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国際相続・相続税対策に
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カテゴリー: 相続対策

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    相続対策

    • 2025.12.16
    • 久保 佑介

    税理士が解説/父が亡くなった後は誰が実家を相続したらいい?【相続税早見表つき】

    父親が亡くなった時、実家の自宅は母親と子どものどちらが相続した方が良いのでしょうか? 「母が住み続ける実家を、誰が相続するのが最も安全で税務的にも有利か」という論点は、とても相談が多いご質問です。 実際には個々の事情があるためケースバイケースとなることがほとんどです。 相続税に特化した税理士だからこそ税金はもちろん税金以外も含めてそれぞれの良い点・注意点を解説していきます。 あなたの実家は誰が引き継ぐのが最善なのか。ぜひ最後まで読んでください。きっと解決策が見つかるはずです。 第1章 父親が亡くなった後は誰が実家を取得すべきか【具体例(相続税)】 基本的には母親・同居の子どもが税金面を考慮すると実家を引き継ぐのが最善でしょう。 母親・同居の子どもが実家を取得した場合には「小規模宅地等の特例」が適用できるためです。 「小規模宅地等の特例」は実家である自宅の土地の価額の80%を相続税の課税対象となる遺産総額より減額することができます。 詳細は本章の後半<税理士の解説👉>にて解説します。 「相続税早見表」の使い方 本章では「4人家族」の実家の相続税を「相続税早見表」を使用しながら考えていきます。 まずは「相続税早見表」の使い方をマスターして具体例の「4人家族」の実家の相続税を見ていきましょう。 相続税早見表とは「遺産総額」と「配偶者の有無及び子供の人数」により相続税の納税額の目安を確認できるものです。 また、相続税早見表のうち「左の表」は配偶者がいる場合の相続税を表しています。 配偶者がいる場合には、1億6,000万円(又は法定相続分のうち多い金額)まで配偶者へ相続税がかからない「配偶者の税額軽減」の適用があります。「右の表(配偶者がいない場合)」と見比べて相続税の金額が大きく異なるのはこの特例の影響です。 詳細は本章の後半<税理士の解説👉>にて解説します。 (使い方) 1. 遺産総額とは、被相続人(亡くなった方)の財産から借金や葬式費用などを差し引いた金額で、相続税の課税対象となる基礎です。預金や不動産、生命保険などが含まれます。 2. 被相続人の 「遺産総額」 に最も近いものをご確認ください (注) 「小規模宅地等の特例」「生命保険金の非課税」 など遺産総額より控除することのできるものがあります。これらを考慮することにより正確な相続税を確認することができます。 <例>「遺産総額1億円」で「配偶者あり及び子供2人」のケース    以下の相続税早見表より相続税は315万円と確認できます。 →最新の「相続税早見表(特典)」をダウンロード 【具体例】遺産総額1億円のケースの取得者ごとの相続税 遺産総額1億円の場合に実家の自宅を取得するのが「母親」の場合と「子ども(別居)」の場合に分けてそれぞれ相続税がいくらかかるのか見ていきましょう。 【具体例】 (親族図) (財産構成:遺産の総額:1億円) ①実家の家屋:500万円 ②実家の土地:5,000万円                  ③預貯金:4,500万円 (注)相続税は法定相続分(母:1/2、長男:1/4、二男:1/4)で遺産分割しているものとしております。    遺産分割の方法は相続人全員の同意により自由に取り決めることが可能です。 遺産分割の方法については第3章(Q1~4)をご覧ください。 【具体例】「母親又は長男(同居)が実家の自宅を取得した場合」 ・相続税 60万円 ・遺産総額 6,000万円(1億円▲4,000万円) (※1)小規模宅地等の特例について▲4,000万円(5,000万円×80%)適用可能 (※2)配偶者の税額軽減について適用可能 【具体例】「二男(別居)が実家の自宅を取得した場合」 ・相続税 315万円 ・遺産総額 1億円 (※1)小規模宅地等の特例については適用不可 (※2)配偶者の税額軽減について適用可能 【具体例】「取得者ごとの相続税の比較」 取得者の違いにより相続税に255万円(315万円▲60万円)の差が生じます。 実家の自宅を「母親又は長男(同居)」が取得する場合には、土地について小規模宅地等の特例の適用が可能です。土地の価額の80%を減額することができるため▲4,000万円を財産額より控除できます。 一方で「二男(別居)」が取得する場合には、土地について小規模宅地等の特例の適用はできません。 相続税負担を考えると実家の自宅を取得するのは「母親又は長男(同居)」が良いでしょう。 <税理士の解説👉> 「2大特例」を解説します。具体例のように相続税は「特例の適用可否で大きく差が出ます」 実家の相続を考える上で特に影響の大きい2つの特例をご紹介します。 ①小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等) 小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)は、亡くなった方の自宅の敷地など一定の土地について、土地評価を最大80%減額できる制度です。 <主な要件> ・取得者が以下の①又は②の要件を満たすこと ①「配偶者」であること ②「配偶者以外の親族」の場合   被相続人と同居していること   申告期限までその土地を保有し、引き続きその建物に居住していること ・限度面積は330㎡まで(超えた場合には超えた部分については適用なし) ※その他一定の場合の一定の別居親族などにも認められます。  父親が亡くなった際に子どもが上記特例を受けようとする場合のポイントは「同居」しているかどうかです。既に独立して別居しているような子どもについては配偶者(母親)がいる場合には適用する余地が一切ありません。 つまり「母親」または「同居の子ども」が自宅を取得することが良いでしょう。 ②配偶者の税額軽減 配偶者の税額軽減は、被相続人の配偶者が取得した財産について、次のいずれか多い金額までの相続税が課されない制度です。  A:配偶者の法定相続分相当額(相続人が配偶者と子の場合は1 / 2 )  B:1億6,000万円 配偶者である母親は、父親が亡くなった際に上記特例により多くのケースで相続税は「0円」となります。 第2章 父親が亡くなって母親が自宅を取得しない方が良いケースもある【失敗例(相続税)】 第1章とは異なり母親が自宅を取得することで相続税がかえって増えてしまうケースがあります。 本章では失敗例を具体例に基づき解説します。 2-1【失敗例①】母親がある程度財産を持っている場合 母親がある程度財産を持っている場合には、1次相続(父親の相続)だけでなく2次相続(母親の相続)も踏まえて取得者を考慮するのが良いです。 実家の自宅を取得するのが「母親」の場合と「子ども」の場合に分けて1次相続・2次相続トータルでそれぞれ相続税がいくらかかるのか見ていきましょう。  【失敗例①】 (親族図) (「父」財産構成:遺産の総額:1億円)(「母」財産構成:遺産の総額:1億円) ①実家の家屋:500万円         ①預貯金:5,000万円 ②実家の土地:5,000万円        ②有価証券:5,000万円  ③預貯金:4,500万円 (注)相続税は法定相続分(1次相続 母:1/2、長男:1/4、二男:1/4)(2次相続 長男:1/2、二男:1/2)で遺産分割しているものとしております。   