住用不動産又はその取得資金の贈与 適用時に贈与税申告が必要 2,000万円 (暦年贈与の基礎控除と併用で2,110万円) □ 婚姻20年以上の夫婦間の贈与ですか。 □ 贈与する不動産又は不動産の取得資金の対象は居住用ですか。 □ 翌年3月15日に贈与を受けた者が現実に居住をしていますか。 □ 過去に同じ配偶者から「居住用不動産の配偶者控除」を受けたことはありませんか。 □ 一定の添付書類(戸籍謄本等)を添付して贈与税申告書を提出しましたか。 ⑤住宅取得等資金の贈与非課税 直系尊属(父母・祖父母など)からマイホーム取得・新築・増改築の 対価に充てるための資金(住宅取得等資金)の贈与 (受贈者:18歳以上、贈与年の合計所得金額が2,000万円以下) 適用時に贈与税申告が必要 省エネ等住宅=1,000万円 その他の住宅=500万円 □ 特例の適用期間内(〜2026年12月31日)の贈与ですか。 □ 省エネ等1,000万円の枠を使う場合には証明書類を添付していますか。 □ 贈与を受けたお金は全て住宅の取得資金に充当しましたか。 □ 翌年3月15日までに申告・入居の期限を守っていますか。 ⑥教育資金の一括贈与 直系尊属(父母・祖父母など)から子や孫への教育資金の贈与 (受贈者:30歳未満、前年の合計所得金額が1,000万円以下) 金融機関での専用手続が必要 累計1,500万円 (「学校等以外」への費用は累計500万円) □ 現行制度の期限内(~2026年3月31日)に教育資金口座の開設等と非課税申告書の提出を行いましたか。 □ 受贈者は30歳未満・前年所得1,000万円以下、贈与者は直系尊属ですか。 □ 領収書の提出期限(支払日から1年以内又は翌年3月15日)を守っていますか。 ⑦結婚・子育て資金の一括贈与 直系尊属(祖父母、父母)から子・孫への結婚・子育て資金の贈与 (受贈者:18歳以上50歳未満、前年の合計所得金額が1,000万円以下) 金融機関での専用手続が必要 累計1,000万円 (結婚関係費は300万円が上限) □ 現行制度の期限内(~2027年3月31日)に専用口座開設・拠出と非課税申告書の提出を済ませましたか。 □ 受贈者は18歳以上50歳未満で、前年の合計所得金額が1,000万円以下ですか。 □ 費目の線引き(婚礼・家賃等・引越/不妊治療・妊娠・出産・産後ケア・子の医療・育児)と対象外の費目は国税庁HP等で確認しましたか。 ⑧障害者への贈与信託 親や親族など個人から特定障害者への贈与 金融機関での専用手続が必要 特別障害者=6,000万円 その他の特定障害者=3,000万円 □ 受益者が「特定障害者」(特別障害者または障害者のうち精神に障害がある方)に該当するか、証明書類で確認しましたか。 □ 信託設定日までに受託者経由で「障害者非課税信託申告書」を税務署へ提出していますか。 □ 払出しの使途が生活・療養の範囲に収まっており、居住用不動産の取得など不可の支出を計画していませんか。 贈与テクニック一覧表 グレーな“抜け道”は扱わず、正しい運用だけを紹介します。 贈与税では、近年大きな改正もありその論点も含めて記載しています。 税制は改正が続くため、利用する際には最新の国税庁HPの情報をご確認ください。 第1章 生活・教育・医療・冠婚葬祭の「都度払い」は原則非課税 意外と知られていませんが、親や祖父母などの扶養義務者※からの生活費・教育費は、通常必要な範囲(金額)で必要な都度に支払されるなら、贈与税の対象となりません。 ※ 扶養義務者とは具体的には次の者をいいます。 ①配偶者 ②直系血族(祖父母や両親、子供、孫など)及び兄弟姉妹 ③家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族(金銭を受けた者から見ておじ、おば、甥、姪など) ④三親等内の親族で生計を一にする者 また、医療費や妊娠・出産費、香典・祝金など社会通念上相当な金品も同じように贈与税の対象となりません。 ただし、誤った理解をしていると課税対象になることもあるので次のポイントに注意してください。 1-1ポイント (1)【必要となった都度贈与を行い、使ったことが分かる証拠を残す】 最大のポイントは、必要となった都度贈与を行い、必ず使ったことが分かる証拠を残しておくことです。 