国際相続サポート
中国の財産に相続税はかかる?日本在住者が確認すべき相続時の注意点
中国で財産を相続する場合はどうしたらいいのか? このように疑問をお持ちの方も多くいるのではないでしょうか。 中国本土で財産を相続するときには、相続税というものはありません。 ただし、中国にある財産を相続する際には名義変更と送金の段取りが重要になります。 また、中国で相続税がかからない場合でも、例えば日本在住の方であれば、日本の相続税が課される可能性があります。 そもそもCRS(共通報告基準)という制度が存在し、海外口座の情報は各国の税務当局に自動で共有されます。 そのため、正確な把握と適切な申告が必要になるのです。 この記事では中国財産がある方から財産を相続する場合に気を付けるべき事項をまとめています。 この記事を読んで手続きを円滑に進められれば幸いです 第1章 中国に相続税はな 中国本土には相続税がなく、相続そのものに税金はかかりません。 ただし、香港・マカオ・台湾は独自制度で運用されています。 香港とマカオは相続税がなく、台湾には相続税が設けられています。 地域差は実務の細部に及ぶため、「本土」・「香港」・「マカオ」・「台湾」を分けて考え、各地域での最新の運用を確認しながら進めましょう。 また、中国には相続税はありませんが、中国にある財産を相続する場合にはその名義変更や送金手続きが重要になります。 次章では中国にある財産の名義変更、送金手続きについて確認していきます。 第2章 中国の財産の名義変更、日本への送金手続き 名義変更・送金手続きがうまく回るかどうかは、必要書類の整え方と手順の設計にかかっています。 作業は大きく、「財産の把握」、「名義変更(登記・銀行)」、「外貨両替と送金」という三つの段階に分かれます。 どの段階でも本人確認と書類の整合性が重視され、一枚の不足や表記の不一致が差し戻しの原因になりがちです。 相続人が一人なら、遺産分割の同意書がいらない分だけ手続きは進みやすいです。 ただし、氏名の表記や親族関係を示す書類に少しでも不一致・不足があると、役所や銀行から差し戻されて「出直し」が増え、結局は時間がかかります。 そのため、最初に提出書類の作りをきっちり設計することが大切です。 中国では他の国に比べてインターネット等で得られる情報が少ないため、いずれの手続きも非常に困難になるケースが多いです。 ここでは一般的な手続きの流れや方法を記載しますが、実際には現地専門家と対応を検討しながら進める必要があります。 ※アポスティーユ=国際的に文書の正しさを証明する仕組み(提出先の国が条約加盟国の場合に利用可)。 2-1 中国にある「財産の把握」 最初の一歩は、どこに何があるのかを把握し一覧にすることです。 不動産、銀行・証券、保険などを推定も含めて洗い出し、優先順位を付けて照会していきます。 中国国内での手続きでは、明確に正当な権限の確認ができない相手に情報を開示しません。 そのため、入念に書類を準備して手続きを進める必要があります。 また、現地の弁護士や専門職に委任して進める場合は、委任状の形式や本人確認の方法を事前にすり合わせておくと行き違いを防げます。 パスポート・戸籍・翻訳書類の氏名表記は最初に統一しておくと、後の差し戻しを大幅に減らせます。 2-2 中国における不動産の権利と「名義変更」手続き 中国の不動産は、建物の所有権と土地の使用権を一体として取り扱い、日本と同様に名義変更手続きを行います。 具体的には、相続が発生したら以下の流れで手続きを進めます。 ①不動産権証(不动产权证书)で用途、使用期限、権利の種類を確認します。 ②死亡事実や親族関係を示す日本の書類を中国語に翻訳します。 ③公証・アポスティーユを付して、不動産登記機関に継承登記を申請します。 地域によっては公告や追加照会が求められることがあり、提出書類の精度と、窓口の最新案内に合わせた準備がスピードを左右します。 農村の宅基地を含む物件は「房地一体」で扱われ、備考欄への注記など地域運用の差が大きいため、登記センターに事前照会して要件を確認しておくと安心です。 被相続人又は相続人が中国国籍の場合は、親族関係を示す書類として、親族関係公証書、出生公証書、死亡公証書などを中国国内の公証処で取得することもあります。 公証手続については、日本の公証役場ではなく、中国現地の公証処での公証が必要となる場合がありますので注意が必要です。 2-3 中国における預金の名義変更手続き 中国では預金の名義変更手続きも困難となります。 銀行では、被相続人の口座がいったん凍結され、相続人の申請に基づいて払戻しや名義変更が行われます。 ただし、中国の銀行では正当な権限の確認ができない相手に情報を開示しないので、その手続きも順調に進まないことが多いです。 具体的な必要書類は銀行ごとに細部が異なります。 事前に最新のリストを取り寄せ、戸籍・身分証の中国語訳、公証、委任状、銀行所定の相続書類、送金先口座の情報などをそろえてから窓口に向かうのが効率的です。 2-4 中国の預金を日本に送金する際のポイント 日本への送金時のポイントは、「相続を目的とする正当性の説明と裏付け資料を揃えられるか」になります。 中国の外貨・海外送金には目的と真実性の審査があり、用途、金額、回数の取り扱いは銀行の運用と提示書類の整合で決まります。 外貨両替と送金の際には以下の点に注意しましょう。 ・名義変更の完了時期を確認しておく ・為替レートや手数料を見込んだ両替のタイミングを計画する ・相続目的での枠超えの扱い(中国人が外貨に両替して送金する金額が5万米ドルを超える際には所定の手続きを経る必要があります)を適用できるようにする ・着金予定日までを含めた計画表を先に作っておく また、送金手続きと注意点については下記のような地域差があります。 ・香港:外貨の出入りは比較的スムーズ。ただしKYC(本人確認)が厳格で、書類整合性のチェックが細かい。 ・マカオ:相続税はないものの、不動産移転で印紙税などの周辺費用が発生し得る。費用見込みを事前に確認。 ・台湾:相続税の申告スケジュールを送金計画と一体で組み立てる必要がある。(評価・書類準備の期間を要する)。 いずれの地域でも、銀行担当者と早めに要件をすり合わせておくと安心です。 第3章 日本で相続税がかかる場合も 相続人が日本の居住者である場合、海外の財産も相続税の対象になり得ます。 この記事では日本側の制度説明を最小限にとどめますが、「対象になる可能性がある」という前提で、評価資料の準備と期限管理を先に進めておくと、後戻りを避けられます。 後述するCRSの運用が広がっているため、「申告しなければ分からない」という考え方は通用しません。 3-1 中国にある財産でも相続人が日本にいれば日本の相続税の課税の対象 日本の居住者が財産を相続する場合は、中国にある財産も課税の対象になり得ます。 最終的な判定は居住地や国籍、経緯に左右されるため、判断が難しい場合は早めに専門家へ確認をとって、迷いのないスケジュールを引きましょう。 日本側での検討を最低限に抑えつつも、「対象になり得る」という前提で準備しておけば、後で制度の線引きを見直すことがあっても対応できます。 3-2 中国にある財産の評価 中国に財産がある場合、その価額を評価するというのも重要になります。 なぜなら、日本の相続税を計算する際には、中国にある財産の価額を算定して、日本の税率に乗じることになるからです。 財産の評価には資料の精度と段取りが重要になります。 不動産は権利証・登記情報・市場価格など現地資料にもとづいて評価し、預金は残高証明と基準日の外国為替レートで円換算します。 取り寄せや翻訳、公証に時間を要するため、申告期限から逆算して、誰がいつ、どの資料を用意するかを明確にし、換算の根拠やレートの出所をあわせてファイルしておくと、後日の問合せにも強くなります。 3-3 CRS制度に注意 CRS(共通報告基準)は、各国の税務当局が金融口座情報を自動的に交換する国際的な枠組みです。 例えばCRS参加国であるシンガポールに預金を持っている人が亡くなった場合には、日本の税務署がシンガポールの税務当局に要請をすればその方のシンガポールにある預金情報を取得することができるのです。 この制度により、以前は外国の預金まで税務署が調査することは難しかったのですが、容易に把握することができるようになりました。 中国本土、香港、マカオはいずれも参加し、2018年から情報交換が始まっています。 実務では、口座や残高を最初から正確に把握し、名寄せされても困らない状態に整えておくこと、そして日本側で適切に申告・整理しておくことが、追加の手間や修正を避けるうえで最も効果的です。 金額の多少にかかわらず、対象や条件に応じて情報は交換され得るため、最初から適切に申告をすることが安安心に繋がります。 第4章 専門家に早めに相談するのが安心 国際相続では、言語、制度、タイムラインという複数の壁が同時に立ちはだかります。 名義変更、送金、日本側の評価と申告といった一連の作業を一本の線で設計できる体制が整えば、必要書類の順番や提出先、確認の手戻りが減り、全体のスピードが一気に上がります。 4-1 国際相続に強い税理士なら安心 国際相続に強い税理士を窓口に一本化できると、迷いが消えます。 翻訳、公証、アポスティーユの要否と順番、銀行の要求書類の事前確認表づくり、評価基準日の設定や為替レートの根拠管理、そしてCRS時代に求められる説明可能性を担保した書類整備まで、流れ全体を見通して組み立てられることが、時間と費用の無駄を減らす最大の効果です。 4-2 事前の準備で手間を減らせます 生前から情報を「見える化」しておくと、相続時の負担は劇的に小さくなります。 銀行名・支店・口座番号を含む口座一覧、不動産の所在地・証書番号・用途・使用期限を記した権利証と登記情報、投資や保険の契約一覧、戸籍やパスポートなど重要書類の保管場所、銀行担当や登記窓口、代理人といった現地の連絡先など。 これらを一つの場所に集約し、氏名表記を最初にそろえるだけで、後の差し戻しや重複作業が目に見えて減ります。 4-3 専門家の関与で家族トラブルも防げます 第三者が関与すると、感情と作業を分離でき、誤解の芽を早い段階で摘み取れます。 相続人が1人のときでも、銀行や登記で伝えるべき「言い回し」や、証跡の残し方、期日の管理を支援してもらうことで、スムーズに完了へ近づけます。 第5章 国際相続は「税理士法人マインライフ」へ 国際相続は、国内相続とは比べものにならないほど複雑で、専門家の存在が成功の分かれ道となります。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 「海外の財産をどう扱えばいいのかわからない」「外国税額控除を受けたいが手続きに不安がある」―― そのようなときは、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 最初の一歩を踏み出すことが、複雑な国際相続を解決へ導く最大のカギとなります。 第6章 まとめ いかがだったでしょうか。 中国本土には相続税がありませんが、放置して良いわけではなく、実務の中心は名義変更(登記・銀行)と日本への送金です。 さらにCRS(共通報告基準)により海外口座情報は各国税務当局へ共有され得るため、正確な把握と整った書類が不可欠です。香港・マカオ・台湾は本土と制度が異なる点にも注意しましょう。 「中国に財産がある」「相続人が海外在住」と分かった時点で、すでに国際相続の土俵です。 早めに相談すれば、書類の差し戻しや送金の行き詰まりを減らし、スムーズな手続き・不要な税負担の回避・家族関係の円満維持につながります。 最初の一歩が、安心の相続への最短ルートです。
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アメリカ贈与税【2026年版】日本から米国在住の子へ送金する前に読む完全ガイド
【当記事は2026年1月1日時点の法令に基づき作成しております。】 アメリカに住んでいる子ども(孫)に財産を贈与してあげたいけど、贈与税はかかるのかな、、、。 そんな疑問をお持ちですね。 日本に住む方がアメリカに住むお子様やお孫様に贈与を行う場合、アメリカと日本、両方の税制度を確認する必要があります。 場合によってはアメリカと日本の両方で税金がかかる、二重課税となる可能性もあります。 今回は日本に住む方がアメリカに住むお子様やお孫様に財産を贈与する場合の税金について解説します。 この記事を読んで、事前に注意点などを確認した上で、お子様たちへ計画的な贈与を行っていきましょう! 第1章 アメリカの贈与税の仕組み まず初めにアメリカの贈与税の基本を確認しましょう。 1-1 誰が贈与税を負担・申告するのか(納税義務者) アメリカの贈与税は日本の贈与税とは異なり、原則的に財産を渡す側(贈与者)に税金を納める義務があります。 なお、贈与者が納税を行わない場合には財産を受け取った側(受贈者)に税金を納める義務が生じます。 アメリカの贈与税の取扱いは、次のとおり贈与者がアメリカ市民・アメリカ居住者であるか、アメリカ非居住外国人であるかにより異なります。 1-2 課税対象となる財産 課税の対象となる財産は以下のとおり、贈与者がアメリカ市民・アメリカ居住者であるか、アメリカ非居住外国人であるかにより異なります。 贈与者がアメリカ非居住外国人の場合、アメリカにある財産であっても無形財産については贈与税の課税対象から外れます。 したがって、例えば、アメリカ市民ではなくアメリカに住んでいない人(アメリカ非居住外国人)がアメリカ国内にある預金の贈与を行ってもアメリカの贈与税は課税されないこととなります。 1-3 申告・納税期限 アメリカの贈与税は暦年(1月1日~12月31日の1年間)を課税単位とし、申告・納税期限は原則として贈与を行った年の翌年4月15日です。 1-4 計算の仕組み・税率 (1)計算手順 アメリカの贈与税は以下の手順で計算します。 ① その年の贈与財産の合計額を集計 ↓ ② ①から年間基礎控除・配偶者控除・寄附金控除をマイナスし課税価額を計算 ↓ ③ ②の結果として計算された課税価額と過年度の課税価額(合計額)を合計 ↓ ④ ③×税率(統一移転税率※)=贈与税総額を計算 ↓ ⑤ 贈与税総額-贈与税控除・統一移転税額控除・外国税額控除 ※統一移転税率は、アメリカの遺産税(日本の相続税に相当する税金)、贈与税ともに同一の税率表が適用されます。 (2)各種控除の内容 ① 年間基礎控除(Annual exclusion) 年間基礎控除とは、贈与税計算上の財産から差し引くことができるもので、2026年における控除額は財産を受け取った人(受贈者)一人当たり19,000ドルとなっています。 なお、この年間基礎控除には、婚姻関係にある夫婦について、ギフトスプリッティング(Gift splitting)という特例が認められています。財産を渡す人(贈与者)が第三者に対して贈与を行う場合、その財産を渡す人の配偶者の同意を得られれば、その第三者に対して、財産を渡す人とその配偶者がそれぞれ半分ずつ贈与をしたものとみなして、倍の年間基礎控除を用いることができます。 このギフトスプリッティングの特例を使うためには税務当局に申告を行う必要があります。 【具体例】 ・Aは30,000ドルを第三者Cに贈与する、というケース。 ・Aの配偶者Bが同意すれば、Aは第三者Cに15,000ドル(30,000ドルの半分)を贈与したものとみなされ、Aの配偶者Bは第三者Cに15,000ドル(30,000ドルの半分)を贈与したものとみなされる。 ・この場合、AとAの配偶者Bの贈与財産の金額は各15,000ドルずつとなり、それぞれ年間基礎控除額の19,000ドルを超えないこととなるため上記②の課税価額が生じず、贈与税は発生しないこととなる。 ② 配偶者控除(Marital deduction) アメリカ市民である配偶者に対して行った贈与は、その全額が配偶者控除の対象となります。 したがって、アメリカ市民である配偶者に対して行った贈与についてはアメリカの贈与税は生じないこととなります。 一方、アメリカ市民でない配偶者に対して行った贈与については、この配偶者控除に上限があり、年194,000ドルとなっています。 ③ 寄附金控除 一定の慈善団体への寄付金については、贈与税計算上の財産から差し引くことができます。 なお、アメリカ非居住者が贈与を行う場合は、「アメリカにおける」一定の慈善団体への寄付金のみが控除の対象となります。 ④ 統一移転税額控除(Unified credits) 統一移転税額控除とは、納付すべき贈与税額の計算にあたって、贈与税の総額から差し引くことができる控除で、2026年における控除額は5,945,800ドル(贈与財産額ベースで15,000,000ドル)となっています。 なお、アメリカ非居住者が贈与を行う場合は、前述の統一移転税額控除の適用は認められていません。 しかし、日米相続税条約の適用により、贈与者がアメリカ非居住者であったとしても日本人である場合には、統一移転税額控除を適用する特例計算が認められています。 また、この統一移転税額控除の適用によって納付すべき贈与税が生じない場合であっても、その年の贈与財産が受贈者ごとの年間基礎控除の金額を超えるときは、確定申告書の提出が必要となります。 ⑤ 贈与税額控除、外国税額控除(Credit for foreign gift taxes) 納付すべき贈与税額の計算にあたって、贈与税の総額から以下を差し引くことができます。 ・過年度に支払ったアメリカの贈与税の合計額(贈与税額控除) ・アメリカ国外で支払った外国の贈与税のうちの一定額(外国税額控除) 外国税額控除については後の章で詳しく解説します。 (3)税率 2026年現在、上記(1)③の課税価額の合計額に適用する税率は以下の表のとおりで、課税対象となる金額が大きくなればなるほど税率が高くなる超過累進税率(18%~40%)となっています。 また、この税率は「統一移転税率」といって、アメリカの遺産税(日本の相続税に相当する税金)、贈与税ともに同一の税率表が適用されます。 贈与税・遺産税 統一移転税率表 1-5 アメリカの遺産税との関係 (1)アメリカの遺産税の概要 アメリカには日本の相続税に相当する税金として「遺産税」が存在します。 この遺産税は亡くなった方(被相続人)の遺産に対して課税がされるもので、納税義務者は亡くなった方(被相続人)となります。(日本の相続税は亡くなった方から財産を相続した相続人等が納税義務者となります。) なお、亡くなった方(被相続人)がアメリカ市民またはアメリカ居住者である場合には、被相続人の有する全世界の財産が課税の対象となりますが、アメリカ非居住者である場合には、アメリカ国内の財産だけが課税の対象となります。 (2)アメリカの遺産税と贈与税の関係 この遺産税は基本的に亡くなった方の財産に税率をかけて税額を算定することとなっていますが、この税率をかける「課税遺産総額」には、亡くなった方(被相続人)が生前に行った贈与のうち、贈与税の課税価額に算入されたものを合算することとなっています。 そして算定された遺産税からは、過去に支払った贈与税相当額を控除する仕組みとなっています。 つまり、亡くなった方(被相続人)が生前に行った贈与で贈与税の対象となったものは結局遺産税の計算にも反映される、ということになっています。 (3)アメリカの遺産税の税率 亡くなった方(被相続人)の「課税遺産総額」にかける遺産税の税率は、上記贈与税の計算に用いた「統一移転税率」が同様に適用されます。課税対象となる金額が大きくなればなるほど税率が高くなる超過累進税率(18%~40%)となっています。 【「アメリカの遺産税」に関してはこちらの記事をご参照ください。】 1-6 連邦税・州税 これまではアメリカの連邦税としての贈与税について解説してきましたが、州によっては州税としての贈与税が存在します。 連邦税としての贈与税はかからなくても、州税としての贈与税はかかる、という可能性もあります。 州税については、現地の専門家と連携し確認を行う必要があります。 第2章 日本の贈与税との関係 続いて、アメリカの贈与税と日本の贈与税の関係について確認していきましょう。 2-1 日本の贈与税の制度 (1)日本の贈与税の概要 日本の贈与税は財産を貰った人(受贈者)に納税義務があります。 日本の贈与税には暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つの制度があり、相続時精算課税制度を選んだ場合には相続時精算課税制度が適用され、選ばない場合には暦年課税制度が適用される仕組みとなっています。 なお、この選択は贈与者(財産をあげる人)、受贈者(財産を貰う人)のペアごとに行うことが可能です。 贈与税の申告・納税期限は贈与を受けた年の翌年3月15日となります。 暦年課税制度 暦年課税制度の概要は以下のとおりです。 ・その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額が基礎控除額110万円を超えた場合に贈与税が発生します。 ・基礎控除額110万円を超えた金額に税率をかけて贈与税額を算定します。 ・税率は10%~55%の超過累進税率となっています。 ・亡くなった人(被相続人)が亡くなる前7年間に行った相続人等に対する贈与は相続税の対象となります。 相続時精算課税制度 相続時精算課税制度の概要は以下のとおりです。 ・原則、60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫に対して財産を贈与した場合に選択できる制度です。 ・その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額が基礎控除額110万円以内である場合には贈与税がかからず、相続税の対象にもなりません。 ・贈与を受けた財産のうち、年110万円の基礎控除額を超えた部分の累計額が2,500万円を超えた場合にはその超えた部分に一律20%の贈与税がかかります。 ・贈与を受けた財産のうち、年110万円の基礎控除額を超えた部分は財産をあげた人(贈与者)が亡くなった際の相続税の対象となります。 ・相続時精算課税制度を選択する場合には、その選択する年の翌年2月1日から3月15日までの間に税務署に届け出を行う必要があります。 ・この選択は贈与者(財産をあげる人)、受贈者(財産を貰う人)のペアごとに行うことが可能ですが、一度この制度を選択するとその選択をした年分以降はすべてこの制度が適用されることとなり、2度と暦年課税制度に戻ることはできません。 (2)日本の贈与税の納税義務(国外に財産がある場合) 日本の贈与税の納税義務は以下のフローチャートに沿って判断します。 財産をあげた人(贈与者)、財産をもらった人(受贈者)の状況によって、日本国内にある財産だけが贈与税の対象となるのか、日本国外にある財産も贈与税の対象となるのかが異なります。 このように、日本とアメリカの贈与税はその国外にある財産にも課税されることがあることから、同じ財産に両国の贈与税がかかってしまうことがあります。 この二重課税を防ぐために「外国税額控除」という制度があります。 2-2 外国税額控除の適用 贈与税の外国税額控除の具体的なイメージは以下のとおりです。 (1)前提 日本に住んでいる日本国籍の父が日本に住んでいる日本国籍の子に対してアメリカの不動産を贈与し、日本で5,000万円、アメリカで3,000万円の贈与税が発生 (2)計算例 ①日本で支払う贈与税額の計算 日本の贈与税5,000万円-【外国税額控除】アメリカの贈与税3,000万円=日本で実際に支払う贈与税2,000万円 ②実際に支払った贈与税額 日本で支払った贈与税2,000万円+アメリカで支払った贈与税3,000万円=5,000万円 外国税額控除を適用することにより、結果的に日本の贈与税相当額5,000万円のみを納税したこととなります。 【「外国税額控除」についてはこちらの記事をご参照ください。】 第3章 よくある間違いと注意点 次にアメリカの贈与税を考える上でのよくある間違いとその注意点を確認していきましょう。 3-1 現金を物理的に持ち込んでの贈与 財産をあげる人(贈与者)がアメリカに住んでおらず、アメリカ市民でもない場合、アメリカにある財産であっても無形財産についてはアメリカの贈与税の課税対象から外れます。無形財産とは預金、有価証券等をいいます。 これを勘違いし、贈与税がかからないものと思い込んでアメリカに現金を持ち込み贈与した場合、現金は無形財産には該当しないため、アメリカの贈与税の対象となります。 3-2 アメリカ非市民である配偶者に配偶者控除を誤適用 アメリカ市民である配偶者への贈与は、その全額が配偶者控除の対象となります。 したがって、アメリカ市民である配偶者に対して行った贈与についてはアメリカの贈与税は生じません。 しかし、アメリカ市民でない配偶者に対して行った贈与については、この配偶者控除の金額に上限があるため贈与税が発生することがあります。 配偶者がアメリカ市民でないにも関わらず、配偶者控除によって贈与税が発生しないものと勘違いして無計画に贈与を行うとアメリカの贈与税が発生する場合があります。 3-3 ギフトスプリッティングを誤って適用 アメリカの贈与税計算上の年間基礎控除には、婚姻関係にある夫婦について、ギフトスプリッティング(Gift splitting)という特例が認められていますが、この制度はその贈与時点において夫婦の両方がアメリカ市民またはアメリカ居住者でなくては適用できません。 例えば日本人夫婦のうち、一方はアメリカ在住で、一方は日本在住の場合、この特例は適用できないため注意が必要です。 3-4 Form 3520の提出の失念 アメリカ市民またはアメリカ居住者が、アメリカ非居住者から贈与または相続により年10万ドル超の財産を受け取った場合は、Form 3520という報告書をIRS(日本の国税庁に相当する機関)に提出する必要があります。 申告期限は贈与や相続を受けた年の翌年4月15日までとなります。 申告を怠った場合には罰則規定があるため注意が必要です。 