遺産分割の方法は相続人全員の同意により自由に取り決めることが可能です。      遺産分割の方法については第3章(Q1~4)をご覧ください。 【失敗例①】「母親が実家の自宅を取得した場合」 (「父」遺産の取得内容) 母:①実家の家屋:500万円   ②実家の土地:1,000万円(5,000万円▲4,000万円)   ③預貯金:1,500万円    計:3,000万円 長男・二男:預貯金:各1,500万円(3,000万円の1/2) ・(父:1次相続)相続税 60万円 ・遺産総額 6,000万円(1億円▲4,000万円) (※1)小規模宅地等の特例について▲4,000万円適用可能 (※2)配偶者の税額軽減について適用可能 (「母」遺産の取得内容) 長男・二男:①実家の家屋:500万円       ②実家の土地:5,000万円       ③預貯金:6,500万円(1,500万円+5,000万円)       ④有価証券:5,000万円        計:各8,500万円(1億7,000万円の1/2) ・(母:2次相続)相続税 2,440万円 ・遺産総額 1億7,000万円(1億円+7,000万円[父からの相続分]) (※3)小規模宅地等の特例については適用できないものとします。(適用できる場合の詳細は下記<税理士の視点👉>の参考をご覧ください。) ・トータル相続税 2,500万円(60万円+2,440万円) <税理士の視点👉> 上記(母:2次相続)で小規模宅地等の特例が適用できる場合【参考】 「将来同居を予定している」 母親が父親の相続後も自宅に住み続ければ、1次相続(父親の相続時)に同居していない子どもが1次相続後に母親と同居することで特例の適用ができるケースがあります。 「家なき子(別居親族)」 別居している子どもであっても、母親以外に自宅に住んでいる親族がいない・自己所有(子ども所有)の家に住んでいないなど一定の要件を満たす場合には特例の適用ができるケースがあります。 【参考:2次相続で小規模宅地の特例が適用できるものとした場合】 ・(母:2次相続)相続税 1,360万円 ・遺産総額 1億3,000万円(1億円+3,000万円[父からの相続分]) (※4)小規模宅地等の特例について▲4,000万円適用可能 ・トータル相続税 1,420万円(60万円+1,360万円) 【失敗例①】「子どもが実家の自宅を取得した場合」 ・(父:1次相続)315万円 ・遺産総額 1億円 (※1)小規模宅地等の特例については適用不可 (※2)配偶者の税額軽減について適用可能 ・(母:2次相続)相続税 1,840万円 ・遺産総額 1億5,000万円(1億円+5,000万円[父からの相続分]) ・トータル相続税 2,155万円(315万円+1,840万円) 【失敗例①】「取得者ごとの相続税の比較」 取得者の違いにより相続税に345万円(2,500万円▲2,155万円)の差が生じます。 結果的に子どもが実家の自宅を取得した場合には2次相続で母親から相続する遺産総額が少なくなるため、事例のケースでは実家を1次相続で子どもに相続させる方が結果的に相続税負担が少なく済むことになります。 <税理士の視点👉失敗例①まとめ> 失敗例①のケースでは「子どもが実家の自宅を取得する」だけでなく父親の遺産を母親は一切取得せず、全ての遺産を子どもが取得することで相続税負担が大きく軽減されます。 母親が父親の遺産を取得するとその取得した分が2次相続で再度相続税の対象となってしまうからです。2次相続において小規模宅地等の特例など相続税を減額できるケースはまだしも減額できないケースは特に2次相続の負担が重くなります。 父親の遺産を母親が一切取得しないケースを見ていきましょう。 「子どもが実家の自宅を含めて遺産を全て取得した場合(母親は一切取得しない)」 ・(父:1次相続)相続税 630万円 ・遺産総額 1億円 (※1)小規模宅地等の特例については適用不可 (※2)配偶者の税額軽減についても適用不可 ・(母:2次相続)相続税 770万円 ・遺産総額 1億円 ・トータル相続税 1,400万円(630万円+770万円) 父親の遺産を母親は一切取得しないことで相続税負担が大きく軽減します。 (まとめ) 配偶者の税額軽減は、1億6,000万円(又は法定相続分のうち多い金額)まで配偶者の相続税がかからないことになるため有効に活用すべきですが、1次相続(父親の相続)だけでなく2次相続(母親の相続)も踏まえて特例を活用することが重要です。 失敗例①のケースでは小規模宅地等の特例を考慮しなくても、母親が財産を一切取得しないことで、1次・2次相続全体の相続税を大きく軽減させる結果となりました。 2-2【失敗例②】母親が自宅を取得すると相続税の基礎控除を超えてしまう場合 父親及び母親の遺産総額がいずれも基礎控除額(注)以下の場合に母親が自宅を取得することで母親の相続時に相続税が発生してしまうケースがあります。 実家の自宅を取得するのが「母親」の場合と「子ども」の場合に分けて相続税の発生の有無を確認していきます。 (注)基礎控除額:相続税では、すべての人に共通して使える「非課税ライン」である基礎控除があります。 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 【失敗例②】 (親族図) (「父」財産構成:遺産の総額:4,000万円)     ①実家の家屋:1,000万円               ②実家の土地:3,000万円      基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円   (「母」財産構成:遺産の総額:4,000万円) ①預貯金:4,000万円 基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円 【失敗例②】「母親が実家の自宅を取得した場合」 ・(父:1次相続)相続税 0円 ・遺産総額 1,600万円(4,000万円▲2,400万円) (※1)小規模宅地等の特例について▲2,400万円適用可能 ・(母:2次相続)相続税 470万円 ・遺産総額 8,000万円(4,000万円+4,000万円[父から相続した家屋・土地]) (※2)小規模宅地等の特例については適用できません。 ・トータル相続税 470万円(0円+470万円) 【失敗例②】「子どもが実家の自宅を取得した場合」 ・(父:1次相続)相続税 0円 ・遺産総額 4,000万円 (※1)小規模宅地等の特例については適用できません。 ・(母:2次相続)相続税 0円 ・遺産総額 4,000万円 ・トータル相続税 0円 【失敗例②】「取得者ごとの相続税の比較」 取得者の違いにより相続税に470万円の差が生じます。 そもそも遺産額が基礎控除額以下の場合、母親が自宅を取得すると2次相続で相続税が発生してしまうことがあります。1次相続で子どもに相続させることで相続税の発生を防ぐことができます。 第3章 自宅を「母親・子ども」が相続する方法・注意点【Q&A】 ここまでの具体例・失敗例でご紹介した相続税の負担以外の部分を確認します。 そもそも自宅を「母親」「子ども」が単独で取得するのが難しい場合の遺産分割の方法や自宅を売却した場合の特例、その他認知症リスクへの対策など実務で特に重要となる論点にしぼり、一問一答形式でご紹介します。 【Q&A】 Q1:遺産分割の割合は法定相続分じゃないとダメでしょうか? A1: 遺産分割の方法は相続人全員の同意により自由に取り決めることが可能です。   相続人が母・子2人の場合に法定相続分(母:1/2、子:各1/4)で必ず分割しなければならないわけではありません。 Q2:遺産はほぼ実家である自宅のみです。