例えば毎月10万円の教育費が必要な場合に、一括して1年分の120万円を渡してしまうと預金・投資・不動産購入に転用していると見られる可能性があり贈与税の課税対象になります。 実務的には、疑われないためにも直接親や祖父母から支払先に振り込んでしまった方が安心です。 (2)【生活費を負担する場合、社会通念上適当と認められうる内容・金額か】 扶養義務者が生活費を代わりに支払う場合には、社会通念上適当と認められる内容・金額である必要があります。 例えば下記のような質問を受けることがあります。 「すでに就職をしていて十分な稼ぎがあり離れて暮らしている子供がいるが、生活費を負担しても贈与にならないか。」 結論としては、この場合は「贈与として課税対象になる可能性が高い」です。 子供に高額な所得があるような場合に、生活費として家賃等を負担するのは社会通念上適当と認められ ないと考えられるからです。 なお、根拠として国税庁の資料の中には下記のような記載があります。 『扶養義務者相互間において生活費に充てるために贈与を受けた場合に、贈与税の課税対象とならない「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除きます。)をいい、通常の日常生活を営むのに必要な費用に該当するかどうかは、贈与を受けた者(被扶養者)の需要と贈与をした者(扶養者)の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲かどうかで判断することとなります。 』 出典「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」国税庁 1-2チェックリスト □ 扶養義務者からの援助ですか。 □ 必要な都度渡している又は扶養義務者が直接振り込んでいますか。 □ 使ったことが分かる証拠(領収書や振り込んだことが分かる通帳)を残していますか。 □ 生活費を負担する場合には社会通念上適当と認められる内容・金額ですか。 □ 香典・祝金は社会通念上相当な金額ですか。 第2章 暦年課税の年間110万円の基礎控除(申告不要) 贈与税の原則的方法である暦年課税制度では年間(毎年1月1日から12月31日)110万円までは申告・納税ともに不要になります。 具体的な計算としては、受贈者本人がその年にもらった合計額から110万円を差し引き、残額だけに贈与税がかかります。 したがって、年合計110万円以下は非課税かつ申告が不要になります 2-1ポイント (1)【判定は「贈与者ごと」ではなく「受贈者1人・年合計」で行う】 110万円の判定は贈与者(渡した人)ごとではなく、受贈者(受け取った人)ごとに年合計の金額で行います。 例えば祖父から100万円、祖母から100万円の200万円を1年間で受け取った場合 「祖父、祖母からそれぞれ110万円以下の金額をもらったので申告・納税はいらない」というのは誤りになります。 自分が受け取った年合計で110万円以下か判定することになるので、この場合1年間で200万円受け取っており、贈与税の申告・納税が必要になります。 (2)【贈与契約書など贈与の証拠を残す】 贈与は口頭でも成立しますが、後日のトラブルや税務調査に備え、「だれが・いつ・何を・いくら・どの方法で渡したか」が客観的に分かる資料を必ず残しましょう。 最も確実なのは、贈与の都度に贈与契約書を作成し、実際の資金移動は口座振込で行い、通帳や振込明細を保存する方法です。 なお、贈与を成立させるには、受贈者が使える状態にしておく必要があるため、通帳や印鑑なども受贈者が管理しておく必要があります。未成年者への贈与は、受贈者(受け取る人)名義の口座を用意し、法定代理人(原則:父母)が管理していれば大丈夫です。 また、暦年贈与を継続する場合でも、毎年の贈与ごとに契約書と振込記録を残すことが大切です(最初から複数年分を約束する書き方は避けてください)。 以下に金銭を贈与した場合の贈与契約書のひな型を添付しますのでご活用ください。 なお、第3章以降の贈与についても金銭を贈与する場合にはご活用いただけます。 贈与契約書 フォーマット 贈与契約書 フォーマット(未成年者用) 2-2チェックリスト □ (申告をしない場合)その年の受け取った金額の合計が110万円以下ですか。 □ 受贈者(受け取った人)単位で判定をしていますか。 □ 贈与契約書を作成しましたか。 □ 受贈者が受け取った財産を管理していますか。 コラム:相続対策で贈与する場合には生前贈与加算の改正に注意 相続対策として贈与を検討されている方は、令和6年以降から適用される改正にご注意ください。 贈与をする方の中には、贈与者(渡す人)の財産が多く将来の相続税を減らすために贈与をするという方も多いかと思います。 ただし、贈与した財産が全て無条件に相続税から控除されるわけではありません。 令和6年の改正以前でも贈与した財産のうち、相続開始前3年以内に相続で財産を受け取る者に行った贈与については、相続財産に足し戻して相続税の計算をする必要がありました。 これを一般的に生前贈与加算といいます。 この生前贈与加算制度ですが、令和6年以降の暦年贈与は相続開始前7年以内の贈与が原則加算されることになりました。 また、相続開始前7年以内で3年を超える部分について総額100万円まで加算除外される取り扱いがされます。 第3章 相続時精算課税制度を利用する 相続時精算課税は、贈与時の負担を軽くしつつ最終的に相続時に合算して精算する仕組みです。 具体的には「累計2,500万円まで贈与税がかからずに贈与することができるが、将来の相続時には相続財産に足し戻して相続税を計算する」という制度です(2,500万円超の金額には一律20%の贈与税がかかります)。 この制度を利用するためには、原則として以下の要件を満たす必要があります。 ・贈与者が60歳以上で受贈者18歳以上の直系卑属(親と子や祖父母と孫などの関係)の組合せである(年齢は贈与年1月1日現在) ・相続時精算課税を初めて使う年は、翌年2月1日~3月15日(贈与税の申告期間)に「相続時精算課税選択届出書」を税務署へ提出して選択の意思表示をする なお、改正があり令和6年以降は年110万円の基礎控除が設けられ、110万円を超える贈与をした場合に累計2,500万円に加算されていきます。 改正前は、相続時精算課税制度を選択した後の贈与については、110万円以下の少額であっても贈与税の申告が必要であり、すべて2,500万円の特別控除枠に算入されるとともに、相続時にはその全額を足し戻して相続税を計算する必要がありました。 一方、改正により令和6年1月1日以後の贈与からは、年間110万円以下の贈与については申告が不要となり、この部分は2,500万円の特別控除枠にも算入されず、相続時にも足し戻されないことになりました。 3-1ポイント (1)【贈与者ごとに選択が肝】 相続時精算課税は「贈与者ごと(父・母・祖父母など)に選択」する制度です。 ある贈与者についてこの制度を一度選択すると、その同じ贈与者(=特定贈与者)から将来受ける贈与は、以後すべて相続時精算課税で処理されます。 他方、別の贈与者については暦年課税を使うなど、贈与者ごとに使い分けが可能です。 例えば、父は相続時精算課税、母は暦年課税ということが可能ということになります。 (2)【同一年に複数の特定贈与者がいる場合、年110万円は受贈者単位で按分】 令和6年以降、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が導入されました。 ただしこの110万円は「贈与者ごと」ではなく「受贈者1人あたり・年合計」の枠です。 したがって、同一年に祖父と祖母の双方で相続時精算課税を選択して贈与を受けた場合、110万円は両者の金額の割合で按分して各贈与から控除します。 例えば、同年に祖父から600万円・祖母から400万円(ともに相続時精算課税制度を選択)の贈与を受けたなら、110万円は祖父66万円・祖母44万円に按分して各贈与から控除することになります。 そのうえで、2,500万円の特別控除は贈与者ごとに累計で適用します。 (3)【選択後は同一贈与者について暦年課税へ戻れない】 一度、その贈与者について相続時精算課税を選択・適用すると撤回不可です。 以後、その同一贈与者からの贈与はずっと相続時精算課税となり、暦年課税へ変更できません。 制度選択は将来の贈与計画や相続時の足し戻し(相続時精算課税は基礎控除を超える金額は期間制限なく加算)まで見据えて決めるのが安全です。 (4)【基礎控除の110万円は、足し戻しされない】 暦年贈与は生前贈与加算制度により、基礎控除の年間110万円以下の贈与でも相続開始前7年以内の贈与は原則相続財産に加算されます。 