アメリカの贈与税は発生しないから提出するものは何もない、と思い込み、提出を失念してしまう場合があるため注意が必要です。 第4章 Q&A 4-1 アメリカで贈与税の納税がない場合でも申告義務が生じることはありますか? あります。 アメリカでは、贈与税の納税額が0円でも申告が必要になる場合があります。たとえば、贈与者については、年間基礎控除額を超える贈与をした場合、夫婦でギフトスプリッティングを使う場合などに、Form 709 の提出が必要です。また、アメリカ市民ではなくアメリカに住んでいない人(アメリカ非居住外国人)がアメリカの贈与税の対象となる贈与をした場合には、Form 709-NA の提出が必要となります。 また、受贈者側に申告義務が生じることもあります。たとえば、アメリカ市民またはアメリカ居住者が、アメリカ非居住者から年間で10万ドル超の財産を受け取った場合には、贈与税の納税とは別に、Form 3520 による報告が必要になります。 4-2 アメリカで贈与税のない州はありますか? あります。 ただし、ここでいう「贈与税のない州」とは、州独自の贈与税がないという意味です。前述してきた連邦贈与税は州とは別に検討が必要です。 州税ベースでは、2026年時点ではコネチカット州が州独自の贈与税を課している州とされています。 したがって、多くの州では州独自の贈与税はありませんが、州によっては遺産税や相続税が存在するため、これについては別途居住州や財産所在地の州法確認が必要となります。 4-3 日本からアメリカに送金する際に税金以外に気を付けることはありますか? まず、送金自体は原則として自由ですが、100万円を超える国外送金や国外からの受領送金については、金融機関から日本の税務署へ国外送金等調書が提出されます。これによって直接的に税金が課税されることはありませんが、送金記録が税務当局に共有される仕組みとなっています。 また、金融機関では、マネーロンダリング対策のため、本人確認に加えて、送金目的や資金の出所などの説明や資料提出を求められることがあります。 さらに、日本から海外口座へ送金する場合、3,000万円相当額を超える送金については、外為法に基づく事後報告が必要になることがあります。 加えて、現金を持参して移動する場合は税関申告にも注意が必要です。 日本では100万円相当額超の現金等を持ち出し・持ち込みする場合に税関申告が必要で、アメリカでも10,000ドル超の通貨等を持って入出国する場合は申告が必要です。 第5章 アメリカに住むお子様・お孫様への贈与についてのご相談は「税理士法人マインライフ」へ アメリカに住む子どもたちへ贈与をした場合、アメリカの贈与税の申告・納税や届出等の手間はかからないだろうか・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。 年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 「アメリカに住む親族への財産の贈与をどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第6章 まとめ 今回はアメリカの贈与税について解説してきました。 ・アメリカの贈与税の納税義務者は贈与者(日本の贈与税の納税義務者は受贈者) ・アメリカの贈与税の対象となる財産は、贈与者がアメリカ市民・アメリカ居住者であるか、アメリカ非居住外国人であるか、いずれかにより異なる ・2026年の統一移転税額控除額は贈与財産額ベースで15,000,000ドル(1ドル150円のレートで22.5億円)と非常に高額であるため、贈与税が発生するケースは少ない ・アメリカの贈与税率は超過累進税率で18%~40%となっている ・日本の贈与税とアメリカの贈与税の両方が課税された場合は、外国税額控除を適用できる可能性がある アメリカの贈与税の制度は日本の贈与税の制度とは異なる部分が多々あり、遺産税との関わりもあるため非常に複雑な制度となっています。 アメリカの贈与税がかかるかもしれない、、、そんなときは早期に専門家に相談をして、正しい判断ができるように努めましょう。
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【徹底解剖】シンガポール移住と相続税のポイント
「何とか相続税の課税から逃れられないか」「シンガポール移住はどうだろうか?」 シンガポールには相続税(遺産税)がないため、移住を通じて相続税の回避を検討する方がたくさん居ます。 しかし実務上は「シンガポールに住めば相続税を回避できる」というほど単純な話ではありません。 日本の税制は年々複雑化しており、安易な移住には多くのリスクが潜んでいます。 本記事では、シンガポール移住について 相続税の回避要件 事例による相続税が課される・課されないケースのまとめ シンガポール税制の魅力 節税するための4つの注意点 を税の専門家の視点を踏まえて詳しく解説します。 ぜひ記事を参考にシンガポール移住を検討してください。 第1章:【結論】シンガポールへの移住は場合によっては相続税が回避可能 1-1シンガポールに移住すれば本当に相続税を避けられるのか? 結論から言えば、シンガポールに移住することで日本の相続税を回避できるケースはあります。 しかし、以下の3つの条件「①被相続人要件」「②相続人要件」「③財産要件」をすべて満たす必要があります。 【課税されない3条件】※いずれも日本国籍を所有している前提 条件 内容 ① 被相続人が日本の非居住者 10年以内に国内に住所がない場合 ② 相続人も日本の非居住者 10年以内に国内に住所がない場合 ③ 財産がすべて海外にある 日本に預金・不動産・株式など国内資産が一切存在しない つまり、具体的には相続開始時に以下のような状況が条件となります。 • 被相続人:シンガポールに永住権を取得し、10年超滞在している。 • 相続人:同様にシンガポールに永住権を取得し、10年超滞在している。 • 財産:すべてシンガポールの銀行口座、不動産、シンガポール法人の株式等で、日本国内資産がゼロ。 このようなケースであれば、日本の相続税は課されません。 1-2 シンガポール移住における3つの誤解 日本の相続税法の仕組みは、「被相続人の住所(居住実態)」だけではなく「相続人の住所(居住実態)」と「財産の所在」で課税可否が判断される点がポイントです。 以下のような誤解によって、課税リスク見誤る事例が多く見られます。 ❌ 誤解1:「被相続人だけが移住すればよい」 → 被相続人だけの移住では不十分です。相続人が日本に住んでいる場合、相続人が取得する全世界の財産が課税対象になります。 ❌ 誤解2:「相続開始直前までに移住すればよい」 →「移住後も10年間は日本の相続税の課税対象になります。」 日本の相続税法では、被相続人又は相続人のいずれかが相続前10年以内に国内に住所がある場合には、相続時にシンガポールに在住していたとしても「居住者」と同様に扱われます。出国しても即座に免税とならないということです。 ❌ 誤解3: 「日本に住民票を置いていなければ非居住者と認定される」 → 税務上の「居住者」か否かは、実際の生活実態(生活の本拠)がどこにあるかで判定されます。たとえ住民票を抜いても、居住用不動産の有無、納税実績、職業、家族の生活状況なども含めて総合的に判断されるため「形式的な移住」として否認されるケースがあります。 【課税回避に向けて不可欠な4つの「実務要件」】 1. シンガポールにおける生活の本拠を客観的に構築する → 納税履歴、家族帯同、医療記録などが有効 2. 日本との経済的関係を遮断する → 日本企業との雇用関係、口座、証券口座、不動産などを整理 3. 相続人側の移住も同時並行で設計する → 相続人が日本在住の場合、被相続人が非居住者でも課税される 4. 10年を越える移住期間を確保する → 相続はいつ起きるかわからない。高齢になってからの移住では手遅れになる可能性が高い 【専門家の視点👉】 シンガポール移住での相続税回避は「実現可能だが、計画的である必要がある」 • シンガポールには「相続税が存在しない」という絶対的な魅力があります。 • 日本の相続税を回避するには、被相続人・相続人の両方が、税務上明確な非居住者である必要があります。 • 単なる形式的な移住や住民票の移動では不十分であり、生活・財産・家族関係まで含めた包括的な移住設計が求められます。 • 実務では「移住後10年超を経過」「相続人も同様に移住後10年超を経過」「日本財産ゼロ」というハードルを越えた場合のみ、初めて相続税の課税対象外となります。 第2章:シンガポール移住で相続税が課される・課されないケースのまとめ 2-1「課税されるかどうか」は組み合わせで決まる 前章で説明したとおり、日本の相続税がかかるかどうかは、以下3つの要素の組み合わせで決まります。 1. 被相続人の居住状況(出国10年超経過しているか) 2. 相続人の居住状況(出国10年超経過しているか) 3. 相続財産の所在地(日本国外にあるか) この章ではケースごとに事例で相続税の課税要件をまとめます。 <相続税課税の一覧表>※各人日本国籍を有している前提 被相続人 相続人 財産所在地 相続税課税 非居住10年以下 非居住10年超 国外 全世界財産に課税 非居住10年超 日本居住 国外 全世界財産に課税 非居住10年超 非居住10年超 国内財産あり 国内財産に課税 非居住10年超 非居住10年超 国外 ❌ 課税なし 日本居住 日本居住 国内外に財産あり 全世界財産に課税 ケース1:被相続人が出国10年以下 → 相続税あり 事例 • 被相続人:2020年に日本を出国しシンガポールに移住 • 相続開始:2028年(出国から8年) • 相続人:非居住者(シンガポール在住) • 財産:すべてシンガポール所在 この場合、被相続人が「出国後10年超経過していない」ため、相続税法では日本の居住者とみなされ、相続人が非居住者であっても国外財産を含む全財産が課税対象となります。 ケース2:相続人が日本在住 → 相続税あり(国外財産含む) 事例 • 被相続人:シンガポールに15年居住(非居住者) • 相続人:東京都在住の長男 • 財産:シンガポールの預金・不動産 この場合、相続人が日本の居住者であるため、被相続人が非居住者であっても、日本の相続税法の適用が及びます。相続人が取得する財産がすべて国外にあっても、日本で申告・納税が必要となります。 ケース3:日本国内に財産がある → 常に相続税課税 事例 • 被相続人:シンガポールに12年在住、非居住10年超 • 相続人:オーストラリアに12年在住、非居住10年超 • 財産:東京の不動産とシンガポールの預金 この場合、相続人・被相続人の双方が非居住者でも、日本国内にある「不動産」には相続税が課されます。所在地が日本である財産については、居住者・非居住者の区分にかかわらず課税されます。 ケース4:課税されないパターン 事例 • 被相続人:シンガポールで永住権を持ち、15年間生活 • 相続人:カナダで13年間生活しており、日本との関係なし • 財産:すべてシンガポール国内に所在する現金・預金・不動産 このケースでは、次のすべてを満たしています: • 被相続人 → 出国10年超・日本に帰国歴なし • 相続人 → 出国10年超・日本での所得なし • 財産 → 日本国内に一切なし そのため、日本の相続税法の適用範囲外となり、申告納税義務は発生しません。 2-2 相続人が複数名いる場合の注意点 相続人の中に1人でも「日本居住者」が含まれると、その人が取得する相続分については、日本の相続税が課されます。 • 相続人A(海外居住):課税対象外 • 相続人B(日本居住):課税対象 相続人ごとに課税対象が分かれるということです。 この場合、申告納税義務も相続人Bのみに発生し、遺産分割協議や納税方法においても調整が必要です。 2-3 この章のまとめ シンガポールでの相続税の課税可否は「誰が・どこに・何を」受け取るかで決まってきます。 まずはご自身の状況を正確に把握しておきましょう。 判断軸 ポイント 対応策 被相続人の居住状況 出国10年超経過が必要 早期移住+生活の本拠地移転 相続人の居住状況 日本居住者は課税対象 海外移住や贈与・信託も検討 財産の所在 日本にあれば必ず課税 財産の組替え・海外移管を検討 第3章:他国と比較したシンガポール税制の魅力とは 3-1 相続税・贈与税が「完全にゼロ」の国、シンガポール シンガポールにおける最大の税制上の魅力は、相続税も贈与税も一切存在しないという点です。 もともとシンガポールには「遺産税(Estate Duty)」という制度がありましたが、2008年に完全廃止され、現在は死亡に伴う税金は一切課されていません。贈与についても同様で、生前贈与に対する課税制度もなく、富の移転そのものに課税されない構造が出来上がっています。 これは世界的にも非常に希少な制度設計であり、多くの富裕層や資産家、ファミリーオフィスが同国を資産保全の拠点とする大きな理由の一つとなっています。 3-2 所得税・法人税もフラットかつ低率 シンガポールの税制度のもう一つの特徴は、「フラットで低率な直接税制度」です。具体的には以下のような構成です。 税目 シンガポール 日本 相続税 なし 累進課税(最高55%) 贈与税 なし 累進課税(最高55%) 所得税(個人) 累進課税(最高24%) 累進課税(住民税と合わせて最高55%) 法人税 一律17%(軽減措置あり) 実効税率 約30% キャピタルゲイン課税 原則なし 上場株などにあり 特に注目すべきは、キャピタルゲインに課税されない点です。 日本では、株式などの譲渡に譲渡益課税がかかるため、資産運用を重ねるほど税負担が増しますが、シンガポールでは運用による増加分には原則課税されません。 3-3 他国と比較しても際立つ「課税ゼロの強さ」 以下は、日本・シンガポール・他の主要国における相続税制度の比較です。 国名 相続税 贈与税 特徴 日本 最大55% 最大55% 居住歴と国籍で課税が決まる シンガポール なし なし キャピタルゲイン課税も原則なし アメリカ 連邦税 最大40% +州税あり 基礎控除 年間18,000米ドル(2024年) 市民権・居住で課税対象 イギリス 原則40% 存命中の贈与も課税対象 原則7年以内の贈与は 相続税課税あり カナダ 相続税はなし だがみなし譲渡課税 なし 遺産全体にキャピタルゲイン課税 オーストラリア なし (贈与含めCGTで代替) なし 贈与時に譲渡益課税 このように、「相続・贈与・キャピタルゲインのすべてが非課税」という国は、世界的に見てもシンガポールと香港くらいであり、特にシンガポールは法制度・経済環境・インフラ整備・治安の安定性を兼ね備えている点で、極めて競争力の高い国といえます。 3-4 この章のまとめ シンガポールは、相続税回避だけではない「制度的合理性」の国といえます。 シンガポールの魅力は、単に「税金がかからない」という理由だけではありません。以下の点で、資産承継・事業継続・国際的な活動に適した基盤が整っています • 遺産税・贈与税ゼロで、承継コストが極小 • 税務・法務制度が整備されており、予測可能性が高い • 英語圏であり、国際的な法制度・教育環境に優れる • アジア中心にアクセスしやすく、日本からの距離も近い(時差は1時間) 第4章:シンガポール移住で相続税を節税するための4つの注意点 日本の相続税は世界的に見ても高水準であり、課税対象となる財産の範囲も広いため、富裕層を中心に「相続税対策としての海外移住」を検討するケースが増えています。 しかし、現行の相続税法および所得税法の制度設計上、単純に「住民票を抜いて海外に移住する」だけでは、日本の課税関係から逃れることはできません。形式的な移住や短期的な対策では不十分であり、制度を深く理解したうえで、長期的・実質的な戦略が求められます。 この章では、特に注意すべき以下の4つのポイントについて、制度的根拠と実務上のリスクを交えて解説します。 4-1 4つの注意点 ① 10年以内に亡くなると課税される(出国後10年超ルール) 被相続人が出国後10年超を経過していない場合、日本の居住者とみなされ、海外にある財産であっても日本の相続税の課税対象となります。 【重要ポイント】 • 「非居住者」となるには、「出国後10年超経過」が絶対条件 • 10年以下で死亡した場合、海外移住していても全世界財産が課税対象になる • 「一時帰国」などがあると10年カウントがリセットされるリスクもある 【対策】 • 早期に出国して10年をしっかり経過させること • 日本国内に帰属しうる経済的拠点(家族、住居、収入源)がないよう整理 • 出国からの年次報告・出入国記録の保存 ② 相続人が日本在住だと課税対象になる(相続人10年超ルール) 被相続人が出国後10年超を経過していても、相続人が日本に居住している場合、相続税の課税対象になります。 【よくある誤解】 「父は完全に海外永住していたから、日本の相続税は関係ないのでは?」 → 相続人が日本居住である限り、日本ではその人の取得財産に課税できます。つまり、相続人ベースでも「10年超非居住」が要件となります。 【実務での注意点】 • 相続人が複数いて、1人でも日本居住者がいると、その人の分には課税 • 相続人が将来的に帰国する可能性がある場合もリスク要因 • 生前贈与・信託・持株会社スキームなどの併用を検討 ③ 日本にある財産には必ず課税される(所在地課税) 「相続財産の所在地が日本にある場合、非居住者であっても課税される」 【該当する財産の例】 • 日本国内の不動産(マンション、土地、ビルなど) • 日本の金融機関にある預貯金 • 日本企業の株式(非上場・上場問わず) • 日本の生命保険会社の契約 【対策】 • 移住前に不動産や預金を海外移転または売却 • 海外信託やホールディングカンパニーによるスキーム構築(慎重な設計必要) • 生命保険等は受取人の居住地も含め要チェック ④ 出国時に「出国税」がかかる場合あり(国外転出時課税) 2015年に創設された「国外転出時課税制度」により、一定の条件を満たす場合、出国時点で保有する有価証券等の含み益に対して所得税が課税されます。 【対象者】 • 有価証券等(上場株・非上場株・投資信託・デリバティブなど)を1億円以上保有 • 過去10年のうち5年超日本に居住していた人 • 出国により日本の居住者でなくなる人 【課税内容】 • 含み益に対して所得税(税率15.315%) • 実際には売却していなくても、課税される • 納税猶予制度あり 【注意点】 • 出国税の対象になるかどうか、資産評価の事前確認が必要 • 納税猶予制度を利用する場合でも、毎年の届出義務や担保提供などが必要 • 無申告や届出漏れがあった場合、重加算税・延滞税などのリスク 4-2 節税だけでなく「否認リスク」にも注意 「住民票を海外に移しただけ」では非居住者と認められないので、注意しましょう。 税務上の「非居住者」として扱ってもらうには、単に住民票を移すだけでは不十分です。 生活の本拠(住居・職業・医療・日常生活)がどこにあるかが重視され、形式的な移住と判断されれば、全世界の財産が課税対象になります。 <主な客観的事実> 以下の実態に基づいて総合的に判断されます。 • 住居の状況: 居住用不動産の有無、その利用状況(賃貸しているか、自己が居住しているかなど)。 • 職業: 事業活動の中心地、勤務地。 • 生計を共にする親族の居所: 配偶者やその他の扶養親族がどこに住んでいるか。 • 資産の所在: 主要な金融資産や不動産がどこにあるか。 • 納税実績: どの国で所得税やその他の税金を申告・納税しているか。 • 移動履歴: 国内外への出入国の頻度や滞在期間。 第5章 国際相続・贈与の相談は「税理士法人マインライフ」へ 税金が国際間をまたぐものであるため手続きが複雑になるかもしれない・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 国際相続の経験が豊富な専門家が直接対応 少数精鋭体制で、経験豊富な税理士が必ず対応。 担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告・対策に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、相続に特有の実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 海外の専門家との連携体制が整っており、海外の財産や海外在住者の手続きに対応が可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる税計算だけではなく、納税資金対策や二次相続対策など、将来を見据えたオーダーメイドの提案が得意です。 ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第6章 まとめ シンガポール移住で相続税を回避したいと考えるあなた。 しかし、制度・費用・生活・法務リスクを総合的に判断した結果、「実行しないほうが良い」ということは十分にあり得ます。また、せっかく要件を満たしても継続することができないケースも散見されます。 やむを得ず帰国せざるを得ない場合にも、帰国前に海外財産の生前贈与を検討するなど専門家へ相談することで相続対策が可能であったケースもあります。 国際相続はルールや手続きが複雑かつ難解です。国際相続に精通した税理士・弁護士になどに相談し、慎重に判断することが非常に大切です。 シンガポールへの移住をお考えの場合は、まずは専門家に相談し、戦略を立てた上で移住を実現してください。
相続税申告, 国際相続サポート
海外にいるはずの相続人が所在不明/所在調査から手続き完了までの対処法
「母が亡くなり手続きを進めたいのに、海外にいる弟と連絡がつかない……」 相続人のうち一人が海外に住んでいて、長年連絡が取れないまま。 手続きを進めたいのに、何から手をつけていいのか分からない。 いつまでに何をすればいいのかも分からず、ただ日だけが過ぎていく。 そんな状況に、焦りや不安を感じていませんか? 実は、連絡が取れない相続人がいる場合でも、相続手続きをすることは可能です。 本記事では、所在不明の相続人がいる場合に取るべき具体的な対応や制度の活用方法を、実務経験に基づいて分かりやすくご紹介します。 結論から言えば、 ➀できる限り所在を調べる → ➁見つからない場合は家庭裁判所に申立てを行う という二段階で進めます。 また、相続手続きを進めるうえで最も注意すべきなのが、「相続開始から10か月以内に行う相続税の申告・納税」です。 この期限に間に合わせるためにも、全体の流れと各ステップにかかる時間を把握しておくことが大切です。 ここでは、相続手続きを期限内に進めるための主な流れを時系列で整理します。 1. 相続人が海外にいて、所在や連絡先が不明の場合の対応 まずは、相続人が海外にいて所在や連絡先が不明な場合の相続手続きの主な流れと期限を線表で整理します。 この線表を確認しながらそれぞれの手続きの内容をご確認ください。 【相続手続きの主な流れ及び期限の線表】 ※①は戸籍などの収集、⑤は遺産分割協議、⑥は名義変更の手続きです。 なお、「③相続人の調査」で相続人への連絡が取れれば「④管理人の選任」は不要となります。 また、相続税を亡くなった方の資金で支払うのではなく、ご自身の手許の資金で支払う場合は「⑥名義変更」の手続きは10か月過ぎてから行っても大丈夫です。 1-1 相続手続きの主な流れ(死亡~遺産分割~名義変更) ① 戸籍などの収集(目安:1か月~2か月) 相続手続きの最初のステップは、被相続人(亡くなった方)の死亡と相続人を確定することです。 そのために、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍と、相続人全員の戸籍を収集します。 これらの戸籍は、本籍地の市区町村役場で取得します。 また、令和6年3月からは「戸籍の広域交付制度」により、全国どこの市区町村役場からでも戸籍が取得できるようになり、以前より便利になっています。 ただし、制度上の制約や混雑状況により、取得には日数がかかることもあるため、早めの準備と役所への事前確認をおすすめします。 自分で取得するのが大変であれば、税理士や弁護士に依頼して全国の戸籍・住民票を取得してもらうこともできます。 ※なお、海外に住む相続人であっても、日本国籍を有していれば通常は戸籍に記載されています。 ただし、外国籍の方や国籍喪失者は戸籍に記載されていないこともあるため、その場合は別途、国籍や親子関係等を証明する書類(出生証明書、宣誓供述書など)が必要になります。 ② 遺産の調査(目安:1〜3か月) 被相続人がどのような財産を持っていたかを確認します。 不動産の登記簿謄本(法務局)、預金・証券(金融機関・証券会社)への照会、年金記録や生命保険加入の有無の確認が含まれます。不動産であれば、被相続人の名前で名寄せをすることで全国に所在する被相続人名義の不動産を特定できます。 海外にも財産がある場合は、現地の専門家の協力が必要になることもあります。調査には時間がかかるため、できるだけ早めに着手するのが重要です。 ③ 相続人の調査(目安:3か月以上) 連絡が取れない相続人の居所や連絡先を調査します。 SNS、LinkedIn、在外公館(日本大使館・領事館)への照会、民間調査会社の活用など、手段はさまざまです。 ここで大切なのは、見つからなかったとしても「調査した記録」をきちんと残しておくことです。 この記録は、のちに家庭裁判所へ不在者財産管理人の申立てを行う際の重要な証拠資料になります。 ※調査方法についてはこのあとで詳しくご紹介します。 ④ 不在者財産管理人の選任(目安:1〜3か月) ③の調査を行っても相続人の所在が不明なままであれば、家庭裁判所に申し立てを行い、不在者財産管理人を選任してもらいます。 不在者財産管理人は、所在不明の相続人に代わり、遺産分割協議などの手続きを行うために、家庭裁判所が選任する代理人です。 申立ての際には、所在調査の内容や経過を証明する資料の提出が求められます。 ※申立て手続きの詳細についても後述します。 ⑤ 遺産分割協議(目安:1か月) 相続人全員で、誰がどの財産を相続するかを話し合います。 不在者がいる場合には、④で選任された不在者財産管理人が代理で協議に参加します。 話し合いの結果は「遺産分割協議書」にまとめ、相続人全員の署名と実印が必要です。 ※海外在住の相続人については、日本の印鑑証明書が取得できないため、日本の印鑑証明書の代わりとして、在外公館(日本大使館・領事館)で発行される「サイン証明(署名証明)」を取得・添付する必要があります。相続人が外国籍の場合は、在外公館ではなく海外のNotary office(公証役場)でサイン証明を取得することになります。 注意点:海外居住の相続人がいる場合、遺産分割協議書のやり取りに国際郵送の時間がかかるほか、大使館・領事館への移動や予約にも日数が必要になるため、国内よりも時間に余裕を持った対応が求められます。 ⑥ 名義変更(目安:1〜2か月) 遺産分割協議書が完成したら、不動産・預貯金・株式などの名義を相続人名義へ変更します。 各機関(法務局、銀行、証券会社など)に遺産分割協議書、戸籍、本人確認書類などを提出して手続きします。 ※海外居住の相続人については、本人確認書類の翻訳、公的住所証明書などの追加提出を求められることもあります。 ⑦ 相続税の申告・納税(期限:10か月以内) 相続税の申告が必要な場合は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に、申告と納税を行う必要があります。 遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合が対象です。 被相続人が日本に居住していた場合、相続人が海外に住んでいたとしても、日本に居住している相続人と同様に、日本の相続税の対象になります。 手続きには時間がかかることが多いため、②の遺産調査と並行して、早めに税理士に相談し、申告準備を進めることが重要です。 1-2 相続人が海外・不明な場合でも要注意!期限が決まっている相続手続きとは? 相続人が不明でも、期限のある手続きは待ってくれない。 相続人の1人が海外に住んでいて連絡が取れない、あるいは所在すら分からない。 このような状況でも、一部の相続手続きには「期限」が定められており、放置すると不利益を被る可能性があります。 例えば、相続放棄や相続税の申告などは、「相続開始を知った日」から〇か月以内に行わなければならないと明記されており、相続人の状況にかかわらずタイムリミットがカウントされます。 ここでは、海外・不明な相続人がいる場合でも必ず意識すべき、代表的な「期限付き手続き」について解説します。 【表】期限が定められている主な相続手続き 手続き名 期限 概要 相続放棄 3か月以内 相続人としての権利を放棄する。借金などを引き継ぎたくないときに有効。 準確定申告 (被相続人の所得税) 4か月以内 亡くなった方が生前に得た所得を、相続人が代理で申告する。 相続税申告 10か月以内 基礎控除額を超える財産がある場合に必要。延滞すると加算税・延滞税の対象。 相続登記 (不動産の名義変更) 3年以内 (2024年4月以降義務化) 登記を怠ると過料(最大10万円)の対象となるため要注意。 ■ 相続放棄(3か月以内) 相続放棄は、「被相続人が多額の借金を残していた場合」などに有効な制度です。 相続人が自らの意思で家庭裁判所に申し立て、相続人の立場そのものを放棄します。 ただし、この手続きには厳格な期限があります。 原則として、相続人が「被相続人が亡くなったこと」と「自分が相続人であること」を知った日から3か月以内に申述しなければなりません。 ・ポイント ✅ 海外にいる相続人にもこの期限は適用されます。 ✅ 連絡が取れない場合でも、他の相続人は「自身の判断」で放棄の可否を決める必要があります。 ■ 準確定申告(4か月以内) 被相続人が亡くなるまでに得た所得について、相続人が代理で申告する手続きです。 この申告は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に行う必要があります。 ・ポイント ✅ 所在不明の相続人がいる場合、状況に応じて代表相続人が申告を行うことも検討されます。 ✅ 申告期限に遅れると、延滞税・無申告加算税・重加算税などのペナルティが科されます。 ■ 相続税の申告・納税(10か月以内) 被相続人の財産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告・納税が必要です。 この申告・納税の期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内と決められており、相続人の一部が海外や所在不明であっても期限は変更されません。 なお、所在不明の相続人については相続開始を知った日が来ていないため期限も到来しません。 ・ポイント ✅ 所在不明な相続人がいるなどの理由で分割協議ができない場合でも申告が必要となります。分割ができていない場合は、各種特例の適用が受けられなくなります。 ✅ 分割協議ができない場合は、基本的に名義変更もできないため、被相続人の預金から納税資金を捻出することができません。相続人の手許の資金若しくは銀行等から借り入れて納める必要があります。 ✅ 遅延すると、延滞税・無申告加算税・重加算税などのペナルティが科されます。 ■ 相続登記の申請(3年以内) 2024年4月の法改正により、相続登記は義務化されました。 これにより、相続により不動産を取得した場合、相続開始を知った日から3年以内に登記申請をしなければならないとされています。 ・ポイント ✅登記を放置した場合、最大10万円の過料が課される可能性があります。 相続人が不明でも「期限に間に合わせること」が重要 所在不明の相続人がいる場合、各種手続きが思うように進まないことも多く、対応が遅れがちです。 しかし、期限を過ぎることで発生する不利益の方が大きいため、他の相続人は可能な範囲で手続きを進めておくことが重要です。 円滑に手続きを進めるためのポイントをお伝えします。 2. 期限内に円滑に手続きを進めるための2つのポイント ● ポイント1:国際相続に強い弁護士・税理士に依頼すること 相続に海外在住者や所在不明者が関わる場合は、国際相続に強い専門家(弁護士・税理士)に早期に相談しないと手続きが期限に間に合いません。 相続手続きは、ただでさえ戸籍・財産・税務など複数の分野が絡み合う複雑な手続きです。 それに加えて相続人が海外にいたり、財産が海外にある場合は、言語や制度の違い、どこの国の法律に基づいて手続きすべきか等とても複雑になります。 日常的に国際相続を扱っていない専門家では、対応できないことも多くあります。 一方で、国際相続を専門とする事務所では、現地の弁護士や連携したルートが既に整備されており、調査や申立てもスピーディに進行できます。 相続税の申告期限は10か月。海外の相続人が絡む手続きには時間的・専門的な壁があるからこそ、最初の一歩を誤らないことが最も重要です。 国際相続に精通した弁護士・税理士への相談が、スムーズな相続の鍵となります。 ● ポイント2:期限から逆算したスケジューリングと証拠の保存 手続きを円滑に進めるためには、期限を見据えて計画をたてることが重要です。 特に所在不明の相続人がいる場合は、できる限り早期に捜索を開始し、調査の過程や手段を証拠として記録に残すことが欠かせません。 また、相続開始から6か月を目安に捜索の進捗を整理し、発見できなかった場合には、不在者財産管理人の選任に向けた家庭裁判所への申立て準備へと進むことが必要です。 海外に不明な相続人がいる場合に相続手続きを円滑に進めるためには、期限を意識したスケジューリングと、専門家の支援が欠かせないことがわかりました。 では実際に、相続人が「海外にいて所在が不明なケース」では、どのようにしてその所在を調査していけばよいのでしょうか。 次章では、相続人の行方が分からない場合に取るべき具体的な調査方法について、順を追って解説していきます。 ここでの対応が、その後の手続き全体に大きく影響するため、早期かつ確実な対応が重要です。 3. Step1:所在不明の相続人を捜索 相続人が「海外に住んでいる」「連絡先が不明」「所在不明である」といった場合には、まずその相続人を捜索する必要があります。また、家庭裁判所での手続きに進むためには、所在調査を尽くした記録を残すことが重要です。ここでは、実務上よく行われる調査手段を4つ紹介します。 ● アクション①:戸籍・戸籍の附票を取得して転出国を特定しよう まずは被相続人の戸籍をさかのぼって相続人を確定させ、そのうえで、相続人本人の戸籍の附票を取得しましょう。 附票には、日本国内での転出先や住所の履歴が記載されているため、どの国に移住したのか、あるいはどこに住んでいたのかが分かることがあります。 ✅ 転出先が「〇〇国」などと明記されていれば、次のステップで在外公館への照会が可能になります。 または、外国籍の相続人であれば、弁護士による弁護士会照会を通じて、当該相続人の出入国記録や外国人登録原票を取得することで出国先を把握できることがあります。 ● アクション②:在外公館(日本大使館・領事館)に所在照会を依頼しよう 転出先の国が判明した場合は、該当国にある在外公館(日本大使館・領事館)を通じて所在の照会を行うことができます。 この手続きでは、照会理由書、戸籍謄本、関係図などの添付資料が求められます。 ✅ 回答には数週間〜数か月かかる場合があり、また国によっては照会不可・未回答となることもあります。 ✅ 回答が得られなかった場合でも、「照会を行った事実」自体が調査実績として証拠になります。 ● アクション③:SNSやLinkedInなどの投稿をチェックし、記録しよう 近年では、SNSやLinkedInなどを使った調査も有効です。 LinkedInとは、勤務先や所在地、最終更新日などが分かるビジネスSNSです。 プロフィールには居住地・勤務先・最終ログイン日などが記載されていることが多く、相続人の現況を把握できる手がかりとなります。特に、LinkedInは実名、写真付きでの登録をしていることが多いので、人物を特定することができ、さらにメッセージを直接送ることもできるので有用です。 ✅ 発見したプロフィールや投稿内容はスクリーンショットやPDF化して保存し、裁判所に提出できるようにしておきましょう。 ● アクション④:必要に応じて民間の調査会社に依頼しよう 個人での調査が限界に近づいたら、調査会社(探偵)に依頼するのも一つの手段です。 報告書には調査方法・調査結果・居所の有無などが明記されており、裁判所の申立て時に有効な資料として利用できます。例えば、アメリカでは個人の名前や生年月日、SSN等を元に、その人の住所、資産、親族関係、仕事等を調べられる民間のデータベースがあります。そして、住所と思われるところにレターを送り、所在を確認することがあります。 ✅ 調査費用は数万円〜十数万円程度が一般的です。費用対効果を見極めつつ、必要に応じて検討しましょう。 4. Step2:所在不明の相続人がいても手続きを滞りなく進める方法 所在が分からない相続人の捜索を尽くしても、発見に至らない場合──。 そんなときは、法的な手続きを活用して、他の相続人だけでも相続を前に進めることが可能です。ここでは、代表的な2つの制度をご紹介します。 ● アクション①:家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申立てよう 相続人の一人が所在不明でも、調査を尽くした証拠があれば、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることができます。裁判所は、相続人に代わって不在者財産管理人を選任することになるので、相続人が所在不明であることを慎重に確認します。そのため、申立をする場合は、詳細な調査資料を提出する必要があります。 不在者財産管理人とは、所在不明の相続人に代わって、遺産分割協議や名義変更などの手続きに参加する代理人のことです。裁判所が中立的な弁護士を不在者財産管理人として選任します。 選任には2〜3か月ほどかかることもあるため、調査を始めたら並行して準備しておくとよいでしょう。なお、申立にあたっては、不在者財産管理人の報酬として予納金(50万円程度)を納める必要があります。 ✅ 原則として不在者財産管理人は法定相続分を確保する必要があります。 ✅ 裁判所が認めるまで、他の相続人だけで遺産分割をすることはできません。 ● アクション②:家庭裁判所に失踪宣告の申立てをしよう(今後も発見することが難しい場合) 失踪宣告は、所在不明から7年を経過した場合に家庭裁判所へ申立てができる手続きで、法律上その人を「死亡」とみなして扱えるようになります。 宣告が認められれば、他の相続人だけで自由に遺産分割協議を進めることができます。 起算日や公告期間など注意すべき点もあるため、専門家への相談が重要です。 ●不在者財産管理人の選任と失踪宣告の比較 以下の比較表では、不在者財産管理人の選任と失踪宣告の違いをまとめています。 項目 不在者財産管理人の選任 失踪宣告 内容 家庭裁判所が代理人を選任 家庭裁判所が「死亡」とみなす法的認定 要件 一定期間連絡が取れない(数か月~数年) 7年以上生死不明、かつ、起算日が明確であること 目的 代理人による遺産分割協議などの相続手続きを行う 相続人を死亡とみなし、他の相続人で分割協議や名義変更が行える 分割方法 原則として法定相続分まで 他の相続人のみで遺産分割協議が可能 手続きに 必要な期間 比較的短期間(1〜3か月程度) 公示期間含めて数か月〜半年かかることも 効力 本人が現れたら終了 宣告が取り消されるまで死亡とみなされる 不在者財産管理人が代理で遺産分割協議に参加する場合、不在者の法定相続分はその取り分として確保する必要があります。 これを他の相続人で自由に分けるには、失踪宣告によって法律上「死亡」扱いとする必要があります。 起算日が明確でない等の理由からすぐには失踪宣告できないこともあるため、将来的に失踪宣告を行う可能性がある場合には、調査の記録を残しておくことが大切です。 5. 財産も不要なら「相続放棄」の選択肢も 相続放棄をすると、法律上「はじめから相続人でなかった」扱いになるため、遺産分割や名義変更などの手続きにも関わる必要がなくなります。 6. 国際相続に強い弁護士・税理士の支援が必要となる理由 相続手続きを円滑に進めるには、専門家のサポートが不可欠ですが、特に「国際相続」が関わる場合には、国際相続に精通した弁護士・税理士を選ぶことが非常に重要です。その理由は以下の通りです。 ① 弁護士・税理士にも得意・不得意分野がある 相続業務を日常的に扱っていない弁護士や税理士も多く、中には年に1件も相続案件を担当していないという専門家も存在します。特に海外が関係する相続となると、経験がまったくない専門家も多く、思わぬトラブルや遅延の原因となり得ます。 弁護士・税理士であれば誰でもいいということはなく、実績や専門性を見極めて依頼することが大切です。 ② 各国の法律や制度が異なり、現地の専門家との連携が必要なこともある 国ごとに制度が異なるため、日本国内だけでは完結できない手続きが発生することがあります。 国際相続に強い専門家であれば、現地の弁護士や会計士と連携できるネットワークを持っているケースが多く、安心して任せられます。 経験のない専門家に依頼すると、自分で現地の専門家を探す必要に迫られることにもなりかねません。 ③ 国際相続でなくてもタイトなスケジュールがさらにシビアに 相続税の申告期限(10か月以内)や相続登記の義務(3年以内)などの期限があります。相続人の所在不明や海外在住などが絡むと、それだけで時間がかかりやすく、準備や判断の遅れが致命的になり得ます。 こうしたケースに慣れた弁護士・税理士でなければ、期限に間に合わないリスクが高まります。 ④ 状況に応じた柔軟で迅速な判断と対応が求められる 相続人の調査によって新たな事実が判明したり、海外の法律が関係したりと、国際相続は一筋縄ではいかないことが多々あります。 その都度、適切に判断し、書類の整備や申立て方法を柔軟に変更できるかどうかが結果を左右します。 国際相続の経験が豊富な専門家であれば、こうした事態にも迅速・的確に対応でき、スムーズに手続きを進めることができます。 7. 国際相続に強い税理士 4つの基準 国際相続をスムーズに進めるには、「経験豊富な専門家に早期に相談すること」が非常に重要です。とはいえ、「誰に相談すべきか分からない」という声も多く聞かれます。そこで、以下のポイントを参考にして、適切な税理士を見つけましょう。 専門家を探すときは、まずは事務所のホームページを丁寧に確認することが基本です。以下の点に着目しましょう 【基準①】「相続専門」や「国際相続対応」と明記されているか 多くの税理士は法人の顧問や個人の確定申告を中心に業務を行っています。相続、国際相続の経験が豊富な税理士はホームページに「相続専門」や「国際相続対応」と明記されています。 【基準②】国際相続の実績が紹介されているか 具体的な実績が紹介されている場合があります。同様の案件実績があれば安心して任せることができるでしょう。 【基準③】経験年数や実績は十分か 目安としては10年以上の実務経験や、相続・国際案件を継続的に扱っている実績があるか確認できるとよいでしょう。 【基準④】海外の専門家との連携体制があるか 特に不動産・預金・証券などが海外にある場合は、現地の法律家や専門家とスムーズに連携できるかが重要です。信頼できる国際相続の専門家は、各国の現地弁護士・税理士・会計士とのネットワークを持っており、自分で探す手間を省いてくれます。 ホームページで詳細までわからない場合は、相談時に「経験」や「対応実績」を率直に尋ねてみましょう。「国際相続はどのくらい扱っていますか?」「海外に住む相続人との手続き経験はありますか?」など、率直に質問して大丈夫です。経験があれば、過去の対応例を具体的に説明してくれるはずです。 8. ご相談は、信頼と実績の「税理士法人マインライフ」へ 相続人が海外在住、さらには所在不明―― そのような難しいケースでも、最適なサポート体制が弊社には整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 経験豊富な専門家が直接対応 少数精鋭体制で、常に経験豊富な税理士が対応。担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、1人当たりの担当件数も多く、実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 弁護士・司法書士・現地専門家との連携体制が整っており、海外財産や海外在住者の手続きに対応可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる申告業務だけではなく、納税資金対策や二次相続設計など、将来を見据えたオーダーメイド提案が得意です。 期限が迫る中、「海外在住で手続きが進まない」「申告時期が不安」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 9. まとめ ・相続人が海外にいて連絡が取れない場合でも、相続手続きを進める方法はある ・相続税申告や相続放棄など、期限のある手続きは待ってくれないため、早めの対応が不可欠 ・所在不明の相続人がいるときは、まずは調査記録を残すことが重要 ・発見できなかった場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申立てることで手続きを進められる ・状況に応じて、失踪宣告を検討する場合もある(7年以上行方不明など) ・海外在住の相続人がいる場合、印鑑証明の代わりにサイン証明を取得する必要がある ・名義変更や相続税申告など、並行して進めることができる手続きは計画的に動かす ・相続や国際案件に慣れていない専門家では対応が遅れるリスクもあるため、経験豊富な専門家への早期相談が鍵 海外に相続人がいる場合や連絡が取れない相続人がいる場合でも、制度を正しく理解し、必要な手続きを段階的に進めれば、相続は確実に前に進められます。この記事がその第一歩となれば幸いです。
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税理士が教える!アメリカ不動産相続手続き完全解説
「日本在住の日本人がアメリカに不動産を持っている場合、相続手続きや相続税申告はどうすればいいのか…」 日本だけでなくアメリカに不動産がある場合の手続きは国をまたいで同時進行になり、より複雑なものになります。 アメリカの不動産を名義変更するだけでも日本側では戸籍や死亡届受理証明などの公文書を整える必要があり、米国側では登記や裁判所の手続きの要否を見極める必要があります。 さらに、税金は米国(連邦・州)と日本の両方を意識しなければなりません。 本コラムは、専門用語をできるだけ避けて、名義変更等の相続手続きと税務申告の税務手続きに大きく分けて迷いやすいポイントを順番に解説します。 第1章 相続手続き(裁判所の手続き/名義変更) アメリカの不動産がある方の相続では、名義変更等の「法務手続き」が特に重要になります。 ここでは「手続きの進め方」と「物件の所有形態や所在地等の条件に応じた手続きの違い」を解説します。 1-1 初動は書類の確保 (1)まず集める3点セット(死亡から2週間を目安) ・「死亡証明(Death Certificate)」 日本人が亡くなった場合には「戸籍(除籍)謄本」や「住民票の除票」・「死亡届受理証明書」の原本が必要になります。 アメリカで使う場合には、「追加の認証(アポスティーユ)」が必要になります。 追加の認証(アポスティーユ)とは 発行機関:外務省(東京/大阪の窓口 または 郵送) 申請者:相続人/代理人(弁護士・司法書士・行政書士など) 申請の流れ:窓口又は郵送 翻訳:アポスティーユ自体に翻訳は不要です。ただし、提出先が英訳を要求することが多いので公文書(戸籍・受理証明)は英訳を添付することが多いです。また、英訳分についても翻訳証明(認証翻訳)が必要になるケースもあります。 東京等の公証役場では、翻訳証明の認証をする際に戸籍謄本等についてのアポスティーユをワンストップで即日取得できるので便利です。 ※最終的には提出先(米国の登記所・裁判所・銀行)の受理要件に合わせて書類と部数・翻訳有無を決めることになりますのでアポスティーユ前に提出先に確認しましょう。 ・「遺言・信託の原本」 遺言(Will)があれば原本、信託(Living Trust)があれば「誰が次の管理人(後任受託者:Successor Trustee)なのか」を確認します。 次の1-2で詳しく解説しますが、信託に入っている資産は、原則裁判所に行かずに手続きを進められます。 ・「不動産とお金の資料」 不動産の最新の権利証/登記情報(ディード)、ローン残高、火災保険・責任保険の証券、住民組合(HOA)の書類、賃貸中なら契約書・敷金の状況、銀行の名義や受取人指定(POD/TOD)※の有無を集めます。 ※PODは主に預金口座について、TODは主に証券口座や不動産について、死亡時にあらかじめ指定された者に権利を移転させる取り決めであり、後述するプロベート手続を回避する手段として用いられます。 (2) 書類ごとにどの手続きが必要か、仕分ける 信託名義・共同名義(サバイバーシップ付き)・死亡後移転の事前指定(TOD)・受取人指定のある保険や年金は、基本的に裁判所に行かずに名義を移せます。 単独名義の不動産や口座は、原則として裁判所を通す相続手続き(プロベート:Probate)が必要です。 まずは資産ごとに「裁判所が必要か不要か」を二箱に分けるイメージで仕分けしましょう。 (3) 支払いは止めない 光熱費・固定資産税・保険料・HOA・ローンは止めないでください。 止めてしまうと保険の失効や延滞金・差押えの原因になります。 なお、プロベート手続き中の場合には遺産は裁判所の管理下に置かれ、相続財産の使用や処分が制限されます。これらの支払い継続の責任は、裁判所から任命される人格代表者(遺言執行者/遺産管理人)に生じることになります。 また、賃貸中なら、家賃の入金先を一時的な遺産用口座や信託口座に切り替え、入出金の記録を月ごとにまとめておきましょう。(領収書や請求書を必ず保存) 1-2 信託・共同名義・TODならプロベート手続きは不要/単独名義は原則必要 アメリカの不動産は生前の手続き状況や物件の所有形態によってプロベート手続きが必要かどうか変わります。 基本的にはプロベート手続きが不要なものを抑えましょう。 (1)プロベート手続きが不要なパターン ・信託に入った不動産 生前に「家の管理を信託に入れておく」と決めている状態です。 亡くなった後は信託の管理人(受託者)が、そのまま登記の名義変更や受取人への分配を進めます。 ・共同名義で“残った人に自動で移る”タイプ 夫婦や親子などがサバイバーシップ※付きの共同名義にしている場合、死亡証明を出せば残った人に自動で移る仕組みです。 とくに夫婦の結婚期間中に得た財産を共有とみなす州では、配偶者にスムーズに移りやすい形が用意されています。 ※サバイバーシップ:共同名義で、一方が亡くなると自動でもう一方へ名義が移る仕組み。 ・不動産の死亡後移転の事前指定(TOD) 「亡くなったらこの不動産はAさんに渡す」と生前に役所へ書面を提出しておく制度です。 これが記録されていれば、裁判所に行かずに受取人へ名義を移せます。 (2)プロベート手続きが必要なパターン(原則) プロベート手続きが必要になるのは、故人の単独名義の不動産や口座に受取人指定が無いときです。 この場合は、故人が住んでいた本拠の州で手続きを開始し、必要に応じて不動産がある別の州でも追加の手続き(下で説明)をします。 流れはおおむね①申立て → ②財産の管理(評価・借金の清算・税金) → ③分けるという順番です。 