公平に分割するために共有名義(1/3ずつなど)にするのはどうでしょうか? A2: 公平に分割できないから「とりあえず共有名義にしよう」と安易に決めてしまうのは危険です。将来、重大な問題が生じることがあります。 <事例>自宅を兄弟3人が共有したとします。 その後、兄弟の誰かが亡くなると、持分はその人の配偶者や子へ承継され、共有者がどんどん増えていきます。 → 5人 → 10人 → 20人と増えるケースも実際に起こっています。 不動産の共有は「将来の争いの火種」であり、専門家としてはおすすめしません。 ただし、近日中に売却する予定がある場合には「共有取得」や「(注)換価分割」による遺産分割を検討することも良いでしょう。 (注)換価分割(かんかぶんかつ) 不動産を売却し、現金で平等に分ける方法です。(共有取得とは異なり遺産分割協議時点で売却することが確定している場合にとれる方法です。) 将来のトラブルを避けるために「いっそのこと売却して現金で分けたい」という家庭に向いています。 (注意点)売却まで時間がかかる場合もあります。 Q3:遺産はほぼ実家である自宅のみです。自宅を取得する人とそれ以外の人で公平に遺産分割はできませんか? A3: (注)代償分割による遺産分割の方法があります。 (注)代償分割(だいしょうぶんかつ) 不動産を相続した人が、他の相続人に「代償金」を渡す方法です。 実務上、よく使われる方法です。 例:母親が実家を取得 → 代わりに他の相続人に母親保有の預貯金を支払い、バランスを取る。 (注意点)母親に資金力が必要です。 Q4:代償分割により母親が自宅を取得したいのですが、支払う資金が足りません。自宅を売却するしかありませんか? A4: 配偶者居住権を設定することで代償分割以外の方法かつ自宅を売却せずに公平な分割を図ることが可能です。 配偶者居住権とは、自宅に住む配偶者に「住む権利(居住権)」を、「それ以外の権利(所有権)」はその他の相続人が取得するという制度です。 自宅に住む母は自宅の所有権を相続しなくても、居住権だけを相続して引き続き住むことができます。 母は配偶者居住権のみを相続し、他の相続人がそれ以外の権利を相続することができるため代償金を支払わず公平な分割を図ることが可能になります。 <税理士の視点👉> (注意点1)配偶者居住権は単独売却できない 例えば配偶者居住権の設定後にバリアフリーのマンションに移りたい、施設に入るために自宅を売却したい際にも配偶者居住権は単独で売却できません。 この場合にとれる方法は配偶者が生前に配偶者居住権を放棄・合意解除することが考えられますが、贈与税又は所得税が課税されます。 (注意点2)配偶者居住権にも小規模宅地等の特例がある 配偶者居住権・それ以外の権利のいずれも小規模宅地等の特例の適用は可能です。 ただし、母親以外の取得者である子どもは同居要件を満たす必要があります。 よって、小規模宅地等の特例を受けられない子どもがそれ以外の権利を取得する場合には配偶者居住権の設定により相続税がいくらになるのか検討する必要があります。 Q5:売却時に使える可能性がある制度は?(Ⓐ同居の場合) A5:自宅に住んでいる相続人が売却した場合はⒶマイホームの3,000万円特別控除(居住用財産の譲渡所得控除)が使えます。 事例:母親が自宅を相続して売却 母親は実家(戸建)に居住中。通院が増え「駅近マンションへ住替え」を検討。 売却益は3,000万円(売却価額▲取得価額) 売却益から3,000万円を控除し、譲渡所得税は0円となる Q6:売却時に使える可能性がある制度は?(Ⓑ別居の場合) A6:自宅に住んでいない相続人が売却した場合はⒷ空き家の3,000万円特別控除(空き家の譲渡所得特別控除)が使えます。 ※相続した実家が空き家の場合に、要件を満たせば利用できる。 事例:子どもが自宅を取得して、空き家のまま売却を検討 母親は数年前に施設へ入居し、父親は生前に実家で一人暮らしで実家が空き家のまま。 相続後3年以内に売却。 <主な要件> ① 建物:昭和56年5月31日以前に建てられた一戸建て。区分所有建物(マンション)ではない ② いずれかを満たすこと:「耐震基準を満たす建物として売る」「耐震リフォームしてから売る」「建物を解体して更地として売る」 ③ 期限:相続開始から 3年を経過する日の属する年の12月31日まで に売却する ④ 売却代金:1億円以下 Q7:売却時に使える可能性がある制度は? (Ⓒその他) A7:Q5、6以外にもⒸ取得費加算の特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)が使えます。 上記特例は支払った相続税の一部を「取得費」に上乗せできる制度です。 取得費が増えると、売却益(譲渡所得)が少なくなり、結果として所得税・住民税が圧縮されます。 <主な要件> ①支払った相続税がある ②期限:相続開始から3年10か月以内に売却する  ※不動産以外の有価証券などにも適用があります。 <税理士の視点👉> 取得費加算の特例の併用可否について 「Ⓐマイホームの3,000万円特別控除」と「Ⓒ取得費加算の特例」の併用  →併用できます。 「Ⓑ空き家の3,000万円特別控除」と「Ⓒ取得費加算の特例」の併用  →同一の物件に対して併用はできません。 Q8:母親が認知症になった場合のリスクは? A8:「家が動かせない」売却・賃貸・修繕などの法律行為が母親ではできなくなるリスクがあります。 <税理士の視点👉> 認知症になると「法律行為」がほぼできなくなる 認知症などで判断能力が低下すると、売買契約・賃貸契約(貸す・借りる)・リフォーム契約・大規模修繕の同意などの「意思表示が必要な行為」ができなくなります。 <よくある困りごと> 老朽化が進んで建替えたいのに、母の判断能力が低下して同意が取れない 住み替えのために売却したいのに、契約ができず足止め 修繕が必要なのに、所有者としての意思表示ができない 子どもが代わりに手続きしたくても「代理権」がなくてできない こうした状況になると、不動産の運用や管理が完全にストップしてしまいます。 対処するには「成年後見制度」を利用する 母親の判断能力が失われた場合、家族が代理で契約を進めるには家庭裁判所で「成年後見人」を選任してもらう必要があります。 しかし、成年後見制度は次のようなデメリットもあります。 <成年後見制度のデメリット> 裁判所への申立てが必要で手続きが煩雑 専門職後見人(司法書士・弁護士)が就任すると、毎月の報酬が発生 財産の管理はすべて後見人の判断になり、家族が簡単に自由に動かせない 不動産の売却などは裁判所の許可が必要になり、スピード感がない つまり、実務的にはとても負担の大きい制度です。 (対策)認知症への備えとして「家族信託(民事信託)」という選択肢もある リスクを避けるため、母親が元気なうちに「家族信託(民事信託)」を設定することも、近年多く採用されています。 家族信託の仕組みはシンプルに言うと次のとおりです。 (1)母=「委託者(財産を預ける人)」 (2)子=「受託者(財産を管理する人)」 (3)母=「受益者(利益を受ける人)」 この関係を信託契約で結び、母の自宅の管理権限を「子」に移す形になります。 <家族信託を使うメリット> 母が判断能力を失っても、委託された子が不動産を売却・賃貸など可能 成年後見制度より柔軟で、家族で運用しやすい 裁判所の管理下には置かれないため、運用の自由度が高い 相続発生後の財産承継(誰に渡すか)まで設計できる ただし、家族信託は判断能力があるうちに、将来の財産管理を子が代わりにできるようにしておく点がポイントです。また「設計が複雑」なため、専門家のサポートが必要です。 Q9:自宅を取得した子どもが先に亡くなった場合のリスクは? A9:自宅の所有権を有する子どもが亡くなった場合、その所有権は子の配偶者・子の子(母親にとって孫)へ移ります。 