しかし、相続税精算課税は、基礎控除の110万円以下の贈与は相続開始前7年以内の贈与でも加算されません。 3-2チェックリスト □ 初回適用時に選択届出を期限内に提出しましたか。 □ (申告をしない場合) その年に特定贈与者から受け取った金額の合計が110万円以下ですか。 □ 複数特定贈与者の年は110万円を按分して計算していますか。 コラム:改正後、「暦年課税」と「精算課税」—どちらが有利? 第2章の暦年贈与と第3章の精算課税制度どちらを使うべきか悩んでいる方も多いかと思います。 お子様に贈与することを前提に一般的な考え方を以下のフローチャートでまとめましたのでご活用ください。 まず、将来相続税がかかる場合と将来相続税がかからない場合で大きく分かれます。 将来相続税がかからない場合には、将来相続の際に財産を受け取れば無税で財産を受け取れるので、贈与する場合も1年間の贈与額は110万円以下にして贈与税がかからないようにした方がよいです。 ただし、どうしても110万円超の財産を一度に贈与する必要がある場合には、相続時精算課税制度を利用しましょう。 将来相続税がかかる場合には第2章のコラムで解説した生前贈与加算の影響を考慮する必要があります。 将来相続が7年以内に発生しそうであれば、暦年贈与しても相続時に足し戻しになってしまうため、相続時精算課税制度を使って贈与をして令和6年の改正で新設された相続時精算課税制度の基礎控除110万円を活用しましょう。 例えば、相続開始の前年に110万円を贈与した場合、暦年贈与であれば生前贈与加算の対象になりますが、相続時精算課税制度で贈与していれば基礎控除以下なので足し戻しの対象になりません(相続時に財産を相続しないお孫様への贈与の場合には、生前贈与加算の対象にならないので暦年贈与で大丈夫です)。 将来の相続までまだ相当の期間がある場合には、暦年贈与で少額を長期間贈与するようにしましょう。 ただし、相続対策として将来値上がりが予想される高額な財産(未上場株式や開発前の土地など)を贈与する場合には、相続時精算課税制度で一度に贈与してしまった方が有利です。 なぜなら、暦年贈与で贈与すると高額な贈与税がかかりますし、相続まで保有していると値段が大幅に上がっている可能性がありますが、相続時精算課税制度で事前に贈与しておけば将来相続の際に足し戻す金額は安い贈与時の金額でよいからです。 第4章 夫婦間の「居住用不動産の配偶者控除」(おしどり贈与) 婚姻20年以上の夫婦が、居住用不動産又はその取得資金の贈与を受ける場合、基礎控除110万円に加え最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できる特例を「居住用不動産の配偶者控除」といいます。 なお、2,110万円以下の贈与で全額控除され贈与税が発生しない場合でも、特例の適用を受けるために贈与の翌年3月15日までに贈与税申告書を提出する必要があります。 贈与税申告書に下記の書類を添付して適用を受けます。 (主なもの) ・戸籍謄本/抄本(贈与日から10日経過後に作成) ・戸籍の附票の写し(同上) ・登記事項証明書等(取得の事実を証する書類) ・不動産そのものの贈与時は評価明細書等 4-1ポイント (1)【投資用は対象外】 この特例の対象は「居住用不動産」またはその取得資金に限られます。 賃貸用・別荘・セカンドハウスなどの投資・保養目的の物件は対象外です。 店舗兼住宅のように居住用とそれ以外が混在する場合は、一定の場合を除き居住用部分に限って適用されます(敷地のみの贈与でも要件次第で対象となります)。 (2)【居住の実態がないと適用不可】 適用には、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与で取得した家屋(または贈与資金で取得した家屋)に現実に居住し、その後も引き続き居住する見込みであることが求められます。 入居がこの期限に間に合わない、あるいは当初から短期売却を前提としているようなケースは要件を満たしません。 また、この特例は同じ配偶者からの贈与については一生に一度のみ適用可能です(再婚相手は別)。 タイミングや金額配分を慎重に設計しましょう。 4-2チェックリスト □ 婚姻20年以上の夫婦間の贈与ですか。 □ 贈与する不動産又は不動産の取得資金の対象は居住用ですか。 □ 翌年3月15日に贈与を受けた者が現実に居住をしていますか。 □ 過去に同じ配偶者から「居住用不動産の配偶者控除」を受けたことはありませんか。 □ 一定の添付書類(戸籍謄本等)を添付して贈与税申告書を提出しましたか。 コラム:「居住用不動産の配偶者控除」を使わず、相続で引き継いだ方が有利な場合も 不動産の贈与税評価額が2,110万円(配偶者控除2,000万円+基礎控除110万円)を超えるケースや、そもそも相続税がかからない見込みのご家庭では、この特例(おしどり贈与)を使わず、相続で引き継ぐ方がトータルで有利になることがあります。 ≪なぜ相続が有利になりやすいのか≫ ①小規模宅地等の特例  相続では、被相続人の居住の用に供されていた宅地について、330㎡まで評価額を80%減額できる特例(特定居住用宅地等)が使えます。 土地の評価が大きいほど効果が大きく、贈与で先に移してしまうとこの強力な減額を失うことがあります。 ②配偶者の税額軽減  相続税には、配偶者が取得した遺産が「1億6,000万円」または「法定相続分」までなら相続税がかからないという制度があります。 配偶者に自宅・敷地をまとめて相続させる設計と相性が良く、贈与よりも税負担が小さくなる場面が少なくありません。 ③不動産取得税、登録免許税の違い  相続で不動産を取得する場合、不動産取得税は課税されません。 しかし、贈与で取得すると不動産取得税の課税対象になります(おしどり贈与や相続時精算課税の適用を受けても同様です)。 また、登録免許税についても相続で取得した場合と贈与で取得した場合では税率が異なっています。(相続の方が低い) この差も相続有利の一因です。 したがって、「居住用不動産の配偶者控除」(おしどり贈与)を使う場合には専門家に相談して適用することをおすすめします。 第5章 住宅取得等資金の贈与非課税 直系尊属(父母・祖父母など)からマイホーム取得・新築・増改築の対価に充てるための資金(住宅取得等資金)の贈与については、要件を満たせば省エネ等住宅※は1,000万円、その他の住宅は500万円まで非課税となります。 今後も更新される可能性はありますが、現行では、2024年1月1日~2026年12月31日までの贈与に限り適用ができるとされています。 非課税の可否は、受贈者の年齢・所得、住宅性能の証明、床面積、資金の使途と時期、入居期限など、細かな条件をクリアできるかで決まります。 下記のポイントでも基本的なものは記載しますが、実際に適用する場合には国税庁HPや税理士に確認することをおすすめします。 ※省エネ等住宅:省エネ性能や耐震などの性能が一定以上の住宅(該当するかの判断はハウスメーカーや不動産会社にお問い合わせください。) 5-1ポイント (1)【年齢・所得要件、性能証明、居住期限を満たすこと】 ①受贈者(もらう側)については以下の要件を満たす必要があります。 ・18歳以上であること(贈与年1月1日現在) ・贈与年の合計所得金額が2,000万円以下であること(床面積40㎡以上50㎡未満の住宅は1,000万円以下) ・贈与者は受贈者の直系尊属(祖父母、父母等)であること 等 これらを満たさないと非課税の対象になりません。 ②住宅要件と「省エネ等住宅の証明」 対象は日本国内の自己居住用になります。(床面積は原則40~240㎡) 「省エネ等住宅」の1,000万円枠を使うには、住宅性能証明書等で、所定の省エネ/耐震/バリアフリーのいずれかの基準に適合していることを申告時に添付して証明します。 ③期限管理(資金充当・入居・申告) 「住宅取得等資金の贈与非課税」の特例の適用を受ける場合には、以下の期限管理に注意する必要があります。 ・翌年3月15日までに資金の全額を住宅の新築・取得・増改築の対価に充当すること。 ・翌年3月15日までに居住すること(または同日後遅滞なく居住が確実)。 ⇒翌年12月31日までに未入居だと原則適用不可となり修正申告が必要になります。 ・申告は翌年2月1日~3月15日に贈与税申告書+契約書写し等を提出する必要があります(非課税でも申告必須)。 (2)【使途の注意:既存ローンの繰上返済はNG】 この非課税はこれから行う新築・取得・増改築の“対価”に充てる資金が対象です。 したがって、よくある誤りですが既に組んだ住宅ローンの返済(繰上返済等)に充てるための贈与は対象外で、非課税になりません。 