専門家の助けを借りるとスムーズです。 別の州に不動産があるときの“追加手続き” 住んでいた州での相続手続きを始めたうえで、物件のある州でも追加の相続手続きをすることがよくあります。 例:日本在住・本拠は日本、米国のA州に家、B州にも別荘がある → A州とB州でそれぞれ追加の手続きが要る、というイメージです。 1-3 名義変更は「評価→登記→口座・契約」の順で行うのがオススメ 書類が整うと実際に名義の変更手続きに移りますが、後々のことも考えて「評価→登記→口座・契約」の順で行いましょう。 (1) まず価値の証明(評価・査定) 不動産の死亡日時点の価値を、第三者の評価書や査定書で押さえます。 これは ①相続税・州税の判断、 ②将来売るときの利益計算(いわゆる取得価額のステップアップの基準)、 ③相続人どうしの公平な分け方 に影響してきます。 写真や修繕履歴、近所の売買事例も一緒に保存すると安心です。 (2) 次に登記の名義を変える 郡の登記所(カウンティ・レコーダー)に出す「名義変更の書面(ディード)」を作って提出します。 署名の公証はほぼ必須になります。 日本など海外で署名する場合、大使館・領事館の公証や前述したアポスティーユという国際的な書類の認証が必要になることがあります。 場所によっては英訳の添付を求められることもあるので、事前に登記所や専門家へ確認をしましょう。 (3) 最後に口座と契約を切り替える 不動産の火災保険・賠償責任保険の名義や、公共料金・HOA・警備・インターネットなどの契約名義を新しい所有者名に変更します。 賃貸中なら、家賃の振込先・敷金の預かり先を切り替えて、入金管理の表(家賃・修繕・税金・保険など)をつけ始めます。 銀行口座も、相続用(遺産)や信託用の専用口座にまとめておくと、翌年の確定申告が楽になります。 ただし、米国の金融機関では、故人の口座の解約や名義変更自体が、日本居住者にとって高いハードルとなる場合も多いです。 第2章 税務手続き(連邦/州税/日本) 次に「税務手続き」について確認していきます。 結論としては日本在住の日本人がアメリカに不動産を持っている場合でも、不動産の価格が高額でなければ場合にはアメリカでの納税は発生しません。 ただし、日本での相続税申告にもアメリカの不動産を含める必要がありますので日本での申告にも注意が必要です。 では、具体的な内容を確認していきましょう。 2-1 米国連邦の相続税:「申告をする必要があるか、納税が生じるか」を確認 (1)申告が必要になる目安 亡くなった日の時点での米国内資産の合計額(通常は不動産の時価)が6万ドルを超えるとForm 706-NA の提出が死亡後9か月以内に必要になります。 なお、計算が期限内に間に合わない場合になど必要な場合には「6か月の延長届(Form 4768)」を提出することが可能です。 (2)税額が発生するかの目安 米国では、その年ごとに大きな非課税枠(基礎控除)があり、2025年は 13,990,000ドルです。 しかし、これは米国の市民・居住者に直接適用される制度で、日本在住の日本人(アメリカから見た場合のNon-resident,、Non-citizen、NRNC)にはそのままの形では適用されません。 ただし日米の相続税条約が“助け舟”になります。 日米相続・贈与税条約(1954年)により、日本在住の被相続人が米国内資産だけで米国相続税がかかる場合、米国側の“大きな非課税枠”に相当する控除の“按分(比例)分”を使える仕組みがあります。 ざっくり言うと、「米国の非課税枠 ×(米国内資産 ÷ 仮に米国居住者だったと想定した全世界資産)」という比例計算で、米国の課税が軽くなる/ゼロになる可能性があります。 【具体例】 亡くなった方の全資産が「世界で2,000万ドル」、そのうち米国内不動産が500万ドルだとします。 このとき条約の考え方では、米国の“特別控除”を 500万/2,000万=25%だけ使えるイメージになります。 結果として米国相続税が大きく減る/申告は必要でも納税ゼロになることもあります。 ※実際の計算は控除や債務、評価の取り扱い・添付書類など細かい要件に従います。 2-2 州の相続税・遺産税:「物件がある州だけ」確認すれば十分 州税については、物件がある州に州税があるかを確認し、ある場合はその州の基準額・控除・期限に合わせて申告をすることになります。 なぜなら、一部の州だけが州レベルの相続税(Estate Tax)や相続人課税型(Inheritance Tax)の制度を持っているからです。 したがって、日本在住の方にとって重要なのは、「不動産が建っている州」のルールです。 同州に州税があれば、その不動産部分に対し州の申告・納税が要る可能性があり(例:ワシントン州・オレゴン州など)、なければ州レベルの申告は不要になります(固定資産税などの年次の税は別ものです)。 2-3 日本の相続税:原則10か月以内に申告+外国税額控除で二重課税を調整 日本居住の相続人がいれば、海外資産(米国不動産)を含めて日本の相続税の対象になります。 申告期限は原則10か月(死亡日の翌日から起算)になります。 あまりケースとしては多くありませんが、米国で支払う相続税(連邦・州)がある場合、日本の相続税申告で「外国税額控除」を使い、二重課税を調整できます。 【外国税額控除についてはリンク先を参照ください。】 不動産の評価額については、米国側の評価書の金額に基づき、円貨に換算して評価します。 申告書の提出時には、米国側の評価書・計算根拠の和訳を添えて提出するとスムーズです。 「取得価額のステップアップ」とは?――日本在住でも効果あり 亡くなった時点で、相続した不動産の“取得価額”(買った値段)を、その時点の時価に近い金額へ更新できる扱いを俗にステップアップと呼びます。 米国税法(IRC §1014)に基づく一般ルールで、相続後に売るときの利益が小さくなり、譲渡益課税が軽くなる効果があります。評価書を確実に残しておきましょう。 不動産が夫婦共有の扱いになる“コミュニティ財産州”(アリゾナ、カリフォルニア等)では、要件を満たすと全体が時価へ調整される取り扱いがあり、将来の譲渡税に大きく効きます。 物件州のルールに左右されるため、現地の専門家に要件確認をしましょう。 なお、ステップアップは米国の所得税の計算に用いるルールであり、日本の譲渡所得の取得費計算とは異なることにご留意ください。 第3章 相続前の対策は「信託/TOD/共同名義+州の性格」で手間と税負担を抑えることができます! 3-1 自動承継(サバイバーシップ)の活用が近道 配偶者に自動で移る共同名義(サバイバーシップ付き)を使うと、登記の名義変更だけで済むことが多く、スピードとコストのバランスがよいです。 さらに、取得価額のステップアップで将来の譲渡益税が下がる可能性もあります。 ただし、遺言で細かく配分する自由度は下がる面があるため、信託と組み合わせて二次相続(次に配偶者が亡くなるとき)まで見据えて設計するのがより良い方法です。アメリカではファミリートラストという形で夫婦が共同してトラストを作り、夫婦のいずれかが生存している限りはトラストで資産を運用して、2人とも亡くなった時点でトラストを清算し、予め定めた方法で資産を分配することがあります。 日本での課税に注意! 夫婦のどちらか一方が資金を全額拠出した場合、共同名義の創設時に日本では贈与税が課税される可能性があります。また、死亡時の自動承継は日本の相続税法上、みなし贈与(死因贈与契約とみることもできる)として相続税の課税対象となります。 3-2 TODが使える州は生前の一枚の紙で不動産移転を簡単に TODは、「亡くなったらこの人へ」と受取人を先に登録しておく仕組みです。 生前に登記所へ記録しておけば、亡くなった後は受取人が登記を引き継ぐだけで済み、裁判所を通す手続きを避けられます。 たくさん不動産がある場合は、広い資産は信託に入れつつ、特定の物件だけTODにするなど、組み合わせで費用・スピード・柔軟性のバランスを取れます。(居住用不動産にのみTODを認めている州もあるなど、どの州でも使えるわけではない点に注意が必要です) 3-3 信託(リビングトラスト)の活用でプロベート手続きを回避 日本在住の日本人が米国不動産を円滑に承継する最短ルートは、リビングトラストでプロベート(裁判所手続)を回避することです。 リビングトラスト(生前信託)は、「亡くなったらこのルールで物件を渡す」という私的な設計図です。 ポイントは「作るだけでは足りず、名義(登記)を信託へ移しておく必要がある」ということ。 これができていれば、亡くなった後は裁判所を介さず、信託の管理人(受託者)が登記の移転や分配をそのまま進められます。 州をまたいで物件があっても、各州ごとの追加プロベートを原則避けやすいのが最大の利点です。 第4章 国際相続は「税理士法人マインライフ」へ 国際相続は、国内相続とは比べものにならないほど複雑で、専門家の存在が成功の分かれ道となります。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 「海外の財産をどう扱えばいいのかわからない」「外国税額控除を受けたいが手続きに不安がある」―― そのようなときは、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 最初の一歩を踏み出すことが、複雑な国際相続を解決へ導く最大のカギとなります。 第5章 まとめ いかがだったでしょうか。 本コラムは日本在住の日本人がアメリカに不動産を持っていることを前提に、相続の進め方を法務(登記・裁判所)と税務(米国連邦・州・日本)の両輪で整理しました。 国をまたぐ相続の中心は、実は名義の移し替えです。 信託・共同名義(自動承継)・TODであれば、原則プロベート不要ですが、単独名義はプロベートが原則必要で、別の州の物件はその州で追加手続きが生じます。 生前に信託やTOD、LLCを使っておけば、この負担を大きく減らせます。 税務は「米国連邦、物件の所在州、日本」で要否を確認します。 連邦は日本居住者向けの706‑NAが基準で、条約の按分により納税ゼロとなることもあります。 州税は物件がある州だけ見ればOKです。 日本の相続税はアメリカの不動産を含めて10か月以内に申告をする必要があります。 情報の行き来が濃くなった今、書類の整合性と手順の順守が何よりの安全策です。 「アメリカに不動産がある」時点で国際相続のステージに立っています。 早めに専門家へ相談すれば、差し戻し・登記遅延・不要な税負担を避け、家族関係の円満にもつながります。
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3分でわかる!あなたは国外財産調書が必要か?【フローチャート付き】
海外の銀行口座や株式、不動産をお持ちの方へ。 「国外財産調書」という言葉をどこかで耳にしたことはありませんか? 実は、ここ数年、国税庁は国外財産の把握にかなりの力を入れています。 その一環として設けられたのが「国外財産調書」です。 最近は、海外に財産を保有されている方も増えており、「自分も提出の対象になるのでは?」と悩まれる方も増えています。 国外財産調書は、毎年12月31日時点で国外にある財産の合計が5,000万円を超える場合に提出が義務づけられている届出書です。 とはいえ、 「提出が必要かどうかよく分からない」 「もし出さなかったらどうなるのか不安」 「書き方が難しそうで挫折しそう」 こうした疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか? この記事では、3分で提出要否を判定できるフローチャートを用意しました。 さらに、制度の詳細、提出しなかった場合のペナルティと提出するメリット、作成方法までを、税理士の視点で分かりやすく解説します。 「提出が必要かどうか」この記事を読めば整理できます。 ぜひ最後までご覧いただき、制度を正しく理解し、今ある不安を取り除いてください。 まずは、国外財産調書の提出が必要か否かについて確認をしていきましょう。 第1章 3分で分かる!国外財産調書の提出要否フローチャート 国外財産調書の提出が必要かどうかは、いくつかの条件を確認するだけで判断できます。 ここでは、3分で提出要否を判定できるフローチャートをご用意しました。 なお、判定を行う際の注意点(相続財産やローン付き不動産、共有財産の扱いなど)は、1-3で補足していますので、併せてご確認ください。 次に、制度の概要や提出する様式について確認をしましょう。 1-1 国外財産調書の制度概要 国外財産調書は、毎年12月31日時点で国外にある財産の合計が5,000万円を超える場合に、日本の居住者に提出が義務づけられている届出書です。 なお、提出期限は翌年の6月30日までです。 提出する際の様式は次の通りです。 1-2 国外財産調書を提出しないとペナルティ、提出すれば優遇も 国外財産調書は提出しないとペナルティが課されます。反対に、提出すれば税務上の優遇もあります。 1-2-1 提出がない場合のペナルティ 国外財産調書を提出しなかったり、記載すべき項目が欠けていたりした場合、その財産について所得税や相続税の申告漏れがあると、過少申告加算税や無申告加算税が通常より5%重くなります。 ・過少申告加算税=申告額が少なかった場合のペナルティ ・無申告加算税=申告すべき税金を申告しなかった場合のペナルティ さらに、偽りの記載や正当な理由のない未提出の場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることもあります。 そのため、国外財産調書を提出すべき方は、必ず提出しましょう。 1-2-2 提出した場合の優遇 提出期限内に国外財産調書を提出していれば、その財産に関して所得税や相続税の申告漏れがあった場合でも、過少申告加算税や無申告加算税が5%軽減されます。 1-3 提出要否を判断する際の3つの注意点 注意1 ローン付きの海外不動産 ローン付きの不動産を所有している場合、ローン残高を差引く前の不動産評価額で判定します。 たとえば7,000万円の海外不動産を所有し、ローン残高が3,000万円ある場合、実質は4,000万円ですが、国外財産調書の判定額はローン残高を差引く前の7,000万円となります。 したがって、この不動産だけを所有している場合でも 「7,000万円>5,000万円」となり、提出対象です。 注意2 共有財産の場合 国外財産を夫婦や親族と共有している場合は、その持分の割合に応じて計算します。 しかし、持分が定まっていない場合や持分が明らかになっていない場合は、各共有者の持分は相等しいものと推定して計算することになっています。 海外でよく見られるジョイントアカウント(共同口座)やジョイントテナンシー(共同名義不動産)も同様に取り扱うことになっています。 注意3 相続で取得した国外財産 国外財産を相続した場合、相続をした年の国外財産調書では考慮する必要がありません。 しかし、翌年の年末に引き続き保有している場合は考慮する必要があります。 次の章では国内財産か国外財産かを判定するPointを確認していきます。 第2章 国内財産か国外財産か?判定の2つのPoint 次の2つのポイントを押さえれば、ほとんどの方はお持ちの財産について判断できると思います。 なお、この判定は相続税法に基づいて行われます。細かく知りたい方は国税庁の資料(参考)をご確認ください。 Point1 預金・有価証券は「口座の所在地」で判定! 預金や有価証券は、管理している金融機関や証券会社の所在地で判断します。 外貨預金や外国株式であっても、日本国内の証券会社で管理されていれば 国内財産(対象外)。 一方、日本の株式であっても、海外の証券会社で管理していれば 国外財産(対象)となります。 Point2 不動産は「物件の所在地」で判定! 日本にある不動産は、国内財産(対象外)。 一方、海外にある不動産は、国外財産(対象)となります。 たとえ、日本の不動産会社から購入したとしても、所在が海外であれば国外財産に該当します。 プラスα 暗号資産は「所有者の住所地」で判定! 暗号資産は国外の取引所で取引をしていたとしても所有者の住所地で判断します。 国外財産調書は日本の居住者に提出義務があるもので、その日本の居住者にとって暗号資産は国内財産(対象外)となります。 最近は暗号資産で大きな利益を得ている方も多いですが、国外財産調書については心配する必要はありません。 出典:国税庁ホームページ 国外財産調書制度(FAQ)令和7年6月 次の章では、国外財産の評価方法と外貨から円への換算ルールについて確認します。 第3章 国外財産の評価と為替換算 国外財産調書では、毎年12月31日時点に保有している国外財産の価額を円換算して記載する必要があります。 対象財産の価額をどのように評価し、どの為替レートで換算するのかを正しく理解しておくことが大切です。 3-1 評価額の出し方 国外財産は、その年の12月31日における「時価」を計算する必要があります。 「時価」というのは、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額のことをいいます。 つまり、実際にその財産を売買するときの一般的な値段ということです。 しかし、「時価」を求めやすい財産と求めにくい財産があります。 「時価」を求めにくい財産は、合理的に見積もった価額などを用いて計算することになります。 【時価を求めやすい財産】 現金・預金 : その年12月31日の残高 上場株式等 : 金融商品取引所等の公表するその年の12月31日の最終価格 (ない場合は、その直近の日の最終価格) 未収入金・貸付金 : その年12月31日の元本の額 【時価を求めにくい財産】 土地、建物 ① 固定資産税の評価額を使う方法 その国で日本の固定資産税に相当する税金がある場合は、税金を計算するための不動産の評価額(課税標準額)を使います。 ② 購入価額を基準に見積もる方法 購入時の価格に、その国の不動産統計指数などを参考にして合理的な変動率を乗じて価額を見積もります。 ③ 実際の売却価額を使う方法 国外財産調書の提出までの間に売却した場合、その売却価額を評価額とします。 ④ 建物は償却して評価する方法 建物に限り、購入価額から経過年数に応じた償却費を控除して計算します。 金融市場で取引のない有価証券(非上場株式など) ① 直近に売買が成立していて、適正と認められるものがあればその価額 ② 実際の売却価額を使う方法 国外財産調書の提出までの間に売却した場合、その売却価額を評価額とします。 ③ 法人の純資産価額に持株割合を乗じて計算した金額 ④ いずれの計算も難しい場合は取得した価額 貴金属、書画骨とう及び美術工芸品 ① 直近に売買が成立していて、適正と認められるものがあればその価額 ② 実際の売却価額を使う方法 国外財産調書の提出までの間に売却した場合、その売却価額を評価額とします。 ③ いずれの計算も難しい場合は取得した価額 【評価する場合の注意】 ローンがある場合 海外不動産などにローンが付いている場合でも、ローン残高を差し引かずに不動産の評価額全体で判定します。 (例:7,000万円の不動産に3,000万円のローンがあっても、4,000万円ではなく7,000万円で計算します。) 共有財産の場合 夫婦や親族と共有している財産は、持分割合に応じて評価します。 持分が明らかでない場合は「等分して所有している」と推定されます。 海外によくあるジョイントアカウントやジョイントテナンシーも、同様に持分割合で計算します。 3-2 為替換算の基準 その年の12月31日における最終のTTBにより為替換算を行います。 財産債務調書には、邦貨(円)で提出の要否の判定、及び、記載をする必要があります。 国外財産ついてはその国の通貨で評価するため、最後に円に換算する必要があります。 その際に用いるのが、取引金融機関が公表するその年の12月31日における最終の対顧客直物電信買相場(TTB)又はこれに準ずる相場(同日にこれらの相場がない場合には、同日前のこれらの相場のうち、同日に最も近い日のこれらの相場)になります。 一通り、国外財産調書について確認をしてきました。 次の章では、よくあるQ&Aについて確認をしていきましょう。 第4章 よくある疑問Q&A Q1 期限後に提出した場合はどうなる? A1 期限後でも、自主的に提出したものであれば、期限内に提出したものとみなされて、『1-2-2 提出した場合の優遇』を受けられます。 ただし、所得税や相続税の調査があり、修正されることを予知した後に提出した場合は対象外となります。 Q2 提出したあとに誤りや記載漏れがみつかったらどうすればいいの? A2 誤りや記載漏れに気づいたら、直した内容ですべての国外財産を記載しなおして再提出します。 誤りや記載漏れの部分だけではなく、すべての国外財産を記載して提出する必要があります。 この場合もQ1と同じく、自主的に提出したものであれば期限内に提出されたものとみなされて、『1-2-2 提出した場合の優遇』を受けられます。 誤りや記載漏れに気づいたらそのままにせず、早めに再提出しましょう。 Q3 国外財産調書と財産債務調書はどう違うの?両方提出しないといけないの? A3 提出の要件に該当する人は両方とも提出が必要になります。 両方とも提出する場合には、国外財産調書に記載した国外財産については、財産債務調書には詳細に記載する必要はありません。 なお、財産債務調書とは一定の所得や財産がある方が提出する書類で国外財産調書と比較すると次の通りになります。 項目 国外財産調書 財産債務調書 提出 すべき人 居住者 (非永住者を除く)で、 国外財産の合計が 5,000万円超の人 次の➀と➁のいずれかに該当する人 ➀所得が2,000万円を超え かつ 総資産が3億円以上又は 有価証券等を1億円以上 ➁居住者で総資産が10億円以上 対象財産 国外にある財産のみ 国内、国外問わずすべての財産・債務 基準日 12月31日 提出期限 翌年6月30日 提出先 所轄税務署 ペナルティ 相続税・所得税とも 加算税を5%加重 (死亡した方の所得税を除く) 所得税のみ加算税を5%加重 (相続税は加重なし) 優遇 相続税・所得税とも加算税を5%軽減 刑罰 虚偽記載または 提出義務不履行の場合 1年以下の懲役または 50万円以下の罰金 明示なし 疑問になりやすい項目についてQ&A形式で解説していきました。 しかし、いろいろな財産があり自分で作成して提出するには不安な方もいらっしゃると思います。 次の章では、税理士に相談するメリットについて触れていきます。 第5章 税理士に相談するメリット 国税庁はCRSなどの制度により、他国の金融機関からの情報提供を受け、国外資産の把握を強化しています。 しかも、国外財産調書は実務上ミスが起こりやすい制度です。 税理士に相談することで次のようなメリットが得られます。 5-1 記載漏れや評価ミスを防げる 国外財産調書は、財産ごとに評価方法や換算レートを正しく適用する必要があります。 税理士に依頼することで、記載漏れや評価ミスを防ぎ、安心して提出できます。 5-2 新しい視点からの提案が受けられる 調書を作成する過程では、財産の全体像を把握します。 税理士が関与すれば、所得税や将来の相続税を見据えた財産管理・運用の提案を受けられることもあります。 5-3 税務に関する相談を継続的に受けることができる 税務に関する相談は内容が多岐にわたり、短期的な対応だけでなく長期的な視点で考えることが大切です。 例えば、所得税の対策は1年だけだとあまり効果が見えにくくても、毎年継続することで大きな効果をもたらすことがあります。 また、相続税の対策は、早い段階から長期的に取り組むことでより効果が高まります。 そのため、信頼のできる税理士に継続的に相談できる体制を整えておくことは、大事な資産を守るためにとても大切です。 第6章 ご相談は、信頼と実績の「税理士法人マインライフ」へ 財産が海外にあり、国外財産調書の提出が必要そう・・・。 海外に財産があるとどのような弊害があるのか心配、いい対策案はないか?等のお困りのことがございましたらまずは税理士法人マインライフまでご相談ください。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の税理士として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 経験豊富な税理士が直接対応 少数精鋭体制で、常に経験豊富な税理士が対応。担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、1人当たりの担当件数も多く、実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 弁護士・司法書士・現地専門家との連携体制が整っており、海外財産や海外在住者の手続きに対応可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる申告業務だけではなく、納税資金対策や二次相続設計など、将来を見据えたオーダーメイド提案が得意です。 「海外の財産をどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第7章 まとめ いかがだったでしょうか? 国外財産調書は、海外に資産をお持ちの方にとって無視できない重要な制度です。 国外財産が5,000万円を超える居住者にとっては提出が必須です。 また、未提出や虚偽記載には加算税の加重や刑罰のリスクがあり、正しく提出していれば加算税の軽減という優遇措置も受けられます。 さらに、判定方法や評価の仕組みは複雑で、ローン・共有・相続財産など誤解しやすい点も多いため注意が必要です。 制度を正しく理解し、早めに対応することが何よりも大切です。もし少しでも不安があれば、ぜひ税理士にご相談ください。
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相続人の誰かが海外在住なら知っておきたい!7つの相続手続き!