そうすると、法的には母親の同意を得なくても、子の配偶者・子の子は自宅不動産を売却できてしまうことになり得ます。もちろん、母に使用貸借又は賃貸借により居住する権限が認められる可能性もあり、その場合買い手がつきにくくなりますが、いずれにしろ母の住む権利を明確にしていないと、生活基盤が不安定になります。元の家族の関係によってはトラブルに発展するリスクがあります。 (対策)配偶者居住権、遺言や家族信託で事前に設計しておく 第4章 まとめ いかがだったでしょうか。 第1章では、父親が亡くなった後は誰が自宅を取得すべきかについて「母親」または「同居の子ども」が自宅を取得することが良いことを相続税負担の観点より解説しました。 第2章では、母親が自宅を取得しない方が良いケースを失敗例にて解説しました。 「母親がある程度財産を持っている場合」や「(母親が自宅を取得することで)相続税の基礎控除を超えてしまう場合」には相続税がかえって増えてしまうことがあることを確認しました。 第3章では、自宅を「母親・子ども」が相続する方法・注意点を解説しました。 そもそも自宅を「母親」「子ども」が単独で取得するのが難しい場合の遺産分割の方法や自宅を売却した場合の特例を紹介しました。 「母親と子ども」のどちらが自宅を取得すべきか検討する上で一番最初にすべきことは「現状把握」です。 あなたの家族の現状で1次相続・2次相続の相続税がいくらかかるのか本コラム特典の「相続税早見表」を利用してまず確認してみてください。 税金以外の家族の事情も大切です。ただし税金面を事前にクリアにしておくことで大切な部分に目を向けることができるのではないでしょうか。 相続時に急に困ることのないように今日から相続対策を考えてみてくださいね    
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    相続対策

    • 2025.11.21
    • 伊藤 千尋

    税理士が教える!贈与税がかからない合法テクニック8選【贈与契約書及びチェックリスト付き】

    「どうせ渡す(受け取る)なら、合法に・シンプルに・ムダなく。」 今年から贈与を始める方も毎年贈与を行っている方もそう考えているかもしれません。 本記事は、「贈与税がかからない(または申告不要になる)制度・特例」を、プロの視点で使い方やNG例、証憑の残し方まで一気に整理しました。 以下に8つのテクニックの一覧表を添付します。 テクニック 対象となる贈与(援助) 手続き 金額の上限 チェックリスト ①生活・教育・医療・冠婚葬祭の 「都度払い」 扶養義務者から被扶養者への援助 なし 社会通念上適当と認められる金額 □ 扶養義務者からの援助ですか。 □ 必要な都度渡している又は扶養義務者が直接振り込んでいますか。 □ 使ったことが分かる証拠(領収書や振り込んだことが分かる通帳)を残していますか。 □ 生活費を負担する場合には社会通念上適当と認められる内容・金額ですか。 □ 香典・祝金は社会通念上相当な金額ですか。 ②暦年課税の年間110万円の基礎控除 通常の贈与(制限なし) 110万円を超えると贈与税申告が必要 暦年で110万円(申告不要の場合) □ (申告をしない場合)その年の受け取った金額の合計が110万円以下ですか。 □ 受贈者(受け取った人)単位で判定をしていますか。 □ 贈与契約書を作成しましたか。 □ 受贈者が受取った財産を管理していますか。 ③相続時精算課税制度を利用する 60歳以上の父母(祖父母)から 18歳以上の子(孫)への贈与 「相続時精算課税選択届出書」を 初回適用時に税務署へ提出 累計2,500万円 (毎年110万円の基礎控除あり) □ 初回適用時に選択届出を期限内に提出しましたか。 □ (申告をしない場合) その年に特定贈与者から受け取った金額の合計が110万円以下ですか。 □ 複数特定贈与者の年は110万円を按分して計算していますか。 ④夫婦間の「居住用不動産の配偶者控除」 婚姻20年以上の夫婦間の 居住用不動産又はその取得資金の贈与 適用時に贈与税申告が必要 2,000万円 (暦年贈与の基礎控除と併用で2,110万円) □ 婚姻20年以上の夫婦間の贈与ですか。 □ 贈与する不動産又は不動産の取得資金の対象は居住用ですか。 □ 翌年3月15日に贈与を受けた者が現実に居住をしていますか。 □ 過去に同じ配偶者から「居住用不動産の配偶者控除」を受けたことはありませんか。 □ 一定の添付書類(戸籍謄本等)を添付して贈与税申告書を提出しましたか。 ⑤住宅取得等資金の贈与非課税 直系尊属(父母・祖父母など)からマイホーム取得・新築・増改築の 対価に充てるための資金(住宅取得等資金)の贈与 (受贈者:18歳以上、贈与年の合計所得金額が2,000万円以下) 適用時に贈与税申告が必要 省エネ等住宅=1,000万円 その他の住宅=500万円 □ 特例の適用期間内(〜2026年12月31日)の贈与ですか。 □ 省エネ等1,000万円の枠を使う場合には証明書類を添付していますか。 □ 贈与を受けたお金は全て住宅の取得資金に充当しましたか。 □ 翌年3月15日までに申告・入居の期限を守っていますか。 ⑥教育資金の一括贈与 直系尊属(父母・祖父母など)から子や孫への教育資金の贈与 (受贈者:30歳未満、前年の合計所得金額が1,000万円以下) 金融機関での専用手続が必要 累計1,500万円 (「学校等以外」への費用は累計500万円) □ 現行制度の期限内(~2026年3月31日)に教育資金口座の開設等と非課税申告書の提出を行いましたか。 □ 受贈者は30歳未満・前年所得1,000万円以下、贈与者は直系尊属ですか。 □ 領収書の提出期限(支払日から1年以内又は翌年3月15日)を守っていますか。 ⑦結婚・子育て資金の一括贈与 直系尊属(祖父母、父母)から子・孫への結婚・子育て資金の贈与 (受贈者:18歳以上50歳未満、前年の合計所得金額が1,000万円以下) 金融機関での専用手続が必要 累計1,000万円 (結婚関係費は300万円が上限) □ 現行制度の期限内(~2027年3月31日)に専用口座開設・拠出と非課税申告書の提出を済ませましたか。 □ 受贈者は18歳以上50歳未満で、前年の合計所得金額が1,000万円以下ですか。 □ 費目の線引き(婚礼・家賃等・引越/不妊治療・妊娠・出産・産後ケア・子の医療・育児)と対象外の費目は国税庁HP等で確認しましたか。 ⑧障害者への贈与信託 親や親族など個人から特定障害者への贈与 金融機関での専用手続が必要 特別障害者=6,000万円 その他の特定障害者=3,000万円 □ 受益者が「特定障害者」(特別障害者または障害者のうち精神に障害がある方)に該当するか、証明書類で確認しましたか。 □ 信託設定日までに受託者経由で「障害者非課税信託申告書」を税務署へ提出していますか。 □ 払出しの使途が生活・療養の範囲に収まっており、居住用不動産の取得など不可の支出を計画していませんか。 贈与テクニック一覧表 グレーな“抜け道”は扱わず、正しい運用だけを紹介します。 贈与税では、近年大きな改正もありその論点も含めて記載しています。 税制は改正が続くため、利用する際には最新の国税庁HPの情報をご確認ください。 第1章 生活・教育・医療・冠婚葬祭の「都度払い」は原則非課税 意外と知られていませんが、親や祖父母などの扶養義務者※からの生活費・教育費は、通常必要な範囲(金額)で必要な都度に支払されるなら、贈与税の対象となりません。 ※ 扶養義務者とは具体的には次の者をいいます。 ①配偶者 ②直系血族(祖父母や両親、子供、孫など)及び兄弟姉妹 ③家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族(金銭を受けた者から見ておじ、おば、甥、姪など) ④三親等内の親族で生計を一にする者 また、医療費や妊娠・出産費、香典・祝金など社会通念上相当な金品も同じように贈与税の対象となりません。 ただし、誤った理解をしていると課税対象になることもあるので次のポイントに注意してください。 1-1ポイント (1)【必要となった都度贈与を行い、使ったことが分かる証拠を残す】 最大のポイントは、必要となった都度贈与を行い、必ず使ったことが分かる証拠を残しておくことです。 例えば毎月10万円の教育費が必要な場合に、一括して1年分の120万円を渡してしまうと預金・投資・不動産購入に転用していると見られる可能性があり贈与税の課税対象になります。 実務的には、疑われないためにも直接親や祖父母から支払先に振り込んでしまった方が安心です。 (2)【生活費を負担する場合、社会通念上適当と認められうる内容・金額か】 扶養義務者が生活費を代わりに支払う場合には、社会通念上適当と認められる内容・金額である必要があります。 例えば下記のような質問を受けることがあります。 「すでに就職をしていて十分な稼ぎがあり離れて暮らしている子供がいるが、生活費を負担しても贈与にならないか。」 結論としては、この場合は「贈与として課税対象になる可能性が高い」です。 子供に高額な所得があるような場合に、生活費として家賃等を負担するのは社会通念上適当と認められ ないと考えられるからです。 なお、根拠として国税庁の資料の中には下記のような記載があります。 『扶養義務者相互間において生活費に充てるために贈与を受けた場合に、贈与税の課税対象とならない「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除きます。)をいい、通常の日常生活を営むのに必要な費用に該当するかどうかは、贈与を受けた者(被扶養者)の需要と贈与をした者(扶養者)の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲かどうかで判断することとなります。 』 出典「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A」国税庁 1-2チェックリスト □ 扶養義務者からの援助ですか。 □ 必要な都度渡している又は扶養義務者が直接振り込んでいますか。 □ 使ったことが分かる証拠(領収書や振り込んだことが分かる通帳)を残していますか。 □ 生活費を負担する場合には社会通念上適当と認められる内容・金額ですか。 □ 香典・祝金は社会通念上相当な金額ですか。 第2章 暦年課税の年間110万円の基礎控除(申告不要) 贈与税の原則的方法である暦年課税制度では年間(毎年1月1日から12月31日)110万円までは申告・納税ともに不要になります。 具体的な計算としては、受贈者本人がその年にもらった合計額から110万円を差し引き、残額だけに贈与税がかかります。 したがって、年合計110万円以下は非課税かつ申告が不要になります 2-1ポイント (1)【判定は「贈与者ごと」ではなく「受贈者1人・年合計」で行う】 110万円の判定は贈与者(渡した人)ごとではなく、受贈者(受け取った人)ごとに年合計の金額で行います。 例えば祖父から100万円、祖母から100万円の200万円を1年間で受け取った場合 「祖父、祖母からそれぞれ110万円以下の金額をもらったので申告・納税はいらない」というのは誤りになります。 自分が受け取った年合計で110万円以下か判定することになるので、この場合1年間で200万円受け取っており、贈与税の申告・納税が必要になります。 (2)【贈与契約書など贈与の証拠を残す】 贈与は口頭でも成立しますが、後日のトラブルや税務調査に備え、「だれが・いつ・何を・いくら・どの方法で渡したか」が客観的に分かる資料を必ず残しましょう。 最も確実なのは、贈与の都度に贈与契約書を作成し、実際の資金移動は口座振込で行い、通帳や振込明細を保存する方法です。 なお、贈与を成立させるには、受贈者が使える状態にしておく必要があるため、通帳や印鑑なども受贈者が管理しておく必要があります。未成年者への贈与は、受贈者(受け取る人)名義の口座を用意し、法定代理人(原則:父母)が管理していれば大丈夫です。 また、暦年贈与を継続する場合でも、毎年の贈与ごとに契約書と振込記録を残すことが大切です(最初から複数年分を約束する書き方は避けてください)。 以下に金銭を贈与した場合の贈与契約書のひな型を添付しますのでご活用ください。 なお、第3章以降の贈与についても金銭を贈与する場合にはご活用いただけます。 贈与契約書 フォーマット 贈与契約書 フォーマット(未成年者用) 2-2チェックリスト □ (申告をしない場合)その年の受け取った金額の合計が110万円以下ですか。 □ 受贈者(受け取った人)単位で判定をしていますか。 □ 贈与契約書を作成しましたか。 □ 受贈者が受け取った財産を管理していますか。 コラム:相続対策で贈与する場合には生前贈与加算の改正に注意 相続対策として贈与を検討されている方は、令和6年以降から適用される改正にご注意ください。 贈与をする方の中には、贈与者(渡す人)の財産が多く将来の相続税を減らすために贈与をするという方も多いかと思います。 ただし、贈与した財産が全て無条件に相続税から控除されるわけではありません。 令和6年の改正以前でも贈与した財産のうち、相続開始前3年以内に相続で財産を受け取る者に行った贈与については、相続財産に足し戻して相続税の計算をする必要がありました。 これを一般的に生前贈与加算といいます。 この生前贈与加算制度ですが、令和6年以降の暦年贈与は相続開始前7年以内の贈与が原則加算されることになりました。 また、相続開始前7年以内で3年を超える部分について総額100万円まで加算除外される取り扱いがされます。 第3章 相続時精算課税制度を利用する 相続時精算課税は、贈与時の負担を軽くしつつ最終的に相続時に合算して精算する仕組みです。 具体的には「累計2,500万円まで贈与税がかからずに贈与することができるが、将来の相続時には相続財産に足し戻して相続税を計算する」という制度です(2,500万円超の金額には一律20%の贈与税がかかります)。 この制度を利用するためには、原則として以下の要件を満たす必要があります。 ・贈与者が60歳以上で受贈者18歳以上の直系卑属(親と子や祖父母と孫などの関係)の組合せである(年齢は贈与年1月1日現在) ・相続時精算課税を初めて使う年は、翌年2月1日~3月15日(贈与税の申告期間)に「相続時精算課税選択届出書」を税務署へ提出して選択の意思表示をする なお、改正があり令和6年以降は年110万円の基礎控除が設けられ、110万円を超える贈与をした場合に累計2,500万円に加算されていきます。 改正前は、相続時精算課税制度を選択した後の贈与については、110万円以下の少額であっても贈与税の申告が必要であり、すべて2,500万円の特別控除枠に算入されるとともに、相続時にはその全額を足し戻して相続税を計算する必要がありました。 一方、改正により令和6年1月1日以後の贈与からは、年間110万円以下の贈与については申告が不要となり、この部分は2,500万円の特別控除枠にも算入されず、相続時にも足し戻されないことになりました。 3-1ポイント (1)【贈与者ごとに選択が肝】 相続時精算課税は「贈与者ごと(父・母・祖父母など)に選択」する制度です。 ある贈与者についてこの制度を一度選択すると、その同じ贈与者(=特定贈与者)から将来受ける贈与は、以後すべて相続時精算課税で処理されます。 