5-2チェックリスト □ 特例の適用期間内(〜2026年12月31日)の贈与ですか。 □ 省エネ等1,000万円の枠を使う場合には証明書類を添付していますか。 □ 贈与を受けたお金は全て住宅の取得資金に充当しましたか。 □ 翌年3月15日までに申告・入居の期限を守っていますか。 第6章 教育資金の一括贈与 直系尊属(父母・祖父母など)から30歳未満の子や孫へ、教育資金をまとめて贈与する場合、所定の手続きを踏めば最大1,500万円まで贈与税が非課税となる特例です(うち学校等以外への支払い分は累計500万円が上限)。 今後も更新される可能性はありますが、現行では2026年3月31日までの贈与に限り適用ができるものとされています。 なお、受贈者の前年合計所得金額1,000万円以下などの要件に加え、金融機関での専用手続(教育資金口座+非課税申告書)、および領収書の提出期限管理が必要になります。 6-1ポイント (1)【非課税枠の考え方】 非課税の上限は受贈者一人につき累計1,500万円です。 このうち、学習塾・習い事など「学校等以外」に支払う費用は累計500万円までが上限で、両者合計で1,500万円を超える非課税の贈与はできません(学校=入学金・授業料・給食費・修学旅行費等、学校等以外=塾・水泳・ピアノ・通学定期・留学渡航費など)。 また、受贈者が23歳到達後に支払う学校等以外の費用は、教育訓練給付の対象講座に限られる点にも注意が必要です。 (2)【対象者の要件(年齢・所得・贈与者)】 受贈者は教育資金管理契約の締結日に30歳未満であること、かつ前年の合計所得金額が1,000万円以下であることが必要です。 また、贈与者は受贈者の直系尊属に限られます。これらの要件を満たさない場合は特例の適用ができません。 (3)【手続と証憑(「教育資金口座」+非課税申告+領収書提出) 適用を受けるには、信託銀行・銀行・証券会社等で教育資金口座(信託受益権/預入/有価証券購入)を設定し、拠出時(口座開設等の日)までにその金融機関経由で「教育資金非課税申告書」を提出します。 拠出後は、払出方法に応じて領収書を支払日から1年以内または翌年3月15日までに金融機関へ提出する必要があります。 対象は教育資金として社会通念上相当と認められる実支出のみです。 支払先(学校・塾等)への直接支払が原則で、宛名・日付・金額・内容が分かる領収書の確保が必要になります。 6-2チェックリスト □ 現行制度の期限内(~2026年3月31日)に教育資金口座の開設等と非課税申告書の提出を行いましたか。 □ 受贈者は30歳未満・前年所得1,000万円以下、贈与者は直系尊属ですか。 □ 領収書の提出期限(支払日から1年以内又は翌年3月15日)を守っていますか。 コラム:教育資金は一括贈与すべき?それとも第1章の都度支援の方がいい? 結論としては都度支援で対応できるものは、都度支援で十分です。 一括贈与は、入学金・施設費・留学費など大口や複数年分を早めに確保できますが、専用口座での管理と領収書提出が必須で、受贈者の所得要件や制度期限、終了時の残額課税、学校外費用には上限があるなど複雑かつ手続きも煩雑です。 また、第7章のコラムで記載していますが、一括贈与については、使い切れず残額が出れば相続税や贈与税の対象となるため、卒業時までの支払計画と提出期限の管理が不可欠です。 一方、日々の学費・塾代・通学定期など「通常必要な教育費」は、扶養義務者が必要の都度に学校・塾等へ直接支払えば原則贈与税の対象外(社会通念上相当額に限る)で申告も不要です。 したがって、一般的には都度支援の方が使い勝手はいいです。 第7章 結婚・子育て資金の一括贈与 直系尊属(祖父母、父母)から18〜50歳未満の子・孫へ結婚・子育て資金を一括拠出し、金融機関の領収書確認を条件に、1,000万円まで非課税(結婚関係費は300万円が上限)で贈与をすることができる制度です。 受贈者は契約締結日に18歳以上50歳未満であることが必要で、前年の合計所得金額が1,000万円を超える受贈者は適用することができません。 今後も更新される可能性はありますが、現行制度上では拠出(預け入れ)の期限は2027年3月31日までで、契約は原則として受贈者が50歳に達した日などで終了します。 7-1ポイント (1)【制度の「枠」と上限の考え方】 非課税枠は受贈者単位で累計1,000万円です。 