「相続人の1人が海外にいるのだけど、手続きはどう進めればいいのか…」 「期限までに終わらせられるか心配」 このような不安を抱える方は少なくありません。 私は税理士としてこのようなご相談を数多く受けてきました。 そして、ほぼ全てのご相談者は手続きのやり方や手順、必要な書類、注意点などを把握されていませんでした。 手続き一つ間違えると、大幅に納税額が増えることも・・ 相続人のうち誰かが海外に住んでいる場合は、注意が必要です。 日本国内だけの相続に比べて ① 手続きに時間と手間が大幅にかかる ② 海外の税法が関わってくる といった特徴があります。 実のところ、専門家の助けなしにご自身で相続手続きをすることは不可能と言ってもいいでしょう。 本記事では、相続手続きの全体の流れを押さえたうえで、海外在住の相続人が関与する場合に必要な手続きや注意点を詳しく解説します。 記事を参考にして、漏れなく、スムーズな手続きにつなげてください。 第1章 相続人が海外に在住している場合の一般的な相続手続きの流れ 以下の各Stepごとに解説をしていきます。 Step2、4、5、6、7は相続人の中に海外在住者がいるため特殊な手続きを要するものとなり、特に注意が必要です。 Step1 相続発生時 ・死亡届の提出 被相続人の死亡が確認された場合、まず必要となるのは死亡届の提出です。 死亡診断書(または死体検案書)を添えて、市区町村の役所に提出します。 【提出先】 ①死亡地 ②届出人の所在地 ③本籍地 のいずれかの市区町村 【提出期限】 「死亡の事実を知った日から7日以内」 ※提出が遅れると戸籍に正しく記載されず、相続登記や金融機関の手続きで支障が出るおそれがありますので、注意してください。 ・葬儀の準備 相続とは別に、現実的には葬儀の手配も同時並行で進めます。 葬儀の形式、日時、宗教・宗派の選定、会場予約、参列者への連絡など、短期間に多くの意思決定が必要です。 【葬儀費用について】 相続財産から支出することができます。 後の相続財産評価や遺産分割にも関係してくるので費用の明細書・領収書を保管が重要になります。 Step2 相続人の確定 ・戸籍の収集 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍・改製原戸籍含む)を集めます。 相続手続きをする上で、法定相続人を確定するためです。 戸籍の収集には郵送請求や専門家の代理取得も可能です。 ただし、発行には1週間〜2週間かかることもありますので時間には注意が必要です。 ・海外在住者の場合は日本国籍であれば戸籍取得可能 海外に在住している相続人が日本国籍を有している場合は、他の日本在住の相続人と同様に日本の戸籍を取得可能です。 そこに特別な手続きは必要ありません。 具体的には委任を受けた相続人代表や税理士、司法書士の専門家が郵送または役所の窓口で海外在住者の戸籍を取得することになります。 ・日本国籍がない場合は外国の公的書類を用いて証明する必要あり 海外で出生した方やすでに日本国籍を喪失している方のように日本国籍を有していない場合は、在住先の海外で取得できる公的な書類で相続人であることを証明していきます。 具体的には下記のような書類を用意します。 書類名 説明 外国の出生証明書(Birth Certificate) 被相続人と申立人が親子であることを示す基本資料です。公的機関発行の原本+日本語訳が必要になります。 外国の婚姻証明書 配偶者であることを示す場合に必要になります。(結婚証明書や登録記録) 外国の家族関係証明書または親族関係登録簿 国によっては「家族簿」などの制度があります。 宣誓供述書(Affidavit) 弁護士または公証人による宣誓文書です。家族関係の事実を記載します。 国籍喪失証明書(あれば) 帰化・国籍放棄などによる日本国籍喪失を証明します。 日本国籍がない場合には在住地で複数の書類を取得し間接的に相続人であることを証明する必要があります。 つまり、この手続きには時間がかかると言えます。 早め早めに手続きに取り掛かることが重要になってきます。 Step3 相続財産の調査 ・被相続人が保有していた財産や負担すべき債務の洗い出し 不動産、預貯金、有価証券、保険金、貸付金、ゴルフ会員権など、被相続人が所有していたすべての財産を網羅的に調査し、洗い出します。 負債(住宅ローン、借入金、未払税金など)も同様に確認が必要です。 【主な調査対象】 ・通帳 ・証券 ・契約書の確認 ・金融機関への残高証明請求 ・名寄帳 ※国外に財産がある場合 外国口座、不動産、海外法人株式などがある場合は、その国の制度や評価方法に基づいて名義変更手続き・評価する必要があります。 日本の税務当局に対しても適切な資料(翻訳含む)を添えて報告しなければならないため、現地の弁護士・税理士との連携も求められます。 国外財産がある場合のプロベート手続きについては以下のリンクで詳細に解説しております。 https://www.mine-life.jp/what-is-probate-working-flow-how-to-avoid-2 Step4 被相続人の債務が財産より多いことが懸念される場合/相続放棄・限定承認の検討 ・相続放棄(財産、債務ともに全く相続しない) 相続人は、被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ相続放棄を申し出ることができます。 これは相続財産がマイナスの場合(借金過多など)に有効です。 海外在住者は、署名証明書と在留証明書を取得し、郵送で申述することが可能です。 ・限定承認(財産の範囲で債務を相続する) 限定承認とは「プラスの財産の範囲で借金を引き継ぐ」という制度です。 これは、すべての相続人が一括して行う必要があります。 書類不備や一部の相続人の反対により実施困難となるケースもあります。 この手続きも相続人の死亡を知った日から3か月以内に原則行う必要があるのでご注意ください。 Step5 遺産分割協議 ・分割協議は全員一致が原則 遺産分割協議を行います。 遺産分割協議は、法定相続分を超えて自由に配分内容を決められるものです。そして、遺産分割協議には相続人全員の同意が前提となります。 一人でも署名しない、意思表示をしない場合には協議は無効となります。 ・海外在住者の署名と証明 海外在住の相続人は、遺産分割協議書に署名したうえで「署名(サイン)証明書」と「在留証明書」を現地の在外公館で取得し、日本に郵送する必要があります。 現地での本人確認、翻訳、公証などにも時間がかかるため、早めの準備が必要です。 「署名(サイン)証明」とは 署名証明とは、日本の印鑑証明書の代替として利用される書類で、本人が在外公館(日本大使館や総領事館)の面前で署名したことを証明するものです。遺産分割協議書や委任状などに添付します。 ● 取得方法(一般的な流れ) 手順 内容 ①予約 大使館・領事館のホームページ等から予約します。 (国によっては予約不要な場合もあります) ②持参書類 パスポート、必要書類の原本(協議書・委任状など)、現住所が分かるもの ③現地署名 大使館等で職員の面前で書類に署名を行います。 ④手数料の支払い 手数料は国や照明内容によって異なります。 ⑤証明書受領 その場で交付を受けられる場合と後日受領する場合があります。 なお、外国籍の相続人の場合には日本の大使館や領事館での手続きでなく、現地の公証人の面前でサインをすることで証明をすることになります。 「在留証明書」とは 在留証明とは、日本の住民票の代わりとして利用するもので、海外に住んでいること(現住所)を証明するものです。 ● 取得方法 手順 内容 ①予約 大使館・領事館に予約(署名証明と同時に取得できる場合が多い) ②持参書類 パスポート、現住所が記載された公的書類(運転免許書、公共料金請求書、住民登録カード等) ③申請・発行 申請書に記入して提出します。現住所が事実であることが確認された後に証明書が発行されます。 ④手数料 約10~20USD程度(国によって異なります) ⑤有効期限 原則として発行日から3か月以内に使うのが望ましいです。 ・委任状による対応 相続人の一部または全員が、弁護士や税理士などに委任状を発行することで手続きを代行してもらうことも可能です。 相続人が海外に在住している場合は、様々な手続きの都度「署名(サイン)証明書」が必要になるため相続手続きの一切を弁護士に委任することができます。 実務上はこの方法がスムーズであることが多いです。 ただし、委任状には「署名(サイン)証明書」を添付する必要があるため、初回委任時には大使館又は領事館での手続きが必要になります。 Step6 相続税申告 ・例え海外に住んでいても日本の相続税申告が必要になるケースが多い 被相続人が日本居住者である場合、相続人が非居住者(海外在住)であっても日本国内の財産だけでなく、海外財産も含めて課税対象となります。 ・日本での申告納税業務を代わりに行ってくれる人を選任する必要がある 相続税申告を行うにあたって、相続人が非居住者の場合には日本国内に納税管理人を置く必要があります。 通常は税理士、親族、信託銀行などが担当し、申告書の提出・税金の納付・連絡窓口として機能します。 なお、具体的な手続き方法は後述いたします。 ※被相続人の財産の中に有価証券がある場合には相続税とは別に所得税が課されることも 被相続人が1億円超の有価証券等を保有していた場合、その相続によって含み益が非居住者に移転することから、準確定申告時に所得税(譲渡とみなされる)を課されるケースがあります。 なお、具体的な内容は後述いたします。 Step7 名義変更手続き ・必要書類の整備 ①遺産分割協議書 ②戸籍謄本 ③印鑑証明(または署名証明書) ④登記識別情報 ⑤金融機関所定の相続手続き依頼書 などが必要です。 不動産は法務局、預金は銀行ごとに手続きが異なります。 ・海外在住者の手続き上の留意点 金融機関や法務局では、署名証明書の内容に厳格な様式を求めることもあり、記載ミスや形式不備による再取得が必要になることがあります。 <専門家からのアドバイス> スケジュール管理が重要!! 相続税の申告期限(10ヶ月)、相続放棄の申述期限(3ヶ月)、名義変更に伴う各種期限などが並行して走っているため、全体スケジュールを把握したうえで進行管理を行うことが極めて重要です。 特に海外とのやり取りを含む場合、郵送・翻訳・認証手続きの時間を見込んだ計画が不可欠です。 スケジュールを加味し、しっかりとしたスケジュールを組んでいきましょう。 第2章 相続人が海外在住のときの事例ごとの必要な手続きと流れ 相続人が海外に在住している場合、日本に在住している方のみが相続人の場合と異なり一般的な相続手続き通りに進めることができないケースも存在します。 この章では上記の一般的な手続きでは進められないケースについてより詳しく解説いたします。 2-1. 相続人と連絡が取れない・所在が分からない場合|不在者財産管理人選任/失踪宣告の検討 相続人の一人が海外にいて連絡が取れない、または長年所在不明である場合、他の相続人が勝手に手続きを進めることはできません。 このような場合、家庭裁判所で「不在者財産管理人」の選任を申し立てることで対応可能です。 【不在者財産管理人の役割】 ・申立先:不在者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 ・必要書類:申立書、不在者の戸籍附票(または不在の証明資料)、相続関係図、財産目録、申立人の戸籍謄本など 選任された不在者財産管理人(通常は弁護士)が、失踪中の相続人の代理として遺産分割協議に参加し、登記・名義変更・相続税申告などを行います。 【失踪宣告との違い】 失踪宣告(民法第30条)は、原則として「7年以上」音信不通の相続人について「死亡とみなす」制度です。宣告が確定すれば、その人物は法律上「死亡」扱いとなり、他の相続人で手続きを進めることができます。 2-2. 未成年・判断能力に問題がある相続人が海外在住の場合|特別代理人選任 相続人の中に未成年者や認知症などで判断能力のない者が含まれる場合、遺産分割協議は無効になります。 例え海外に住んでいる相続人であっても同様です。 特に親が子を代表しようとすると利益相反となるため、家庭裁判所に「特別代理人の選任申立て」が必要です。 【ポイント】 ・申立先:原則的には未成年者等の住所地を管轄する裁判所です。 国外に在住している場合に日本の家庭裁判所に緊急管轄が認められるかは個別に判断されます。 ・提出書類:申立書、戸籍謄本、財産目録、遺産分割協議案、陳述書等 ・選任者:一般的に利害関係のない親族または弁護士が選任されます。 ・報酬:家庭裁判所が定めます ・海外在住の子については、代理人の意思疎通のための通訳・翻訳が必要になることもあります。 ※認知症の場合は、別途「成年後見制度」の利用も検討が必要となります。 2-3. 遺言がある場合(公正証書遺言/自筆で検認要)|協議省略と手続き短縮のポイント 遺言書がある場合は、その内容によって遺産分割協議を省略できます。 特に海外在住相続人がいる場合には大幅な手続き短縮につながります。 【公正証書遺言】 ・家庭裁判所の検認が不要 ・登記、金融機関手続きに即時利用可 ・原本は公証役場に保管されているため紛失リスクも少 【自筆証書遺言】 ・検認申立てが必要(相続開始後速やかに家庭裁判所へ) ・添付書類:遺言原本、相続人全員の戸籍、申立書、収入印紙など ※2020年からは法務局による「自筆証書遺言の保管制度」も開始されています。 2-4. 海外から相続放棄したい場合|家裁への郵送申述・署名証明の実務 相続人が海外在住で相続放棄を希望する場合、家庭裁判所に郵送で申述を行うことが可能です。 【必要な手続き】 ・申立先:被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 ・提出物:相続放棄申述書、署名証明書、在留証明書、パスポートの写し、収入印紙 ・署名証明書/在留証明書:在外公館(日本大使館・領事館)で取得 ・提出期限:相続の開始を知った日から3か月以内(例外あり) <専門家からのアドバイス> この章では特殊な相続手続きが必要となる事例について確認いたしました。 「遺言書がある場合」を除き、今回ご紹介したような事例に該当する場合には非常に手続きが複雑になります。 そのため、税理士だけでなく弁護士の先生など複数の専門家の関与が必要不可欠になります。 また、どの手続きも時間がかかる手続きが多く期限もタイトなためスケジュール管理も非常に重要になります。 相続が発生した時点で早急に専門家にご相談することをオススメします。 第3章 海外に住んでいても相続税の手続きは必要になる 相続人が日本に住んでいない、いわゆる「非居住者」であっても、日本国内に被相続人が住んでいた場合、日本の相続税法に基づく申告・納税義務は原則として生じます。 この章では、非居住者が行うべき税務上の手続きと注意点について記載します。 3-1. 日本に代わりに手続きしてくれる人を決めておく必要がある 【納税管理人制度の概要(相続税法第55条)】 非居住者は、日本の税務署に対して直接申告・納税を行うことができません。 そのため、日本国内に居住する「納税管理人(代理人)」を選任し、税務署へ届出る必要があります。 【実務的な流れ】 1. 納税管理人届出書(「相続税の納税管理人の届出書」)を記入 2. 添付書類として納税管理人の住民票(または法人の登記事項証明書)などを準備 3. 被相続人の最後の住所地を所轄する税務署に提出 4. その後の申告書類・連絡はすべて納税管理人を経由 【納税管理人としてよくある例】 • 国内に住む別の相続人 • 税理士 • 長年の顧問会計士や法律専門家 〈税理士のポイント〉 納税管理人は形式的な届出であっても、税務署とのやり取りや納付義務を負う立場になるため、信頼できる相手を選定する必要があります。 電子申告を行う場合には、実務上税理士が納税管理人となるケースがほとんどです。 3-2. 出国前に持っている株や資産に税金がかかることがある(国外転出時課税) 【国外転出時課税制度(通称:出国税)の概要】 国外転出時課税制度とは出国時に「その資産を譲渡した」と仮定し、含み益に対して所得税(譲渡所得)が課税される制度です。 ・対象者 以下の要件を全て満たす者が対象になります。 ①日本に居住する個人 ②出国時に1億円以上の有価証券や未決済デリバティブを保有している ③過去10年間のうち5年以上日本に居住していた ・本人が国外へ転出するときだけでなく相続・贈与でも対象になる ここでの出国とは「本人が国外へ転出する場合」だけでなく、「海外に在住している者への相続・贈与」でも適用されます。 具体的には下記のような場合が該当します • 被相続人:国内居住者、1.5億円分の株式保有 • 相続人:米国在住の非居住者 → この株式を相続すると、被相続人の最終所得として「含み益に対する所得税」が準確定申告で課税されます したがって、被相続人が有価証券を多額に持っていて相続人が海外に在住している場合にはこの制度の対象となるケースが多いです。 【国外転出時課税制度を適用されない方法】 この国外転出時課税制度の適用を免れる方法が2つあります。 ①納税猶予制度の利用する 以下の手続きを行えば、一定期間納税を猶予する制度を利用することができます。 • 納税管理人を届け出ている • 担保を提供している • 継続的な報告(継続適用届出書)を毎年提出 〈税理士のポイント〉 以下の場合には納税猶予は打ち切られ課税されてしまうのでご注意ください。 ・納税猶予の対象資産を非居住者が売却・贈与した ・帰国しないまま猶予期限を超過した ②海外相続人へ株式等を相続させないようにする 海外在住者が有価証券を相続しない内容で遺産分割協議を成立させれば、国外転出時課税を回避することができます。 なぜなら、海外に在住している相続人が有価証券を相続しなければ国外転出時課税制度の対象にならないからです。 遺産分割協議で国外転出時課税制度の適用を免れることができるようであれば検討しましょう。 〈税理士のポイント〉 遺産分割協議で国外転出時課税制度を免れるには、準確定申告の期限(相続開始後4か月)以内に協議が成立している必要があります。 なぜなら、準確定申告の期限を経過してしまうと法定相続分で分割されたものとして、海外相続人にも按分されたと見なされるからです。 遺産分割協議を確定申告させるまで4か月と非常に期間が短いので注意しましょう。 3-3. 要注意!海外在住者の場合使えない相続税の控除も 相続税申告には一定の要件を満たせば使うことができる特例があり、この特例を上手に利用することで相続税の負担を大きく軽減することができます。 一般的な控除・特例が海外在住者でも使えるか使えないか、ご自身で確認してみてください。 ① 小規模宅地等の特例 要件を満たせば財産を相続する相続人が海外在住者でも適用できます。 【対象となる非居住者】 • 日本国籍を有している • 日本居住者が適用する時と同様の各要件(継続保有等)を満たしている 【提出書類】 • 戸籍、相続関係図、遺産分割協議書 • 署名証明書(印鑑証明の代替) • 在留証明書(住民票の代替) ② 配偶者の税額軽減 非居住者でも配偶者であれば適用が可能です(国籍・住所不問)。 海外で結婚された場合には現地で取得した「婚姻証明書」を相続税申告書に添付するケースが多いです。 ③未成年者控除 原則非居住者も適用が可能ですが、被相続人・相続人ともに相続開始前10年超海外に在住しており、日本国内にある財産にのみ相続税が課される場合には適用が制限されるため注意が必要です。 〈税理士のポイント〉 控除が受けられるかどうかは、実際には個別具体的な事案により異なり判断は困難です。 場合によっては租税条約により二国間で特別なルールを設けている場合もあります。 必ずこれらの特例の適用を受けて申告をする場合には専門家に相談しましょう。 <専門家からのアドバイス> この章では相続人が海外に在住している場合に注意が必要な税務手続きを確認いたしました。 国外転出時課税制度や相続税の特例・控除など制度を知っているかどうかで何百万円も税負担が変わるものも多くあります。 また、どの手続きも期限がありもう少し早く相談してくれたらと思うことも多いです。 専門家の助けなしで全ての手続きを行うことは難しいので、早い段階で専門家にご相談することをオススメします。 第4章 相続人に海外在住者がいる場合には早期に専門家に相談を! 相続人の中に海外在住者がいる場合には早期に専門家に相談いただくことを強くオススメします。 なぜなら、ここまで確認してきたように相続手続きにおいて、相続人が日本国外に居住している場合、国内の相続人だけの場合と比較して「証明書の取得」「郵送の往復」「制度理解」などで時間と手間が大幅に増えるからです。 海外在住者が相続人の場合には、多くの見えない落とし穴があります。 専門家でも国際相続案件に普段から携わっていなければ対応は困難です。 私の経験でも、ちょっとした手続きの遅れで数百万円単位で納税が生じてしまうケースを何度も見てきました。 もう少し早く相談していただければ、と思ったことも一度や二度ではありません。 私たち税理士法人マインライフは、豊富な国際相続の経験と独自の国際的なネットワークを有しております。 「海外に資産がある」「海外に相続人がいる」「相続の手続きが全くわからない」など、お困りごとがあれば、まずはお気軽にご相談ください。 第5章 まとめ いかがだったでしょうか。 本記事では、相続人が海外在住である場合に、どのような場面で特別な手続きや配慮が必要になるのかまとめました。 国内だけで完結する相続と異なり、「国をまたぐ」ことによって法律・手続き・書類・税務など、あらゆる面において複雑性が加わります。だからこそ、早期の手続きと専門家との連携が極めて重要になります。 本記事を参考にしていただき、少しでも悩みごと、困ったことがある場合は、まずは専門家に相談してみてください。 皆さんの相続手続きがスムーズに、そして、未来につながる手続きになること
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海外の財産に相続税はかかる?日本との違いや注意点を専門家が解説