他方、別の贈与者については暦年課税を使うなど、贈与者ごとに使い分けが可能です。 例えば、父は相続時精算課税、母は暦年課税ということが可能ということになります。 (2)【同一年に複数の特定贈与者がいる場合、年110万円は受贈者単位で按分】 令和6年以降、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が導入されました。 ただしこの110万円は「贈与者ごと」ではなく「受贈者1人あたり・年合計」の枠です。 したがって、同一年に祖父と祖母の双方で相続時精算課税を選択して贈与を受けた場合、110万円は両者の金額の割合で按分して各贈与から控除します。 例えば、同年に祖父から600万円・祖母から400万円(ともに相続時精算課税制度を選択)の贈与を受けたなら、110万円は祖父66万円・祖母44万円に按分して各贈与から控除することになります。 そのうえで、2,500万円の特別控除は贈与者ごとに累計で適用します。 (3)【選択後は同一贈与者について暦年課税へ戻れない】 一度、その贈与者について相続時精算課税を選択・適用すると撤回不可です。 以後、その同一贈与者からの贈与はずっと相続時精算課税となり、暦年課税へ変更できません。 制度選択は将来の贈与計画や相続時の足し戻し(相続時精算課税は基礎控除を超える金額は期間制限なく加算)まで見据えて決めるのが安全です。 (4)【基礎控除の110万円は、足し戻しされない】 暦年贈与は生前贈与加算制度により、基礎控除の年間110万円以下の贈与でも相続開始前7年以内の贈与は原則相続財産に加算されます。 しかし、相続税精算課税は、基礎控除の110万円以下の贈与は相続開始前7年以内の贈与でも加算されません。 3-2チェックリスト □ 初回適用時に選択届出を期限内に提出しましたか。 □ (申告をしない場合) その年に特定贈与者から受け取った金額の合計が110万円以下ですか。 □ 複数特定贈与者の年は110万円を按分して計算していますか。 コラム:改正後、「暦年課税」と「精算課税」—どちらが有利? 第2章の暦年贈与と第3章の精算課税制度どちらを使うべきか悩んでいる方も多いかと思います。 お子様に贈与することを前提に一般的な考え方を以下のフローチャートでまとめましたのでご活用ください。 まず、将来相続税がかかる場合と将来相続税がかからない場合で大きく分かれます。 将来相続税がかからない場合には、将来相続の際に財産を受け取れば無税で財産を受け取れるので、贈与する場合も1年間の贈与額は110万円以下にして贈与税がかからないようにした方がよいです。 ただし、どうしても110万円超の財産を一度に贈与する必要がある場合には、相続時精算課税制度を利用しましょう。 将来相続税がかかる場合には第2章のコラムで解説した生前贈与加算の影響を考慮する必要があります。 将来相続が7年以内に発生しそうであれば、暦年贈与しても相続時に足し戻しになってしまうため、相続時精算課税制度を使って贈与をして令和6年の改正で新設された相続時精算課税制度の基礎控除110万円を活用しましょう。 例えば、相続開始の前年に110万円を贈与した場合、暦年贈与であれば生前贈与加算の対象になりますが、相続時精算課税制度で贈与していれば基礎控除以下なので足し戻しの対象になりません(相続時に財産を相続しないお孫様への贈与の場合には、生前贈与加算の対象にならないので暦年贈与で大丈夫です)。 将来の相続までまだ相当の期間がある場合には、暦年贈与で少額を長期間贈与するようにしましょう。 ただし、相続対策として将来値上がりが予想される高額な財産(未上場株式や開発前の土地など)を贈与する場合には、相続時精算課税制度で一度に贈与してしまった方が有利です。 なぜなら、暦年贈与で贈与すると高額な贈与税がかかりますし、相続まで保有していると値段が大幅に上がっている可能性がありますが、相続時精算課税制度で事前に贈与しておけば将来相続の際に足し戻す金額は安い贈与時の金額でよいからです。 第4章 夫婦間の「居住用不動産の配偶者控除」(おしどり贈与) 婚姻20年以上の夫婦が、居住用不動産又はその取得資金の贈与を受ける場合、基礎控除110万円に加え最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できる特例を「居住用不動産の配偶者控除」といいます。 なお、2,110万円以下の贈与で全額控除され贈与税が発生しない場合でも、特例の適用を受けるために贈与の翌年3月15日までに贈与税申告書を提出する必要があります。 贈与税申告書に下記の書類を添付して適用を受けます。 (主なもの) ・戸籍謄本/抄本(贈与日から10日経過後に作成) ・戸籍の附票の写し(同上) ・登記事項証明書等(取得の事実を証する書類) ・不動産そのものの贈与時は評価明細書等 4-1ポイント (1)【投資用は対象外】 この特例の対象は「居住用不動産」またはその取得資金に限られます。 賃貸用・別荘・セカンドハウスなどの投資・保養目的の物件は対象外です。 店舗兼住宅のように居住用とそれ以外が混在する場合は、一定の場合を除き居住用部分に限って適用されます(敷地のみの贈与でも要件次第で対象となります)。 (2)【居住の実態がないと適用不可】 適用には、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与で取得した家屋(または贈与資金で取得した家屋)に現実に居住し、その後も引き続き居住する見込みであることが求められます。 入居がこの期限に間に合わない、あるいは当初から短期売却を前提としているようなケースは要件を満たしません。 また、この特例は同じ配偶者からの贈与については一生に一度のみ適用可能です(再婚相手は別)。 タイミングや金額配分を慎重に設計しましょう。 4-2チェックリスト □ 婚姻20年以上の夫婦間の贈与ですか。 □ 贈与する不動産又は不動産の取得資金の対象は居住用ですか。 □ 翌年3月15日に贈与を受けた者が現実に居住をしていますか。 □ 過去に同じ配偶者から「居住用不動産の配偶者控除」を受けたことはありませんか。 □ 一定の添付書類(戸籍謄本等)を添付して贈与税申告書を提出しましたか。 コラム:「居住用不動産の配偶者控除」を使わず、相続で引き継いだ方が有利な場合も 不動産の贈与税評価額が2,110万円(配偶者控除2,000万円+基礎控除110万円)を超えるケースや、そもそも相続税がかからない見込みのご家庭では、この特例(おしどり贈与)を使わず、相続で引き継ぐ方がトータルで有利になることがあります。 ≪なぜ相続が有利になりやすいのか≫ ①小規模宅地等の特例  相続では、被相続人の居住の用に供されていた宅地について、330㎡まで評価額を80%減額できる特例(特定居住用宅地等)が使えます。 土地の評価が大きいほど効果が大きく、贈与で先に移してしまうとこの強力な減額を失うことがあります。 ②配偶者の税額軽減  相続税には、配偶者が取得した遺産が「1億6,000万円」または「法定相続分」までなら相続税がかからないという制度があります。 配偶者に自宅・敷地をまとめて相続させる設計と相性が良く、贈与よりも税負担が小さくなる場面が少なくありません。 ③不動産取得税、登録免許税の違い  相続で不動産を取得する場合、不動産取得税は課税されません。 しかし、贈与で取得すると不動産取得税の課税対象になります(おしどり贈与や相続時精算課税の適用を受けても同様です)。 また、登録免許税についても相続で取得した場合と贈与で取得した場合では税率が異なっています。(相続の方が低い) この差も相続有利の一因です。 したがって、「居住用不動産の配偶者控除」(おしどり贈与)を使う場合には専門家に相談して適用することをおすすめします。 