このうち結婚関係費は300万円が上限で、1,000万円に加算されるわけではありません(つまり、1,300万円非課税にはならない)。 結婚関係費には婚礼(挙式・披露宴)・結婚を機に賃貸する住居の家賃等・引越費用が含まれ、子育て関係費には不妊治療・妊娠・出産・産後ケア・子の医療費・子の育児費が含まれます。 非課税とならない費目(婚活サービス、結納、指輪、新婚旅行、家具・家電など)も明示されているため、事前に国税庁のHP等で費目の線引きを確認しましょう。 (2)【専用口座+領収書で用途証明する】 拠出は金融機関の専用口座(結婚・子育て資金管理契約)で受け入れ、「結婚・子育て資金非課税申告書」を金融機関経由で提出します。 拠出後は領収書等を金融機関に提出して、結婚・子育て資金に充当された事実の確認・記録・保存を受けるのが必須フローです。 教育資金の一括贈与の非課税と併用は可能ですが、同一の支出を二重に非課税にすることはできません。 費目の重複が疑われる支出は、どちらの制度で処理するかを領収書の取り方とともに決めておくと安全です。 7-2チェックリスト □ 現行制度の期限内(~2027年3月31日)に専用口座開設・拠出と非課税申告書の提出を済ませましたか。 □ 受贈者は18歳以上50歳未満で、前年の合計所得金額が1,000万円以下ですか。 □ 費目の線引き(婚礼・家賃等・引越/不妊治療・妊娠・出産・産後ケア・子の医療・育児)と対象外の費目は国税庁HP等で確認しましたか。 コラム:教育資金の一括贈与や結婚子育て資金の一括贈与後に贈与者が亡くなった際に残額が残っていた場合 教育資金・結婚子育て資金の非課税制度を利用中に贈与者が死亡した場合、口座や信託に残っている管理残額(=非課税拠出額-制度上認められる支出額)は、原則として贈与者の遺産に取り込まれ、相続税の課税対象になるとされています。しかし、教育資金については、受贈者が23歳未満・在学中等なら非課税とされるため、相続税がかからないケースが多くありました。 ただし、令和5年4月1日以後取得分で贈与者の遺産が5億円超の場合は受贈者の状況に係わらず残額にも相続税が課税されることになったので注意が必要です。   第8章 障害者への贈与信託 親や親族など個人が、特定障害者※を受益者として信託銀行等と結ぶ信託(特定障害者扶養信託契約)に財産を拠出すると、一定額まで贈与税が非課税になります。 制度対象者になるかの可否は「証明書類(障害者手帳・医師の診断書等)」で確認します。 非課税枠は特別障害者なら最大6,000万円、その他の特定障害者なら最大3,000万円が上限(受益者1人あたりの累計額)になります。 生活費や医療費など、受益者の生活・療養のために使うことを前提とした制度です。 ※特定障害者:特別障害者に加え、障害者のうち精神に障害のある方を含む概念です。 8-1ポイント (1)【非課税枠の考え方及び利用方法】 非課税の上限は受益者1人につき累計で、特別障害者=6,000万円、その他の特定障害者=3,000万円になります。複数の人からの拠出や複数回の拠出でも、受益者側で合計して累計に加算されます。 信託設定日までに、受託者(信託銀行等)の営業所を通じて「障害者非課税信託申告書」を所轄税務署に提出する必要があります。 (2)【使える費目の線引き(生活・療養優先/不動産取得は不可) 原則として生活費・療養費など日常の生計維持に関する支出が対象になります。 一方で、居住用不動産の取得のための払出しは不可と明示されています(生活・療養の需要に応じたものとは認められないため)。 8-2チェックリスト □ 受益者が「特定障害者」(特別障害者または障害者のうち精神に障害がある方)に該当するか、証明書類で確認しましたか。 □ 信託設定日までに受託者経由で「障害者非課税信託申告書」を税務署へ提出していますか。 □ 払出しの使途が生活・療養の範囲に収まっており、居住用不動産の取得など不可の支出を計画していませんか。 第9章 贈与を行う場合の注意点 贈与は制度選択・年次設計・証憑整備で結果が大きく変わります。 「制度の併用可否を取り違える」、「連年贈与(定期贈与)に見える運用をしてしまう」、「受贈者が実質管理できていない名義財産(名義預金)を作る」これらは代表的なリスクです。 本章では、実務で誤りやすいや問題になりやすい4点を要点整理します。 