「海外に財産がある場合、日本や海外で相続税がかかるのだろうか。」 「そもそも海外の相続税の仕組みはどうなっているのだろうか。」 海外に財産をお持ちで、ご自身に万が一があったときの税金についてご不安をお持ちですね。 結論を言うと、海外にある財産にも日本の相続税はかかる可能性が高く、海外の相続税はその財産の所在する国によります。 そして、近年日本の国税庁は、海外に財産をお持ちの方の相続税申告に漏れがないか、厳しくチェックをしています。 実際に、厳しい税務調査によって海外財産の計上漏れを指摘され、ペナルティ付きの多額の追徴課税を受け、数千万円単位の税負担を強いられたケースも存在しています。 しかもその数は1件や2件ではなく、毎年全国で多数存在するのです。 この記事では、海外に財産を持っている場合に日本や海外で相続税がかかることになるか、という点についてまとめました。 海外の財産にかかる相続税について知り、自分の財産をどこに置くことが理想なのか考えていきましょう。 1章 海外にある財産に日本の相続税はかかる?その基本と課税対象 結論、亡くなった方が日本人で過去10年以内に日本に住んでいた場合、または、日本人の相続人が過去10年以内に日本に住んでいた場合は、亡くなった方が海外に持っていた財産にも相続税がかかります。 以下は相続税の課税対象が日本国内の財産だけとなるか、海外にある財産も含まれるかの判断のためのフローチャートです。 1-1 海外にある財産でも、日本の課税対象になるケースがある このように、基本的にはほとんどのケースで海外にある財産が日本の相続税の対象となるのです。 逆にいえば、財産を持っている方とその相続人が日本人である場合は、そのどちらもが10年超日本に住んでいない状態でないと海外にある財産にも日本の相続税がかかる、ということになります。 1-2 「被相続人」と「相続人」の住所と国籍で変わる課税範囲 日本の相続税が海外の財産にもかかるかどうかは以下の表のとおり、亡くなった方とその相続人の居住地と国籍によって変わります。 日本の相続税がかかる範囲 ※1 外国人被相続人を除く 外国人被相続人…相続開始時に一定の在留資格を有するもの。 ※2 一時居住者を除く 一時居住者…相続開始時に一定の在留資格を有する者で、相続開始前15年以内の国内居住期間の合計が10年以下であるもの。 ※3 非居住被相続人の前提 非居住被相続人…相続開始前10年以内において、国内に住所を有していた期間中、継続して日本国籍がなかったもの。 ・海外財産を持つ日本在住の方が亡くなった場合は、その財産を相続する人がどこに住んでいたとしても日本の相続税の対象となります。(上記表のケース①、②) ・海外財産を持つ海外在住の方が亡くなった場合は、その財産を相続する人が日本に住んでいる場合は日本の相続税の対象となります。(上記表のケース③) ・亡くなった方もその財産を相続する人も海外に住んでいる場合は、その国籍や過去10年以内に日本に住んでいたかどうかで海外の財産にも日本の相続税がかかるかどうかが決まります。(上記表のケース④~⑲) ・なお、実際に日本の相続税がかかるかどうかは、亡くなった方の日本の相続税の対象となる財産(相続税の課税価格)が相続税の基礎控除(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を超えるかどうかで判断します。 1-3 海外に住んでいたとしてもほとんどのケースで日本の相続税からは免れられない このように、海外に住み、海外に財産を移したとしてもほとんどのケースで日本の相続税からは免れられない仕組みとなっています。 近年の税制改正により、海外に移住して日本の相続税がかからないようにしよう、という対策はより難しくなっています。 2章 財産が国内にあるか、海外にあるかはどう判断する?その原則、ルール その財産が日本の財産(国内財産)となるか海外の財産(国外財産)になるかの判定は財産ごとに以下の所在地により行います。 ちなみに、海外の財産にも日本の相続税がかかる場合、日本の財産の場合と同様に価値のあるものはすべて相続税の対象となります。 主な財産の所在地の判定場所 3章 国内財産、国外財産の判断の具体例 それでは、具体例を基に次の財産が国内財産となるか、国外財産となるかについて見ていきましょう。 【具体例】A銀行(本店は東京都)の北京支店にある普通預金 【判定】国外財産。受入れをした営業所の所在地が国外であるため。 【具体例】日本の証券会社を通じて購入したB社(本店はアメリカ)の株式 【判定】国外財産。B社の本店が国外であるため。 【具体例】C証券会社(本店はアメリカに所在)東京支店で購入した投資信託の受益証券 【判定】国内財産。信託の引受けをした営業所の所在地が国内であるため。 【具体例】D生命保険会社(本店はカナダ)からの死亡保険金(保険契約にかかる事務を行う営業所は東京都にある) 【判定】国内財産。保険の契約に係る事務を行う営業所や事務所が国内にあるため。(ない場合はD生命保険会社の本店が国外にあるため、国外財産となる。) このように財産ごとにその判定の基準となる所在地が異なるため、慎重な判断が必要となります。 4章 主要国別の相続税の課税ルール・ポイント 海外に財産がある場合は日本の相続税だけでなく、財産のある国において相続税がかかることがあります。 続いて、各国の相続税の概要についてみていきましょう。 4-1 アメリカの相続税(遺産税) ・特徴 アメリカには日本の相続税に相当する「遺産税」が存在します。 日本の相続税の納税義務者は「相続人」となりますが、アメリカの遺産税の納税義務者は亡くなった「被相続人」となります。 ・課税対象となる財産の範囲 被相続人がアメリカ市民かアメリカの居住者である場合→全世界の財産が遺産税の対象 被相続人が非居住者である場合→アメリカ国内の財産だけが対象 ・控除額(基礎控除) アメリカの遺産税も日本の相続税と同様に財産が一定の控除額を超えた場合に税がかかる仕組みとなっています。 アメリカの連邦遺産税の基礎控除額(2026年分)は1,500万ドルで1ドル150円の為替レートで換算すると22.5億円となります。 この控除額は日本の相続税に比べて大きなものとなりますが、遺産税の控除額は頻繁に変更されるため最新の税制を確認することが重要です。 ・税率 アメリカの遺産税の税率は累進課税となっています。 財産の金額が大きくなるほど税率も高くなります。 税率は最大で40%(2026年1月現在)となっていますが、遺産税の税率は頻繁に変更されるため最新の税制を確認することが重要です。 ・申告と納税期限 原則:相続発生日から9か月以内に申告と納税が必要 ・州の遺産税にも注意 アメリカでは国税としての遺産税の他に、州ごとに州税としての遺産税が存在します。 州の遺産税については非課税の範囲や税率が州ごとに異なるため、該当する州の法律を確認する必要があります。 国税の遺産税は控除額以下で発生しなかった場合であっても、州税の遺産税は発生する、ということもあります。 【「アメリカの相続税(遺産税)」についてはこちらの記事をご参照ください】 4-2 ドイツの相続税 ・特徴 ドイツには相続税があり、日本の相続税と同様に納税義務者は相続人となります。 ・課税対象となる財産の範囲 被相続人か相続人がドイツの居住者であった場合には全世界の財産が相続税の対象となります。 被相続人と相続人の両方がドイツの非居住者であった場合にはドイツ国内の財産のみが対象となります。 ドイツの居住者であるかどうかはドイツの税制に基づいて判断する必要があるため、慎重な検討が必要です。 ・控除額(基礎控除) ドイツの相続税も一定の控除額が設けられておりますが、被相続人との続柄等によりその控除額と税率が異なる仕組みとなっています。 ・税率 ドイツの相続税の税率は累進課税となっています。 財産の金額が大きくなるほど税率も高くなります。 税率は最大で50%(2026年1月現在)となっています。 ・申告と納税期限 相続税の対象となる財産の移転があった場合→原則的にその事実を知ったときから3か月以内に税務当局に対して届出を行う必要があります。 届出後税務当局から通知が到着→通常、通知後1か月以内に申告する必要があります。 申告後、納税額の決定通知書が到着→通常、通知書が届いてから1か月以内に納税期限が到来します。 4-3 シンガポール シンガポールには相続税はありません。 過去には日本の相続税に相当する「遺産税」がありましたが、2008年2月15日以後の死亡について廃止されました。 また、シンガポールにはキャピタルゲイン(資産の売却益)に対する課税もありません。 4-4 香港 香港には相続税はありません。 4-5 中国 中国には相続税はありません。 世界的に見ると、相続税が無い国は意外と多いのです。 続いて、日本と海外の相続税の両方がかかってしまった場合の対処法について解説します。 5章 要注意!海外財産の相続で発生しうる「二重課税」のリスクとその回避策 亡くなった方が日本に住んでいた場合等は海外にある財産についても日本の相続税がかかること、また、海外においても相続税がかかる国があることを説明してきました。 この相続税のルールは各国で定めているため、海外にある財産に対して日本の相続税と海外の相続税の両方がかかってしまう「二重課税」の問題が生じることがあります。 【例】 ドイツに住んでいるドイツ国籍の人が、ドイツに3億円の預金、日本に2億円の不動産がある状態で亡くなった場合 ドイツの相続税→その全ての財産5億円(ドイツにある3億円と日本にある2億円)が対象 日本の相続税→日本にある財産2億円については日本の相続税の対象 さらに、相続人が日本に住んでいる場合は、原則的に日本においても全ての財産5億円が日本の相続税の対象 【イメージ図】 このように、各国の税金が二重でかかってしまうことを「二重課税」といい、これを防ぐために「外国税額控除」という方法があります。 6章 二重課税を合法的に回避する「外国税額控除」制度とは? 「外国税額控除」とは、簡単に言うと、「海外でも日本でも税金を払うことになったとき、日本の税金から海外で払った分を引ける制度」です。 海外の財産にその所在する国の相続税がかかった場合には、その税額を日本の相続税から控除することができる、ということになります。 具体例を示すと以下のようになります。 【例】 前提:日本に住んでいる方が、日本に7億円の財産、海外に3億円の財産がある状態で亡くなった。相続人は日本に住んでいる子ども1人。 日本の相続税:全世界の財産(10億円)に対して日本の相続税4億円が発生 海外の相続税:海外にある財産(3億円)に対して財産所在国の相続税1億円が発生 この場合、全世界の財産にかかる日本の相続税4億円から、外国税額控除によって海外の財産にかかる海外の相続税1億円を差し引き、残りの3億円だけを納めることとなります。 【イメージ図】 一方、日本の財産に海外の相続税がかかった場合には、その税額を日本の相続税から控除することができません。したがってその場合には、海外の相続税額からその国の外国税額控除のルールに基づいて日本の相続税額を控除できるかを検討することとなります。 日本の相続税申告で外国税額控除の適用を受ける場合、その控除額は以下のうち、いずれか少ない金額となります。 ・海外で支払った相続税相当額 (上記例の場合は海外の相続税1億円) ・日本で支払う相続税のうち海外財産が占める割合分の金額 (上記例の場合は、日本の相続税4億円×海外財産3億円/全世界財産10億円=1.2億円) この「外国税額控除」の適用を怠ると、税金を2重で払ったままとなってしまうため、忘れずに適用を受けることが大切です。 【「外国税額控除」についてはこちらの記事をご参照ください】 7章 海外資産の相続税評価における基本的な原則と評価基準 海外の財産が日本の相続税の対象となる場合、海外の財産も日本の財産と同様に基本的には「財産評価基本通達」という一定のルールに基づいて評価します。 しかし、この「財産評価基本通達」は日本の財産を評価することを前提に作られているため、海外の財産にはそのまま使えないことがあります。 その場合には売買実例価額や精通者意見価格等を考慮して評価することとなります。 具体的には、専門家の鑑定額等をベースに評価を行うこととなります。 8章 国際相続に強い税理士がこれだけは伝えたい特に重要な5つのポイント(注意点) 弊社は国際相続にかかる相続税申告を多数手がけておりますが、海外に財産がある場合の相続税の手続きにおいて特に伝えたい重要なポイントは以下の5つです。 ・海外の財産も日本の相続税の対象となるかの判断 日本の相続税を計算する上では、海外の財産も対象となるか、日本の財産だけが対象となるかを判定することが重要です。これによって日本の相続税額が大きく変わることもあります。 ・海外財産の評価 海外の財産の評価は日本の財産の評価と異なり、特殊な判断が必要となります。 財産によっては海外財産が所在する現地の専門家に鑑定を依頼する必要がある場合もあります。 ・外国税額控除 海外財産に対して2カ国以上の相続税がかかっている場合には二重課税を排除するため外国税額控除の適用を検討する必要があります。 ・優秀な現地(海外財産の所在地)の専門家とつながること 日本の相続手続きを依頼している弁護士や相続税申告を依頼している税理士を経由して現地の優秀な専門家とつながることがポイントとなります。 海外財産の所在する国で相続税の申告が必要となった場合、現地の弁護士や会計士等と連携をして申告書を提出する必要があります。 ゼロからいきなり海外の専門家とつながることは困難であるため、日本の相続手続きを依頼している専門家を通して現地の優秀な専門家とつながることが重要です。 ・日本の相続税の申告・納税期限を守ること 海外に財産があったとしても、相続税の申告・納税期限までに申告書の提出と延納等の手続きをすることにより、税金の負担を最小限に抑えることが重要です。 海外の財産を解約し、財産を手にするには1年~2年程度の期間がかかることが通常です。 一方、日本の相続税の申告・納税期限は相続の開始があったことを知った日から10か月以内となります。 そして、この期限を過ぎてしまうとペナルティの税金がかかることとなります。 海外の財産については、期限までにその相続税の納税資金が確保できない状況も想定されます。 その場合においても、相続税の申告・納税期限までに手続きを行い税金の負担を最小限に抑えることが重要です。 9章 海外が絡む相続税でよくある3つの Q&A Q:海外に引っ越せば日本の相続税はかからなくて済むの? A:必ずしもそうとは限りません。 現状の日本の相続税のルールでは、被相続人と相続人の双方が日本国籍で、かつ、過去10年超日本に住んでいない場合、海外の財産には日本の相続税はかからないこととなっています。 しかし、海外に引っ越してそこに10年超住み続けるということには、生活・ビザ・家族・仕事・健康保険・年金など税金以外の様々なハードルがあります。 また、近年の税制改正の経緯としては「税金回避目的の海外移住」を封じるような制度強化が行われてきており、今後もこの傾向は続くものと想定されます。 加えて注意すべきなのは、仮に海外に引っ越して10年超が経過したとしても、日本にある財産は日本の相続税の対象となるという点です。 実際には、海外移住を検討したものの断念をした、というケースが多数となります。 Q:海外の財産はどのように把握する? A:遺言書、通帳、契約書、本人の生前の記録・メールなどを通じて、地道に調査します。 海外の銀行口座や証券口座は、日本のように戸籍等を出せば開示されるわけではなく、現地の法制度に従う必要があります。特にプロベート制度を要する国(アメリカ・イギリスなど)では、裁判所の承認なしには情報が開示されないことが多いため、時間も手間もかかります。 【「プロベート手続き」についてはこちらの記事をご参照ください】 Q:海外財産の申告漏れがあった場合、どんなペナルティがある? A:海外財産の申告漏れがあった場合、自主的に修正申告・納税を行った場合には、利息的な性質である延滞税のペナルティの税金が生じます。税務署から申告漏れの指摘を受けた場合は延滞税に加えて過少申告加算税等のペナルティの税金が生じます。 10章 まとめ 海外の相続税は国際相続に強い税理士に相談しよう 海外に財産がある場合の相続税は、被相続人や相続人の住んでいる場所や国籍、財産の所在地がどこにあるかによりその課税関係が異なります。 日本の相続税だけでなく海外の相続税がかかることもあり、その手続きは非常に複雑になります。 日本の相続税に関する知識だけでなく、海外財産が所在する現地の専門家と連携することも重要です。 相続税の手続きを問題なく進めるためには、まずは国際相続の実績のある日本の税理士のサポートを受けることをおすすめします。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。 年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 「海外にある財産の相続手続きをどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 共に海外財産の相続対策の第一歩を踏み出しましょう。
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海外在住の子・孫への贈与~相続時精算課税制度は使えるか~
「相続時精算課税制度」を利用してお子様・お孫様へ贈与をお考えのあなた 海外在住でも適用が受けられるか心配されていませんか? 実際のところ、通常の要件を満たせば相続時精算課税制度は受けられます。 本記事では、海外在住の受贈者(贈与を受けた者)でも日本の相続時精算課税制度の適用が受けられるのか、 そして、制度を利用する際の注意点について海外税制を踏まえて解説します。 ぜひ記事を読んで、相続時精算課税贈与を行う際の参考にしてください。 第1章 受贈者(贈与を受けた者)が海外在住の場合に相続時精算課税制度は使えるか? 結論、海外在住であっても相続時精算課税制度は使えます。 相続時精算課税制度は、親から子や孫への生前贈与について、「贈与した時点では一定額まで贈与税がかからず、相続が発生した時点で相続税でまとめて精算する」という仕組みです。 相続時精算課税制度についてはこちら(税理士が教える!贈与税がかからない合法テクニック8選「第3章」へ) 日本に住んでいなければ利用できないわけではなく、たとえ受贈者が海外在住であっても相続時精算課税制度の要件さえ満たせば利用可能です。 〈相続時精算課税制度の要件〉 ➀贈与者(あげる人): 60歳以上の父母または祖父母 ➁受贈者(もらう人): 18歳以上の子または孫 ➂手続き:「相続時精算課税選択届出書(一定の書類を添付)」を提出する ※年齢は贈与を行った年の1月1日時点で判定します。 ただし、海外在住者が関与する場合には、税務署に対して納税管理人を定める必要があり、通常の手続きと異なる注意点があります。 第2章 海外在住の子どもに贈与する場合の注意点 海外在住者への贈与はその手続きが日本居住者の場合と異なるケースがあります。以下の点には特にご注意ください。 2-1 納税管理人の届出が必要 海外に住む子どもなどが贈与を受ける場合、日本国内に納税管理人を選任し、税務署に「納税管理人届出書」を提出する必要があります。 納税管理人とは、納税の手続きを代理で行う存在です。例えば、海外に住んでいる人が日本で納税をする必要がある場合に納税管理人の選任が義務付けられています。 ・提出先: 海外在住者が贈与税の申告をする場合は、住所を管轄する税務署がありません。 自分で日本国内のどこかの税務署を定めてそこに届出することになります。 実際には、納税管理人の住所に合わせることが多いです。 ・納税管理人: 誰でもなれる。 日本に住む親族、信頼できる知人、または税理士が選任されるケースが多い。 ・役割: 納税管理人は、申告書の提出や税金の納付など受贈者に代わって税務署とやり取りする法的な窓口となります。 2-2 添付書類を提出することが必要 相続時精算課税制度を使う場合、届出書とともに以下の添付書類を提出する必要があります。 「戸籍謄本・抄本・その他の書類」(次の内容を証する書類) ①受贈者の氏名、生年月日 ②受贈者が贈与者の子・孫などであること ※海外在住者であっても準備する書類に違いはありません。 ※外国籍の場合にはその他の書類(宣誓供述書など)で証明する必要があります。 ※戸籍は日本語なので翻訳は不要ですが、外国語書類は日本語訳を添付する必要があります。 2-3 海外での税務報告義務(米国の場合はForm 3520) 米国に住む子どもなどが日本から贈与を受けた場合、受贈者はForm 3520をIRS(アメリカ内国歳入庁:日本でいう国税庁に相当)に提出しなければなりません。 ・提出基準: 年間10万ドル(1,500万円(150円/1ドル))を超える米国非居住外国人からの贈与を受けた場合に義務発生。相続時精算課税で多額の贈与を受けるケースでは該当することがあるため留意が必要です。 ・提出期限: 翌年4月15日(延長申請をしていれば延長後の期限まで) ・罰則: 未提出の場合、贈与額の最大25%に相当するペナルティが課されることがあります。 したがって、日本側で贈与税をきちんと申告しても、米国側での報告を怠れば重大なリスクを抱えることになります。 2-4 将来相続時に状況が変化し納税義務が発生 相続時精算課税制度は、親から子や孫への贈与について、贈与時点での税負担を軽減し、相続時にまとめて精算する制度です。 将来贈与者に相続が発生した場合、相続時精算課税制度の適用を受けた子どもなどについて相続時の納税義務が贈与時と異なる場合は注意が必要です。 贈与時は全世界に課税される者であったが相続時は日本財産のみに課税されることとなったケース(例 贈与後に贈与者が海外移住し10年超経った場合) 相続税の納税義務の判定では、海外在住者は日本財産のみ課税となることとなるが、相続時精算課税制度により取得していた贈与財産については日本の相続税の申告納税義務が生じる。 →相続時には日本の財産を取得せず、本来相続税の納税義務がない場合であっても、過去の贈与により納税義務が生じるケースとなるため要注意です。 2-5 国外転出時課税制度の対象になる可能性 海外在住者へ贈与を行う場合、国外転出(贈与)時課税制度の対象になることがあります。 国外転出(贈与)時課税制度とは、時価1億円以上の有価証券等を保有している日本居住者がその有価証券等の一部でも海外に住んでいる人へ贈与した場合には、時価により譲渡があったものとしてその含み益に所得税が課税される制度です。 ・対象者(贈与者)の要件: 1 過去10年以内に5年超、日本に住所または居所を有していた 2 贈与時に有価証券等の対象資産を1億円以上保有している ・対象資産: 上場株式、非上場株式、公社債、投資信託などの金融資産(預貯金や不動産は対象外)。 ・課税内容: 含み益に対して贈与時に譲渡したものとみなし課税されます。 例えば評価額1億円・取得価額5,000万円の株式を贈与すれば、5,000万円の含み益に課税される仕組みです。 留意点は贈与する財産の金額で判断するのではなく、贈与時に有価証券等の対象資産を1億円以上保有しているか否かで判定することです。 上記の例においてたとえ贈与する有価証券等が5,000万円であっても贈与者が対象資産を1億円以上保有していれば当該制度の対象になります。 第3章 海外税制との関係と二重課税 海外在住の子どもに日本から贈与を行う場合、「二重課税」と「税務報告義務」に留意する必要があります。 贈与税は日本国内だけで完結するものではなく、受贈者の居住国でも課税や報告が必要となるケースが少なくありません。ここでは代表的な国別の取り扱いと、租税条約の有無による調整について解説します。 3-1 贈与税が課される国・課されない国 各国の贈与税課税、その対象、留意点は以下の通りです。 国・地域 課税有無 課税主体・特徴 非課税枠等 実務上の留意点 日本 あり 贈与者が日本居住者なら受贈者が海外でも課税 相続時精算課税2,500万円の特別控除 受贈者が海外居住なら納税管理人の届出必須 米国 なし (受贈者側) 贈与税は贈与者が負担。受贈者は非課税。ただしForm 3520の提出義務あり 非課税枠はなし(報告義務は10万ドル超) 未提出で最大25%の罰金。二重課税は発生しないが報告義務違反リスク大 ドイツ あり 受贈者居住地主義。居住者は国外からの贈与にも課税 親子間40万ユーロの非課税枠 日本と二重課税になるが条約で調整不可 シンガポール なし 贈与税制度自体が存在しない ― 日本の贈与税のみ対象。 二重課税なし 香港 なし 贈与税制度自体が存在しない ― 日本の贈与税のみ対象。 二重課税なし (1)米国の場合 ・贈与税の課税主体は「贈与者」であり、受贈者(子どもなど)には課税されません。また、贈与者が米国非居住外国人である場合には課税対象外のため米国贈与税はかかりません。 ・ただし、外国から年間10万ドルを超える贈与を受けた場合には、Form 3520の提出義務があります。 ・つまり、日本で贈与税を納めても、米国側で追加課税はありませんが、報告義務違反に伴うペナルティリスクが大きい点が特徴です。 (2)ドイツの場合 ・ドイツは受贈者居住地主義を採用しており、居住者が国外から贈与を受けた場合も課税対象となります。 ・贈与税率は相続税と同じで、親子間なら免税枠は40万ユーロ。これを超える部分には最大30%の税率が適用される可能性があります。 ・したがって、日本で贈与税を納めても、ドイツでも課税されることがあり、二重課税が生じます。 (3)贈与税が課されない国(例:シンガポール・香港) ・シンガポールや香港などの国では贈与税そのものが存在しません。 ・この場合、日本での贈与税のみが問題となり、二重課税リスクは回避されます。 3-2 租税条約による調整の可否 日本は、相続税及び贈与税に関する二重課税の防止等のための条約として、米国との間でのみ「遺産、相続及び贈与に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約」(日米相続税条約)を締結しています。その他二国間での二重課税が生じている場合には外国税額控除で調整をすることが可能です。 外国税額控除についてはこちら 第4章 国際相続(贈与)は「税理士法人マインライフ」へ 国際相続は、国内相続とは比べものにならないほど複雑で、専門家の存在が成功の分かれ道となります。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 経験豊富な専門家が直接対応 少数精鋭体制で、常に経験豊富な税理士が対応。担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、1人当たりの担当件数も多く、実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 弁護士・司法書士・現地専門家との連携体制が整っており、海外財産や海外在住者の手続きに対応可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる申告業務だけではなく、納税資金対策や二次相続設計など、将来を見据えたオーダーメイド提案が得意です。 「国際相続・贈与をどう扱えばいいのかわからない」「外国税額控除を受けたいが手続きに不安がある」―― そのようなときは、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 最初の一歩を踏み出すことが、複雑な国際相続を解決へ導く最大のカギとなります。 第5章 まとめ ここまでの章において受贈者が海外在住の場合でも、相続時精算課税制度の利用は可能ですが、以下の注意点を挙げてきました。 ・納税管理人の届出 ・添付書類の整備 ・居住国での税務報告義務 ・将来相続時の納税義務 ・国外転出時課税との関係 また、居住国によっては、海外の税務報告や二重課税リスクもあります。 したがって、「日本での贈与税申告」+「海外での税務報告(申告)」 を両輪で進めることが重要です。 実務的には、日本と海外双方の制度に精通した税理士や現地専門家に相談し、手続きの漏れや課税リスクを回避することが最善の対応となります。