第5章 住宅取得等資金の贈与非課税 直系尊属(父母・祖父母など)からマイホーム取得・新築・増改築の対価に充てるための資金(住宅取得等資金)の贈与については、要件を満たせば省エネ等住宅※は1,000万円、その他の住宅は500万円まで非課税となります。 今後も更新される可能性はありますが、現行では、2024年1月1日~2026年12月31日までの贈与に限り適用ができるとされています。 非課税の可否は、受贈者の年齢・所得、住宅性能の証明、床面積、資金の使途と時期、入居期限など、細かな条件をクリアできるかで決まります。 下記のポイントでも基本的なものは記載しますが、実際に適用する場合には国税庁HPや税理士に確認することをおすすめします。 ※省エネ等住宅:省エネ性能や耐震などの性能が一定以上の住宅(該当するかの判断はハウスメーカーや不動産会社にお問い合わせください。) 5-1ポイント (1)【年齢・所得要件、性能証明、居住期限を満たすこと】 ①受贈者(もらう側)については以下の要件を満たす必要があります。 ・18歳以上であること(贈与年1月1日現在) ・贈与年の合計所得金額が2,000万円以下であること(床面積40㎡以上50㎡未満の住宅は1,000万円以下) ・贈与者は受贈者の直系尊属(祖父母、父母等)であること 等 これらを満たさないと非課税の対象になりません。 ②住宅要件と「省エネ等住宅の証明」 対象は日本国内の自己居住用になります。(床面積は原則40~240㎡) 「省エネ等住宅」の1,000万円枠を使うには、住宅性能証明書等で、所定の省エネ/耐震/バリアフリーのいずれかの基準に適合していることを申告時に添付して証明します。 ③期限管理(資金充当・入居・申告) 「住宅取得等資金の贈与非課税」の特例の適用を受ける場合には、以下の期限管理に注意する必要があります。 ・翌年3月15日までに資金の全額を住宅の新築・取得・増改築の対価に充当すること。 ・翌年3月15日までに居住すること(または同日後遅滞なく居住が確実)。 ⇒翌年12月31日までに未入居だと原則適用不可となり修正申告が必要になります。 ・申告は翌年2月1日~3月15日に贈与税申告書+契約書写し等を提出する必要があります(非課税でも申告必須)。 (2)【使途の注意:既存ローンの繰上返済はNG】 この非課税はこれから行う新築・取得・増改築の“対価”に充てる資金が対象です。 したがって、よくある誤りですが既に組んだ住宅ローンの返済(繰上返済等)に充てるための贈与は対象外で、非課税になりません。 5-2チェックリスト □ 特例の適用期間内(〜2026年12月31日)の贈与ですか。 □ 省エネ等1,000万円の枠を使う場合には証明書類を添付していますか。 □ 贈与を受けたお金は全て住宅の取得資金に充当しましたか。 □ 翌年3月15日までに申告・入居の期限を守っていますか。 第6章 教育資金の一括贈与 直系尊属(父母・祖父母など)から30歳未満の子や孫へ、教育資金をまとめて贈与する場合、所定の手続きを踏めば最大1,500万円まで贈与税が非課税となる特例です(うち学校等以外への支払い分は累計500万円が上限)。 今後も更新される可能性はありますが、現行では2026年3月31日までの贈与に限り適用ができるものとされています。 なお、受贈者の前年合計所得金額1,000万円以下などの要件に加え、金融機関での専用手続(教育資金口座+非課税申告書)、および領収書の提出期限管理が必要になります。 6-1ポイント (1)【非課税枠の考え方】 非課税の上限は受贈者一人につき累計1,500万円です。 このうち、学習塾・習い事など「学校等以外」に支払う費用は累計500万円までが上限で、両者合計で1,500万円を超える非課税の贈与はできません(学校=入学金・授業料・給食費・修学旅行費等、学校等以外=塾・水泳・ピアノ・通学定期・留学渡航費など)。 また、受贈者が23歳到達後に支払う学校等以外の費用は、教育訓練給付の対象講座に限られる点にも注意が必要です。 (2)【対象者の要件(年齢・所得・贈与者)】 受贈者は教育資金管理契約の締結日に30歳未満であること、かつ前年の合計所得金額が1,000万円以下であることが必要です。 また、贈与者は受贈者の直系尊属に限られます。これらの要件を満たさない場合は特例の適用ができません。 (3)【手続と証憑(「教育資金口座」+非課税申告+領収書提出) 適用を受けるには、信託銀行・銀行・証券会社等で教育資金口座(信託受益権/預入/有価証券購入)を設定し、拠出時(口座開設等の日)までにその金融機関経由で「教育資金非課税申告書」を提出します。 拠出後は、払出方法に応じて領収書を支払日から1年以内または翌年3月15日までに金融機関へ提出する必要があります。 対象は教育資金として社会通念上相当と認められる実支出のみです。 支払先(学校・塾等)への直接支払が原則で、宛名・日付・金額・内容が分かる領収書の確保が必要になります。 6-2チェックリスト □ 現行制度の期限内(~2026年3月31日)に教育資金口座の開設等と非課税申告書の提出を行いましたか。 □ 受贈者は30歳未満・前年所得1,000万円以下、贈与者は直系尊属ですか。 □ 領収書の提出期限(支払日から1年以内又は翌年3月15日)を守っていますか。 コラム:教育資金は一括贈与すべき?それとも第1章の都度支援の方がいい? 結論としては都度支援で対応できるものは、都度支援で十分です。 一括贈与は、入学金・施設費・留学費など大口や複数年分を早めに確保できますが、専用口座での管理と領収書提出が必須で、受贈者の所得要件や制度期限、終了時の残額課税、学校外費用には上限があるなど複雑かつ手続きも煩雑です。 また、第7章のコラムで記載していますが、一括贈与については、使い切れず残額が出れば相続税や贈与税の対象となるため、卒業時までの支払計画と提出期限の管理が不可欠です。 一方、日々の学費・塾代・通学定期など「通常必要な教育費」は、扶養義務者が必要の都度に学校・塾等へ直接支払えば原則贈与税の対象外(社会通念上相当額に限る)で申告も不要です。 したがって、一般的には都度支援の方が使い勝手はいいです。 第7章 結婚・子育て資金の一括贈与 直系尊属(祖父母、父母)から18〜50歳未満の子・孫へ結婚・子育て資金を一括拠出し、金融機関の領収書確認を条件に、1,000万円まで非課税(結婚関係費は300万円が上限)で贈与をすることができる制度です。 受贈者は契約締結日に18歳以上50歳未満であることが必要で、前年の合計所得金額が1,000万円を超える受贈者は適用することができません。 今後も更新される可能性はありますが、現行制度上では拠出(預け入れ)の期限は2027年3月31日までで、契約は原則として受贈者が50歳に達した日などで終了します。 7-1ポイント (1)【制度の「枠」と上限の考え方】 非課税枠は受贈者単位で累計1,000万円です。 このうち結婚関係費は300万円が上限で、1,000万円に加算されるわけではありません(つまり、1,300万円非課税にはならない)。 結婚関係費には婚礼(挙式・披露宴)・結婚を機に賃貸する住居の家賃等・引越費用が含まれ、子育て関係費には不妊治療・妊娠・出産・産後ケア・子の医療費・子の育児費が含まれます。 非課税とならない費目(婚活サービス、結納、指輪、新婚旅行、家具・家電など)も明示されているため、事前に国税庁のHP等で費目の線引きを確認しましょう。 (2)【専用口座+領収書で用途証明する】 拠出は金融機関の専用口座(結婚・子育て資金管理契約)で受け入れ、「結婚・子育て資金非課税申告書」を金融機関経由で提出します。 拠出後は領収書等を金融機関に提出して、結婚・子育て資金に充当された事実の確認・記録・保存を受けるのが必須フローです。 