9-1各制度の併用可否の関係 (1)相続時精算課税と暦年課税 相続時精算課税は贈与者ごとに選択し、同一贈与者について撤回不可です。 ただし、同一年に他の贈与者からは暦年課税を用いることは可能です(別人なら併用可)。 令和6年以降は基礎控除110万円が相続時精算課税にも導入され、暦年贈与の基礎控除110万円と相続時精算課税の基礎控除110万円は併用して適用ができます。 (2)住宅取得等資金の非課税 × 相続時精算課税 住宅取得等資金の非課税(500万円/省エネ等1,000万円)を先に適用し、枠超過分について相続時精算課税(2,500万円特別控除+年110万円)を使う併用が可能です(要件充足が前提)。 (3)教育資金・結婚子育て資金との関係 いずれも別建ての非課税制度で、併用できないものはありませんが、同じ支出を二重に非課税にはできません。 教育資金贈与や結婚子育て資金の制度両方で同一費目を重複適用しないように注意しましょう。 9-2 連年贈与(定期贈与)に見えない設計にする 第2章でも少し述べましたが、連年贈与に見られないように設計する必要があります 例えば「毎年100万円を10年」と最初に約束してしまうと、1,000万円を10年で分割払いしたものとみなされ、初年に1,000万円贈与したものとして課税される可能性があります。 毎年ごとに贈与契約を完結させ、金額・時期・財産の種類を機械的に固定しない、「都度の資金移動と記録(振込・契約書)を残す」ことが安全運用の要点です。 9-3 名義財産(名義預金)にしない 受贈者が通帳・印鑑を実質管理していない、贈与の事実を知らないといった場合、名義人と実質所有者が異なるとして相続財産に算入される典型があります。 受贈者名義口座へ振込し、受贈者が把握・管理し、用途証憑を保存することで贈与の実体を整えるのが重要です。 9-4 贈与しすぎない 相続対策のために事前に子供に財産を贈与しすぎると問題が起こることがあります。 実際に私の係わった方の中でも相続税がかからないように財産のほとんどを子供に移転していたが、不慮の事故で子供の方が先になくなってしまったということがありました。 子供に配偶者や子供がいなければ相続税を払って自分のもとに財産が戻ってくることになりますが、配偶者や子供がいた場合には配偶者や子供に相続されることになります。 私が経験した案件では亡くなった子供の配偶者と仲が悪くなかったため、大きな問題にはなりませんでしたが、子供の配偶者が外国籍の方で全ての財産をもって母国に帰ってしまったという話も聞いたことがあります。 したがって、少なくとも自身の今後の生活費や生活の拠点となる財産などは贈与せず取っておくようにしましょう。 第10章 まとめ いかがだったでしょうか。 この記事では、非課税・申告不要になり得る各制度の使いどころと落とし穴を横断的に整理しました。 8つのテクニックのまとめ ① 扶養義務者の「都度払い」(生活・教育・医療・冠婚葬祭)  社会通念上相当額を必要の都度に直接支払すれば原則非課税 ② 暦年贈与(少額で長期間贈与する方向き)  年110万円まで非課税・申告不要。毎年ごとに都度契約+振込記録を残しましょう。 ③ 相続時精算課税制度(値上がり資産・一括移転向き)  年110万円の基礎控除+累計2,500万円の特別控除 ④ 居住用不動産の配偶者控除(おしどり贈与)(相続と比較して有利な時に適用)  婚姻20年以上で適用可能。基礎110万円+最大2,000万円控除。居住の実態が必須になります。 ⑤ 住宅取得等資金の非課税(マイホーム)  省エネ等住宅1,000万円、その他の住宅500万円の非課税枠。申告が必須になります。 ⑥ 教育資金の一括贈与  一定の要件を満たせば累計1,500万円の非課税枠。金融機関で専用口座の作成が必要。 ⑦ 結婚・子育て資金の一括贈与  一定の要件を満たせば累計1,000万円の非課税枠。金融機関で専用口座の作成が必要。 ⑧ 特定贈与信託(障害者扶養信託)  生活・療養費に限定。申告書の提出が必須。 最後に、必ず最新の国税庁情報で要件・期限を確認し、判断に迷う点は専門家へ早めに相談をしましょう。 「合法に・シンプルに・ムダなく」 を合言葉に、今日から実行に移しましょう。

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