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海外移住で相続税は避けられる?10年ルールの真実と今後の改正動向
「海外に移住すれば相続税を払わなくて済む」と耳にしたことがある方もいるでしょう。 実際に日本の相続税では、「被相続人及び相続人が10年超海外に住んでいると、一部の財産を除いて日本の相続税が課されない」というルールがあります。 このルールを「10年ルール」といいます。 しかし、実際には国内に残した不動産や預金は課税されますし、今後の税制改正も大きく影響します。 この記事では「10年ルール」の基本と注意点、海外移住で本当に相続税が避けられるのか、さらに今後の税制改正の可能性までわかりやすく解説します。 第1章 相続税の「10年ルール」の3つのポイント 結論からいうと「10年ルール」により相続税を回避するためには以下の3つのポイントを満たす必要があります。 この章ではその3つのポイントについて解説します。 1-1 相続開始前10年超海外に居住している 「10年ルール」により相続税を回避するには、相続開始前10年を超えて日本に住所がないことが要件になります。 なお、日本に住所があるかないかの判定は個別に判断をすることになります。 例えば、日本と海外を行き来している場合には、実質的な生活の拠点が日本にあるのか海外にあるのかを判断し判定をします。 つまり、見かけではなく実態として日本に生活の拠点があると考えられた場合には日本に住所があるものとして課税がされることになります。 1-2 被相続人だけでなく相続人も海外に移住している 「10年ルール」により相続税を回避するには、被相続人(亡くなった人)と相続人(財産を受け取る人)の両方が海外に相続開始前10年を超えて住んでいたことが要件になります。 (相続人が外国籍の場合は相続人が海外に10年を超えて住んでいた要件は必要ありません) 例えば被相続人(父)が相続開始前10年超海外に住んでいたとしても、相続人(子)が日本に住んでいた場合は、原則日本国内にある財産にも海外に所在している財産にも日本の相続税が課されることになります。 つまり、国外移住により日本の相続税を回避するためには相続人も含め家族全員で海外に移住する必要があります。 1-3 財産も全て日本国外にある 「10年ルール」により相続税を完全に回避するには、財産も全て国外に持ち出す必要があります。 例えば、国内の不動産・銀行預金・日本企業の株式(日本の証券会社でなどは、移住の有無にかかわらず相続税の対象となります。 なぜなら、どんな場合でも、日本国内の財産は日本の相続税の課税対象となるからです。 つまり、海外移住により完全に相続税を回避するためには、財産も全て国外に持ち出す必要があります。 ただし、有価証券を海外に持ち出す場合には「国外転出時課税」の適用を受ける可能性があるので注意が必要です。 1-4 フローチャート 海外移住した後に相続が発生した場合に日本の相続税が課されるかどうか」をフローチャートにまとめると次のようになります。 第2章 海外移住だけで相続税回避は難しい では、この「10年ルール」を使い容易に日本の相続税は完全に回避することができるかというと、現実には難しいです。 この章ではその理由を簡潔に記載します。 2-1 「10年を超える居住」だけでは完全に相続税回避はできない 海外移住だけで完全に相続税が回避できるかというと、当てはまらない場合があります。 例えば、日本に財産を残している場合です。 確かに「相続開始前10年を超えて海外に住んでいれば、国外財産には相続税がかからない」というルールは存在します。 しかし、前述したようにこれは「国外財産」に限定される話であり、日本国内に残した財産には相続税が課税されます。 【事例】 母がフランスに12年間住んで亡くなりました。 相続人である娘もフランスに母と同じ12年間フランスに住んでいます。 財産がフランスの銀行預金:5000万円と東京のマンション:8000万円だったとします。 フランスの銀行預金(国外財産):日本の相続税はかかりません。 東京のマンション(国内財産):相続税が課税されます。 このように、海外移住をしても「日本に財産を残している限り、相続税ゼロ」にはならないのです。 2-2 帰国後に亡くなった場合、実質上の居住地の問題、税制改正により相続税が回避できない場合がある 「10年ルール」を満たそうと海外移住しても安心ではなく、相続税が回避できない場合があります。 それぞれのリスクをまずは認識しておくことが重要です。 ・帰国リスク 父が海外に11年住んだ後に帰国し、その数年後に亡くなった場合を考えてみましょう。 この場合、日本に住所があるとみなされ、国外財産も相続税の課税対象となる可能性があります。 つまり「一度帰国したらリセットされる」というイメージです。 ただし、帰国前に10年ルールを満たした状態で財産を贈与した場合には、日本の贈与税は課税されません(もっとも、移住先の国で贈与税等が課される可能性はありますのでご注意ください)。 また、帰国後に亡くなった場合であっても、すでに贈与済みの財産については相続税の課税対象にはなりません。 ・居住地リスク 完全に帰国をしていなくても、頻繁に日本に一時帰国している場合や親族が日本に居住している場合には、課税当局から日本居住者と認定されてしまう可能性があります。 つまり、形式的に海外に住所を移しただけでは日本国内に住所がないとはされません。 ・税制改正リスク 詳しくは後述しますが、富裕層が相続税の回避を目的に海外に移住するのを防ぐために度々税制改正が行われています。 改正の度に要件は厳しくなっていますので、今後も税制改正によりルールが変わってしまうリスクを移住前に認識しておく必要があります。 2-3 海外移住で相続税を回避する上で考慮すべき点 海外移住によって一定のメリットがあるのは事実ですが、それを「相続税ゼロ」に直結させることはできません。 相続税を完全に回避するには、さまざまな制約があるからです。 そのため、相続税を回避するためにはあらかじめ対策をしておく必要が出てきます。 具体的には次のような点を検討する必要があります。 ・財産を国内に残すかどうか 国内に不動産や預金を残していると相続税が課税されるため、すべて国外に移すかどうかが大きな分かれ道となります。 ・移住先国の税制や日本との租税条約の有無 例えばシンガポールは相続税がない国として知られていますが、世界にはアメリカや日本のように相続税が課される国もあります。 したがって、日本の相続税を回避したとしても移住先で相続税が課されてしまうケースもあります。 また、アメリカやフランスのように日本と相続税に関する条約を結んでいる国では、二重課税を防ぐ仕組みがあります。 一方、条約がない国では二重課税のリスクがあります。 ・名義変更手続き 実は海外に移住していた人の相続が発生した場合には、名義変更の手続きに多くの労力と時間がかかります。 現実には言語や現地の法律の問題もあるため一般の方が独力で手続きするのは不可能です。 そのため、専門家に依頼する必要があり、相続税とは別の費用がかかってしまうことになります。 相続が始まる前に「財産を贈与する」、「信託を使う」など承継方法を工夫することで、名義変更の手続きの負担を和らげることができますが、税金とは別の視点で考慮すべき論点です。 ・相続発生のタイミングと移住の時期をどう調整するか 相続開始(被相続人の死亡時)にどこに住んでいるかが重要なので、移住の計画を立てる際には「10年超」という時間軸を逆算して考える必要があります。 まとめると、「海外に移住すれば大丈夫」という単純なものではなく、「どこに住むか」「財産をどこに置くか」「承継の手続きをどうするか」を総合的に考えてはじめて、効果的な相続税対策になるのです。 第3章 10年ルールは変わるか?今後の税制改正の可能性 例え現状は「10年ルール」の要件を満たすことができると考え、海外移住を検討又はすでに海外移住していても、そもそものルールが変わってしまう可能性もあります。 この章では今までの改正の経緯と今後の改正の可能性を解説します。 3-1 日本の税制改正の経緯と今後の考察 相続税のルールは過去から何度も改正されており、海外移住による相続税回避は年々難しくなっています。 もともと日本では、相続人や被相続人が日本国籍を持っているだけで、国外財産も含めて課税されるという非常に広い課税範囲が適用されていました。 しかし、グローバル化の中で海外に生活の拠点を移す人が増え、「国外財産まで日本が課税するのは厳しすぎる」という国際的な批判も出てきました。 しかし、この国籍課税を単純に廃止して、死亡時の居住地でのみ判断をすると相続開始前に短期間だけ海外に移住して国外財産を課税対象から外すという租税回避行為が容易にできることになってしまいます。 そこで課税範囲を一部制限する仕組みとして「5年ルール」が導入されました。 この「5年ルール」では、相続開始前5年以内に日本に住所がある場合は国外財産にも課税されるという内容でした。 しかし、この「5年ルール」を導入しても、実際には富裕層が相続開始前に短期間だけ海外に移住して国外財産を課税対象から外すという事例が相次ぎました。 こうした“抜け道”が広がった結果、2017年の改正で「5年ルール」が「10年ルール」へと延長され、課税逃れが難しくされたのです。 つまり、日本の相続税法は「海外移住による課税逃れを防ぐ方向」に改正され続けており、今後も同じ流れで厳格化が進む可能性が高いと言えます。 3-2 国際的な課税権の動向 日本と同じように相続税(遺産税)を課している国がどのような仕組みになっているかも、今後の改正の可能性を考察するうえで重要になります。 例えば主要国では下記のようになっています。 ・イギリス イギリスでは相続開始前過去20年のうち15年イギリスに居住していた場合には、イギリスに住んでいる者と同様にイギリス国外の財産にも課税されます。 ・フランス フランスでは相続人が過去10年のうち6年フランスに居住していた場合には、フランスに住んでいる者と同様にフランス国外の財産にも課税されます。 ・アメリカ アメリカでは過去の居住期間に応じた取り扱いをしておらず、相続開始時の身分で米国市民(米国に住所がある者)はアメリカ国外の財産にも課税がされます。 したがって、アメリカのように居住期間にかかわらず死亡時だけで判断をする国もあれば、イギリスのようにより長期の期間で判断をする国もあります。 日本よりも長期の居住期間で課税対象の判断をしている国もあるため、日本も同様により長期間で判断することになる可能性は十分あるといえます。 3-3 海外移住を考えるなら税制改正を考慮すべき 制度は今後さらに厳格化される可能性があるため、『将来の改正』を前提に行動することが重要です。 「今は国外財産が課税されない」としても、将来的に再び課税範囲が広がる可能性は十分にあります。 前述したように実際過去にも「5年ルール → 10年ルール」と改正が繰り返されてきました。 ポイントとしてこのように改正があった場合には、相続発生時のルールが適用されることになります。 弊社にご相談があったお客様の中にも、「移住した際には5年ルールだったので5年間であればと相続税の回避を目的に移住したものの途中で10年に期間が延長され相続税は諦めて住みやすい日本に帰国した」という方もいらっしゃいます。 したがって、「今は大丈夫だから」と安心せず、数年先を見越して海外移住は検討する必要があります。 相続税制度は「抜け道をふさぐ方向」に歴史的に改正されてきており、今後も海外移住による回避はますます難しくなると考えられます。 第4章 よくあるQ&A Q1 一時帰国しても大丈夫? 結論:短期間の一時帰国であれば直ちに課税対象になることはありません。 例えば夏休みに数週間だけ帰国して日本の実家に滞在する程度であれば、日本に「住所」があるとは見なされません。ただし、1年の大半を日本で過ごす、住民票を戻す、子どもを日本の学校に通わせるなど生活の拠点が日本にあると判断されると、「日本居住」と扱われるリスクがあります。つまり滞在期間よりも「生活実態」が重要です。 Q2 10年経過したが、日本に帰国したい場合はどうなる? 結論:帰国後に相続が発生すれば、日本の居住者として課税されます。 例えば、父が海外に12年住んだ後に日本に帰国し、3年後に亡くなった場合、亡くなる直前は日本居住者ですので、国内外の財産すべてが日本の相続税の対象になります。したがって、海外移住の「10年ルール」で非課税になっていても、帰国した時点でリセットされるイメージです。 Q3 国籍は日本のままでも適用される? 結論:国籍だけで直ちに課税されることはありませんが、日本国籍者はルールの影響を強く受けます。 相続開始前10年を超えて海外に住んでいる日本国籍者であれば、国外財産は原則課税対象外です。 ただし、日本国籍を持っていると生活の拠点は日本にあるのではと疑われる傾向があります。 国籍を保持するかどうかは税務だけでなく生活全般に関わる大きな判断なので、専門家に相談しながら検討すべきテーマです。 Q4 被相続人、相続人ともに海外に移住したが、それぞれの家族が日本にいる場合は? 結論:日本に残る家族が相続人に含まれていれば、その人には日本の相続税がかかります。 例えば父(被相続人)がアメリカに10年以上住んで亡くなり、相続人の子2人のうち1人はアメリカ居住、もう1人は日本居住だったとします。 この場合、日本に住む子が相続する部分については、日本の相続税の対象になります。 つまり「家族全員が海外居住」でなければ、国外財産も含めて完全に課税を避けることは難しいのです。 Q5 相続税の二重課税になるケースはある? 結論:ありますが、外国税額控除で調整できる場合があります。 例えば、父がアメリカに住んでいてアメリカの不動産を相続した場合、アメリカでも相続税(Estate Tax)がかかり、日本でも課税される可能性があります。 こうした二重課税を避けるために「外国税額控除」という仕組みがあり、海外で支払った相続税を日本の相続税額から差し引けるケースがあります。 ただし、控除には限度があるため、全額が相殺できるとは限りません。 申告も煩雑になるため、国際相続に詳しい税理士に依頼するのが安心です。 第5章 国際相続は「税理士法人マインライフ」へ 国際相続は、国内相続とは比べものにならないほど複雑で、専門家の存在が成功の分かれ道となります。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 「海外の財産をどう扱えばいいのかわからない」「外国税額控除を受けたいが手続きに不安がある」―― そのようなときは、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 最初の一歩を踏み出すことが、複雑な国際相続を解決へ導く最大のカギとなります。 第6章 まとめ いかがだったでしょうか。 今回のコラムを通じて、「海外に移住すれば相続税を避けられる」という単純な話ではなく、10年ルールには厳格な条件があり、国内財産は必ず課税されること、そして制度改正や国際的な課税強化の流れから今後ますます回避が難しくなることをご理解いただけたかと思います。 特に、次のような点が重要です。 ・被相続人と相続人の双方が10年を超えて海外に居住している必要がある ・日本にある財産は移住の有無にかかわらず課税される ・帰国や国籍の保持によって課税対象が広がるリスクがある ・将来の改正でさらに厳格化される可能性が高い つまり、「移住だけで相続税を回避できる」と考えるのは危険であり、資産の置き場所や移住先国の制度、国際的な動きを含めて総合的に検討することが欠かせません。 また、国際相続は制度の違い・言語の壁・申告期限の厳しさなどから、放置すると大きなトラブルに発展するリスクがあります。したがって、相続や移住を検討する段階から、できるだけ早めに専門家に相談することが安心につながります。
国際相続サポート, 相続対策
日本からアメリカへ生前贈与/ケース別でわかる税金・手続き
「日本の相続対策として生前贈与を活用したいけど、子どもがアメリカに住んでいると難しいのかな」 「アメリカの税金のことはよくわからないし」 生前贈与を相続対策として検討している方からのご質問でした。 日本にいる子供だけでなく海外にいる子どもにも平等に生前贈与を行いたいとの要望でしたが、いままでに生前贈与を海外にいる子どもへ行ったことがないため、どうしたら良いのかと悩まれておりました。 ご安心ください。国際的な贈与は注意しなければならない点はもちろんありますが、計画的に準備を行うことで安心して生前贈与を行うことが可能です。 本記事では、アメリカに住んでいる方への贈与についてのポイント・贈与税・相続税の取り扱いを専門家の視点を踏まえ解説しております。 あなたの不安を解消しますので、ぜひ最後まで読んでください。 第1章 アメリカへの生前贈与の3つのポイント 「財産を渡す側(贈与者)=日本居住」「財産を受け取った側(受贈者)=アメリカ居住」の生前贈与の3つのポイント 日本居住者からのアメリカ居住者への生前贈与は以下3つのポイントに留意する必要があります。 ポイント①日本の贈与税 財産を渡す側(贈与者)が日本居住であれば、財産を受け取った側(受贈者)がアメリカ居住でも、原則として全世界の贈与財産に日本の贈与税が課税対象となります。 受贈者は基礎控除(年間110万円)を超える場合には日本での贈与税申告が必要です。 受贈者が日本非居住者(アメリカ居住者)なので納税管理人(※下記<専門家の視点①>)の選任も必要となります。 ポイント②アメリカの贈与税(連邦税) 財産を渡す側(贈与者)が「アメリカの非居住者・非市民」なので、アメリカ国内の不動産などを贈与したときはアメリカ贈与税の対象となります。 贈与者は年間基礎控除(受贈者1人当たり19,000米ドル(2025年))を超える場合にはアメリカでの申告が必要となります。 ただし、無形財産(預金・株式などの有価証券)は、アメリカ贈与税の対象となりません。 また、州によっては州税としての贈与税が存在します。 連邦税としての贈与税はかからなくても、州税としての贈与税はかかることもあります。州税については、現地の専門家と連携し確認を行う必要があります。 ポイント③アメリカの報告義務 アメリカ居住者である財産を受け取った側(受贈者)は、外国人からの贈与の合計が年間10万米ドルを超えるとForm 3520の報告が必要となります。 ただし、授業料・医療費の学校・医療機関への直接支払は除外となります。 アメリカの手続き(贈与税申告・Form 3520の報告) 贈与額(USD) 贈与税申告 Form 3520の報告 $19,000未満 不要 不要 $19,000〜$100,000 要 不要 $100,000超 要 要 ※贈与税申告が必要な場合においてもアメリカ贈与税は一般的には生じません。(後述:第2章 具体例②) <専門家の視点👉> ①日本の納税管理人の選任・届出 海外に住む子どもなどが贈与を受ける場合、日本国内に納税管理人を選任し、税務署に「納税管理人届出書」を提出する必要があります。 提出先:海外在住者が贈与税の申告をする場合は、住所を管轄する税務署がありません。 自分で日本国内のどこかの税務署を定めてそこに届出することになります。 実際には、納税管理人の住所に合わせることが多いです。 納税管理人:誰でもなれる。日本に住む親族、信頼できる知人、または税理士が選任されるケースが多い。 役割:納税管理人は、申告書の提出や税金の納付など受贈者に代わって税務署とやり取りする法的な窓口となります。 ②アメリカ贈与税の課税の対象となる財産(財産の種類で異なる) 贈与者がアメリカ非居住外国人(アメリカ市民ではなくアメリカに住んでいない人)である場合、そもそもアメリカ贈与税の対象はアメリカ国内の財産のうち無形財産以外に限られます。 無形財産:預金、株式・債券等の有価証券など 無形財産以外:不動産、現金など したがって、日本からアメリカへの生前贈与の多くのケースである預金の贈与ではアメリカの贈与税は課税されないこととなります。 ③アメリカの報告義務(Form 3520) アメリカに住む子どもなどが日本から贈与を受けた場合、「Form 3520」をIRS(日本の国税庁に相当する機関)に提出しなければなりません。 提出基準:年間10万米ドルを超えるアメリカ非居住外国人からの贈与を受けた場合に義務発生。 