教育資金の一括贈与の非課税と併用は可能ですが、同一の支出を二重に非課税にすることはできません。 費目の重複が疑われる支出は、どちらの制度で処理するかを領収書の取り方とともに決めておくと安全です。 7-2チェックリスト □ 現行制度の期限内(~2027年3月31日)に専用口座開設・拠出と非課税申告書の提出を済ませましたか。 □ 受贈者は18歳以上50歳未満で、前年の合計所得金額が1,000万円以下ですか。 □ 費目の線引き(婚礼・家賃等・引越/不妊治療・妊娠・出産・産後ケア・子の医療・育児)と対象外の費目は国税庁HP等で確認しましたか。 コラム:教育資金の一括贈与や結婚子育て資金の一括贈与後に贈与者が亡くなった際に残額が残っていた場合 教育資金・結婚子育て資金の非課税制度を利用中に贈与者が死亡した場合、口座や信託に残っている管理残額(=非課税拠出額-制度上認められる支出額)は、原則として贈与者の遺産に取り込まれ、相続税の課税対象になるとされています。しかし、教育資金については、受贈者が23歳未満・在学中等なら非課税とされるため、相続税がかからないケースが多くありました。 ただし、令和5年4月1日以後取得分で贈与者の遺産が5億円超の場合は受贈者の状況に係わらず残額にも相続税が課税されることになったので注意が必要です。   第8章 障害者への贈与信託 親や親族など個人が、特定障害者※を受益者として信託銀行等と結ぶ信託(特定障害者扶養信託契約)に財産を拠出すると、一定額まで贈与税が非課税になります。 制度対象者になるかの可否は「証明書類(障害者手帳・医師の診断書等)」で確認します。 非課税枠は特別障害者なら最大6,000万円、その他の特定障害者なら最大3,000万円が上限(受益者1人あたりの累計額)になります。 生活費や医療費など、受益者の生活・療養のために使うことを前提とした制度です。 ※特定障害者:特別障害者に加え、障害者のうち精神に障害のある方を含む概念です。 8-1ポイント (1)【非課税枠の考え方及び利用方法】 非課税の上限は受益者1人につき累計で、特別障害者=6,000万円、その他の特定障害者=3,000万円になります。複数の人からの拠出や複数回の拠出でも、受益者側で合計して累計に加算されます。 信託設定日までに、受託者(信託銀行等)の営業所を通じて「障害者非課税信託申告書」を所轄税務署に提出する必要があります。 (2)【使える費目の線引き(生活・療養優先/不動産取得は不可) 原則として生活費・療養費など日常の生計維持に関する支出が対象になります。 一方で、居住用不動産の取得のための払出しは不可と明示されています(生活・療養の需要に応じたものとは認められないため)。 8-2チェックリスト □ 受益者が「特定障害者」(特別障害者または障害者のうち精神に障害がある方)に該当するか、証明書類で確認しましたか。 □ 信託設定日までに受託者経由で「障害者非課税信託申告書」を税務署へ提出していますか。 □ 払出しの使途が生活・療養の範囲に収まっており、居住用不動産の取得など不可の支出を計画していませんか。 第9章 贈与を行う場合の注意点 贈与は制度選択・年次設計・証憑整備で結果が大きく変わります。 「制度の併用可否を取り違える」、「連年贈与(定期贈与)に見える運用をしてしまう」、「受贈者が実質管理できていない名義財産(名義預金)を作る」これらは代表的なリスクです。 本章では、実務で誤りやすいや問題になりやすい4点を要点整理します。 9-1各制度の併用可否の関係 (1)相続時精算課税と暦年課税 相続時精算課税は贈与者ごとに選択し、同一贈与者について撤回不可です。 ただし、同一年に他の贈与者からは暦年課税を用いることは可能です(別人なら併用可)。 令和6年以降は基礎控除110万円が相続時精算課税にも導入され、暦年贈与の基礎控除110万円と相続時精算課税の基礎控除110万円は併用して適用ができます。 (2)住宅取得等資金の非課税 × 相続時精算課税 住宅取得等資金の非課税(500万円/省エネ等1,000万円)を先に適用し、枠超過分について相続時精算課税(2,500万円特別控除+年110万円)を使う併用が可能です(要件充足が前提)。 (3)教育資金・結婚子育て資金との関係 いずれも別建ての非課税制度で、併用できないものはありませんが、同じ支出を二重に非課税にはできません。 教育資金贈与や結婚子育て資金の制度両方で同一費目を重複適用しないように注意しましょう。 9-2 連年贈与(定期贈与)に見えない設計にする 第2章でも少し述べましたが、連年贈与に見られないように設計する必要があります 例えば「毎年100万円を10年」と最初に約束してしまうと、1,000万円を10年で分割払いしたものとみなされ、初年に1,000万円贈与したものとして課税される可能性があります。 毎年ごとに贈与契約を完結させ、金額・時期・財産の種類を機械的に固定しない、「都度の資金移動と記録(振込・契約書)を残す」ことが安全運用の要点です。 9-3 名義財産(名義預金)にしない 受贈者が通帳・印鑑を実質管理していない、贈与の事実を知らないといった場合、名義人と実質所有者が異なるとして相続財産に算入される典型があります。 受贈者名義口座へ振込し、受贈者が把握・管理し、用途証憑を保存することで贈与の実体を整えるのが重要です。 9-4 贈与しすぎない 相続対策のために事前に子供に財産を贈与しすぎると問題が起こることがあります。 実際に私の係わった方の中でも相続税がかからないように財産のほとんどを子供に移転していたが、不慮の事故で子供の方が先になくなってしまったということがありました。 子供に配偶者や子供がいなければ相続税を払って自分のもとに財産が戻ってくることになりますが、配偶者や子供がいた場合には配偶者や子供に相続されることになります。 私が経験した案件では亡くなった子供の配偶者と仲が悪くなかったため、大きな問題にはなりませんでしたが、子供の配偶者が外国籍の方で全ての財産をもって母国に帰ってしまったという話も聞いたことがあります。 したがって、少なくとも自身の今後の生活費や生活の拠点となる財産などは贈与せず取っておくようにしましょう。 第10章 まとめ いかがだったでしょうか。 この記事では、非課税・申告不要になり得る各制度の使いどころと落とし穴を横断的に整理しました。 8つのテクニックのまとめ ① 扶養義務者の「都度払い」(生活・教育・医療・冠婚葬祭)  社会通念上相当額を必要の都度に直接支払すれば原則非課税 ② 暦年贈与(少額で長期間贈与する方向き)  年110万円まで非課税・申告不要。毎年ごとに都度契約+振込記録を残しましょう。 ③ 相続時精算課税制度(値上がり資産・一括移転向き)  年110万円の基礎控除+累計2,500万円の特別控除 ④ 居住用不動産の配偶者控除(おしどり贈与)(相続と比較して有利な時に適用)  婚姻20年以上で適用可能。基礎110万円+最大2,000万円控除。居住の実態が必須になります。 ⑤ 住宅取得等資金の非課税(マイホーム)  省エネ等住宅1,000万円、その他の住宅500万円の非課税枠。申告が必須になります。 ⑥ 教育資金の一括贈与  一定の要件を満たせば累計1,500万円の非課税枠。金融機関で専用口座の作成が必要。 ⑦ 結婚・子育て資金の一括贈与  一定の要件を満たせば累計1,000万円の非課税枠。金融機関で専用口座の作成が必要。 ⑧ 特定贈与信託(障害者扶養信託)  生活・療養費に限定。申告書の提出が必須。 最後に、必ず最新の国税庁情報で要件・期限を確認し、判断に迷う点は専門家へ早めに相談をしましょう。 「合法に・シンプルに・ムダなく」 を合言葉に、今日から実行に移しましょう。

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