提出期限:翌年4月15日(延長申請をしていれば延長後の期限まで) 罰則:未提出の場合、贈与額の最大25%に相当するペナルティが課されることがあります。 したがって、日本側で贈与税をきちんと申告・アメリカでの贈与税がかからない場合でも、報告を怠れば重大なリスクを抱えることになります。 <財産の種類別「日本×アメリカ」早見表> (前提:贈与者=日本居住(アメリカ非居住外国人)、受贈者=アメリカ居住) 贈与する財産の種類・所在地によって両国の税金・手続きが以下の通り変わることになります。 贈与財産 ①日本の贈与税 (受贈者) ②アメリカの贈与税 (贈与者) ③Form 3520 (受贈者) 日本の不動産 課税対象(国内財産) 対象外 $100,000超なら提出 アメリカの不動産 課税対象(国外財産) 対象(アメリカ内不動産) →申告が必要 $100,000超なら提出 預金の送金 (日本口座) 課税対象(国内財産) 対象外 $100,000超なら提出 預金の送金 (アメリカ口座) 課税対象(国外財産) 対象外(無形資産) $100,000超なら提出 現金 (アメリカで手渡し) 課税対象(国外財産) 対象(アメリカ内で手渡し) →申告が必要 $100,000超なら提出 授業料・医療費 (学校・病院へ直接支払) 生活費・教育費の“通常必要”なら日本も原則非課税 対象外 Form 3520不要 第2章 アメリカへの生前贈与のよくある具体例(贈与税について) 「財産を渡す側(贈与者)=日本居住」「財産を受け取った側(受贈者)=アメリカ居住」の生前贈与の具体例 ここでは、日本居住者からのアメリカ居住者への生前贈与をよくある具体例を基に各国の「贈与税」を確認していきます。 具体例①:預金の海外送金「110万円」 ①日本の贈与税:申告不要 / ②アメリカの贈与税:なし / ③Form 3520:不要 ① 日本の贈与税 贈与者が日本居住のため、原則、全世界の贈与財産が課税対象となります。 贈与税:110万円 − 基礎控除110万円 = 0円(申告不要) ※年間の贈与額が110万円を超えない年は申告不要。 ② アメリカの贈与税 贈与者はアメリカ非居住外国人(アメリカ非居住・非市民)で、贈与した預金は無形財産。 アメリカ贈与税の対象はアメリカ国内の不動産などの無形財産以外に限られるため課税されません。 ③ Form 3520 アメリカ非居住外国人からの贈与が年間100,000米ドル超で提出義務が発生します。 110万円は100,000米ドル以下であるため不要。 具体例②:預金の海外送金「1,500万円」(100,000米ドル超(145円/1米ドル)) ①日本の贈与税:(受贈者)申告・納税必要 / ②アメリカの贈与税:なし / ③Form 3520:(受贈者)必要 ① 日本の贈与税 贈与者が日本居住のため、原則、全世界の贈与財産が課税対象となります。 贈与税額:366万円 ※税額:1,390万(1,500万円−基礎控除110万円)× 40% − 190万 = 366万円 (注)続柄や他の贈与の有無で税率は変わる場合があります。 申告・納付:受贈者は翌年3/15までに日本で申告・納付する必要があります。 受贈者は日本の非居住者のため、納税管理人の届出書をあわせて提出。 <専門家の視点👉> 生前贈与を一括で行わない相続対策の検討(贈与税率の観点) 例えば半額の750万円の贈与の場合には贈与税額は102万円となります。日本の贈与税率は累進課税(一回の贈与額が大きいほどに税負担が大きい)のため検討の余地があります。 ② アメリカの贈与税 贈与者はアメリカ非居住外国人(アメリカ非居住・非市民)で、贈与した預金は無形財産。 アメリカ贈与税の対象はアメリカ国内の不動産などの無形財産以外に限られるため課税されません。 <専門家の視点👉> もしアメリカ内不動産などのアメリカ国内財産の贈与であれば、年間基礎控除(19,000米ドル(2025年))を超えるため、アメリカ贈与申告が必要になります。 なお、日本人贈与者には「統一移転税額控除(日本人は特例的に適用あり)」という約20億円の大きな控除(一定の調整計算が必要です)が認められるため贈与税はめったにかかりません。 ③ Form 3520 アメリカ非居住外国人からの贈与が年間100,000米ドル超で提出義務が発生します。 100,000米ドルを超えるため提出が必要となります。 <専門家の視点👉> 不提出は贈与額の最大25%に相当するペナルティが課されることがあります。 アメリカ贈与税がかからない場合は特に手続きが漏れるケースが散見されますので確実に提出するようにしましょう。 第3章 アメリカへの生前贈与のよくある具体例(相続税について) 「財産を渡す側(贈与者)=日本居住」「財産を受け取った側(受贈者)=アメリカ居住」の生前贈与の具体例 第2章で確認した生前贈与のその後を各国の「相続税(アメリカ遺産税)」で確認していきます。 日本・アメリカの両国ともに生前贈与された財産は、のちに贈与者に相続があった場合には相続財産に加算して相続税(アメリカ遺産税)を計算することになります。 日本では、原則死亡前7年以内の贈与が相続税に加算され、既に納めた贈与税は相続税から控除します。 アメリカでは、生前の課税贈与(1977年以降)を原則すべて遺産税の計算基礎に合算し、既に納めた贈与税は遺産税から控除します。 具体例①:預金の海外送金「110万円」 ①日本の相続税 死亡が贈与後7年以内の場合には生前贈与の110万円を相続時の亡くなった人(被相続人)の遺産に加算して(贈与はなかったものとみなして)相続税を計算します。 死亡が贈与後7年超の場合には生前贈与の110万円を遺産に加算する必要はありません。 ②アメリカの遺産税 贈与財産(預金)は無形財産で、生前贈与時点ではアメリカ贈与税の課税対象外です。 したがって相続時にアメリカ側の生前贈与分の持ち戻しは通常生じません。 <専門家の視点👉> 日本の相続税は贈与から7年経過しているか否かにより贈与財産を遺産に加算するかどうか取り扱いが異なります。 言い換えると生前贈与の相続対策は、贈与時から7年経過して初めて効果を発揮します。 よって将来を見据えて早めに相続対策を行う必要があります。 具体例②:預金の海外送金「1,500万円」 ①日本の相続税 具体例①と同様に贈与時から7年を経過しているかにより相続税の計算が異なります。 贈与後7年以内の場合には、すでに納付した贈与税(366万円)を相続税の一部に充てることができます。 ②アメリカの遺産税 具体例①と同様に相続時にアメリカ側の生前贈与分の持ち戻しは通常生じません。 実際には、皆さまが検討している生前贈与の金額に応じて日本・アメリカの税額・手続きを検討していくことになります。日本・アメリカ両国とも生前贈与の金額によって、とるべき手続き・税額も異なってくることに留意する必要がございます。特に生前贈与の金額が多額になるケースについては専門家へ相談する必要出てくるでしょう。 第4章 国際相続・贈与の相談は「税理士法人マインライフ」へ 贈与が国際間をまたぐものであるため手続きが複雑になるかもしれない・・・。 そのような難しいケースでも、弊社には最適なサポート体制が整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 強み 内容 ① 国際相続の経験が豊富な専門家が直接対応 少数精鋭体制で、経験豊富な税理士が必ず対応。 担当が途中で変わる心配がありません。 ② 相続税申告・対策に特化し、豊富な実績 相続専門の法人だからこそ、相続に特有の実践的なノウハウが蓄積されています。 ③ 海外案件にも強い独自ネットワーク 海外の専門家との連携体制が整っており、海外の財産や海外在住者の手続きに対応が可能です。 ④ 申告だけでなく、相続対策にも精通 単なる税計算だけではなく、納税資金対策や二次相続対策など、将来を見据えたオーダーメイドの提案が得意です。 「生前贈与を行いたいけれど子どもがアメリカに住んでいるからどうしたらいいのかわからない・・・。」と感じている方は、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法をご提案いたします。 第5章 まとめ いかがだったでしょうか。 相続対策としてアメリカに住んでいる子どもへの生前贈与の活用を検討中のあなたも留意点や具体的な税金のイメージが湧いたのではないでしょうか。 アメリカ居住者への贈与についての3つのポイント「①日本の贈与税」「②アメリカの贈与税(連邦税)」「③アメリカの報告義務」を解説しました。 また、具体例に基づき「贈与税・相続税」の税額を解説しました。 実務的には、当然ですが皆さまが検討している生前贈与の金額に応じて日本・アメリカの税額・手続きを検討していくことになります。 そこで大切になるのは日本とアメリカ双方の制度に精通した税理士や現地専門家です。 手続きの漏れや課税リスクを回避するためにも専門家への相談が最善の方法になります。
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相続税の外国税額控除とは?制度概要と日本で適用する手続きの全体像
「父がアメリカで購入したマンションや株式を相続することになった。日本の相続税とアメリカの相続税の二重課税を回避する方法があるらしいけど」 海外に財産がある相続では、日本と海外の両国で相続手続きが必要になります。 調べていくと「外国税額控除」という制度の存在を知ることになりますが、仕組みが専門的で複雑なため、「自分の場合に本当に使えるのか」「二重課税は避けられるのか」と迷ってしまうことも多いでしょう。 そうなんです。外国税額控除は初めての方にはとても分かりづらい制度です。 でも、海外と日本の両方で課税される可能性がある相続において、「外国税額控除」は二重課税を調整するために欠かせない大事な仕組みなのです。アメリカにある財産を日本に住んでいる人が相続した場合などは、実際に両国で課税されることがあり、その調整のために活用できるのが「外国税額控除」です。 もっとも、外国税額控除があれば全てが解決するわけではありません。控除できるのは海外にある財産に対応する「日本の相続税額」が上限であり、米国の州税のように対象外となる税金もあります。 また、日米租税条約によってアメリカでは超富裕層でなければ相続税がかからないケースも多く、そもそも二重課税自体が発生しない場合も少なくありません。 アメリカ以外の国で考えるとフランスやドイツのように相続税が発生しやすい国もあれば、シンガポールのように相続税が存在しない国もあります。 つまり、「外国税額控除」の適用については現地で相続税が発生しているのか、二重課税になっているのかということも考える必要があります。 本記事では、相続税における外国税額控除の基本と、その限界や注意点をわかりやすく解説します。 控除を使えるのに使わないのはもったいないです。 「使える控除は必ず使う」ための知識を身につけてください。 第1章 相続税の外国税額控除とは 相続税の外国税額控除とは、同じ財産に対して日本と外国の両方で相続税がかかるときに、二重課税を調整するための制度です。 この制度を理解する上で、まずは相続税の外国税額控除の目的や仕組みを整理します。 1-1 制度の仕組み 【日本の相続税の課税方法】 日本では、亡くなった方や相続人が日本に住んでいる場合、国内の財産だけでなく海外の財産も含めて相続税の対象になります。(全世界課税) 【相続税の外国税額控除の制度趣旨】 財産が相続税制度のある国に所在し、その国でも相続税が課される場合は、二重課税になります。 そこで日本では、外国で支払った相続税を日本の相続税から差し引けるようにしており、その調整の仕組みが「相続税の外国税額控除」です。 【例外】 日本国内の財産は日本で課税されるべきものと考えられているため控除の対象外です。さらに海外の財産についても、日本でその財産に課される相続税の金額が限度になります。 この「限度」については、後ほど計算方法とともに解説します。 1-2 二重課税は本当に起きるのか(アメリカ/他国事例) 実は、外国の相続税制度の関係で二重課税にならないことも多いです。 相続税の外国税額控除が必要になるのは、日本と外国の両方で相続税が課されるときなので二重課税になっていなければ適用する必要がありません。 そのため、まずはその国において相続税が課税されるのかを確認することが必要です。 代表的な国について整理します。 アメリカの場合 アメリカでは、非居住者(米国内に住んでいない人)が米国内に財産を持っていると原則相続税が課されます。ただし非居住者の基礎控除は6万ドルしかありません。 ところが、日米相続税条約によって、日本人にも米国市民と同じ大きな基礎控除(2025年時点で約1,400万ドル)が認められます。 (この基礎控除額については改正が多く、金額も大きく変動しますのでご注意ください。) そのため、超富裕層でない限りアメリカで相続税が課されることにならず、結果的に二重課税は発生しないことが多いのです。 二重課税がなければ相続税の外国税額控除を使う必要はありません。 ただし、注意点もあります。アメリカには連邦税とは別に州ごとの相続税制度があります。 しかも、日本の相続税と州税が重なっても、外国税額控除の対象にはなりません。これは、相続税の外国税額控除の対象は「外国の国税」に限られているからです。 アジアの場合 シンガポールや香港などでは、そもそも相続税制度自体が存在しません。現地で課税されることはなく、日本の相続税のみがかかることになります。 したがって、外国税額控除を使う必要はありません。 欧州の場合 フランスやドイツなどは相続税(遺産税)が多くのケースで課税されることになっており、日本に住む相続人にも課税されることがあります。 この場合、日本でも相続税が課税され、さらにフランスやドイツでも相続税が課税されるため、相続税の外国税額控除の適用を受けることになります。 このように、国によって相続税の制度は様々です。まずは亡くなった方が所有していた財産がある国において相続税が発生するかの確認をするようにしましょう。 1-3 計算方法と「日本の相続税が限度」となる考え方 それでは、相続税の外国税額控除の計算方法とその考え方について解説します。 外国税額控除は、海外にある財産についてその国で支払った相続税に相当する税金を控除できます。ただし、その財産に対応して日本で課税される相続税の金額が限度となります。 算式で表すと以下の通りです。 【相続税の外国税額控除の計算】 ※①と②のいずれか少ない金額 ①海外で支払った相続税に相当する税金(外国の国税に限る) ②日本の相続税額 ×(海外にある財産の金額 ÷ 相続財産全体の金額) ②は海外にある財産について日本で課税される相続税を計算しています。 少し複雑なので具体的な金額を用いて確認します。 前提 ・相続財産の合計:1億円(国内7,000万円+国外3,000万円) ・日本の相続税額:1,000万円 ・外国で支払った相続税額:400万円 ➀ 400万円 ➁ 1,000万円 ×(3,000万円 ÷ 1億円)= 300万円 →控除できるのは少ない方の②300万円となります。 この図の通り、②は国外財産に対してかかる相続税額を計算しています。 外国税額控除を適用した後、日本で支払う相続税は 1,000万円 − 300万円 = 700万円 です。 このケースでは、国内財産に対応する相続税だけを日本で納めることになります。 もし、①の外国で支払った税額をそのまま全額控除してしまうと、国内財産に対応する相続税まで差し引くことになり、制度の趣旨に反することになります。 計算の方法について、確認できたと思いますので次章では実際に外国税額控除の適用を受けるための手続きや注意点について解説いたします。 第2章 外国税額控除の実務と注意点 外国税額控除を受ける場合でも、日本の相続税申告と同時に進める必要があります。 海外の手続きに時間がかかったとしても日本の相続税の申告期限は変更されませんので、注意してください。 2-1 相続税の申告と手続きの流れ 相続税の外国税額控除の適用を受ける場合は、相続税申告と同時に手続きを行います。 申告の際には、相続税申告書の「第8表(外国税額控除に関する明細書)」に必要事項を記載し、添付して提出する必要があります。 なお、日本の相続税申告は原則として相続開始から10か月以内が期限ですのでご注意ください。 【相続税申告書第8表】 (出典:国税庁) さらに、その財産が所在する国で課税されたことを証明する書類、例えば現地の申告書や課税証明書、納税証明書などを添付する必要があります。 これらは外国語で発行されるため、通常は日本語訳を付けて提出します。 2-2 外国税額控除の制度を適用する場合の注意点 既に触れた内容もありますが、相続税の外国税額控除を利用する際には、次の点に特に注意が必要です。 ① 控除の対象は国外財産のみ 外国税額控除の対象となるのは、国外にある財産にかかる相続税です。 日本国内にある財産については、日本で課税されるのが原則であり、控除の対象にはなりません。 ② 州税や地方税は対象外 アメリカなど一部の国では、連邦税に加え、州ごとに独自の相続税が課される場合があります。 しかし、外国税額控除の対象は「外国の国税」に限られるため、州税や地方税については日本で控除することはできません。 このため、州税が課された場合には、日本の相続税と二重に負担するケースもあります。 ③ 海外の申告書類の準備が不可欠 外国税額控除を適用するには、その国で相続税を支払ったことを証明する書類(課税証明書や納税証明書)を添付しなければなりません。 海外の申告や証明書の作成が遅れると、日本の申告期限に必要書類が間に合わないことがあります。 したがって、現地の専門家(税理士・会計士・弁護士など)と連携して書類を揃えることが実務上不可欠です。 第3章 外国税額控除でよくある質問(Q&A) Q1. 日本の申告期限(10か月)に海外の課税証明が間に合わない場合は? 間に合わなくても控除は可能です。 まずは外国税額控除の適用を受ける前の金額で一度日本の相続税申告書を期限内に提出し、その金額で納税します。 その後、海外の課税証明が発行できた段階で、更正の請求を行い還付を受けることが可能です。 日本の相続税の申告期限は相続開始から10か月ですが、海外の期限は必ずしも一致せず、税金の確定まで長い時間を要する場合もあります。 海外の手続きは時間がかかることが多いため、早めに現地の専門家と連携し、スケジュール管理を徹底することが重要です。 Q2. 外国で支払った税金はどの為替レートで換算しますか? 原則としてその外国で納付すべき日のTTS(対顧客電信売相場)で円換算します。 通常は国内から送金した日のTTSも使えますが、送金が大きく遅れた場合は注意が必要です。 Q3. 相続に関連して発生した税金はすべて外国税額控除の対象になりますか? すべての税金が控除できるわけではありません。あくまで控除の対象は「相続税に相当する税」に限られます。 国によっては相続手続きの際に消費税や不動産取得税に相当する税金が課される場合もありますが、相続税に相当するものではないため控除の対象外です。判断が難しいケースもあるため注意が必要です。 Q4. 日本と違って、亡くなった人の遺産そのものに課税される国の場合は控除の対象になりますか? 亡くなった人の遺産そのものに課税される国(アメリカやフランスなど)であっても、日本の相続税に相当すると認められる税であれば外国税額控除の対象になります。 日本の相続税は「相続人ごと」に課税されますが、国によっては「被相続人の遺産全体」に課税されます。方法が違っても、その性質が相続税に相当すれば控除の対象となります。 Q5. 相続税の計算上、控除できる債務がある場合はどのように計算しますか? 国外財産については、その財産に対応する債務を差し引いた後の価額を用います。国内財産についても同様に債務控除後の価額を基準にします。 つまり、相続人が実際に引き継ぐ純粋な価値部分をもとに外国税額控除を計算します。 第4章 相続税の外国税額控除の適用がある場合は、国際相続に強い税理士の支援が必要 相続税の外国税額控除は、単に日本の相続税を計算するだけでは適用できません。 海外の課税証明書や現地申告書類を揃える必要があり、現地の専門家との連携が不可欠です。 そのため、海外に財産がある相続の場合には、国際案件に強い税理士に相談することが大事です。 ① 税理士にも得意・不得意分野がある 相続業務を日常的に扱っていない税理士も多く、中には年に1件も相続案件を担当していないという税理士も存在します。特に海外が関係する相続となると、いままでまったく経験がない税理士も多く、思わぬトラブルや遅延の原因となり得ます。 税理士であれば誰でもいいということはなく、実績や専門性を見極めて依頼することが大切です。 ② 各国の法律や制度が異なり、現地の専門家との連携が必要なこともある 国ごとに制度が異なるため、日本国内だけでは完結できない手続きが発生することがあります。 国際相続に強い税理士であれば、現地の弁護士や会計士と連携できるネットワークを持っているケースが多く、安心して任せられます。 経験のない税理士に依頼すると、自分で現地の専門家を探す必要に迫られることにもなりかねません。 ③ 国際相続でなくてもタイトなスケジュールがさらにシビアに 相続税の申告期限(10か月以内)は海外の手続きがあるからといって延長されません。海外の手続きはかなり時間がかかり、準備や判断の遅れが致命的になり得ます。 こうしたケースに慣れた税理士でなければ、期限に間に合わないリスクが高まります。 ④ 状況に応じた柔軟で迅速な判断と対応が求められる 海外の申告や手続きなどはその国の法律が関係し、国際相続は一筋縄ではいかないことがほとんどです。 その都度、適切に判断し、書類の整備や申立て方法を柔軟に変更できるかどうかが結果を左右します。 国際相続の経験が豊富な専門家であれば、こうした事態にも迅速・的確に対応でき、スムーズに手続きを進めることができます。 第5章 ご相談は、信頼と実績の「税理士法人マインライフ」へ 海外に財産があり、その国でも税金が発生する??―― そのような難しいケースでも、最適なサポート体制が弊社には整っています。 税理士法人マインライフは、新宿・津田沼を拠点に、相続・国際相続の専門家として豊富な実績を持つ少数精鋭の税理士法人です。年間数百件の相続税申告を担当しており、経験豊富な税理士が必ず最初から最後まで対応します。 マインライフが選ばれる理由 「海外の財産をどう扱えばいいのかわからない」「外国税額控除を受けたいが手続きに不安がある」―― そのようなときは、ぜひ税理士法人マインライフへご相談ください。 初回面談は無料です。ご状況をお伺いし、今すぐできる最善の方法とスケジュールをご提案いたします。 第6章 まとめ いかがでしたでしょうか。ここまで、相続税の外国税額控除について解説してきました。 ・相続税の外国税額控除は、日本と外国の両方で相続税が課された場合に二重課税を調整する制度。 ・二重課税は必ずしも発生せず、アメリカやアジアでは課税がないケースも多い一方、欧州では二重課税が起きやすい。 ・控除額は①外国で支払った税額と②日本側の算式で算出した額のうち少ない方が上限。 ・国内財産や州税・地方税は対象外であり、控除できるのは「外国の国税」に相当する税金に限られる。 ・申告には「第8表」への記載と海外の課税証明の添付が必要で、日本の申告期限は相続開始から10か月。 ・実務では為替換算や期限のズレ、対象税目の判定など複雑な点が多く、海外の専門家との連携が不可欠。 海外に財産がある相続は、一般の相続以上に準備や判断が難しくなります。外国税額控除を正しく適用し、損をしないためにも、国際相続に強い税理士に早めに相談することをおすすめします。
